砂漠の王宮
と、薬師コパティカ・ペパティカ

適切な食事と休息により、王の病状は抑えられておりました。
彼は国に医術の学び舎を建て、薬師や御典医をはじめ多くの医の者たちに議論させ、
お互いに啓蒙させたのでございます。

さらには医学の徒のみならず、歴史や動植物、天文に到るまでの百識の者たちが
コパティカ・ペパティカが残していた薬と、まつわる文献を吟味した結果、
遂に薬の材料、そして調合法に到ったのでありました。

一切の混じりけの無い水にウーフワーフの実を漬け込み
そこに病を患い、きっかり三日目の男女の血を混ぜる……

これが疫病に抗する薬の秘密です。

ウーフワーフの実など聞いたことが無い。
それに病を得て三日目とな……いかにして見極めるのか?

完全に純粋な水というのも、また難題です。
やはり一筋縄ではいきそうには有りません……

薬師は強い決意を帯びた瞳で王に応えました。

しかし、ここまでこれたのです。
私は全ての難問を越えて行けると思います。

東ではウーフワーフが実を結ぶと聞きます。
かの地へ出向くことをお許しを戴けませんでしょうか?

王は快く許されましたので、コパティカ・ペパティカは旅立つこととなりました。
そして彼女の旅の共には、王が長らく信頼を置く人物がつくことになったのです。

それは彼女を王の元へと連れて来た、あの密偵でございました……。