環軸椎回旋位固定(AARF)

これまで頚に変形がなかったお子さんが突然斜頚(頚を水平方向の一方に向け、その反対側に頚を傾ける)を呈し、第1、2の頚椎の間に回旋性の変形がある場合を、環軸椎回旋位固定と呼びます。atlanto-axial rotatory fixation の頭文字を取ってAARFと呼んでいます。多くの場合、首の変形とともに強い痛みを伴います。実際の例とそのCTによる立体像を示します。
   
                           正面から                   ほぼ真上から

頚は右に傾き、左に回旋しています。頸椎立体像では、第一頸椎は右に傾き、左に回旋しているのがわかります。

頸椎の立体像では、第一頸椎は亜脱臼しているように見えますが、正常でも頚を右に傾け、左に回旋すれば同様の形態となります。下図は正常成人の頸椎を右に傾け、左に回旋した状態でのCTの立体像です。

 
          正面から                 真上から

このように正常でも頚を回旋かつ傾ければ、立体像を見ると環軸椎回旋位固定と同じ形態となります。言い換えれば、頸椎回旋位固定というのは、亜脱臼ではなく、正常の頸椎運動がある場面で固定されている、ということになります。

原因は多くの場合不明です。中耳炎をはじめとした耳鼻咽喉周辺の細菌・ウイルス性感染症、(炎症その他による)頚の周りの筋肉の拘縮、手術後の炎症など影響で起こることもあります。
もちろん少数例では強い外力などで亜脱臼になったり、不安定となったりしますが、それらは例外的なものです。
ダウン症候群、若年性リウマチ、骨系統疾患の中にはもともと頚椎の異常がある場合がありますが、このような場合は通常AARFから除外しています。

実際には、子供が突然斜頸を呈しても単なる寝違えと軽く扱われることがおおく、正しい診断がつけられないままいくつかの病院を転々とすることも稀ではありません。自然治癒する場合もありますが、診断がつかなくて数週間以上も症状が持続すると治療困難となることもあります。

この疾患では早期診断、早期治療が重要です。早期(一週以内)に治療を開始すれば多くの場合、平均4日くらいで回旋位固定が改善されます。治療は、頸椎の軽い牽引と安静、そして鎮痛剤投与、場合によっては鎮静剤投与によってほとんどの場合治癒します。ひとたび治癒しても再発することがありますので、その後に厳重な経過観察が必要です。
1ヶ月以上変形が持続していると治療が困難な場合が多くなります。このようケースにはハローベストという特別な装具を装着して持続的牽引をする必要があるかもしれません。また、経験はありませんが、少数例では手術的整復が必要な場合もあるかもしれません。

もちろんこの疾患は専門的におこなうべきもので、一般の整形外科医師が扱うものではではありません。

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