先天性股関節脱臼に関するご質問とそれに対するお答え
先天性股関節脱臼についてご質問のある方は、ort at kir.biglobe.ne.jp (atは@に変えてください)にメールをください。

NO.1
2018年7月
初めてメールさせていただきます。
生後6か月になる娘が先天性左股関節脱臼と診断され今後の治療方針で悩んでおります。
生後4か月、 近くの総合病院で先天性左股関節脱臼と診断され、その日のうちにリーメンビューゲルを装着しました。装着1週後に整復したと思われましたが、1か月後に超音波、レントゲン診断の結果、再脱臼していた事が判明しました。とりあえずこのままとし、2週後にリーメンビューゲルを再度装着することになりました。
2回目のリーメンビューゲル装着した結果整復したと言われましたが、他人の勧めで別の総合病院を受診した結果、はまってはいないと言われました。今後リーメンを続け、それでも入らない場合は、全身麻酔をして造影剤を入れ調べ、介在物があればその場でそのまま取り除く手術を勧められました。

このお手紙からさまざまなことが明らかになります。
1.我が国では脱臼があれば、それがどのような脱臼であろうともとにかくリーメンをつける、というのが一般的です。しかし、今日では脱臼も重症度によって分類され、リーメンの適応の無い場合が明らかになっています。治療をする上で重要なことは、まず脱臼の重症度を正確に診断し、それに応じた治療方針を決定することです。
2. 最初のリーメンで入らなかった場合、一旦リーメンを外して再度装着する。それでもダメな場合は牽引もしくは手術を行う、というやり方も結構行われています。再装着による整復率は20〜30%です。入るかどうかわからないような治療するのではなく、最初から確実な牽引をしたらどうか、と考えます。博打のような治療はどうなのでしょうか?そして、手術は最後の手段であり、むやみに行うべきではありません。私もこれまで2000例以上の脱臼を治療してきました。しかし、特殊な場合(たとえば他の奇形を伴っている場合など)を除いて最初から手術した例は記憶にありません。ほとんどの例は手術なして整復されます。

結局この患者さんは本院で牽引治療を行い、無理なく正しく整復されました。

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私が滋賀県立小児保健医療センター在職中にメールにて先天性股関節に関するご質問をたくさんいただきました。すべてにご返事を差し上げてきましたが、その中でも他の皆様のご参考になると思われる重要なご質問については固有名詞を削除し、個人情報に触れると思われる部分についてはご質問された方に掲載の許可をいただいた上で、ホームページ上でご紹介してまいりました。先天性股関節脱臼に関する皆様からのご質問はほとんどこれらのどれかに当てはまるのではないかと思っておりすので、ご参考にしていただければ幸いです。

御質問309

こんばんは、いつもお世話になっております。年末のお忙しいところ恐れ入ります。臼蓋形成不全で毎年5月に診察を受けております娘の件で気になることがあり、メールさせていただきました。現在**に住んでいるため、お正月**の実家に戻った時が診察を受けられるチャンスかと思いますが、まずは下記の質問をさせてください。
現在2歳10ヶ月です。前回診ていただいたときは「よい成長をしている」とのことで殆ど問題ないかとは思っておりますが股関節の辺りからぽきぽきと大きな音がすることがよくあります。くすぐったりしてじゃれた時など、寝た姿勢から足をばたばた動かす時目立ちます。着替える時などもたまに鳴ります。本人は痛くも痒くもないらしく、気にならない様子ですがこちらとしてはこのままほうっておいていいものかと思いまして・・・・。
音楽にあわせて踊るのが大好きな子なので、バレエでもさせてみようかと柔軟体操をして遊んだこともあります。とても柔らかいですがやはり音が鳴ります。そういったことはこの子にとって良くないことなのでしょうか?音のなる状態を避けて生活させた方が良いのでしょうか?近い将来バレエ教室に見学に行き、本人がやりたがったらさせてみたいと思っております。骨のことを考えるとよくないということでしたら、見学する前に止めておくべきだと思いますのでアドバイスをいただけますと幸いです。
どうぞよろしくお願い申し上げます。

御返事

股関節を動かす時ポキポキ鳴る、というのは6才未満のお子さんでよくあることです。原因はわかりませんが、心配のないものと考えます。とくに**さんの場合には、脱臼の治療はうまくゆき、股関節の発育は順調ですので問題ありません。
バレエ結構です。好きなことはなにをやってもかまいません。

ということでがんばってください。

御質問307

はじめまして。現在28才になる**県在住の者です。乳児期に先天性股関節脱臼を患い、中学生の頃、初めての痛みが起こり一ヶ月の入院生活を送りその後年に数回痛みがきていたので、その度に通院し湿布や痛み止めを服用していましたが、ここにきてまた痛みが再発し、腰・ひざ・ももも痛くなり一ヶ月が経ちます。先日MRIに入り結果を待っているところですが、このままでは一生は持たないと言われ、先生からは手術を勧められています。家族とも話し合って手術をする覚悟はできましたが、最大半年はかかると言われた入院生活のこと、いろいろ不安でなりません。子供が産めなくなったりすることがあるのでしょうか?またリハビリに激痛を伴うと聞いたのですが、本当でしょうか?次の診察までまだ時間があり余計なことばかり考えてしまいます。是非御回答願います。よろしくお願い致します。

御返事

乳児期に先天性股関節脱臼を患い、中学生の頃、初めての痛みが起こり一ヶ月の入院生活を送りその後年に数回痛みがきていた、そしてここにきてまた痛みが再発し、腰・ひざ・ももも痛くなり一ヶ月が経つ、ということであれば変形性股関節症が少しずつ進行しているということになります。この段階での治療は関節がどの程度いたんでいるか、によって異なります。関節軟骨が保たれ、骨頭の変形が軽度であれば骨盤骨きりなどの手術を行えば良好な成績が得られますし、関節変形が高度であれば別の方法(たとえば大腿骨外反骨切りなど)も考えます。
これらの手術によって子供が生めないということは考えられません。リハビリが激痛を伴うとも考えられません。
詳しいことは主治医に尋ねれのがよいでしょう。

ということでがんばって下さい。

御質問306

はじめまして。

もうすぐ11ヶ月になる娘のことで、相談します。
4ヶ月半の時、**病院で、左足の完全脱臼と診断され、リーメンビューゲルを装着してきました。8ヶ月から10ヶ月までは、夜間のみの装着で大丈夫と言われ、もうすぐ外せるのかと思っていたところ、昨日のレントゲン検査で、開排位では骨の位置は良いが、伸ばした時に亜脱臼の状態になる、と言われました。8ヶ月の時のレントゲン検査では、そのような事は言われませんでした。それで、これからまた、昼間もリーメンビューゲルを装着して下さい、と言われたのですが、ずりばいができるまで体が発達してきたのに、今さら昼間装着しようとしてもぐずるし、装着するのも大変です。このまま続けて、完治するなら無理してでも装着しますが、完治の見込みが無いなら、無理に装着せず、他の方法の方が良いのでしょうか?次の検診は、1ヶ月後なんですが、それまでこのままの状態でいて、手遅れになるような事には、ならないでしょうか?

以上、よろしくお願いします。

御返事

レントゲン検査で、開排位では骨の位置は良いが、伸ばした時に亜脱臼の状態になる、というのであれば骨頭が不安定であることを意味しています。このような状態を専門的には脱臼治療後の骨頭外扁化と呼んでいます。
治療にたいしては様々な意見があります。程度が軽ければそのまま様子をみますし、外扁化が進行するようであればなんらかの治療が必要になってきます。ただし、治療といっても今の段階でリーメンビューゲルは不可能です。

**からでしたらそれほど遠くなく、たくさんの患者さんが来院されます。もし御希望があれば診察いたします。

御質問297

はじめまして。**在住の**と申します。この度は私本人のことで質問させてください。私は現在32歳ですが、生まれた時先天性股関節脱臼でした。いまのところ目立った異常もなく過ごしておりますが、長い時間歩いたりすると右足の付け根(脱臼していたところ)がほんの少しですが痛みます。どの程度の痛みを感じたら、受診したほうが良いのでしょうか?10年ほど前、一度整形外科を受診した時には、股関節の隙間が通常より狭いと言われました。先日結婚したのですが、これから出産することがもしあるとすれば、何か心配することはありますでしょうか。また、日常生活で何か注意することなどがありますでしょうか。長く歩いたり、激しい運動などはしないほうがよいのでしょうか。アドバイス頂けますでしょうかどうぞよろしくお願いいたします。

御返事

すみやかに整形外科を受診すべきです。変形がひどくなければ骨きり術で対処できるからです。

日常生活での注意は、体重を減らすことです。歩行時股関節には体重の7倍の力がかかります。股関節の破壊が強くても、体重が軽いおかげで痛みを免れている人をたくさん見てきました。適切な栄養状態を維持することが前提条件ですが、その範囲内で可能な限りスリムな体型とすべきです。

もちろん長く歩いたり、激しい運動などはしないほうがよいです。翌日に痛みをもちこすことが無いようにすることも大切です。

御質問295

はじめまして。HPでの詳細で明解なご説明、誠にありがたく存じます。この度、貴HPを覗かせていただきましたのは、5ヶ月ほどになる双子の娘のうち片方(38週出産・一卵性・第2子・経膣分娩・複臀位あるいは全足位)に先天性股関節脱臼を疑っているあらであります。そしてそれに伴なっていくつか相談がございまして、こうしてメールを書かせて頂いております。手が空きましたときにでもご返事頂ければ幸いです。
現在私共はスウェーデンに在住しております。問題点はスウェーデンの小児医療システムに大きく関わっております故、まず簡単にそのシステムを説明させて頂きたいと思います。
子供は出生後最寄の診療所に登録され、一人の担当小児看護婦のもとで定期検診を受けます。医師の定期検診は基本的に2ヶ月、6ヶ月、10ヶ月に各一度づつあるのみです。もちろんこのときに股関節脱臼の検診も行われます。何か異常等を感じた場合はまず、担当小児科看護婦に相談し、検診後、必要であれば医師の予約をとり、医師の検診後、さらに必要であれば専門的な検査の予約をとる、ということになります。私の娘のケースは以下のような経過をたどっております。
9月*日(生後4ヶ月1週間)妻が娘の大腿のシワが非対称であることに気づく。
9月**日担当小児科看護婦による検診。彼女は恐らくは問題はないであろうという見解は示したもの、念のために臨時の小児科医の検診予約をとる。
9月**日(5ヶ月)小児科医による検診。触診では異常を認めなかったものの、うつ伏せの状態で臀部が非対称であることを指摘し、レントゲン検査の予約をとる。
10月*日(6ヶ月) レントゲン検査予定。
以上ご覧いただければわかりますように、非常にのんびりとした診察なのであります。
スウェーデンにおける先天性股関節脱臼に対する一般的見解がいかなるものなのかわからないのですが、貴HPを始めとして日本から得られる情報によれば、早期発見早期治療は定説であるように思われますし、特に6ヶ月以前の治療開始が望まれているように感じます。私共自身、こののんびりさ加減に不安を感じ、恐らくは却下されるだろうとは思いつつも、より早いレントゲン検査の可能性を尋ねてみようかと考えておりますが、実際治療は急務としてされるべきことなのでしょうか。また、診断がされるまでの間、抱き方やオムツ、衣服などに関して貴HPで指導されている点に配慮したいと思いますが、その他日常生活において、例えば車での長距離移動、ベビーカー、抱っこ紐、添い寝授乳等に関し、何か留意点などございましたらアドバイス頂ければ幸いと存じます。ちなみに、これらのことに関してこちらでも質問をしたのですが、抱き方やオムツ代えを含め、全く気にする点は無いとの回答を受けました。
もうひとつ質問なのですが、一卵性の双子ということで、もう一人の娘に関しても積極的に検査を受けるなどの対処を取ったほうがいいと思われますでしょうか。
忙しい中御手数ですが、よろしくお願いします。長文にて失礼いたしました。

御返事

メールありがとうございました。スウェーデンにおける小児医療システムの一端、興味深く拝見しました。

まず、出生の状況ですが、複殿位ということであれば脱臼の発生率は頭位とほぼ同じで、それほど多いものではありません。大腿の皺の非対称は決定的なものではなく、正常股関節でも皺の非対称のお子さんはたくさんおられます。ただ、臀部の非対称は気になります。

スウェーデンは脱臼の検診については有名で、かっては世界のモデルになっていました。スウェーデンにはラップ族という狩猟民族の脱臼発生率が高いことで有名です。その原因として、独特の赤ちゃんの育て方(下肢をぐるぐる巻きにして育てる)が原因といわれています。そのような事情が背景にあったと推測するのですが、この国では生まれてすぐに脱臼の検診をおこない、発見されればただちにフォンロ−ゼンスプリントという装具で治療をおこなっています。我が国の検診体制もスウェーデンのシステムから大きな影響を受けております。現在、産科併設の病院では生まれた直後に整形外科医がスウェーデン方式にのっとって検診をしているところがたくさんあります。

ということで、この国での検診体制の歴史を考えると、検診体制、検診の質については信頼してよいと考えます。もちろん信頼してよいといっても人間のすることですから完璧ということはありません。数年前にスウェーデンから発表された論文において、検診での脱臼見逃しの問題が論じられていたのを覚えています。

お子さまの場合は、10月**日(6ヶ月)レントゲン検査予定とのことですが、私はそれで良いと考えます。理由として第一に、この年齢であればどのような治療方法を選択しても2-3週の治療開始時期の差はあまり大きなものではありません。第二に、スウェーデンにおける脱臼の治療は、新生児時期からしばらくはフォンロ−ゼンスプリントを使用し、乳児期以後は徒手による整復をおこなうからです(ただし、これは1975年に発表されたスウェーデンからの論文を根拠にしておりますので、現在がどうであるかの確信はないのですが)。もし徒手整復であれば数週間の差は問題となりません。

さて、赤ちゃんの脱臼予防の為の下肢取り扱いの注意についてですが、実はこの脱臼予防運動というのは日本独特のものです。脱臼治療の先進国であるスウェーデンでもこうした注意は払われていないと思います。スウェーデンから発表されたどの論文にも脱臼予防に関する著述はこれまで読んだことがありません。
「脱臼予防のための方法」の本質は下肢の自由運動を妨げないということですが、これは脱臼しやすい赤ちゃん、あるいはタイプAIの軽度の亜脱臼に効果があるのであり、すでに脱臼している赤ちゃんには有効ではありません。すでに脱臼している場合には整復という操作が必要だからです。ただし、下肢の自由運動というのは赤ちゃんの自然な運動ですので脱臼の有無に関わらず守ってゆくべきと考えます。

先天性股関節脱臼は遺伝的な傾向がありますので、もし10月27日に脱臼ということが診断されればもう1卵生の他の娘さんも検診を受けるべきでしょう。

ということで、繰り返しますが現在の予定でよいと考えます。

10月**日の結果をお知らせ下さい。脱臼でないことを祈っております。

御質問294

こんにちは。突然のメールで申し訳ありませんが宜しくお願いします。 二人の女の子の母親です。私自身も30数年前に先天性股関節脱臼でした。二人の娘も左足先天性股関節脱臼と両足臼蓋形成不全です。実は、長女が今月末で4歳になります。生後3ヶ月目でリーメンをつけ一応脱臼はうまくおさまったということでしたが 臼蓋のできが悪く数ヶ月に一度の割合で病院で見てもらっています。特に、左の骨盤側の骨が生まれつきほんの少し欠けているようでそれも邪魔をして臼蓋が出来にくいようで、CE角はマイナスと言われています。3年間引越しの関係で1度病院を変えてますが臼蓋に関しては大きな変化はありません。手術の年齢が4〜5歳くらいにといわれていますが、まだ確定はしていませんが今月末に担当医から何かお話があると思います。今元気に走り回っている娘をみるとかわいそうで、でも早かったら小学校で痛みが出てくるとも言われています。最近は、おしりを地面につけない座り方(しゃがむともいうかも知れません)をすると付け根の部分が痛かったり、スイミングで屈伸運動の時に痛いと言うようになってきました。(本当かどうか疑うときもありますが)やはり、手術の方向で私たちも覚悟したほうがいいのでしょうか?先生はどう思われますか?
これだけの情報で先生のご意見を聞きたいと申しましてすいません。よろしくお願い 致します。

御返事

メールありがとうございました。お子さんが脱臼の既往があり、現在臼蓋のできが悪くCE角はマイナスということであればなんらかの対策をとらなくてはなりません。まず正確な診断が必要になってきます。たとえば臼蓋が悪い原因として亜脱臼が潜んでいないかどうか、大腿骨の形態に問題は無いかなどが重要です。これらに問題がありますと臼蓋の発育は思わしく無く、たとえ臼蓋の形成をおこなっても臼蓋の発達は抑制されるからです。この辺のことについては診察してみないとなんとも申し上げられません。

御質問283

初めてメールさせていただきます。大変充実したHPの内容に感謝いたします。私は***に住む7ヶ月半の女児の母親です。さて現在七ヶ月半の女児のことでご相談させてください。一昨日の7ヶ月検診で **病院にて右足がやや長いため股関節脱臼の疑いがあるとのことで同病院整形外科を受診するよう紹介されました。本日整形外科を受診いたしました。 鈴木先生のHPを拝見していたため、「できれば超音波での診断で御願したい」旨お伝えしたのですが、超音波では股関節脱臼はわからないから、レントゲンでなければ無理とのことでした。本日は触診のみにて帰宅いたしました。触診の範囲では開脚はいいのでそれほど心配することもないだろう、とのことです。

本日の医師によれば、

1。最近は脱臼はまれなため検診ではみつけにくい。ーーーーー

2。レントゲンをとって診察するしか方法がない。

3。心配であればオムツを二重にしておくように とのことでした。


家族歴は私自身股関節脱臼のため右足にギブスをつけ、ギブスをつけたため左足も脱臼してしまったとのことです。大変ひどい状態で、大学病院で担当教授が学生に「こんなひどい脱臼はなかなか見られないから良く診ておくよう」指導されていたとのことです。6歳違いの妹も股関節脱臼で装具をつけておりました。
私自身の体験もあるので検診時の医師にはよくみていただくようお願いしていたのですが・・・・・もう少し早く整形外科を訪ねることを考慮すべきであったと反省しております。
今回娘出産時に産科医師の望む仰向けでの開脚ができず、横向き姿勢で出産いたしました。また産後も何度か股関節痛に悩まされました。そのため娘にはできるだけ股関節の悩みを少なくしたいと考えております。
私は診断を得るためには何枚かのレントゲン写真をとることは仕方がないのではないかと考えておりますが、先生のHPにいたく感激した主人は、「こんなに良いやり方(超音波)があることがわかったのだからをとるべきではない。鈴木先生の考え方の治療のできる病院を探したほうが良い」と考えております。
本日帰宅後に****病院に問い合わせてみたのですが、股関節脱臼の診断はレントゲンで行っており、超音波での診察はないとのことでした。
ネットで股関節脱臼の超音波診察を行っている病院を検索したのですが、**地方にみつけることができませんでした。
大変恐れ入りますが
1。**地方に 股関節脱臼の超音波診断をしてくださる施設、また鈴木先生の提唱なさる治療法を取り入れている施設をご存知でしたら教えてください。
2。7ヶ月を超えて股関節脱臼と診断された場合には、装具をつけない方が良いのでしょうか?

たいしてひどくないらしい股関節脱臼のことでお忙しい先生をお煩わせするのを申し訳なく思うのですが以上よろしくお願いいたします。

御返事

メールありがとうございました。
御自身が脱臼であり現在不自由しておらるとのことで、娘さんについてはさぞ御心配のことと存じ上げます。
まず重要なことは正確な診断です。すでに7ヶ月ということですからすみやかに精密検査をおこない、脱臼の有無、そしてもし脱臼があるならばその重症度を正確に評価しなければなりません。
残念ながら**地方には超音波診断できる施設があまりありません。近いところでは**県にある**病院です。ここの**先生を指名して受診してください。親切に診ていただけるでしょう。
ここでもし完全脱臼と診断されたなら御連絡ください。病状に応じて治療施設を検討しましょう。

御質問281

はじめまして。2ヶ月半の息子のことで相談させていただきます。1ヶ月検診では何も指摘されませんでしたが、1ヵ月半のとき町の保健師さんによる訪問時に「少し足の開きが悪いがこの程度なら問題ないでしょう」と言われました。本来なら足を広げた時(M字にして)膝が床につくそうですが、息子はわずかにつきませんでした。オムツをゆるめにあてるように指導されそのようにしています。これまで特に気にしてはいませんでしたが先天性股関節脱臼は3,4ヶ月に発見されることが多いことを知り、今さらながら不安になりました。私は小児科の看護師をしており多くの乳児にも関わってきましたが、息子の足が特に開きにくいようにも感じません。足の長さや皺の数に左右差はみられず、その他の症状もないように思われます。そこで質問ですが、開排制限とはどの程度のことをいうのでしょうか。少しでも床に膝がつかないようなら異常の範囲に入るのでしょうか。4ヶ月検診までは1ヶ月半あるのでそれまで心配でなりません。小児科の看護師ながら無知であったことを恥じ、悔やむ日々です。お忙しいとは思いますが、お返事をお願い致します。

御返事

重要な御質問です。実は、股関節の開きの程度がどのくらいであると開排制限と診断するか、については学問的に定義がありません。個々の医師が自分なりの基準(多分に主観的)でものを言っているのが現実です。

私は、1)開排に左右差があること、2)左右差がなくても、60-70度以上開排できない場合、を精密検査の適応と考えています。

1)の開排の左右差は特に重要です。脱臼があればほとんどの場合左右差があります。両側脱臼の場合でも通常はどちらかがより開排制限が強くでてきます。
2)脱臼の場合、左右差の無いことは稀です。ただし、60-70度以上開排できない場合は念の為に詳しく診断します。このような場合には、脱臼以外の病気、たとえば筋肉疾患とか麻痺などの神経疾患が隠れていることがあるからです。

足の長さ、股関節開排、皺の数に左右差はみられず、その他の症状もない、そして全身状態も良好ということであれば問題ないように思われます。床に膝がつかない場合はいくらでもあり異常の範囲に入れません。御心配であれば3-4ヶ月の時点で整形外科、できれば小児整形外科を受診されれば安心と考えます。

御質問279

はじめまして。素晴らしいホ−ムペ−ジに心から感動しました。一人一人をとても大切にしている姿勢が手にとるようにわかりました。私は**市内で開業している脳神経外科医です。H.15.*月**日に生まれた孫について質問させてください。家族歴はありません。1歳7ヶ月になる姉が一人います。**病院にて出産、逆子で、出生時体重は3000gでした。新生児検診にて小児科の先生より、股関節の開排制限があり両側性の先天性股関節脱臼です、1ヵ月後の検診まで様子を見ましょう、と言われました。以下の点につき教えてください。
1.股関節の開排制限だけで診断がつくものでしょうか。70度位は開きますが、やや痛がるようです。
2.1ヶ月間、様子を見るだけでいいのでしょうか。
3.超音波診断はせず、1ヵ月後にレントゲンを撮る予定だそうです。そういうスケジュ−ルでいいものですか。
4.オムツを2枚重ねた方がいいといわれました。私は反対ですがどうでしょうか。
突然のメ−ルでのお願い、失礼とは思いますが何卒よろしくお願い申し上げます。

御返事


逆子というのが単(純)殿位ということであれば脱臼発生の確率は30%くらいです。

1。新生児期の診断は専門家ならば容易です。たとえば、クリックサイン(脱臼したり整復されたりする現象)、股関節不安定性(テレスコープサイン----触診で判明)、骨頭が本来の位置に触れない、などがあれば確定的です。もしほんとうに脱臼があってなおかつ70度以上開かない、ということであれば外れたままの状態であり、整復は簡単ではないことを示しています。

2。これについてはさまざまな意見があります。ヨーロッパでは早期に発見して早期治療が一般的ですが、我が国の専門家では3ヶ月以降に治療開始するのが一般的です。どちらも一長一短です。我が国では特に年輩の専門医は早期治療に強く反対する先生が多いです。幼弱な骨頭に障害が起こりやすいと考えている先生がたくさんおられるからです。私も医学的、社会的な様々な理由から現段階では3ヶ月以降に治療を開始するを立場をとっています。

3。できれば被爆を避けたいところです。超音波でしたらいますぐにでも臨床診断の確認のための確定診断ができます。願わくば画像診断は超音波を基本として、できるだけ被爆を減らしたいですが、レントゲンが主の施設が多いのが現状です。

4。おむつの2枚重ねは意味がありません。仮に脱臼しているとすれば本格的治療が必要なのであっておむつ2枚重ねで治療できるわけではありません。脱臼していないとすれば予防が必要ですが、それには自由な下肢運動が大切ですのでおむつはできるだけ薄く、が原則です。ということでおむつ2枚は意味がないと考えます。

もし、脱臼が判明しましたら御連絡ください。治療施設について検討が必要です。

御質問267

2ヶ月になるわが子のことで質問させてください。
1ヶ月を過ぎたころから、足をバタバタさせたり抱っこするときにポキポキと音が鳴るようになりました。左足を動かす時に鳴ることが多いような気がしたので股関節脱臼を疑い、専門医の先生に診てもらったところ「股関節脱臼の兆候はみられない」とのことでした。ポキポキするのも「そういうこともある」とのことだったのです
が、このままほっといてもよいのでしょうか?原因として可能性がある病名があったら教えてください。
背骨や脊椎を痛めてるのかなとも思うのですが、頻繁に鳴るので心配です。アドバイスお願いします。

御返事

乳児において股関節や膝関節がポキポキ鳴る、というのはよくあることです。どうしてポキポキと音をたてるのかはよくわかっていませんが、股関節脱臼が無いこと、膝の動く範囲に問題がなければ気にすることはありません。

御質問263

はじめまして。***と申します。***在住です。インターネットで検索して知りました。お忙しいとは思いますが、返事をいただければ幸いです。
現在4ヶ月半の娘がいます。左股関節脱臼のようです。4ヶ月検診で左足の開きが悪いと言われました。近所の整形外科に行き、触診・レントゲンの結果「脱臼」ということで**病院へ、レントゲンをもって受診。月齢のわりにひどいかもと言われました。ただ、低体重児で産まれ(38週6日・正常分娩です)現在約5,800gなので、2週間後にレントゲンとエコーで検査をし、治療方法を決めましょうと言われました。牽引入院の可能性が強いそうです。**病院の治療開始は6kgを目安としているそうです。
質問なのですが、
1. 治療開始は6kgを目安というのは先生のお考えはどうでしょうか。
2. 牽引入院することになっても牽引する機械が1つしかなく8月の終わりになるそうです。そうなると、もう6ヶ月半になってしまいます。治療開始が遅いなら病院を変えた方が良いのでしょうか。そうした方が良いなら病院を教えていただきたいです。
3. 身軽なせいか、3ヶ月半ぐらいから寝返りをします。脱臼している左を下にして横になって寝ている時もあります。これはやらないようにした方が良いのでしょうか。
4. 抱っこの仕方なのですが、おすわりのような抱っこ(自分も座って、モモの上に座らせる)はやっても良いのでしょうか


御返事

2週間後にレントゲンとエコーで検査をし、治療方法を決める、ということで良いと思います。
もちろん早く治療開始するのが良いのですが、いろいろな事情があってやむを得ないこともあります。
**病院の**先生はこの疾患の専門医であり、信頼のおける先生です。多少治療開始が遅れても**病院で治療すべきと考えます。

だっこのしかたはホームページの「脱臼の予防」を参考にしてください。

はやく治癒することを祈っております。

御質問259

こんにちは!初めてメールさせていただきます。**看護大学3年生の**といいます。実はすごく悩んでいることがあって、主治医の先生にも相談しにくくて、相談させてください。私は、右臼蓋形成不全があります。CE18度で臼蓋形成不全の程度としては、軽度のものと聞いています。しかし、看護師の学校のために、歩きすぎたときだけではなく、常に立って講義や演習があるために、痛みが股関節にでてしまい困っています。股関節の痛いのをかばって歩いたり、動いているので、膝に水がたまってしまったり、微熱が続いたりと、いまいち体調がすぐれません。特に今は梅雨の時期で、天気によって痛みが増したり、だるさから、歩けなくなってしまい、学校にも、あまりいけなくなってきています。それだけ痛いのなら鎮痛剤を飲めばいいのですが、アスピリン喘息のために、飲むことができません。喘息は中等度持続型らしく、薬は***です。NSAIDSはアスピリン喘息を発症するまでは飲んでいて、ある程度疼痛コントロールはできていたのですが、今は痛いときはもう何もできず学校にも行けずに、家で痛みのあまり嘔吐などを繰り返しながら、何とか耐えています。手術の対象となる程、重症ではないと聞いているのですが、手術で疼痛コントロールができるのなら、手術でもかまわないと思っています。主治医の先生はアスピリン喘息を発症するまでは、積極的に治療に取り組んでいてくれましたが、今は、疼痛に対して、何もしてあげられないと消極的になっています。でも私は3年生なので、後期の10月からは、看護の臨床実習が始まるので、この夏休みになんとか、疼痛コントロールをしたいと思っています。しないと実習に間に合わないのです。主治医は痛ければ休めばいいと言っていましたが、いつ痛くなるのかもわからないし、疼痛を緩和する方法を私が知らないので、セルフケアとして何ができるのかと悩んでいます。また臨床実習は、「できないのなら、はじめから行かせない」とも大学の先生から言われてしまい、ほかの友達と同じようにできないストレスでこのごろ少し感情が不安定かなとも感じています。今の私ができるセルフケアはどのようなものがあるのでしょうか?ーーーー。また、私の股関節は正常になるのでしょうか?整形外科疾患はほかにも、全身関節弛緩をはじめとし、両肩関節反復性脱臼でブリストのオペを受けましたし、両膝も、膝蓋骨脱臼で両膝オペを受けました。もう体力的にも精神的にも、耐えられる限界に来ていて、私自身どうしたら、いいのかわかりません。ーーーーー何か今私ができることがあったら、教えてください。お忙しい中、申し訳ありませんが、看護師になるのが夢だったので、簡単にあきらめたくないので、お願いします。

御返事

股関節の痛みやアスピリン喘息など、いろいろなことがあってお悩みのことと思います。
さて、まず重要なことは「看護師になるのが夢だったーーー」ということであり、今その夢に近づいているということです。あきらめてはいけません。だれでも形、内容は異なっても同じようなハードルはあるものです。堅い決意をもって前へ進んでください。場合によっては痛みなどを我慢することも必要ですし、そうした経験が将来役にたつでしょう。

さて、股関節痛ですが、軟骨変性、あるいは骨頭変形、関節の弛緩による亜脱臼等が合併していないかぎり CE角18度であれば通常はそれほど痛みは無いと思います。この辺のことは現在の主治医も考えているでしょうし、必要とあれば外科的方法も検討していると思います。ただ、「股関節の痛いのをかばって歩いたり、動いているので、膝に水がたまってしまったり、微熱が続いたーーー」というのは少し気になります。過去に膝や肩の手術をしていることもあわせ、自身の疾患については知っておくべきでしょう。この点は主治医に聞くべきと考えます。

小児整形外科医としてはこれくらいしかおこたえできないのが残念ですが未来を見つめてがんばってください。

御質問254

3歳の女児の両親です。手術法についてDr.の方針が分かれ、悩んでいます。ぜひご指導ください。
娘は、3ヶ月健診を小児科で行い、先股脱の見落としをされました。その後10ヶ月の健診でつかまり立ちを指摘されるも総合病院の小児科で「発達の遅れの疑い」との診断の為、3ヶ月の経過観察となり、左側先股脱と診察され、整形に回ったのは1歳過ぎでした。2ヶ月のOHT療法の後徒手整復を試みましたが入らず、観血的手術を受けました。その後は紹介を受けて地元の大学病院へ移って、1年間受診し、経過観察を続けています。現状は、1年の見落としがあった割には、骨は順調に育っているとの事ですが、股関節の中にまだ何かが挟まっているようで、骨頭と臼蓋の底からの距離があいています。(亜脱臼の状態との事)今年の受診の折、現主治医から5歳の頃ソルターの手術の説明を受けました。セカンドオピニオンを求め、市内の別の股関節専門の整形を受診したところ、現時点での大腿骨骨切り術を薦められました。整形Dr.は「正しい位置に大腿骨骨頭がない現状では、臼蓋は正しく成長しない。直ちに位置を直した方が良い。」というご指導を受け、その場では両親とも納得して帰ってきましたが、本などを読ませていただくと、幼きころの骨切り術はあまり積極的な選択でないように記述されていて、両親とも現在悩んでいます。その娘の状態もあると思いますが、子どものために、最終的に親としてどちらの方針を選択すべきか(他の選択肢も含めて)、今考えなくてはいけないこと、調べなくてはいけない事など、親としてすべきことについて、ご指導いただきたいと思います。最初の見落としを許してしまったという親の責任を感じながらこの2年、さまざまな事で悩み、本屋インターネットなどで素人なりに娘の将来の為調べてきましたが、行き止ってしまいました。インターネットで知り合った方から先生のページの紹介を受け、今回送らせていただきました。よろしくお願いいたします。

御返事

観血的手術後に『股関節の中にまだ何かが挟まっているようで、骨頭と臼蓋の底からの距離があいています。(亜脱臼の状態との事)』ということであれば、なんらかの手術が必要となってきます。
さて、二つの施設での方針の違いは昔から学会で論争となっていることを反映しています。すなわち、先天性股関節脱臼後の亜脱臼(学術用語を使えば、遺残性亜脱臼)にたいし大腿骨の手術を選択するのか、それともソルタ−手術などの骨盤の手術をおこなうか、という議論です。我が国でも30年前から学会での大きなテーマであり、いまだに完全に決着したとは言い難いのが現状です。

もともとこの二つの手術の目的は異なっています。大腿骨手術は、骨頭が臼蓋の正面に向いていない場合に行います。この場合、どのように骨頭の向きを変えても骨頭が臼蓋の正面に向かない場合には、再び観血的整復が必要となります。

一方、骨盤手術は臼蓋形成不全が許容範囲を超えている場合に行います。ただし、この場合、脱臼・亜脱臼が無いことが条件であり、脱臼・亜脱臼が存在している状況で骨盤の手術をおこなってもうまくゆきません。

実際のケースは、骨頭と臼蓋のどちらかに変形がある、というより、両者に変形、すなわち、骨頭の臼蓋への向きは完璧でなく、なおかつ臼蓋形成不全も同時に存在することも多いのです。この場合、どちらを選択するかについていろいろ意見がわかれるものと考えています。

おそらくお子さんも骨頭の向きと臼蓋形成不全の両者が同時に存在しているものと推測します。そこで、大腿骨と臼蓋のどちらに注目するか、などの理由から医師によって方針が異なってきているものと推測します。

今必要なことは、それぞれの変形の程度を正しく評価することです。どちらかの変形が強く、他方が許容範囲であれば変形の強い方を行いますが、両方の変形が強ければ両方の手術を同時に行う必要があると思います。

御質問250

はじめまして。4ヶ月の女の子の母です。質問にお答え頂きたいのでよろしくお願いいたします。先日4ヶ月健診で娘の右足に股関節開排制限があると指摘され市内の整形外科を受診しました。視診・触診・X線による診断の結果、幸いにも股関節脱臼はないとのことでした。ただ「足の開きが悪い(固い)のは確かなのでオムツを『厚く』当て、足が開いた状態にして過ごし、一週間後にまた診せにくるように」と言われました。4ヶ月だと骨頭が未発達なので・・というようなこともおっしゃっていました。指導の通り布オムツ5枚を半分に折ったもの(つまり断面は10枚分)を当て続けて現在3日目です。あと、頭がいつも左を向いてしまう癖があるのですがそのことも右足を緊張させる原因だ、というようなこともおっしゃっていました。
そこで質問です。
1、貴HPを拝見しますとオムツを厚くするのは良くないとありますが娘のような場合でも当てはまるのでしょうか。
2、骨頭が未発達、というのにオムツで動きを制限するのは意味があるのでしょうか。動かせた方が発達を促せるのでは、と素人判断ですが。
先生にわざわざお伺いするのもはばかられるような初歩的な質問で申し訳有りません。ご多忙中とは思いますがよろしくお願いいたします。

御返事

おむつなどしていない熱帯地域の民族では脱臼が少ない(皆無?)といわれています。脱臼予防という点だけを強調すれば、おむつなど無しにして下肢を自由に運動させるのがよいのです。しかしながら、私達は文明生活をしているのでやむなく赤ちゃんにおむつをしているわけです。そこで自由な下肢の運動を促すためにおむつを股だけに薄くする、というのがわが国における(世界に例のない)脱臼予防運動の本質です。

骨頭が未発達であればなおのこと自分自身の運動をうながさなくてはなりません。おむつがあつければ自由な運動ができません。ということでホームページを参考におむつは股だけに薄く、ということを実践してください。

股に厚いおむつをする、というのはこの脱臼予防運動の本質とは異なります。こうした誤った方法についてはこの脱臼予防運動を創始された石田先生も大変憂慮されていました。『下肢の伸展位での持続的強制をやめて自由な下肢の運動を促そう』、ということがいつのまにか、前半の『下肢の伸展位での持続的強制をやめて』という部分だけが強調されて誤って広がったものと思われます。これについては脱臼予防運動を担っていた私達にも責任があり、反省しているところです。学会においても私達を含めこの運動を進めてきた先生方は機会あるごとに誤りを指摘するのですが、ひとたび広まってしまった誤りを正すことは容易ではないのが現状です。

御質問247

ーーーーーーーーーー

診察を受けたときに主治医にセカンドオピニオンを受けたいので資料を貸してくださいとお願いしようかと思っています。
手術は先のばしにしていただいて、他の先生にお聞きしたいと。そうすればレントゲンやカルテなどもいただけるとどこかで聞いた覚えもありますが、どうなのでしょう?

ーーーーーーーー

長くかかる病気だとは思っていますのでなるべくなら今まで診ていただいた主治医はかえたくはないのですが、その手術が最良なのか、しなくても良い方法はないのか?を納得してから手術を受けるならば受けたいと思っています。

ーーーーーーーやっぱり手術が正解だったときに今の先生が今後も気持ちよく主治医として手術や診察をしてくださるかどうか?など心配ごとは尽きません。この辺は医師の方々のお考えはいかがなものでしょうか?

ーーーーーー

いろいろお聞きして申し訳ありません。どうぞよろしくお願いいたします。

御返事

今かかっている医師、病院との関係などについて、いろいろお悩みのことと思います。

まず、考え方ですが、患者本人の病気を治す為に最善のことをする、ということを基本的に考えるべきと思います。特に股関節疾患においてはその治療の結果が今後一生の生活様式に極めて大きな影響を与えます。お子さんの将来の為に今できる限りのことをしておく、というのが重要です。今日では、患者さんは最善の治療を受けるためにセカンドオピニオン、サードオピニオンを聞くというのは当然のこととであり、これからますますそのような傾向は強くなるでしょう。先日の学会でもそのような議論がなされました。

本センターに来られる患者さんは、ほとんどの場合わりきって考えておられます。直接いままでの主治医にお願いして紹介状を書いてもらっている場合もありますし、それがしにくい場合は、現在の病院の受け付けにレントゲンの貸し出しだけをお願いしている方もおられます。この場合、医療機関は拒否できないようになっています。誠実な医師であれば、このことで気を悪くすることはないでしょうし、小児整形外科を専門としておられない場合にはむしろ喜んで紹介状を書いてくださると思います。

セカンドオピニオンの結果、最終的に前の主治医の方針が正しく、あらためて前の主治医に手術をお願いすることになれば、喜んで引き受けてくれるでしょう。私達はセカンドオピニオンはこちらから積極的に勧めており、その結果、結局こちらでふたたび診療することになった場合は気を悪くするどころか喜んで治療させていただいています。これはどの医師でも同じだと思います。

これはお子さんの一生にかかわる問題です。勇気をもって行動されて良いと思います。

御質問244

骨頭の外偏化について知りたいのですが・・・。
外偏化というのはどういう状態を言うのでしょうか?詳しく知りたいのですが・・・
娘は左股関節脱臼・臼蓋形成不全で約5ヶ月程リ-メンを装着していました。最近歩きだしたのですが、骨頭の外偏化の事を知り心配になりました。先日、主治医の先生に歩き方の事で診察してもらった時、撮ったレントゲンを見て話しがあると言うんです。今までそんなふうに言われた事は無く、いつも順調ですと言われていたのですぐに何か良くないんだなと思いました。レントゲンに線がひいてあり説明を受けました。右の臼蓋もできが悪いと言うんです。今までそんな事を言われた事は1度もなかったので右も臼蓋形成不全だったのかと聞いた所そうではないと言うんです。意味が分からなくて・・・・レントゲンに引いた線の説明で、歩く時に体重が一番かかるところに骨がないらしくて(臼蓋ができていない?)1ヶ月半位前の診察ではそんな事はなにも言ってなかったのに・・・臼蓋のできが悪くなったのではなく、歩き始めたことにより骨頭が外側にずれてきたのでしょうか?
先生は再脱臼は絶対にないといいます。レントゲンをみて私が亜脱臼なのかと聞いたらそう言うのかなあ?なんて言ってましたが。これが外偏化なんじゃないのかなあと思うのですが・・・主治医の先生は経過を見ていくしかないといいます。今すぐ何かをするということもないそうです。4-5才になって臼蓋のできが悪ければ手術だそうです。難しくない手術だと言っていましたが、その手術をすれば外偏化も治るのでしょうか?
今まで一生懸命がんばってきたのにとてもショックを受けました。うちの娘の脱臼は中度くらいのものだったんじゃないかと思います。先生の病院ではその場合いきなりリ-メンでの治療ではないですよね?もし、先生の所での治療方法で治療した場合、骨頭の外偏化はおこらないのでしょうか?
外偏化はどのような治療方法をするのでしょうか?先生の病院と他の病院とは治療の方法が違うのでしょうか?せっかく歩けるようになったのに、ショックで・・・この先どのようにしていけば良いのでしょうか?お忙しいとは思いますがよろしくお願いします。

御返事

骨頭の外偏化とは、脱臼が整復されその後装具で整復が維持されていたにもかかわらず、歩行開始した時などにそれまで整復位にあった骨頭が、外に移動してしまう現象です。しかしながら、多くの場合、立位では外方に移動するのですが、臥位にして股関節を開く状態にすると本来の位置に戻ります。ここが再脱臼とは異なる点です。再脱臼の場合は股関節を開いても簡単に元にもどることはありません。

骨頭の外偏化は脱臼(特にタイプB脱臼)をリ−メンビューゲルで整復した場合にしばしばみられる現象で、リ−メンビューゲルが我が国に導入されてからしばらくして大きな問題となり学会でも活発な議論が繰り広げられました。整復後に長期にわたって股を開いた状態にしていたために外転筋の筋力低下がおこっているのが原因と考えている人がおおいようです。私もその意見に賛成ですが、それだけではなく、股関節の関節包の緩みが持続していることも外偏化の原因と考えています。

というのは、タイプB脱臼をリ−メンビューゲルで整復してそのまま装着を続けますと、股関節を赤ちゃんが自分で内転位(股を閉じること)にした時に骨頭はさまざまな程度に臼蓋後方にずれるからです。リ−メンビューゲルを装着した状態でこれ(後方にずれること)を繰り返していると、関節包の緩みは改善されません。

一方、開排位持続牽引整復法を行うとこの外偏化が極めて少ないのです(まったくないわけではないのですが、あっても軽度です)。その理由は、開排位持続牽引整復法ですと、整復後にギブスを装着しますので、その間に弛んでいた関節包も骨頭の位置に合わせて適切な緊張を得ていくのだと解釈しています。

さて、今後の方針ですが、軽度の骨頭の外偏化であればそのまま様子を見ます。多くの場合、自然に正しい位置にもどってゆきます。しかし、程度が強かったり、進行性であれば外転装具を装着するというのが一般的な方針かとおもいます。外偏化が強かった場合には、臼蓋の発育が抑制される傾向があります。その場合には、5才前後に手術的な治療が適応となるでしょう。

御質問239

はじめまして。突然のメールをお許しください。**ヶ月の娘の事でとても悩んでいるとき、人づてに先生の事を聞き、失礼をも省みず、こうしてメールを送らせていただくしだいです。
娘は生まれた時、片目があきにくく、後でがんけんかすいという病気だとわかりました。4ヶ月検診のとき、左足がかたいといわれて、整形外科を受診しレントゲンをとると、両足のかなりひどい脱臼ですといわれました。
**センターを紹介され、そこですぐにレントゲンをとり、大たい骨が骨盤の後ろにくっついている、かなりひどい、完全に脱臼しているということを聞き、リーメンビューゲルをつけました。
かなり泣くかもといわれていましたが、あまり泣かず、おむつかぶれがよくなったぐらいで、脱臼はよくならず(途中で1度ベルトを緩めましたが)はずしました。
わたしは、もっとリーメンビューゲルを長くつけたらと思いましたが、麻酔なしの状態でですが手で整復しても直らず、こういうケースはこのままリーメンビューゲルをしても入らない可能性が高いといわれあきらめました。
その時、牽引でも難しいかもしれないが、この先牽引するか手術するか、それともなにもしないかの選択肢があるとのことでした。主治医は、がんけんかすいもあるので筋ジスや筋無力症を疑い、麻酔したときの事故を心配し、なにもしないという選択肢も示したようです。
検査をしましたが、筋肉が壊れるときに出る酵素も異常なく遺伝子も異常なく発達からみても大丈夫ではとのことでした。
父親は、主治医から牽引のリスク(骨とうを傷つける恐れ)を聞き、手術しようというのですが、わたしは、できるだけのことをしてやらなくていいのかと悩んでいます。

先生にお聞きしたいのは、

1、牽引のリスクは高いものなのなのか(オーバーヘッド法)
2、手術で完全に直るのか
3、先生のやっていらっしゃる牽引法を**の近くでやっているところが ないか
4、がんけんかすいなどが合併している場合、筋肉の病気がかんがえられるのか。また、そのとき全身麻酔の危険性があるのか

ということです。長くなりもうしわけありません。
夫婦二人ではなしてもらちがあかず、もっとよく主治医の先生とお話したいのですが、最近長くお休みされていて、直接お話できません。
どうかよろしくお願いします。

御返事

**ヶ月の娘さんが高位脱臼とのことでさぞ御心配のことと存じ上げます。
まず、診断が重要です。こういう場合には基礎疾患、たとえば筋肉疾患のようなものが無いか確認することが重要です。その結果によっては治療方法が全くことなる場合があります。小児科を受診しておられるようですので心配ないと思いますが。

ここでは、そうした基礎疾患が無い、という前提でお話します。

高位脱臼で、大たい骨が骨盤の後ろにくっついているとするならば、おそらくタイプCの高度な脱臼と推測されます。リーメンビューゲルで整復されることは無いと思いますし、長期に装着するとかえって次ぎの治療が困難になります。すでにはずしておられるのは正解です。
さて、次ぎの手を考えなくてはなりません。

1。オーバーヘッド法は、骨頭壊死などの合併症は手術等に比べはるかに低いと思います。1つの選択枝です。
2。手術は最後の手段です。これは合併症の発生率は高く、ごく最近の報告でも良好な結果は75%しかありません。
3。開排位持続牽引整復方法は**県でおこなっているところは無いと思います。
4。筋肉疾患などがある場合には、通常よりは全身麻酔による合併症(悪性過高熱など)が高くなります。ただし、このような筋肉疾患がある場合でも開排位持続牽引整復方法をまず最初に試みる価値はあります。何例かで成功しているからです。

ということでがんばってください。

御質問236

初めて質問をさせていただきます。
1歳1ヶ月の娘は生まれた病院ですぐに股関節脱臼の可能性があると言われていました。その時は様子を見ましょうと言うことで実際に整形外科での検査を受けたのは3ヶ月の時でした。結果、左の股関節脱臼と臼蓋形成不全で、リーメンビューゲルによる治療を開始しました。3ヶ月装着し、1ヶ月休、その後また1ヶ月リーメンを装着しましたが整復しませんでした。その時のレントゲンは私が見ても解る程左の臼蓋と骨頭は離れていました。

MRIの検査で臼蓋と骨頭の間に邪魔な組織が入り込んでしまっているとのことで1歳直前に手術を受けました。その後ギブスを2ヶ月着け今日ブカブカ装具に替わりました。このままいい方向に向かってくれるのならいいのですが、レントゲンの結果が思わしくないようで心配です。今日のレントゲンの結果では左の骨頭が臼蓋に近づきすぎている、外れかかっているのかも知れないと言われました。
私の目には正常な右足に比べ食い込んでいるかのような印象を受けました。また、ゼンネンカク(前捻角?)が強いとも言われ、更に外転しているとのことです。うまくいかなければ骨切り手術が必要になるかもしれないと言われかなりショックを受けています。
リーメンの時も長々と装着し辛い思いをしたのが無駄だったのかと悲しく思ったのですが、今回の手術、入院ギブスの日々もまた意味の無いものだとしたら耐えられません。このままブカブカ装具を着け時期がきたら外し、子どもの骨の成長を待つということで本当に良いのでしょうか?他にするべきことは出来ることは、無いのでしょうか。
アドバイスをいただければ幸いです。

御返事

リーメンビューゲル数カ月を2回、そして最後に手術的整復を受けるも順調ではない、ということを伺いました。リーメン治療がうまくゆかなかったと知った時の悲しみ。手術前の祈るような思いと、そしてその後順調でないことを告げられたときの苦しみ。今はこれからどうなるのだろうか、という不安にどれほどお悩みのことかお察し申し上げます。また、子供病院でない施設に入院されていたということで、大人に囲まれ、お子さんや御家族にとっていろいろな戸惑いや不都合なことがあったのではないかと推察いたします。

さて、これからどうするかを冷静に論理的に考えなくてはなりません。「レントゲンの結果では左の骨頭が臼蓋に近づきすぎている、外れかかっているのかも知れないと言われました。私の目には正常な右足に比べ食い込んでいるかのような印象ーーーー」ということであれば、再脱臼の可能性があります。

もし再脱臼しているのであればなんらかの方法で再度整復をしなければなりません。この場合、どうして再脱臼したのかを分析することが重要です。これが明らかにされないまま同じように手術をおこなっても必ず失敗するからです。

再脱臼の原因として、関節に関する骨の問題(大腿骨の過度の前捻或は外反、極端な臼蓋形成不全、その他)と骨以外の問題(靱帯、関節唇、関節包、そして筋肉の拘縮など)に分けて分析する必要があります。先天性股関節脱臼は複合変形であって、ほとんどの場合、これらの種々の整復阻害因子がいくつも存在し、相互に働いて整復を困難にしています。したがって、単に臼蓋の中につまっている組織を除去して骨頭を臼蓋の中にいれるだけではなく、同時に大腿骨や臼蓋の手術をおこなうこともあります。

これまでお子さんと同じような例を何人か紹介を受け治療してまいりました。成長過程で数回の追加手術を要することもありますが、全例再脱臼を起こすこと無く順調に経過しています。中には、2回も同じ整復手術を受けてやはり脱臼してしまい、万策尽きて紹介され来院されたお子さんもいます。こうした例を詳しく分析すると再脱臼を起こさせる因子が複数あることがわかっています。整復の際にはそれら整復阻害因子をすべて取り除く必要があります。極めて高度な専門的治療が必要になってきます。

御質問229

3ヶ月になる男の子ですが、母親の私自身が股関節脱臼、臼蓋形成不全のためリーメンビューゲルをしており、遺伝もあるかと思い先日出産した**病院でレントゲンを撮りました。脱臼はなく、開排制限もないが、左の股関節はポキッと音がするのと、左の骨盤のほうが少し歪んでいるかも?ということで、4ヶ月になればもう一度レントゲンを。と言われました。
足のしわや、長さ、動きに関しましては問題なさそうなのですが。

4ヶ月まで待ってもよいとはおもうのですが、私の場合は発見が遅くいろいろ苦労したので、少しでも早く...と、あせってしまいます。
ーーーーー、早いほうがよいのか、1ヶ月待っていてもよいのか決めかねています。
アドバイスありましたらよろしくお願いいたします。

御返事

信頼できる整形外科医師であれば3ヶ月時点でのレントゲン診断は確実と思います。
4ヶ月での診断でも遅く有りません。


御質問227

はじめまして。子育てネットの仲間からこちらのホームページを知り投稿させてもらいます。 現在7ヶ月の女児についてですが、先日、6・7ヶ月検診で「股関節脱臼ではないんだけど股関節の開きがかたいね。力が入りすぎているだけかもしれないけどね。2ヶ月間、今して いるオムツの上にもう一枚オムツをつけて様子をみましょう。変わらないようなら、レントゲンを撮ってみましょう。」と言われました。娘は正常分娩で今までの検診で異常を指摘され たことは一度もありませんでした。だから股関節のことも気に留めたことがなく、今回初めてこのようなことを言われて非常に心配です。病院から家に帰ってもう一度関節を開いてみ ると確かに開く途中でグッと止まります。娘が寝ている時してみると、やわらかくスムーズに開きました。これは、起きているときはただ力がはいっているだけということをあらわしているのでしょうか?それとも、股関節に何か異常があるのでしょうか?

説明が上手にできないのですが、記載内容から考えられることをどうか教えて下さい。

御返事

股関節は曖昧さを許さない関節です。股の開きが悪い、という場合はなんらかの異常が潜んでいないか調べる必要があります。関節を開いてみると開く途中でグッと止まり、寝ている時してみると、やわらかくスムーズに開いた、ということであれば2つの場合が考えられます。

1。脱臼はないけれど股関節の拘縮がある場合。この場合、もし3-5ヶ月の赤ちゃんであれば臼蓋の状態などを診断し治療方針を決め
ますが、現在7ヶ月ということですから(様々な理由から)たとえ臼蓋形成不全があっても1才過ぎまで様子を見るのが妥当と思います。

2。脱臼がある場合。目覚めているときは内転筋の緊張による内転拘縮のために脱臼位のままであるが、寝た状態では緊張が緩み、股関節も容易に開き、その開く瞬間に脱臼した骨頭が臼蓋の中に入る場合。この場合、注意深く観察すると、股を開かせてゆくと、ある程度開いたときにわずかな抵抗があって、それを過ぎると瞬間的にパッと開く、という感じです。この場合にコクッという音、あるいは感触を触知するかもしれません。

2。の場合には、本格的な専門治療が必要です。
早急に精密検査が必要と考えます。超音波断層像で診断は簡単ですが、レントゲンでもこの年齢になれば診断容易です。今の主治医にすみやかに診断を依頼してください。

2。でないことを祈っております。
検査結果を御連絡下さい。

御質問226

**市に在住しております、9ヶ月になる女の子の親です。育児のカウンセラーの方に相談し、ホームページを拝見しました。かねてから不安に思うところがありメールさせていただきました。心配な順に3点が質問させていただきたい内容です。
@レントゲン撮影(保護シート無し)の回数の多さに非常に不安と疑問がある
A紙オムツ+布オムツというあてかたはよいのか
B適切な治療を受けたいがまずどうすればよいか

メールに目を通していただきなにかアドバイスをいただけたら幸いです。娘は、生後2ヶ月から股関節脱臼の疑いありとして治療しているところです。今までの経過を簡単に書いてみます。

2ヶ月児検診にて受診をすすめられ整形外科を受診レントゲン撮影1。オムツのあて方(布オムツを足を開くようにあてる) にて経過をみる。  
2週間後レントゲン撮影2。しばらくオムツをあてて経過をみるが臼蓋形成不全と診断されるリーメンビューゲル装着
9月下旬レントゲン撮影3 経過をみる
10月下旬レントゲン撮影4 レントゲンの影響を心配していることを医師に伝えるリーメンビューゲルを外す
11月 触診 足を開くように布オムツをあてて経過をみる
12月 レントゲン撮影5
1月 触診 だいぶ開くようになったといわれる
2月 レントゲン撮影6 1ヶ月後にレントゲン撮影に来るように言われる
仰向けになった時は、両方の足は自由に曲げ伸ばししよく動きます。足を広げて寝ますが、右足の膝が左足と比べ少し床から離れています。現在は、ずりばいをしています。ほとんどの場合、左足で前に進みます。ご質問されている方のメールを読ませていただきましたが、あまりにもほとんど知らないことばかりで、これではいけないと思いました。せめて、レントゲン撮影の回数が減らせ、内容をよくわかって治療を受けられるようになりたいのですが。どうか、よろしくお願い致します。


御返事

超音波診断装置の無い施設であれば、脱臼の治療過程において脱臼の整復の有無を確認する為にレントゲンを瀕回に撮影しなければならない場合があると思います。これまで撮影したことについては後悔しても意味がありません。これからX線被爆を最小限にするにはどうしたらよいか考えましょう。

御心配なこと、疑問に思う事は率直に主治医に尋ねるべきです。脱臼の重症度はどうであるのか、リ−メンビュ−ゲルによる治療経過はどうだったのか、そしてレントゲンはどのように変化しているのか、そしてなぜレントゲンを瀕回に撮影しなければならないのか、そのような心配ごとを率直に尋ねてみるのが良いと思います。
それに対し誠実なそして納得のゆく説明があればそのまま治療を続けて良いと思います。

おむつの当て方についてはこれまでの御質問の御返事をお読み下さい。

御質問225

先日、生後4ヶ月の娘が検診で「股関節脱臼の疑いがある」と診断され、調べていましたらこのホームページにたどり着きました。
とても細かな説明で、手元の育児書じゃわからない事も書かれてあり大変参考になります。
ところで、検診で一応、病院を紹介されているのですが、紹介病院は**病院です。こちらの整形外科が超音波で診断してくれるのか、わかりません。いろいろ病院はあると思うのですが、ひとりめの子供で情報も少なくよくわからないのです。出産時、ちょっと難産で出産開始から7時間半もかかってこの子を産みました。(その間産道にいました)
出産病院では入院期間の5日間、そして一ヶ月検診でも異常なしということでした。私は右足の動きが、左より悪いと感じていて、一ヶ月検診で聞いたのですがなにも言われなかったです。3、4ヶ月より1ヶ月で気づいていれば、もっと治療がラクになったということはありえますか?私は3〜4歳の頃、股関節亜脱臼という診断をされたそうです。遺伝と出産の困難、両方の原因があるかもしれませんが、現在すでに、両足をそろえると長さが違います。両足のしわの位置も違います。右足は開いて床にひざをつけることができません。
娘の詳しい検査は来月*日の予定ですがレントゲンをたくさんとられてしまうのか、心配でなりません。
どうか、近くで股関節脱臼にくわしい病院がありましたら、教えていただけないでしょうか。
どうか、よろしくおねがいします。

これからも、どうか子供を持つ親たちを助けてくださる、このホームページを続けてくださいね。
とっても、救いになります。お願いいたします。

御返事

重要なことは出生前の赤ちゃんのお腹の中での姿勢です。股関節脱臼と難産との関係についてはいろいろ意見がありますが、科学的には立証されていません。私の臨床経験からは難産と脱臼は無関係と考えています。
下肢長差や、大腿のしわの位置の違いは股関節の拘縮(動きが悪いこと)、その他様々な要因で発生しますので、ただちに脱臼とは結びつきません。
脱臼治療開始はいろいろな意味で3-4ヶ月が適当です。あせることはまったくありません。

ということで、予定通りの検査を受けて良いと思います。そこでの結果が治療を要するということであれば再度御連絡下さい。

御質問222

初めまして。突然のメール失礼致します。先生のホームページを拝見させていただき、股関節脱臼について全く無知だった私ですが大変勉強になりました。
私の娘は現在1歳*ヶ月です。1ヶ月前に左足完全脱臼と診断され、今**病院に通院中です。そこでの先生の治療方針はリーメンビューケル・牽引・徒手整復・手術の順に試して出来るだけ手術をしない方向でとの事です。股関節脱臼の場合その順に治療を試みるのが一般的だそうです。今現在リーメンビューゲル3週目です。娘の左足は脱臼したままで変化なしの状態です。じっとしている事が出来ずハイハイしたり立ち上がろうとしたりが現状況です。先生のホームページにて完全脱臼の際の骨頭壊死の可能性など書かれていましたし、娘は歩き出していたので、1歳過ぎてからの、この治療法に意味があるのか大変不安になっています。娘はこの足と一生付き合っていかなくてはならないのですから、最善の方法で確実に治してあげたいと思っています。遅すぎる発見だったので時間が限られているのではないか、それも心配です。
先生もホームページでおっしゃられていたように、うちの娘も定期健診の際産婦人科でも他3軒の小児科でも異常なしと言われ問題なくここまで来てしまいました。4ヶ月で「右足の動きに比べ左足の動きが悪い」と言ったときも単なる癖だと言われつい先日歩き方の異常が気になり小児科を診察した時も「歩いているからだいじょうぶだよ」と笑われてしまいました。今まで発見されなかったのは運が悪かったのかもしれませんがショックが大きいです。
大変お忙しいとは思いますが、お返事いただけますでしょうか。お待ちしています。

御返事

定期健診でも他3軒の小児科でも異常なしということで残念な思いをされていると存じます。このように見逃された脱臼例は最近大都市を中心に増加しています。本センターにおいて、1才過ぎの完全脱臼は昨年度だけでに7人の治療をおこないました(全例順調に整復されています)。これからますます増えてゆくと思われ、深刻な問題と思っています。

1才すぎにおける股関節完全脱臼はリーメンビューゲルで整復されることは稀ですし、しかもすでに3週経過して整復されていないということであれば、もう装着している意味がありません。次ぎの治療を困難にするばかりです。
この段階からの治療はむずかしく、 徒手整復・手術にしてもいくつもの配慮すべきことがらがあり、これらが専門的におこなわれてもなお重篤な合併症が発生しているのが現状です。

股関節はいうまでもなく、人類の移動にとってもっとも重要な関節で、他の関節と違って、いささかの曖昧さも許されません。超専門治療が必要です。

御質問221

突然のメールで失礼致します。
貴院のHP大変勉強になりました。自分でも少々心配し過ぎとも思いますが、不安が残っているため質問させて下さい。

2/*に正常分娩・3200gで生まれた男児ですが、2/12退院の前に看護婦さんに「足がかたいので念のため整形外科で診てもらいましょう」と言われ、診察を受けました。
足を曲げたり、開いたり、伸ばしたりの触診のみのレントゲンなしで「おそらく脱臼はないでしょう。でも念のため1ヶ月後また見せてください。そのときレントゲンをとりましょう。」と言われ、次にいくつかの注意事項を教えてもらいました。その注意事項が
1.横抱きはせず、縦に抱き足が自由に動くようにする。
2.おむつを2枚重ね、足が開くようにする。 です。
この注意事項2が先生がHP上でおっしゃっていることと相違があり、また診察でも見落としがあるということが重なり心配になっての質問です。診察時には予備知識がほとんどなく質問もできませんでした。

1.担当医の指示は紙おむつの上に布おむつをするようにとのことですが、実際やってみると素人目にですが、それほど下肢の運動を制限しているようには見えません。また無理やり開かされているようにも見えません。おむつの2枚重ねと下肢の自由な運動は両立しないものなのでしょうか?

2.そもそもおむつの2枚重ねを指示する人はどのような効果を狙っているのか(または何を懸念しているのか)、自然の動きを妨げない状態にした場合、2枚おむつを指示する人が懸念することは起こらないのか?(または期待した効果がでないことによるデメリットはないのか)

3.下肢の自由な動きを制限する衣服とはどのようなものでしょうか?現在、おむつの上から、赤ちゃん用の服を着せており、足はそれにより覆われています(きつく固定されたものではなく、その服の中で足は動かせると思います)が、それも良くないのでしょうか?
「先天性股関節脱臼の予防」のページに「やってはいけない。下肢の運動ができない。」という例で2枚の写真がありますが、左側の写真はどういう状態なのでしょうか?現在わが子もおむつの上から上下つながったような服を着て足を覆っています(その中で足は自由に動かせる)が、そのような状態でしょうか?

4.一ヶ月後に再度診察と言われていますが、1ヶ月間で事態が悪化したり、手遅れになったりすることはないのでしょうか?また他にこの一ヶ月間で注意することはありますか?一ヶ月後にやはり脱臼してましたと言われたらそれはしょうがないことなのでしょうか?

5.もし脱臼もなく正常だと言われたら、そもそも足がかたい、開きが悪いということはなぜ起こるのでしょうか?問題ないと言われても、見落としではないかと疑いたくなりますが、最終的には何を信じればよいのでしょうか?(レントゲンを診た上での診断であれば間違いはないのでしょうか?)また本当に問題ないとして、その後足がかたい、開きが悪いということは何か影響があるのでしょうか?

6.HP上の質問や御返事の中にレントゲン、エコー、超音波、MRIと出てきますが、それぞれの違い、最も診断に際し有効なもの、子への影響等について教えて下さい。

ーーーーーー

以上、状況の説明不足、質問の趣旨が不明等、回答しづらいこともあると思いますが、何卒ご回答の方よろしくお願い致します。
このHPは先天性股関節脱臼と診断された方、またはその疑いがあると言われた方の大きな励みになると思います。
これからもどうか続けて下さい。
     

御返事

メールありがとうございました。
御心配の原因は、我が国における脱臼予防運動(世界に例をみない優れたもの)がまだ一部に誤解されたままであること、によるものと思います。

ホームページに載せたように、先天性股関節脱臼の原因はいくつかあります。中でも重要なものの1つは、「生後に下肢を伸ばした状態を持続させると脱臼が起こりやすい」ということで、これは、臨床的にも動物実験からも判明していることです。このことから、脱臼予防運動は、「生後に下肢を伸ばした状態を持続させるのではなく、赤ちゃんの下肢の曲げたり伸ばしたりする自由な運動を妨げないようにしよう」ということをモットー(予防運動の根幹)に始ったものです。しかしながら、「下肢を伸ばした状態を持続させることが悪い」ということを強調するあまり、「下肢を曲げたままの状態にしておくのが良い」という誤解が生まれてしまいました。
予防運動の先駆者は、こうした誤解を解くために「赤ちゃんは下肢を曲げることもまた同時に伸ばすこともするのだ」ということをアピールしてきました。熱帯地域で赤ちゃんを裸で育てている民族では脱臼が少ないのです。それは赤ちゃんが裸なので下肢を曲げることも伸ばすこともできるからと考えられているのです。私も脱臼予防運動に参加していた者の1人として機会あるごとに誤りをただす努力をしてきましたが、残念ながら、ひとたび生まれた誤解はどんどん広まってしまい、いまだに多くの地域で誤った予防運動が実践されているのが現状です。下肢を曲げた状態にしておく、ということに害がなければよいのですが、現実には少数の例ですが、このことによる合併症が発生していることに問題があるのです。これらの点についてはホームページをお読み下さい。

質問にお答えいたします。

1.担当医の指示は紙おむつの上に布おむつをするようにとのことですが、実際やってみると素人目にですが、それほど下肢の運動を制限しているようには見えません。また無理やり開かされているようにも見えません。おむつの2枚重ねと下肢の自由な運動は両立しないものなのでしょうか?
2.そもそもおむつの2枚重ねを指示する人はどのような効果を狙っているのか(または何を懸念しているのか)、自然の動きを妨げない状態にした場合、2枚おむつを指示する人が懸念することは起こらないのか?(または期待した効果がでないことによるデメリットはないのか)

2枚重ねは予防運動の本質とは異なる概念(下肢をできるだけ開いた状態にしておきたい)というものからでたものです。おむつはできるだけ薄くして自由な運動を妨げないようにする、という立場で実践してください。

3.下肢の自由な動きを制限する衣服とはどのようなものでしょうか?現在、おむつの上から、赤ちゃん用の服を着せており、足はそれにより覆われています(きつく固定されたものではなく、その服の中で足は動かせると思います)が、それも良くないのでしょうか?
「先天性股関節脱臼の予防」のページに「やってはいけない。下肢の運動ができない。」という例で2枚の写真がありますが、左側の写真はどういう状態なのでしょうか?現在わが子もおむつの上から上下つながったような服を着て足を覆っています(その中で足は自由に動かせる)が、そのような状態でしょうか?

左側の写真は我が国で30年以上前までおこなわれていた巻きおしめの例です。これを使うと、下肢を充分に曲げることができません。衣服は、赤ちゃんが自分で下肢を充分に曲げ、また充分に伸ばすことができるというのであればどのようなでも良いと思います。

4.一ヶ月後に再度診察と言われていますが、1ヶ月間で事態が悪化したり、手遅れになったりすることはないのでしょうか?また他にこの一ヶ月間で注意することはありますか?一ヶ月後にやはり脱臼してましたと言われたらそれはしょうがないことなのでしょうか?

まれですが、悪化することがあります。これは上に述べた下肢の扱いが悪かったり、或は、遺伝とか、ホルモンとか、その他未知の原因が強く働いている場合です。その場合には、悪化が明らかになった段階で本格的治療を開始します。

5.もし脱臼もなく正常だと言われたら、そもそも足がかたい、開きが悪いということはなぜ起こるのでしょうか?問題ないと言われても、見落としではないかと疑いたくなりますが、最終的には何を信じればよいのでしょうか?(レントゲンを診た上での診断であれば間違いはないのでしょうか?)また本当に問題ないとして、その後足がかたい、開きが悪いということは何か影響があるのでしょうか?
6.HP上の質問や御返事の中にレントゲン、エコー、超音波、MRIと出てきますが、それぞれの違い、最も診断に際し有効なもの、子への影響等について教えて下さい。

いろいろな場合があります。開きが悪いだけで脱臼はないことがあります。その場合、経過とともに開きがよくなっていけば(およそ2-3ヶ月かかる)問題ありません。しかし、開きがよくならない、あるいはむしろ悪化してゆく場合は要注意です。脱臼が悪化していることもありますし、麻痺や筋疾患も疑わねばなりません。
脱臼の診断は医師を信頼するしかありません。診断で重要なことは、赤ちゃんの視診、触診です。レントゲンや超音波だけを頼りにする医師が増えているようですが由々しき傾向です。

御質問211

はじめまして。10才になる娘のことでご相談いたします。生後6ヶ月で先天性股関節脱臼とわかり、それから6ヶ月間リーメンビューゲルを装着していました。脱臼は治りましたが、骨頭の発育が良くないということでした。その後、**病院で臼蓋形成不全と言われ、半年から一年毎にレントゲンを撮り 様子を見てきました。角度はいつも30度ちょっとで(右32〜35、左28〜32)体の成長と共に良くなりそうな兆候はありません。就学前に手術の話がありましたが、その時は心臓のほうの手術を優先させました。初めて歩いたのは2才になってからですが、ひざをの伸ばしたままよたよたと頼りない歩き方でした。小学4年生になった今でも運動面でかなり遅れています。これはやはり臼蓋形成不全のせいなのでしょうか。手術をすれば少しは改善されるのでしょうか。手術のメリットが望める年齢(うちの子は身長118cm、体重19kgで7才ぐらいの体格です)の限界に近づいているので、先生から「どうしましょうか?」と言われています。あくまでも予防的手術なので、手術をする、しないは親の判断に任されています。手術方法は詳しい検査をしてから決めますが、おそらく骨盤骨切り手術になるでしょう、ということです。このままだと将来痛みが出る確率は7〜8割で、手術をしておけば それが2〜3割になるだろう、と言われ、とても迷っています。他の先生にも診ていただきたいと思っていたところ、このHPをみつけました。お忙しいところ誠に恐縮ではありますが、どうか良きアドバイスをお願いいたします。

御返事

骨頭の発育が良くない、というのは先天性疾患(たとえば骨端異形成症等)、ペルテス病の合併、もしくはリーメンビューゲル治療による骨頭壊死と推測されます。いずれにせよ、**病院で骨盤骨きりを勧められたというのであれば、たとえ骨頭の発育が良くなくても骨頭変形は少ない、ということだと思います。言い換えれば臼蓋形成不全を改善すれば、安定した股関節を形成できる条件を整えていることを意味します。

**病院整形外科は信頼できます。実際に診察していないので断定的なことは言えませんが、「将来痛みが出る確率は7〜8割で、手術をしておけばそれが2〜3割になるだろう」ということであれば手術を受けるべきと考えます。

御質問204

 はじめまして。いきなりメールを送る失礼をお許しください。
 もうすぐ5ヶ月になる娘のことです。娘は7月**日に頭位正常分娩で生まれました。特にそのときや、一ヶ月検診の時は何の指摘もされず経過しました。そして先月の4ヶ月検診の際右股関節の開排制限を指摘され、再検査でX線(仰臥位で膝伸展、股関節も伸展した状態)撮影にて右先天性股関節脱臼と診断されました。しかも、程度がひどいとのことで、すぐに大きな病院での治療を薦められ近くの総合病院を受診しましたが、そこでもやはり、重症で手におえないということで**病院を紹介していただきました。そして、そちらでも「こんなにひどいのはめずらしい」「そうとうやっかいです。」「多分おなかの中にいた時から外れていたと思います。などと言われそうとう重症ということがわかりました。その時は、超音波撮影はせず、レントゲンは上記のものを見てそう診断されました。
 そして、とりあえずリーメンを着けて様子を見ましょうということで採寸して診療を終えたのですが、その後そんなに重症と聞いて心配で色々調べたら先生のホームページにたどり着きました。
それによると、タイプ別に分類されていますが私が思うのはCタイプではないかと思うのです。でも開排位でのX線写真は撮ってないので何とも分からないのですが、Cタイプの場合リーメンは効果が薄いとされており更に合併症なども引起す確率が高いとのこと。そこで、質問なのですが、
1 タイプを診断するには、開排位でのX線撮影が必要なのでしょうか?上記のようなX線ではわかりにくのでしょうか?
2 完全に脱臼していると言われたのでCタイプだと思っているのですがそうでない事ももありますか?
3 Cタイプだったとしたら、このままリーメン療法を開始して続けていくのは不安なのですがそれをどのように主治医に伝えたらよいのでしょうか?不安ならじゃあどうしたいのか?と聞かれたとき開排位持続牽引療法などと答えるのも大変気がひけてしまうし、ましてや先生のホームページによると本当に少数の小児整形外科でしかやっていない治療法のようですし、どうしたらいいのかわかりません。どうか何か良いアドバイスをよろしくお願いします。
 毎日毎日こんなことばかり考えている私にとって先生のホームページは砂漠の中に見つけたオアシスのようにひと時の安心感をくださいました。本当にこれからもがんばってください!お忙しいところ申し訳ありませんがどうかよろしくお願いいたします。

御返事

重度の脱臼が疑われるということで御心配のことと存じ上げます。しかし正しく治療すれば完全に治すことが出来ます。この点に希望を持って下さい。

御質問にお答えいたします。
1 タイプを診断するには、開排位でのX線撮影が必要なのでしょうか?上記のようなX線ではわかりにくのでしょうか?

脱臼のタイプ分類は触診と超音波もしくはMRIによって総合的に行います。実際には視診・触診とX線でおよその検討はつきます。

2 完全に脱臼していると言われたのでCタイプだと思っているのですがそうでない事ももありますか?

こればかりは実際に診察しないとわかりませんが、状況から推測するとタイプBもしくはCが疑われます。

3 Cタイプだったとしたら、このままリーメン療法を開始して続けていくのは不安なのですがそれをどのように主治医に伝えたらよいのでしょうか?不安ならじゃあどうしたいのか?と聞かれたとき開排位持続牽引療法などと答えるのも大変気がひけてしまうし、増してや先生のホームページによると本当に少数の小児整形外科でしかやっていない治療法のようですし、どうしたらいいのかわかりません。どうか何か良いアドバイスをよろしくお願いします。

病院センターですと、「開排位持続牽引療法は良い方法であるが、当院ではおこなっていない。」という答えがかえってくるでしょう。実際にタイプCでリーメンビューゲルで整復されなかった場合には**病院ではオーバーヘッドトラクション法に移ると思います。それはそれで一つの選択枝と思います。

ということであまり答えになっていませんが参考になれば幸いです。

御質問200

はじめまして。2歳8ヶ月の息子の事で、ご相談させて頂きます。
2歳*ヶ月で**にて、左足が先天性股関節脱臼の完全脱臼と診断を受けました。2ヶ月程、リーメンビューゲルを着けた後、無麻酔での整復を試みたのですが、成功せず、観血的整復術を行いました。
術後1ヶ月程、リーメンビューゲルとコルセットを着けました。そして、医師からコルセットのみ外すよう指示を受けた1週間後、また同じ左足股関節を脱臼してしまいました。この時も完全脱臼だったのですが、無麻酔での整復後レントゲンを撮り、医師から「足を閉じると亜脱臼の状態。コルセットに入ると手術直後の状態に戻る。」との事で、3日間リーメンビューゲルとコルセットを着けたままにし、その後日中のうち3時間程、リーメンビューゲルとコルセットを着けたままにし、その他の時間はリーメンビューゲルのみで生活するよう指示がありました。ただ、右足をコルセットに収めるのを、とても嫌がる為、無理に右足はコルセットに入れなくても良いとの事で、現在そのようにしています。医師からは「骨頭、臼蓋の発達が見られなければ5歳までにソルター手術を行う。」と言われました。最新のレントゲンでは臼蓋に小さいながらも少し屋根が出てきたのですが、骨頭は外側に変異したままです。
お忙しいところ申し訳ありませんが、以下の質問について、ご返事いただければ幸いです。
1)骨頭壊死は始まっているのでしょうか?この為に骨頭の成長が止まっていると考えられるのでしょうか?
2)観血的整復術には合併症があるようですが、どの様なものですか?合併症の為に 再度脱臼をしてしまったのでしょうか?
3)こちらのホームページを拝見すると、リーメンビューゲル使用時は開きすぎないようにと記載されていましたが、現在使用しているコルセットは左右の股が全開になる様な形をしています。術後1ヵ月半、リーメンビューゲルとコルセットの両方を着けたのは使用方法として誤りだったのでしょうか?
4)仰向けに寝かせると、左足のみ胸に付く位に曲げてしまいます。また、多少左右の足の太さも違うように感じるのですが、治療中の症状としてはある事なのでしょうか?
5)現在の治療法は問題ないのでしょうか?右足を出した状態でのコルセットの使用は左股関節に悪影響はないのでしょうか?
6)文章だけではなんとも言えないとは思いますが、もし、この様な状態の患者が来院した場合、どのような治療を行いますか?手術をしないで治す方法はありますか?
7)人口骨を入れて99.9%治るという話を聞いたのですが、どの様にお考えになりますか?
長い文章になってしまい申し訳ありませんでした。どうぞ、よろしくお願いいたします。

御返事

整復のための手術をおこなったにもかかわらず再び脱臼した、ということで、さぞ残念な思いをされていると思います。
手術をしたにもかかわらず再脱臼してしまった、というのには理由があるはずです。この点は主治医に尋ねる必要があります。専門医であれば当然脱臼の理由を分析し、その原因を取り除く手段を考え解決し、そして次ぎは脱臼を起さないようにするでしょう。脱臼した理由が解決してから初めて次ぎの治療に移れるわけです。
もしこの点が曖昧でしたらセカンドオピニオンを求めるべきでしょう。

さて、御質問にお答えいたします。

1)骨頭壊死は始まっているのでしょうか?この為に骨頭の成長が止まっていると考えられるのでしょうか?

骨頭壊死を判定する基準があります。残念ながらこれは診察させていただかなければわかりません。

2)観血的整復術には合併症があるようですが、どの様なものですか?合併症の為に再度脱臼をしてしまったのでしょうか?

観血的整復術の合併症としては、再脱臼・亜脱臼、骨頭壊死、そしてそれによる骨頭変形、骨頭肥大、臼蓋形成不全(これは関節唇の処置の仕方にも影響する)、関節拘縮(関節可動域制限)などが代表的なものです。
再度脱臼については最初に申し上げました。再脱臼にはかならず原因があるはずで、個々の例によって分析しなければなりません。

3)こちらのホームページを拝見すると、リーメンビューゲル使用時は開きすぎないようにと記載されていましたが、現在使用しているコルセットは左右の股が全開になる様な形をしています。術後1ヵ月半、リーメンビューゲルとコルセットの両方を着けたのは使用方法として誤りだったのでしょうか?

股を開きすぎると、関節唇が大腿骨頚部に食い込んで、骨頭へ行く栄養血管を閉塞させてしまう場合があります(すべての例に閉塞がおこるわけではありませんが)。これは実験的に確かめられています。また、開き過ぎると内転筋の力で骨頭に異常な力がかかりやすくなります。その為に枕をいれて開き過ぎないようにすることが勧められます。

4)仰向けに寝かせると、左足のみ胸に付く位に曲げてしまいます。また、多少左右の足の太さも違うように感じるのですが、治療中の症状としてはある事なのでしょうか?

これは実際に診察してみないとわかりません。

5)現在の治療法は問題ないのでしょうか?右足を出した状態でのコルセットの使用は左股関節に悪影響はないのでしょうか?

これは難しい問題です。整復のための手術をおこなったにもかかわらず再び脱臼した、ということで紹介を受けるケースは後を絶ちません。再脱臼の原因を主治医がどのように捉えているかが問題です。納得のゆく説明があれば現在の病院での治療を継続するのが良いでしょう。

6)文章だけではなんとも言えないとは思いますが、もし、この様な状態の患者が来院した場合、どのような治療を行いますか?手術をしないで治す方法はありますか?

再脱臼の原因を分析します。関節外因子(大腿骨や臼蓋の変形、筋肉のアンバランス)、関節内因子(脱臼の程度、介在物の大きさ、関節包の状態など)を検討して次ぎの手を考えます。その結果、手術する場合もありますし、しない場合もあります。

7)人口骨を入れて99.9%治るという話を聞いたのですが、どの様にお考えになりますか?

人口骨(人工骨)を使うかどうか、ではなく、いかに正しく整復するかが今の問題です。

お子さんの場合は今難しい状態の様に思われます。とにかく、主治医に脱臼の原因を尋ね、それにどうしても納得がゆかないようであれば診察いたします。

御質問197

はじめまして、私は**科医で現在研究留学のためアメリカ**州に来ております、***と申します。8月初旬に生まれた娘が左の股関節脱臼ということが分かり、10月の終わりから治療中です。

股関節脱臼について検索して先生のすばらしいホームページにめぐり会い、娘の左股関節脱臼の治療について私どもの今の迷いをご相談できるのは先生しかいないと感じメールさせていただきました。ご多忙中とは存じますが、よろしくご教授の程よろしくお願いいたします。
< 経過 >
出生直後と1ヶ月検診では異常指摘されませんでしたが、9月中旬頃に左足の足の長さの違い、皺の数の違いに加え、左の開脚制限があることに気付き10月*日ファミリードクター受診、早速超音波の予約と整形外科の予約を取ってもらいました。
10月**日**大学の放射線科でエコーを受け、始めは異常ないようだといわれていましたが、足をいろいろ動かされて見ると、位置によって骨頭が関節包から(私の見ていた感じでは、完全に出てはなかったように思いますが、半分(またはそれ以上?)は出ていたように記憶しています。)逸脱しており、股関節脱臼だといわれました。10月++日 (生後2ヶ月目)**大学の整形外科受診+++先生に診て頂き、股関節脱臼でハーネスによる治療が必要との説明を受けました。程度を聞くと、軽度でもないけど高度でもないと説明されました。同日早速ハーネスを装着開始、あまり泣いたり、何か気になることがあればすぐに連絡するようにと説明をうけました。
11月*日 再診。股関節の動きはほぼ正常(pretty normal)で、関節が大分下がってきたと説明を受けました。11月**日 再診。 X線。股関節の動きはほぼ正常(pretty normal)で、関節も前よりさらに下がってきたと説明を受けました。X線では臼蓋角は右が30度、左が34度とかいてありました。しかし、このとき、最近授乳量が減っていること、ハーネスが肩に食い込んできつそうだと伝えると、少し考えられた後、力が強くなると、関節正しい位置に保持するのもむづかしくなるし(そのようなニュアンスだったと記憶してます。)、そっちの方が楽なはずだから腰だけの装具に変えてみると聞かれました。換えてみると言われても私達としては分からないと答えると、「それはそうだ。それじゃ換えてみようか。」ということにになり、その日から新しく装具に変わりました。それは、後ろが固いプラスチック製で出来ており、おしめをした状態で、腰と両側大腿をそこに納め、前面から腰をマジックテープで、両側大腿全体をやわらかいスポンジ状のシート状のものとさらにその上からマジックテープで固定するものでした。お風呂とオムツ換えのときははずしてもいいことになりました。その後、長くではないのですが、時々突然おまり大きくない声で泣くのでなぜだろうと思うと、左の膝関節裏面がもともとハーネスをつけていた状態の時から、赤くなっていた部分かさらに糜爛状になっており、そこがsplintのふちにあたると痛くて泣いているようでした。数日ガーゼを当てて様子を見ても糜爛状になった部分は良くならないため、また左股関節の付け根のくびれが以前より深くなっている(大腿側が少しはれているようにも思えました。)、さらに、手持ちの唯一の医学書であるCD版の今日の診療でsplintの事を調べると、現在使用中のsplintは、Von Rosenの1種でありそうなことと、一人の先生がVonRosenは大腿骨頭壊死を起こす可能性があるのあまり使わない方が良いと書いてあるのも見つけ、心配になり病院に連絡し見てもらうことにしました。
11月**日 糜爛状の部分は、治療用のテープを張ってもらい、「手持ちの医学者にsplintは、骨頭壊死を起こす頻度がハーネスより高いと書いてあったのですが。」かと質問しました。しかし、怪訝そうな顔で担当看護婦さんと顔を見合わせながら「そんなことはないよ。でももとのハーネスにしてもいいよ、効果は変わらないから。でもハーネスつけた状態でX線を撮って確認してみよう。」といわれ、ハーネスに戻してもらうようにお願いしました。しかし、ハーネスを看護婦さんが取りにいかれている間、主治医の先生がいいと思われて選ばれた治療法を中途半端な知識で変えてもいいものかどうか、ハーネスに戻すと左膝裏の糜爛がじくじくして治りにくくなるのではなどの考えが浮かび、最終的に糜爛が治るまではこのままsplintを使いたいと申し出ました。それならそれでもいいですよということで、でも今使ってるsplintが糜爛の部分にあたらないように調整した上でX線は撮ってみましょうといわれました。X線の結果は、関節の位置は非常にいい位置にあり、骨頭のうっすらと見えてきているということでした。その後は、自宅に戻ってからは突然泣くこともなくなり機嫌も良くなったようです。
(質問事項)
1、今後の治療について
前回受診後Pub medで自分なりにsplintについて調べてみたのですが、avascularnecrosisを起こす可能性が高いとかかれているのがある反面、形が今使っているのとは違うようですが治療成績もよく合併症も殆どないという報告もあります。
・当初は次回受診12月**日時には、もとのPavlic ハーネスに戻してもらうつもりでいたのでしたが、合併症も少なく治療成績も本当にいいのであれば、主治医の先生の指示に従ってこのままsplintを使ったほうがいいでしょうか、それとも合併症の起こる危険性を考慮してPavlicハーネスにもどしてもらった方がいいでしょうか。正直私としては全く判断がつきません。
アメリカの股関節脱臼に関するホームページを見ると確かにPavlikハーネスの他に、splintを使うことがあると書かれてはいますが、日本のホームページではそのような記載を見つけることは出来ませんでした。国による治療方針に違いがあることは理解してておりますが。決してこちらでの治療が、多くの場合日本での治療に比べて必ずしも優れてはいないことを考えると、日本に戻って専門の先生に診ていただくことも考えた方がいいのか、全く判断つきかねる状態です。娘の場合、先生の御分類のどれにあたるのか分かりませんが、もしtype Bであれば通常の治療では治すことは難しく、骨頭壊死を起こす危険性もあるということなので不安は募るばかりです。
2、現在の状態について
splintをオムツ換え、入浴の時にはずした時に左足を見ると、足を伸ばしたときに右足に比べ変にまっすぐで大腿内側の皺が依然2本ある(治療前は、常に2本あったのですが今は延ばした時だけなのですが。)のが気になります。また足が依然若干短いように感じます。足の長さについては主治医の先生に伺ったところによると、遅いと2才ぐらいまでかかるけど治るはずといわれるのですが。
・足の皺、足の長さの違いは、足を伸ばしたときに股関節がまだ安定してなくて脱臼しているのでしょうか、それとも通常治療が上手くいっても現時点ではこんなものなのでしょうか。骨盤が発達してくるとこれらの症状は、通常消えていくものなのでしょうか。
不躾な質問長々と書き誠に恐縮ではございますが、ご返事いただけましたら幸いと存じます。

御返事

米国でお子さんが股関節脱臼の治療を受けておられる、ということでさぞ御心配のことと存じ上げます。
意外と思われるかもしれませんが、米国におけるPavlic ハーネス(リーメンビューゲル)の歴史は新しく、最初に導入されたのは1963年、Wilmington, DE のduPont Institute です。最近になって、Pavlik ハーネスを使う病院が多くなっている、というのが現状です。そのうちこの装具の合併症を含めた結果についての報告がたくさん出てくるでしょう。我が国にこの装具が入ってきたのは1960年です。その後、比較的早い時期に全国で広まりましたので、装具の経験ではヨーロッパとともに、我が国がもっとも進んでいると自負しております。残念ながら、我が国は情報発信力が無い為に誤解されているのが現状です。

Pavlikハーネスによる合併症については、ヨーロッパ、そして日本では経験ある医師であればだれもが苦いおもいをしているはずです。私の知り合いのヨーロッパの医師は、Pavlikハーネスほど危険なものは無い、と断言しているほどです。

私達は、ホームページに載せましたように、Pavlikハーネスは適応を選べば有用であり、適応を間違えれば危険なものである、ということを実証し、このことを訴えてきました。

さて、お子さんの場合は、10月**日にPavlikハーネスを装着し、11月*日に「股関節の動きはほぼ正常(pretty normal)で、関節が大分下がってきたと」、ということであれば、すでに股関節整復された、と推測されます。このことによって、骨頭壊死になったかどうかは1年くらいたたないと判断できないかもしれません。軽い脱臼であったのであればその可能性は低いと考えられます。今は、このことについて悩んでもしかたありませんし、このことについて米国の医師に問うてもはっきりとした返事はないでしょう。骨頭壊死の無いことを祈りましょう。

下肢の力が強くなって(これは脱臼が整復された後のことが多いのですが)そのため、バンドが肩にくいこむことはよくあることです。実際には、多少食い込んでも、バンドをはずした後には完全に治ります。これが問題となったケースは経験していません。ということで、そのままPavlicハーネスを使用してもよかったかもしれません。

ただし、splint は脱臼が整復された後で、その整復位を保つ為に使用するならば問題ありません。整復されていない状態で、あるいは整復されやすい状態のときに、むりやり股を広げてsplint を装着する、というときに問題が起こるのです。
splint で褥そうができるのはsplint がお子さんに正しく合っていないためと考えられます。我が国では、石膏で採型して作ります。あるいは出来合いのものであればだぶだぶのゆったりした装具を装着するのが普通です。そのため褥そうは問題となりませんし、私達もsplint による褥そうの経験はありません。褥そうがなおらなければお子さんが可哀想です。いろいろ工夫しても褥そうの治る傾向がなければPelvikハーネスにかえた方がよいかもしれません。

御質問にお答えいたします。
1、今後の治療について
前回受診後Pub medで自分なりにsplintについて調べてみたのですが、avascular necrosisを起こす可能性が高いとかかれているのがある反面、形が今使っているのとは違うようですが治療成績もよく合併症も殆どないという報告もあります。
・当初は次回受診12月11日時には、もとのPavlicハーネスに戻してもらうつもりでいたのでしたが、合併症も少なく治療成績も本当にいいのであれば、主治医の先生の指示に従ってこのままsplintを使ったほうがいいでしょうか、それとも合併症の起こる危険性を考慮してPavlicハーネスにもどしてもらった方がいいでしょうか。正直私としては全く判断がつきません。
アメリカの股関節脱臼に関するホームページを見ると確かにPavlikハーネスの他に、splintを使うことがあると書かれてはいますが、日本のホームページではそのような記載を見つけることは出来ませんでした。国による治療方針に違いがあることは理解してておりますが。決してこちらでの治療が、多くの場合日本での治療に比べて必ずしも優れてはいないことを考えると、日本に戻って専門の先生に診ていただくことも考えた方がいいのか、全く判断つきかねる状態です。娘の場合、先生の御分類のどれにあたるのか分かりませんが、もしtype Bであれば通常の治療では治すことは難しく、骨頭壊死を起こす危険性もあるということなので不安は募るばかりです。

お答え
結論から言えば、褥そうの問題が解決するならば、現在のsplint でよいと考えます。整復後の固定にかならずしもPavlicハーネスである必要はありません。私達は、splint よりも厳格なギブス固定をしているほどです。繰り返しますが、すでに整復されている状態でのsplint 装着は問題ありません。骨頭壊死は、整復というプロセスあるいは、整復プロセスの直後の極端な股関節の位置(開き過ぎるとか)を原因としておこるのであり、整復された後に極端に股が開いているということがなければ起こりません。このことはしばしば誤解されており、例えばギブス固定が長かったから壊死になったと主張する医師もいますが、これは事実と反します。正しい位置でギブス固定されていれば長期間の固定でも問題がないことは事実が示しています。

2、現在の状態について
splintをオムツ換え、入浴の時にはずした時に左足を見ると、足を伸ばしたときに右足に比べ変にまっすぐで大腿内側の皺が依然2本ある(治療前は、常に2本あったのですが今は延ばした時だけなのですが。)のが気になります。また足が依然若干短いように感じます。足の長さについては主治医の先生に伺ったところによると、遅いと2才ぐらいまでかかるけど治るはずといわれるのですが。
・足の皺、足の長さの違いは、足を伸ばしたときに股関節がまだ安定してなくて脱臼しているのでしょうか、それとも通常治療が上手くいっても現時点ではこんなものなのでしょうか。骨盤が発達してくるとこれらの症状は、通常消えていくものなのでしょうか。

お答え
皺の非対象はかならずしも脱臼を意味していません。重要なことは、ほんとうに脱臼が整復されているかどうかです。残念ながら、それについては実際に診察しないと判断できません。splint を装着した状態で脱臼しているかどうかは超音波をみれば簡単にわかることです。米国の教科書に、(日本において)「超音波を整復の確認に用いている病院もある」と紹介されているのですが、残念ながら米国では超音波をこのように利用しているところは少ない様です。

以上がお答えですが、実際に診察しないとなんとも言えません。今は現在の主治医に従うしかないようです。一時帰国でもされるときに診察させていただければ幸いです。

御質問195

10ヶ月の娘のことで相談お願いします。4ヶ月検診で足の開きが悪いといわれ、近くの総合病院で、X線検査、エコーを受けました。結果右足の臼蓋形成不全、亜脱臼か脱臼を伴うということで、リーメンを装着する事になりました。4週間装着後外したのですがその後また10週間の装着、開排位での骨の位置は良いが伸ばすと外れる位置にいくそうで、来週から再度装着といわれています。娘はどんどんおおきくなっていますしこのままの治療を続けて良いものか、後で悔やまれる事はしたくありません。是非ご意見を伺わせてください、お願いします。

御返事

10ヶ月となるとリーメン装着はしだいに困難となってきます。しばらく様子をみて次の手(ギブスなど)を考えるか、専門病院に紹介することになると推測します。

この段階からは治療方針をたてる上で専門的判断が必要となってきます。ーーーーーーー

その後のお便り

月曜日に診察に行き、リーメンを着けてみましたが、娘が外そうとするためそのままで経過を見ることとなりました。**の整形外科を紹介され受診しましたが、そちらの先生も同じ考えでした。ーーーーーー



御質問183

初めまして。**と申します。ご質問のコーナーを拝見し先生方の献身的なご対応に感動いたしました。私の娘も先天性股関節脱臼と診察され、ご相談いたししたくメールをお送りさせていただきます。お忙しいところ申し訳ありませんがよろしくお願いいたします。

仕事の都合で現在、英国で生活しています。10月**日に妻が普通分娩で女子を出産しました。こちらの病院では、退院時に股関節脱臼の触診と視診を行います。娘は、生後2日目の検査で左足にDislocatedHip(股関節脱臼)の疑いがあると診断されオムツを重ねてあてるように指導されました。その後、超音波による診察を受け、診察の結果、股関節がNotStable(安定していない)、Soket(臼蓋)がShallow(浅い)、と診断されました。その場で生後5日目にしてパブリックハーネスを装着され、ハーネスを外すことを禁じられました。症状の程度やタイプを質問いたしましたが、Typeによる分類はしていない、Optimistic(楽観的だ)とのドクターのご回答でした。妻と私の血縁には、同様の病気を経験した者はおりません。下記の2点についてご意見をお聞かせ願えませんでしょうか。

1.先日、日本人の同僚に男子が誕生し、同様に英国の病院でDislocatedHipと診断されました。さまざまなホームページで調べたところ、この病気を患う確立は、日本では100〜1000分の1というのが一般的です。身近で誕生した2名の新生児が揃って股関節脱臼を患う確率は、非常に低いと考えられます。ご存知のように足や腸の長さは、東洋人と西洋人で大きく違います。骨の構造が多少違うことも十分に考えられます。東洋人の診察に不慣れなドクターが東洋人と西洋人の身体的な違いを股関節脱臼または臼蓋形成不全と間違って診断する可能性はありますか?

2.合併症を防ぐため、症状によってはハーネスを装着するべきではないとの意見があります。こちらのドクターは、ハーネスの装着は早ければ早いほど良い、NoHarm(無害)だ、とおっしゃっていましたが、生後5日目からハーネスを装着する事について先生のご意見をお聞かせください。生後3ヶ月間、抱き方やオムツ、着衣に注意して様子を見て3ヵ月後に再度検査して必要があればハーネスを装着した方がベターと考えますが如何でしょうか。

担当のドクターに従うことは、基本と考えますが、ヨーロッパで最も医療制度が遅れている英国NHS(NationalHealthService)での短時間の診察でハーネスを装着する事に戸惑いを感じています。ハーネスの取り扱いについての注意も特に聞く事ができませんでした。先生に症状をお見せできませんので、コメントが難しいと存じますが、日本の一般的な考え方や個人的なお考えで結構ですのでご意見をお聞かせくださるようよろしくお願い致します。また、股関節脱臼について詳しい英国のドクターをご存知でしたらお名前と病院名をお聞かせ願えれば幸甚です(難しい質問と思います。ご存知でしたらで結構です)。

御返事

英国と我が国では、検診制度が異なりますのでいろいろ戸惑いがあると思います。
まず、一番の違いは検診時期です。英国ではお子さんになされたように、生後1-2週のあいだには検診を行い、すこしでも股関節に不安定があればパブリックハーネスを装着します。このやり方には一長一短があります。脱臼は年齢が低いほど治療によく反応してくれます。しかし一方では、赤ちゃんは年齢が低いほど股関節は不安定であり、本来放置しておいても自然治癒するものまですべて治療対象としてしまうことになります。ということで、英国では現在の検診制度は過剰治療につながるのではないか、という論文がいくつか散見されます。しかし、いまのところこの制度は変わる気配はないようです。

この年齢でのパブリックハーネスを装着による合併症については低いとされています。わたしは、その理由は、治療対称にたくさんの軽症の脱臼が含まれているからだと考えています。合併症は重度の脱臼の治療に多いからです。

さて、現実的にどうするかですが、郷に入っては郷に従え、と思います。しかも、お子さんの場合は、股関節がNotStable(安定していない)、Soket(臼蓋)がShallow(浅い)、と診断された、ということであれば、重度の脱臼ではないと推測され、治療による合併症の可能性は少ないと考えます。

ということでがんばって下さい。

御質問182

はじめまして。初めてメールさせていただきます。
現在4ヶ月になる娘について質問させていただきます。2ヶ月と26日目に母に足のしわの数が違い足の長さも違うといわれ近所の整形外科に行ったところ触診・レントゲン診察で臼蓋形成不全で左右どちらも脱臼はしておらず左は亜脱臼といわれました。その日のうちにリーメンビューゲル(在庫にあったもの)を装着。装着に関してははずしてはいけないこととお風呂に入れないことという支持のみで股の角度についてはまったく説明がありませんでした。また、わきの下のベルトもかなり下につけられました。先生よりその日は大泣きするからといわれたので帰ってからいつもより少し泣いてもあまり気に止めませんでした。翌日また触診のみの診察。その一週間後触診のみの診察。その二週間後触診のみの診察。その間お風呂に入らなかったため娘に湿疹が出てしまったのでお風呂だけでも外せないかお願いしたところ駄目といわれてしまいました。その頃本などでお風呂時だけリーメンが外せるということやビニール製のリーメンがあるという情報を聞きほかの治療法ができるのではないかと思い**病院に行ってみたところレントゲンを撮ったところ今までの治療で何も問題ないし、リーメンをつけている間はお風呂に入れないようにその先生も指示するといわれてしまいわきの下のベルトもきちんと骨が入っているので今の位置で替える必要がないといわれてしまい結局今まで行っていた病院で引き続き治療を続けることになりました。二週間後今度は触診とレントゲン診察をし、屋根も大分できてきちんと足も入っているといわれました。現在リーメンを装着して1ヵ月半になりますがこの間に一度もバンドの穴の調節がされていません。お風呂もまだ入ることができません。
お聞きしたいことは

1.1ヵ月半の間一度もバンドの穴が調節されていないが発育に影響がないでしょうか?バンドをしてから身長が2センチほどしか伸びておらず、また、両足のかかとの肉が食い込んでしまっているので気になっています。

2.この一ヶ月半股の角度をまったく気にせずほとんど平らに近い状態で寝せていました。今からでも間に合いますか?また、リーメンをつけた日はいつもより多く泣いていたのですがその後はあまり泣かず現在は機嫌は比較的良い状態が続いています。大腿骨壊死をすでに起こしてしまっているのでしょうか?

3.布製のリーメンの場合終日リーメンという状態が長く続くということは普通でしょうか?その場合湿疹やアレルギーなどある子供はどうしているのでしょうか。お忙しい上に大変長いメールを送ってしまいまして申し訳ございません。よろしくお願い申し上げます。

御返事

御質問にお答え致します。

1.1ヵ月半の間一度もバンドの穴が調節されていないが発育に影響がないでしょうか?

次回、両足のかかとの肉が食い込んでしまっている、ということを主治医に申し出て下さい。検討すると思います。

2.この一ヶ月半股の角度をまったく気にせずほとんど平らに近い状態で寝せていました。今からでも間に合いますか?

間に合います。下腿に小枕を入れて下さい。

また、リーメンをつけた日はいつもより多く泣いていたのですが
その後はあまり泣かず現在は機嫌は比較的良い状態が続いています。
大腿骨壊死をすでに起こしてしまっているのでしょうか?

起こすことは極めて稀です。完全脱臼とは考えられないからです。

3.布製のリーメンの場合終日リーメンという状態が長く続くということは普通でしょうか?その場合湿疹やアレルギーなどある子供はどうしているのでしょうか。

原則は終日装着です。布による湿疹やアレルギーは稀です。金具でおこることがありますが、その時は金具部分にガーゼを巻いたりします。

ということで、現在の治療を続けてよいと考えます。
がんばって下さい。

御質問179

今月1歳になる娘が、先日「先天性股関節脱臼」と診断されました。1歳になるまでの1年間、検診等を何度も受けましたが、残念ながら発見できませんでした。(検診は内科や小児科の先生で、足の開きも悪くなかった為か、確認しても大丈夫と言われていました。)自分自身、両足先天性股関節脱臼だった事もあり、心配はしていたのですが、遺伝の起こりやすい事など知識の無さから発見が遅れ、娘には申し訳ない気持ちでいっぱいです。
長々、言い訳のような文になってしまい、申し訳ありません。
周りには、同じ病気の人もなく、悩みを相談できずにいたところ、先生のHPを見つけました。病気について、理解を深めた反面、心配にもなってしまいました。本当なら、先生のいる、滋賀の病院にお世話になりたい所なのですが、距離的、経済的に無理なので困りました。いざ、病院を・・・と思っても、小児整形専門のお医者さまが、身近にはいらっしゃらなくて、とりあえず、近くの総合病院の整形外科を受診しました。そこの先生は、股関節脱臼の治療は、早すぎて悪い事はあっても、遅くて悪い事はない。と1歳で遅い発見と思った私にいいました。先生のHPに出てくる人のほとんどが、4ヶ月前後に治療を開始されてますよね。この点は、どうお考えですか?
 今現在、リーメンを装着し1週間経過しました。先生のお話では、骨自体には、異常はないので、2〜3ヶ月リーメンで様子をみて、脱臼が治ればそれでヨシ、ダメならその後、手術等を考えていこうというお話だったのですが、それで、手遅れというような事は、ありませんか?
 やはり、小児整形の先生に診察頂いたほうが、良いのでしょうか?もし、近く(近県内)でご存知の先生、又は病院がありましたら、教えてください。
今の先生を、信用できない訳ではないのですが、ご意見を、お聞かせ下さい。

お忙しいとは思いますが、何卒、宜しくお願いいたします。

御返事

早急に専門病院を訪ねるべきです。
近くでは***病院があります。ただし、ここの病院の情報があまりなく、1才の脱臼の経験がどの程度あるのかわかりません。確実なのは、少し離れますが、+++病院、もしくは紹介状が必要ですが(近くの開業医にでも依頼してください)***病院を訪ねて下さい。
結果を御連絡下さい。

御質問176

先日このHPを見つけとても感激いたしました。お忙しい中、大変丁寧にまとめてありとても参考になりました。もしお時間がありましたら少しアドバイスいただけますでしょうか。

現在4ヵ月半の女児です。40週2456gで出生(普通分娩・頭位)、1ヶ月検診では特に問題ありませんでした。
先日乳児健診時に左右の足の長さが違うと指摘を受け要精検になりました。現に左下肢ももに1本しわが多くある、どちらかというと右のほうが固めだが動きはとても活発でおむつ交換に支障はない程度です。
先日***を受診したところX線と触診で右下肢が若干固め、クリック音(+)で「両下肢臼蓋形成不全」と診断されました。紙おむつの上にフェイスタオルを8つ折にしてオムツカバーをすることのみ指示され1ヵ月後に再受診となりました。「開きすぎてよくないことはないですか?」と聞いたところ「それはない」とのことでした。

このHPで見る限りDr.の指示を鵜呑みにしていいものかと心配になってしまいました。一応このあたりでは信用のある病院なので引き続き見てもらいたいと思っているのです。今までも立て抱き中心で足を拘束しない様気をつけてきたのでオムツを当てずに様子を見るとすると、今までどおり何も変えずいることになります。それでも時間とともに直ることはあるのでしょうか?子供は3ヵ月半過ぎから片側のみ寝返りもし、最近ではうつ伏せで床をけって前進しようとさえしています。こんな活発な動きをこのままほっといてもっと悪化することはないのでしょうか。

お忙しいところ恐縮ですが、もしよろしければアドバイスお願いいたします。

御返事

臼蓋形成不全という診断は多くの医師は、脱臼はしていない、すなわち骨頭と臼蓋との関係は良いが、臼蓋の発育が悪い、という意味で使っています。しかし、ホームページの臼蓋形成不全の項で説明していますが、実際の臼蓋形成不全を詳しく調べてみると多くの場合、股関節を伸ばした状態では骨頭と臼蓋との関係がさまざまな程度に(ほとんどは軽度に)ずれていることがわかっています。幸い、そのような場合でも、大多数の症例では、股関節を曲げた状態では多くの場合骨頭と臼蓋との関係は良くなります。そしてそのような症例は、赤ちゃんの自然な下肢の運動を妨げなければ自然治癒する場合が多いことがわかっています。これを私達はタイプAIの亜脱臼と呼んでいます。
問題は、股関節を曲げた状態でも骨頭と臼蓋との関係が良くならない場合が少数の例においてあることです。これをタイプAIIと呼んでいます。AIIの場合には、赤ちゃんの自然な下肢の運動を妨げないようにしても自然治癒することは稀で治療が必要となります。

最初からタイプAIとAIIが分類できれば治療の無駄が省けます。しかし、このよう分類をするには超音波診断が不可欠となりますが、残念ながらまだ普及していないのが現状です。

脱臼予防運動の先達も強調していることですが、股の間に厚いおむつをあて、その力によって無理に股を広げることは好ましくありません。かえって赤ちゃんが反射的に股を閉じようとして逆効果となるばかりでなく、股関節の障害が起こりうるのです(私達はほんとうにこのような例を見てきています)。このことは繰り返し専門学会でも指摘され強調されてきたことですが、残念ながら私達小児整形外科医師の力不足が原因で、いまだに誤解がとけていないのが現状です。まことに申し訳ございません。

さて、現実問題として、お子さんの場合どうするかです。おそらく主治医の先生は、次回の受診の時に依然として股が開きが悪いなどの症状があれば、装具による治療を開始すると思います。わたしもそのような場合には年齢的なことを考慮し、治療を開始すべきと思います。それまでは自然治癒を期待し赤ちゃんの自然な下肢の運動を妨げないようにするという方針でよいと思います。

実際に診察をさせていただいていないので、これ以上の回答はかえって誤解を招きそうです。問題の本質は、お子さんの亜脱臼がタイプAIなのか、それともAII なのかわからないことにあります(分類できれば直ちに治療方針が決まります)。したがって、経過を見てゆく中で治療の要不要を判断するしかありません。すなわち経過を見てゆく中で、自然に治癒するならば振り返ってみてAIだったということであり、治療が必要となれば、AIIだったのだ、とわかるわけです。

御質問175

はじめまして。お忙しい所恐縮ですが、教えていただきたいことがあります。
私は10ヶ月になる娘をもつ母親です。 娘は左足完全脱臼です。左足大腿骨の骨頭が骨盤のうしろ側、おしりの方に外れています。4ヶ月半の頃自宅でオムツをかえている時に、左右のしわの数や足の長さ、開き具合が違う事が分かり、個人の整形外科へ。そこから紹介され総合病院へ。そこでリーメンをつくり、2週間様子を見ました。その後、さらに1週間様子を見ましたが、**病院への転院を勧められ転院しました。
そこの病院では、リーメンを外して1ヶ月、再びリーメンを着けて経過を診ていきました。しかし、はまらなかったので、全身麻酔下徒手整復を行ないました。エコーを診ながらおこなったのですが、邪魔するものがあって上手くはまらず、途中で麻酔を止めて終了となりました。エコーには映らないものは、脂肪や繊維が主で、エコーには映らないけれど邪魔をしているとはまらないと言われました。これを無理にはめてしまっても、ギブスをはめてから外れてしまう事もあるし、なにより不自然なはまり方のまま成長する事はよくないので中止しますとの事でした。
今後の治療の予定は、歩き出す頃までに手術的整復を行なう予定になっています。足腰に筋肉が付いていた方が術後の快復が早いので、現在はリーメンは付けず、筋肉をつけ手術に備えている状態ですーーーーーーーー
お聞きしたい事は、
1) このような経過を辿り、現在の病状の場合、どのような治療方法が考えられるのでしょうか。
2) 別の治療方法がある場合、どのような治療方法があるのでしょうか。
3) その方法での治療期間はどのくらいかかるものでしょうか。
4) その治療は、近くの病院で受けられるものなのでしょうか。
ーーーーーーー

ここへ来て娘の身体に一生の傷をつけるという事が怖くなりました。しかし娘が歩けるか歩けなくなるかの一生の問題です。どういう選択が一番なのか、別の先生にお話を聞かせていただきたいと思い、お忙しい所申し訳ないとは思いつつ、ご意見頂きたくて質問させていただきました。どうか、よろしくお願い致します。

御返事

完全脱臼で骨頭が骨盤のうしろ側、おしりの方に外れている場合には、リーメンビュウゲルで整復されることは稀というか、まず原理的にそういうことはありえません。この点についてはホームページに載せたとおりです。このような状態でリーメンを長期装着しますと、骨頭は下肢の重みによってますます骨盤の後ろに移動し、以後の整復を一層困難にしてしまいます。

すでに全身麻酔下で徒手整復を試み、これも関節の中に整復障害因子が邪魔をして不成功に終わった、という場合、次ぎにどうするかについてはいろいろ議論のあるところです。

手術的に整復するというのも1つの方法です。ただし、手術的に整復をおこなった場合には、それに伴う合併症の発生率が高いということを認識しておく必要があります。もちろんこれら合併症がすべて成績を悪くするとは限りませんが、中には予後を左右する深刻な合併症が発生することがあります。その為さまざまな施設で手術をしないでしかも安全に整復する方法を模索、研究し続けているところです。

手術でない方法としては、しばらく様子見て再度全身麻酔下での徒手整復法、牽引をおこなったから全身麻酔下での徒手整復法、オーバーヘッドトラクション法、ならびにその変法など、いろいろあります。

私達は1993年から、ホームページに載せましたような開排位持続牽引整復法という方法を試みており、これまで極めて良好な成績を納めています。この方法の実際と成績についてはホームページをお読み下さい。これまでに成功した最高年齢は3才6ヶ月で、現在3才9ヶ月のお子さんの完全脱臼の整復を試みているところです。

御質問166

こんにちわ。いつもメールでの相談に回答頂き有り難うございます。今日はまた質問が有りメールしました。今までの経過は3ヶ月の時に左先天性股関節脱臼・臼蓋形成不全と診断とされ、約3ヶ月間24時間リーメン装着、夜間のみリーメン装着になって2ヶ月目を過ごしている所です。来週の月曜日に診察して経過が順調であれば完全にリーメンをはずせることになっています。

質問なんですが・・・・・
1.4〜5歳になって臼蓋のできが悪いようならば手術をするとの事ですが、どのような手術なのでしょうか?4〜5歳より前には診断がつかないのでしょうか?先生が後は運だからどうしようもないよと言っていましたが臼蓋の成長は自然に任せるしかないのでしょうか?
2.今、娘は8ヶ月目前なんですが、おすわりの姿勢の時に膝が床につかないんですが(おすわりと言ってもまだグラグラしたり後ろへ倒れたりする状態で・・・)、これは股関節がかたいという事でしょうか?脱臼とは違う病気の疑いなどあるのでしょうか?
3.今、夜間のみのリーメン装着ですが昼間などのつけていない時も(眠ったりしている時ですが)足がリーメンを着けている時のように大開脚になっているのですが・・・。M字といっても足の付け根の所から膝が真横に直線的な感じで、普通の子は足の付け根から膝が真横ではなく斜め下くらいの感じで・・・とても気になります。これはずっとこのままなのでしょうか?この状態は質問の2と関係はないのでしょうか?
とにかく心配でなりません。脱臼以外にもどこか悪いんじゃないかと不安です。お忙しいとは思いますがアドバイス頂けたらと思います。よろしくお願いします。

御返事

1.4〜5歳になって臼蓋のできが悪いようならば手術をすると、という場合の手術はほとんどが骨盤骨切り術(Salter 手術)です。確立した安全な手術で、慣れた術者がおこなえばまったく心配ありません。残念ながら、臼蓋のできは、4〜5歳より前には診断がつかないことが多く、臼蓋の成長は自然に任せるしかありません。

8ヶ月で坐位が安定しないのは、脱臼とは無関係です。装具をしていたので多少は遅れるかもしれません。心配であれば小児神経科を受診してください。

足がリーメンを着けている時のように大開脚になっているはやむを得ません。長い間そのような格好をしていたのですから。そのうちに改善すると思います。

御質問162

長女のことですが、今までの経過をざっとご説明させて頂きます。
ーーーーーーー

生後3ヶ月で入院、牽引治療(石田式で牽引治療)を受ける。

リーメンを付けて退院。(リーメンは絶対に勝手に外さないようにと言われる)
退院直後の通院で、骨頭が離れていてあまり良い傾向ではないと告げられる。
生後7ヶ月(リーメンを付けて3ヵ月後)リーメンを外し普通に暮らす。
1歳4ヶ月で歩くようになる。
1歳半の検診で3歳になったら手術が必要であろうことを告げられる。
7月に検診を受けた時に、いずれ近いうちに手術が必要と言われ、骨盤を切る手術を して思わしくなければ、 時間をあけずに大腿骨を切る手術も行うと説明されました。ほぼ手術はしなければならない物と覚悟はしていたが、セカンドオピニオンの必要性を感じて、主治医にその旨申し出て、レントゲン写真を借りて、先日、***病院を受診したが、そこで「この状態なら特にすぐ手術が必要ではないので様子を見ては」と全く反対のことを言われ非常に迷ってしまっております。
娘は他の子に比べ、体格も年齢より大きく、走ったりジャンプするのも得意で手術する事によって今より悪くなるという可能性は無いのか、不必要な手術を受けて体にダメージを与えてしまうのではないか。手術を受けなくても治る可能性はどれくらいあるのか?等さまざまな疑問が浮かんでは消えしている状態です。
5歳までにやはり手術になるのならなるべく早く手術を受けてしまった方が良いのか、万が一の手術しなくても済む可能性に賭けたほうが良いのか判断のしようが有りません。
3歳で手術をした方が良いか、5歳まで手術は待った方が良いか、手術はなるべくしないで様子を見たほうが良いか先生のご意見をお伺いしたいと存じます。
現在借りているレントゲン写真を添付ファイルにて同送致します。これを参考にして頂いてご助言いただけないでしょうか?

全くもって勝手なお願いですが何卒ご検討願えますよう宜しくお願い致します。


御返事

3才1ヵ月の女子で、脱臼治療後、臼蓋形成不全が残存している例です。タイプB、Cの脱臼治療後にしばしば見られます。幸い再脱臼の傾向はないようですので、方針は、

1)3才の時点で骨盤骨きり術をおこなう。
2)しばらく様子をみて5才前後で骨盤骨きりをおこなう。

ということになります。
もし、前回のレントゲンと比較して臼蓋形成が悪くなっていたり、股関節の変形が増強している様であれば、1)の方針です。
逆に股関節が安定傾向にあれば 2)となります。なぜなら、これからさらに改善してゆく可能性があるからです。

いずれの方針でも、手術は安全で確立した方法です。術後スポーツなどもまったく普通の子と同じようにできるはずです。

ということでがんばって下さい。

御質問158

はじめまして。7か月目の娘についてご相談があります。
気になる症状は、
・太もものしわの数が違う
・わきの下を支えて立たせると、右足はかかとまで地面につけるのに、左足はつま先立ちになってふんばっている。
の2点です。
股の開きが悪いようには見えませんし、動きも異常あるような感じはしません。股の関節が鳴る音がしたことはないと思います。4か月のときに先天性股関節脱臼のレントゲンを撮り、異常なしと言われました。このような症状で股関節脱臼の可能性は高いと思われますか?また、もう7か月目なのですが、これから治療する場合、完治するでしょうか?
よろしくお願いいたします。

御返事

4か月のときに先天性股関節脱臼のレントゲンを撮り、異常なしと言われたということであれば心配ないでしょう。

・太もものしわの数が違う
・わきの下を支えて立たせると、右足はかかとまで地面につけるのに、
左足はつま先立ちになってふんばっている。

というのは正常でもしばしば見られます。

御質問152

はじめまして。
娘が2日前、3ヶ月健診でX線レントゲンを撮り、“先天性股関節亜脱臼”と診断されました。
股関節亜脱臼についての知識も何もなく、ただショックで頭が混乱しました。整形外科の担当医からの詳しい説明はなく、「装具を3ヶ月位付けて様子を見ましょう。」との事。装具を取り付けてくれる場所を教えられ なされるがままにリーメンをつけられました。泣きもせずおとなしくしていた事が救いでしたが、不安で不安で装具屋さんにいろいろな事を質問しました。この時は後で先生から何らかの話があるのだと思っていたのですが、結局先生は装具の具合を見に来て「来週もう一度来て下さい。」と言って行ってしまいました・・・。
装具屋さんに言われたのは
*リーメンはお風呂以外は絶対に外さない事。(泣いても治療だからという強い意志をもって外してはいけない。)
*リーメンは寝ている状態での治療だから必要以上の抱っこはしない。
*脱臼している方と反対を向くので身体の脇にタオルを敷いて寝かせる。   など・・・。
しかし、HPを見るといろいろと相違点があり、不安は高まっていくばかりー。泣いている娘を見ると、どうしていいのか分からず、これからどうしていくのが娘にとっていいのか本当に悩んでしまいます。
小児整形外科のある病院・信頼できる病院を探したほうがいいのでしょうか・・・?
まとまりのない文章で申し訳ありません。
お忙しいとは思いますがアドバイスをいただければ大変助かります。

御返事

説明のないまま装具を装着されてさぞ御心配のことと存じ上げます。
まず、主治医にしっかりとした説明を求めることが重要です。たくさん質問があると思いますので、それをそのまま尋ねてください。それにたいし誠実に答えてくれればそのまま治療を続けてよいと思います。
質問に対する対応が不誠実な場合は、医師をかえるべきです。

ーーーーーー

それから装具屋さんは専門医ではありません。あくまでも主治医に質問してください。

その続き

病院に行って来ました。骨はしっかりはまっていました。けれども、外れやすい為、3ヶ月間はリーメンを付けて生活するとの事。2週間おきにレントゲンを撮って経過を診ていくとの事でした。

診察までの1週間不安だった気持ちや、沢山の疑問・質問を先生は聞いて下さいました。治療にはいろいろなやり方があるようですが、このまま今の病院の方針で治療を続けていこうと思いました。

私がこのような気持ちに慣れたのも、HPで相談に載っていただいた大きな安心感があったから・・・と思います。すごく感謝の気持ちでいっぱいです。

暑い夏を迎え、リーメンをつけての生活は娘もきっとつらいでしょうが、一緒に乗り超えていきたいです。母親としてもまだまだの自分ですが、子どもと共に成長できるように頑張っていきたいと思います。

また何かありましたら、どうか話を聞いて下さい。

本当にありがとうございました。

御質問151

はじめまして。3歳10ヶ月の娘のことでご相談させてください。
生後4ヶ月時の検診で開排制限を指摘され、**市立病院にてレントゲンを撮り「左の亜脱臼」との診断で2ヶ月間リーメンを装着しました。その後は「経過は順調」とのことで2歳ころまでで通院も終了しました。ただ、3歳になる前後から、歩行時に左足だけ内股になっているのが目立ちます。そのため3歳4ヶ月時にもう一度その市立病院の整形外科を受診しレントゲンも撮りましたが「特に異常はないし歩き方も生理的範囲ではないか」との診断でした。しかし保育園でも、「長く歩いていると転ぶことも多いし足の痛みを訴えることもある」と言われ気になっています。
(1)この歩行の異常は、脱臼が再度起こっているためということは考えにくいでしょうか?(レントゲンで発見しにくいということはないですか?)
(2)治療後も、定期的に通院はするべきでしょうか?(特に病院から指示はなし)
(3)この内股歩行は治るのでしょうか?
お忙しい所恐縮ですが宜しくお願い申し上げます。

御返事

内股歩行というのは、足が内側に回旋して歩行する状態と理解しましたが、これについては、ホームページの下肢回旋変形の所をお読み下さい。
3歳4ヶ月のレントゲン検査で異常がなかったわけですから、股関節に問題はないと考えます。再脱臼とは考えられません。その後の通院については、病院の指示に従ってよいでしょう。

2回目の御質問

早速のお返事本当に有難うございました。再脱臼は考えられないとのことで安心致しました。
下肢回旋変形の所も読ませていただき、大変参考になりました。そういえば娘はいつも「トンビ座り」をしています。
拝読してひとつ疑問が湧いたのですが、これは、なるべくあぐらをかく姿勢をとらせたほうがよいのでしょうか?それとも、トンビ座りはあくまでも下肢内旋の結果であって原因ではないから効果はないでしょうか?もしよかったらご教示いただけると幸いです。
ご多忙中の折本当に有難うございました。

それに対する御返事

トンビ座りが原因で下肢内旋が起こるのか、或は下肢内旋が原因でトンビ座りをするのかはわかりません。おそらく両者がおたがいに関係しあっているのでしょう。
あぐらをかくのは効果があると思われます。というのは韓国では女子もあぐらをかく習慣があるのですが、確かに内旋歩行する人は少ないようです。
しかし、あまりあぐらを強制して、かえって外旋歩行になるのも考えものです。
ということで、あまり気にしないので子供の自由を尊重するのが良いと思われます。

御質問147

はじめまして。生後4ヶ月になる娘のことについて教えてください。私が総合病院での出産だったので、3ヶ月の股関節の検診をその病院の整形外科で、看てもらいました。そこで、レントゲンを撮りました。1ヶ月様子をみて、来月また来てくださいとのことでした。そこで医師に言われたことについていくつかの疑問があります。
1.1ヶ月間の間に気をつけなくてはいけないことなどないのかと聞くと、その医師は、「特にありません。何をしても同じ。よっぽど両足をしめつけたりしなければ、あとは足が自由に動くようにしていればよい」と言われたのですが、本当にそれでよいのでしょうか?実は、町の3ヶ月検診に出かけたときに、股関節を看てもらったときは、できるだけ、開かせるようにしておきなさいと言われたこともあり、どうすればよいのか不安です。
2.町の3ヶ月検診の時に、保健婦さんのチェック項目の中に「足が交差しませんか?」というものがあったのですが、娘は最近よく両足を交差して絡めます。すごく気になっているのですが、足が交差することと股関節脱臼と何か関係があるのでしょうか。
3.体がなんとなくかたがっているように感じる時があるのですが、これも股関節脱臼と関係があるのでしょうか。ふつうに寝ているときや両足を伸ばしたときなど右にかたがっているような気がします。
4.次回の診察まで毎日不安で、娘の足ばかり気にしてしまいます。その他今、積極的にしてやれること、してはいけないことがあれば教えてください。

御返事

もし、本当に左足股関節亜脱臼であるならば、その程度によっては治療が必要となります。そのまま1ヶ月様子をみるようにという指示であれば、軽度の亜脱臼と判断したと思われますし、今は1ヶ月後の診断を待つという方針で良いと思います。その時何らかの治療を開始するということであればもう一度メール下さい。

さて、下肢の扱いの注意は、自然の動きを妨げない、ということが大切です。伸ばした状態を保つもの、逆に開いた状態を保つのも誤りです。このところはホームページを熟読してください。

足の交差についてはよくわかりません。整形外科の問題ではないと思われます。

体がかたがっている、というのは傾いている、ということでしょうか? 体が左右どちらかに傾いているのはこの年齢では普通のことです。

御質問の続き


前回、娘の股関節亜脱臼のことについておたずねしたところ、早急に返事いただき、ありがとうございました。いろいろなことを思い悩みながら、不安になっていたこともあり、心が救われる思いでした。
さて、先日1ヶ月後の再診で、レントゲンをみていただいたところ、治療は必要ないとの診断をいただきました。骨が正常な位置に
きているし、骨頭はやや小さいが成長してきている、屋根の部分も少し角度が悪いが正常範囲であると言われました。貴ホームページに書かれている下肢の扱いを参考にさせていただいたことが幸いしていると思って大変感謝しております。2ヶ月後に、もう一度レントゲンをとることになっています。本当にありがとうございました。

御質問146

ご無沙汰しております。わたくし、今年1月27日に御相談し、翌28日にお返事をいただきました**の「臼蓋形成不全 4ヶ月男児の母」++と申します。その節は、大変お世話になりました。
その後の経過ですが7ヶ月目に、同じ整形外科を受診しましたら「まだ湾曲はできていない(直線でした)が、角度的には正常と異常のギリギリのライン」とのことで、そのまま様子観察とのことでした。そして9ヶ月に入った先週、再度受診しましたところ「この月齢にしては発達が遅いが、湾曲ができてきているし、脱臼もしていないので、もうこれで受診は終了にしてもいいでしょう」とのことでした。
4ヶ月検診の際には「布オムツで股オムツにして股関節を広げるように」と指導受けましたが、 私は鈴木先生のお返事と貴院サイトの内容からゆったりめのオムツで無理に股関節を広げず下半身の動きが自由になるような衣服、股を広げた抱っこの3点に気を付け、実行してまいりました。そのおかげで、今回の良い結果が得られたものと思います。
もし、貴院サイトを知らなければ、きっとオムツで無理に関節を広げていたと思います。そうしたら今頃どんな結果になっていたか・・
この子は6ヶ月でお座り、7ヶ月でハイハイ、8ヶ月でつかまり立ち9ヶ月の現在は、つかまり立ち→片手離し立ち と、おかげさまでとても順調です。
最初4ヶ月検診で股関節を指摘された際、私は驚きと不安で動揺し、また子供の将来を憂い悲しみに沈んでおりました。そんな時、鈴木先生の暖かい(しかも迅速な!)お返事と御指導にどれだけ力づけて頂いたか! 本当に有り難かったです。何度御礼を申し上げても足りないくらいです。ありがとうございました!!

御返事

改善して良かったです。
これからもがんばってください。

御質問145

こんばんわ。初めまして。**県在住の++ともうします。突然のメールで大変恐縮です。二日ほど前から8ヶ月になる娘がリーメンビューゲル装着をすることになり、先生のホームページで勉強させていただきました。大変参考になりました。そこで、娘の現在の状況と先生のホームページ上でのご意見から、装具装着は必要なのか疑問に感じています。以下に現在までの状況を示しますので、ご意見を伺えたらと思います。
現在までの履歴
2001.10.*. 2270g 39週で頭位での出産。逆子ではない。。2002.5月末 娘の左右の足の長さが違うことに気づく。右足が長い。それまでの検診では股関節脱臼についての指摘はなく、足の開閉も問題なし。2002.6.*. 出産した病院で診察。足の開閉には問題ないが、念のためレントゲン撮影。左足大腿骨骨頭が右に比べ小さい。臼蓋の形成も不十分である可能性。専門医の紹介を受ける。2002.6**. **病院での診察。超音波、レントゲン撮影。診断内容は脱臼はしていないが、臼蓋の形成が右約30度、左30度以上。頭骨の形成も左が若干小さい。このままでも将来歩行困難となるようなことはないが、若くして股関節痛などの症状がでる可能性があるため、リーメンビューゲルを装着して、臼 蓋の発達を促す治療を行う。4ヶ月をめどに装着し、最初の2ヶ月は24時間装着。以後徐々にはずしていく。動けないことがつらいらしく、泣くことはあるが、装具による痛みはなさそう。仰向けにしていると両足をほぼ水平になるくらい広げられる。仰向けに寝ていないと治療効果が少ないのでできる限り仰向けで寝させておいてほしいとの説明があった。しかしながらこどもの動きを制限することはないとのこと。

2002.6*. 装具になれたせいか、両足を動かしたり、両手で両足をつかんだりするようになってきた。2002.6**. 次回診察予定。以上、現在までの履歴です。
生後3ヶ月ぐらいからうつぶせで、両手両足をピント伸ばし、飛行機のような体制をすのが好きな子です。ハイハイの時も左右の足を使ってました。装具をつけていても両足を勢いよく蹴るので、肩への負担も心配です。
リーメンビューゲル装着の必要性と今後の治療方針について先生のご意見を伺えれば幸いです。お忙しいことと思いますがよろしくお願いします。

御返事

脱臼はなかったわけですから、リーメンビューゲル装着の目的は、股関節の発育をめざし臼蓋の発育を促すことを意図していると思います。リーメンビューゲル装着によって臼蓋の発育が促されるかどうかについてはいろいろ意見があり、個々の医師が判断していると思います。私達の考えはホームページに載せたとおりです。

この装具を脱臼の整復ではなく、股関節の発育をめざしたものであれば、ホームページに載せましたように下腿枕などをおいて股関節が開き過ぎないようにすれば特に害はないと思います。ただし、8ヶ月ですとこれから移動が活発になるので装着はだんだんむずかしくなってくるでしょう。

御質問138

大変内容の充実したHPですね。臼蓋形成不全で検索したところ御HPにたどりつきご質問させていただきたくメールした次第です。
息子は3ヶ月検診(実際には4ヶ月で受けることになりました)にて足の開きが悪いので専門医に診て貰うようにと言われ近所にある整形外科にて受診いたしました。検査はレントゲンのみ、結果は左側が軽度の臼蓋形成不全で脱臼は認められないため専用の器具にて治療しましょうということでサイズを測り、装着時には生後5ヶ月とちょっとたっていました。装着したのは先生のHPを見たところリーメンビューゲルのようです。装着したのは3日前ですがその際言われたことは「最初はいやがって3日くらい泣きっぱなしになることも良くあるけれどはずさないように、また激しくないてもなるべくだっこをしないで寝かせっぱなしにしておくように。そのうちなれると静かになる。またお風呂ははずして入ってよし。」でした。そうは言われましたがまだ小さい年頃ですので泣いた時はずっと抱いておりましたが、いまでもかなり器具をいやがっているようでミルクの量もかなり減ってしまいました。
先生のHPを拝見しましたところ大腿骨壊死の危険性があることや装着の際の注意点などいろいろあってかなり心配になりメールした次第です。先生のHPでは脱臼がない場合、器具をはめる必要がない場合もあるとのことですし、出来れば器具をはずしながらの治療を希望したいのですが、(本人が大変やだがっており親ばかですが不憫でなりませんので)やはり専門の病院にて受診したほうがいいのでしょうか。
お忙しい中大変恐縮ですがお教授おねがいいたします。


御返事

泣いた時はずっと抱いていた、というのはきわめて正しい対処の仕方だったと思います。このことは1980年代に学会において強調されたことです。議論の結論が、「泣いた時はだっこする、という親の基本的愛情が大切である」であり、極めて印象的でした。

こうした日本整形外科学会における研究成果が我が国において充分に生かされていないのは残念なことです。このホームページが少しでも小児整形外科学の発展に寄与できればと思っています。

脱臼がなく、臼蓋形成不全だけであれば自然治癒することが多いのですが、股関節の動きがよくないなどの所見があれば治療が必要です。やはり専門施設での診療が良いと思います。**県の小児整形外科専門病院は++++です。

御質問133

突然のメールで申し訳ありません。 先天性股関節脱臼のことについてお聞きしたいことがあり、メールを送らせて頂きました。
3ヶ月になる長女のことなのですが、生れた産院での3ヶ月検診で「股関節開排制限あり」と言われました。4ヶ月検診で詳しく診てもらうようにとのことでしたが、私が太ももの皺の左右差に気付いたのは2ヶ月近く前のことだったと思いますし、4ヶ月検診を待っての治療となると1ヶ月半〜2ヶ月も先のことになります。それまで放っておいてもよいのでしょうか?
症状の程度により治療の期間も違うでしょうが、早く治療を始めたほうが短い期間で治る、ということはないのでしょうか?
検診時には先天性股関節脱臼がどういうものか全くわからず、普通の脱臼のようにはめれば治る程度に考えていたので、何も詳しい話を聞きませんでした。後で調べてみると思ったより大変な治療が必要なようで、とても不安な気持ちでいます。
お忙しいところお手数ですが、アドバイスを頂けたら嬉しく思います。
よろしくお願い致します。

御返事

メールありがとうございました。
先天性股関節脱臼の治療時期についてはいろいろな考え方があります。我が国では様様々な理由から、3ヵ月くらいが最も良い時期と考える整形外科医師が多く、私も同感です。
ということで、近くの総合病院での検診を勧めます。

御質問128

突然の問い合わせ失礼致します。現在、1歳3ケ月になる長女の事で相談させて下さい。
13年1月*日誕生後、3ケ月検診の際股関節脱臼と診断され、リューメンビーゲルを装着し、その後、段階に応じて装着時間を短くしてゆき、5月に装着後、12月に経過観察しつつも、装具を外すことになりました。14年1月の検診の際は問題はなかったのですが、2ケ月後の今月(3/19)の検診にて、又、股関節が脱臼している旨の診察結果となり、3/26日に新たな装具を取付けることになっております。今回の装具は前回のものと異なり、紐状態のリューメンビーゲルでなく、更に固定度合いの強い装具が装着されるとの事です。前回の装着時は子供もハイハイも出来ない状況での装着でしたので、問題は少なかったのですが、今回は子供もヨチヨチ歩きをしており、又長期間装具を付ける事により、成長に問題がないのか心配しております。将来の為とは言え、一度外した装具を再度取付ける事は心情的にかわいそうになってしまいます。
お忙しいところ恐縮ですが、この様な事例の場合は今後どの様な処置が最善なのかアドバイス頂けますでしょうか?

御返事

リューメンビーゲル治療歴がある場合、歩行開始後にこのようなことがしばしばおこります。専門的には骨頭の外偏化と呼んでいます。
今、再び装具などで治療するかどうかは意見の別れるところです。詳しい専門的診察が必要です。

御質問124

はじめまして、貴病院のホームページを拝見させていただきました。娘(3月末で6ヶ月)の臼蓋形成不全の事でご相談させて頂きたく、メール致しました。お忙しい中大変恐縮ですが、よろしくお願いいたします。
これまでの経過について、ご説明させて頂きます。

1/** 小児科にて4ヶ月健康診断 左足開排制限に疑いがあるとの事で、整形外科を受診するように言われた。
2/* 整形外科を受診 レントゲンの結果、異常はないが、開きが悪いので2枚オムツで様子を見る事になり、1ヵ月後に再受診するように言われた
2/** 整形外科受診 左足の開きは変わりなく、別な病院(市民病院)を紹介された
3/** 市民病院を受診 整形外科にて撮影したレントゲンも持参したが、こちらの病院でもレントゲンを撮った
軽度の左足臼蓋形成不全との診断 リーメンを装着するか2枚オムツにするか聞かれ、2枚オムツを選択し、1ヶ月後に再受診するように言われた この時日常の下肢の取り扱いについての指導があった

先生のHPを拝見させていただき、現在の治療方法に疑問を持っています。
@やはり2枚オムツはよくないのでしょうか
Aもし2枚オムツがよくないという事でしたら、なぜこのような指導がされてしまうのでしょうか 
B現在の治療法を教えてください。リーメンを装着すべきかも迷っています

お忙しい中申し訳ございませんがよろしくお願いいたします。

御返事

メールありがとうございました。

ホームページに載せましたように、2枚おむつ、という考え方は誤っています。これは1970年代にはじまった脱臼予防運動が一部誤解されて広がっていったのが原因と考えております。そのためかなりの地域でいまだに誤解されたまま指導されているのが実情で学会でもたびたび問題になっています。


2/* 整形外科を受診 レントゲンの結果、異常はないが、開きが悪いので2枚オムツで様子を見る事になり、1ヵ月後に再受診するように言われた
2/** 整形外科受診 左足の開きは変わりなく、別な病院(市民病院)を紹介された
3/** 市民病院を受診 整形外科にて撮影したレントゲンも持参したが、こちらの病院でもレントゲンを撮った。軽度の左足臼蓋形成不全との診断 

という経過から推測すると脱臼の程度は軽いように思われます。2回にわたるレントゲン診断で別の医師が診断し、正常もしくは臼蓋形成不全、といっているわけですからすくなくとも明確な脱臼は考えにくいと思います。


もし、御心配であれば、++県であれば***が専門施設ですので、一度訪ねてみて下さい。

御質問123

教えていただきたいことがありましてメールをさせていただきます。
生後7カ月の娘は1カ月検診で、股関節の開きに左右差があると言われ、整形外科を受診するよう言われました。
母親の私自身が30数年前に0歳児の時に、股関節脱臼(亜脱臼や臼蓋形成不全だったのかもしれません。私の母親も記憶していないそうです)で**病院にてリーメンビューゲルをしていたため、娘も**病院の整形外科に連れて行きました。
そちらの先生はレントゲンと診察の結果、脱臼はしていない臼蓋形成不全と診断され、特に治療はせず、2カ月ごとにレントゲン撮影と診察をして戴いています。
生後1カ月末、3カ月末、5カ月末と3回レントゲンを撮りました。
今年の1月(生後5カ月)の時も「骨の位置はいいが、まだ臼蓋の成長が不十分なので経過観察」と言われました。

1月の時点では気づいていなかったのですが、最近娘の足を見ていますと、臼蓋形成不全である左足が右足に比べて明らかに短いのです。
2cmくらいは違うように思います。というより太ももから膝までの長さが既に左のほうが短いのです。今まで先生から足の長さの話はされたことがありません。左右の足は同じくらいよく動かしますし、寝返りも両方向にしますが、太もものしわの位置は明らかに違っています。
足の太さも左のほうが細く感じ、開き具合もやはり左のほうがやや固いような感触です。

そこで教えていただきたいのですが
@育児書では、「足の長さが左右違うのは脱臼している」と記載されていたのですが、娘の場合、脱臼はしていないと言われているのに左足が短いのはなぜなのでしょうか。
実はやはり脱臼している可能性があるのでしょうか。

AこちらのHPで、レントゲンでの臼蓋形成不全はエコーで見ると脱臼していることが多いと拝見しましたので、**病院の先生にもエコーを撮って戴きたいとお願いしたのですが「レントゲンで充分わかりますから」と言われて撮っていただけませんでした。
++に住んでおりますので、子供の股関節脱臼には小児病院なら専門だと思い受診を決めたのですが、他の病院を受診してでもエコーを撮ったほうがよいのでしょうか。

B0歳児に2カ月おきにレントゲンを撮ることの被爆の問題は心配しなくて良いのでしょうか。

C私自身は乳児期のリーメン以外何も治療も通院もせず、小、中、高校とリレーの選手をつとめるほど普通の生活をしていましたが、今後何か股関節に影響が出てくるのでしょうか。
すなわち、娘もそれほど長い間股関節を気にした生活をしなくてはいけないのかと思うとかわいそうに思います。

以上お忙しいなか、他府県からの質問で大変恐縮ですが、お時間のあるときにでもご解答いただければ幸いに存じます。
よろしくお願いいたします。

御返事

メールありがとうございました。
臼蓋形成不全にたいする治療方針はいろいろ議論のあるところです。しかし、ホームページに載せましたように、これまでの経験からおよそのことはわかっています。お子さんの場合には繰り返しレントゲン検査をしていますし、7ヵ月の段階でレントゲン的に臼蓋形成不全だけが問題であるならば、治療を必要とする脱臼、亜脱臼は無いと考えてよいと思います。
レントゲン被爆については3回ぐらいの検査では問題となりません(もちろん少ないにこしたことはありませんが)。1回のレントゲン量は、晴の日に1時間ひなたぼっこをした時の自然放射線量と同じと考えて下さい(昔のデータですが)。
下肢の長さの差についてはいろいろ難しい問題が有ります。まず計測のときに骨盤の傾きがあれば差がでるのは当然です。骨成長の不均衡があれば差がでます。骨成長の不均衡にはたくさんの原因がありますが、いま緊急に治療を要する場合は稀ですので、1歳過ぎで歩行開始まで様子を見て良いでしょう。

ということで、基本的には現在の病院を信頼して良いと思います。
独立歩行を始めたとき、歩行状態がおかしければ連絡してください。

御質問120

はじめまして、HPを読ませて頂きとても勉強になりました。自分ではなかなか判断がつきません。
どんな事でもかまいません、どうか御意見をお聞かせ下さい。

生後4ヶ月半になる女の子の事なのですがリーメンビュゲルを着けて4日目です。
出産した総合病院での1ヶ月健診では何も問題ありませんでした。市の4ヶ月健診時、
左股関節の開排制限が認められ大学病院の整形外科を紹介されました。

早速、翌日大学病院を受診し診察してもらってからレントゲンをとり帰宅。
6日後又受診して、レントゲンの結果を聞いたところ、『左の骨の発育が悪いと』言われ、同時に写真も見せてくれたのですが、右の骨に比べて左の骨が色も薄く小さくほんの少しだけしか写っていないようでした。
先生に『2ヶ月、装具をつけます』と言われただけでした。その日にリーメンビューゲルを装着する事になりました。

着け方を先生以外の人に指導されながら付けていただいている時に見ていられず『この子は痛くないのですか?』と聞いてみた『おさえてるから最初は何日か泣くかもしれないですけど,その内慣れますよ。この状態で動く分には問題ないです』と、とりあえず痛くはない様なことを言われたので少し安心して帰宅しました。次は2週間後の予定です。
HPで説明されていたような大腿骨頭壊死などの説明は何も受けていません。リーメンを装着していても良いのか不安になります。指導されましたが自分の着け方にもあまり自信がありません。やはり熟睡できないらしく目が覚ると泣き、抱っこすると又すぐ寝ますがその繰り返しです。大腿骨頭壊死が心配です。
1、この症状は、リーメン装着で治りそうですか?又、脱臼は一度なると癖になると聞きますが、
  いま治ったとしても女の子なので将来が心配なのですが。
2、Mサイズのオムツを使っていましたが、リーメンを装着するとウエストまわり足まわりに赤く跡が
  ついてしまうので4日目からLサイズに替えてみました。うっ血させない様にすることは大腿骨頭
  壊死の予防につながりますか。
3、短距離でもチャイルドシートへ固定するのは良くないですか。その際リーメンは外すのですか。
  これから予防接種を始めたいのですが、抱っこひも(立て抱っこ用)でバスで出かけられますか?
  それとも装着している期間はあまり出かけない方が良いですか。
  質問も沢山あってすみません。どうか御返事を宜しくお願い致します!!

御返事

「翌日大学病院でレントゲンをとり『左の骨の発育が悪いと』言われ、同時に写真も見せてくれたのですが、右の骨に比べて左の骨が色も薄く小さくほんの少しだけしか写っていないようでした。」ということをそのまま信じるならば、完全脱臼ではないように推測されます。

まず、御質問のお答えですが、

1、この症状は、リーメン装着で治りそうですか?又、脱臼は一度なると癖になると聞きますが、
  いま治ったとしても女の子なので将来が心配なのですが。

これは診察しないとわかりません。

2、Mサイズのオムツを使っていましたが、リーメンを装着するとウエストまわり足まわりに赤く跡が
  ついてしまうので4日目からLサイズに替えてみました。うっ血させない様にすることは大腿骨頭
  壊死の予防につながりますか。

ウエストまわり足まわりに赤く跡がつくことと大腿骨頭壊死は無関係です。しかし、赤ちゃんの皮膚の発赤ができるのはこのましくありません。

3、短距離でもチャイルドシートへ固定するのは良くないですか。その際リーメンは外すのですか。
  これから予防接種を始めたいのですが、抱っこひも(立て抱っこ用)でバスで出かけられますか?
  それとも装着している期間はあまり出かけない方が良いですか。

完全脱臼であればはずしてはいけませんが、臼蓋形成不全であれば短期間はずしても構いません。立て抱っこ用抱っこひもでバスはOKです。
外出に制限はありません。

リーメン装着については通常きめ細かい指導があるはずですが、もしなければ主治医に納得行くまで遠慮なく聞くのが良いと思います。

御質問119

はじめまして
私には現在11ヶ月の男の子がいます。逆子だったため帝王切開の予定でしたが、お腹の子が小さかったため(2628グラム)自然分娩(骨盤位)で生まれました。
1ヶ月検診で市の保健婦さんが骨盤を調べた際 変な音がすると言われたので自分たちで調べたところ、足の長さ、しわの数等股関節脱臼の症状と一致したのでお産をした病院と整形外科へ連れて行きました。両方の病院で大丈夫と言われたの安心していたのですが、最近立たせてみると右足はしっかり着くのに左足はつま先しか着かず、はいずっていても左足をあまり使わないので心配になり他の病院へ連れて行ったところ完全に脱臼していると言われました。
11ヶ月以前にも脱臼の症状はあったのですが病院で大丈夫と言われたので安心しきっていた私も悪いのですが、この子の一生にかかわることなのでどうにかして治してやりたいのです。
11ヶ月でも股関節脱臼は治るのでしょうか

御返事

メールありがとうございました。
先天性股関節脱臼検診での見落としは最近増加しており、前にも書きましたが今後大問題となってゆくはずです。

さて、お子さんの場合は、画像を見ると左股関節の完全脱臼です。そしてそれに伴った高度の臼蓋形成不全があります。
まず、脱臼の整復を行わねばなりませんが、歩行開始後の治療ですので簡単ではないことをしっかり頭にいれておいてください。
整復はいくつかの方法があります。
1)いきなり手術的整復
2)オーバーヘッドトラクション、ギブス、牽引、
3)全身麻酔下に徒手整復、ギブス
4)リーメンビューゲル、全身麻酔下に徒手整復、ギブス
5)開排位持続牽引整復法

1)、2)、3)が我が国では一般的と思います。2)、3)については年齢的なことを考えると成功する確率はそれほど高くありません。したがって手術に至るケースがおおくなります。
5)は私達が1993年からおこなっている方法です。現在のところ成功率は97.7%です。

手術的整復はできれば避けたいのです。なぜなら、合併症の発現が少なくないからです(小さいものをいれれば約50%に出現)。5)はそのために開発された方法です。
お子さんの場合には、整復された後、臼蓋の発育が悪ければ追加手術が必要です。この追加手術は手術的整復と異なり安全で、確率された手術です。
今、お子さんの一生が係っています。

それではがんばってください。

御質問118

初めてメールをさせていただきます。昨年12/**日に生まれた次女は、いつも右足をたてていました。(M型蛙の足で はない)開き具合もおかしいし、生後一ヶ月で整形外科を受診しました。「お母さん、はずれてますね。」と言われ、これならまだいけそうだということで、ベルトを付けられました。リーメンビューゲルというのでしょうか?着用後も足は立てたままでしたが、3週間後にベルトをゆるめてもらって、きれいなM型になり、「開き過ぎるとよくないから左足の下にタオルをあてておくように」指導されました。タオルを当てるのはどちらの足なのでしょうか?家に帰ってから気づいたのですが、主治医に書いてもらった診断書には「左足股関節の亜脱臼」とあり、実際に脱臼しているのは右足です。もし、医師が脱臼している足を勘違いしたままタオルを当てる足を指導されていたのであったら、足の状態が悪化しないかと心配です。「左右の差が3mmで正常範囲内にはまっています。」といわれるのですが、それは「治った」ことにはならないのでしょうか?リーメンビューゲルをつけていても大丈夫なのでしょうか?今ひとつ納得のいく説明を受けられず、不安な気持ちで毎日を過ごしています。アドバイスをよろしくお願いいたします。

御返事

リーメンビューゲル装着の場合、股関節が開き過ぎないようにすることが重要です。そのために下腿に小枕をいれて、開き過ぎないようにするわけです。この場合、脱臼側がどちらであれ、左右におこなうのが原則です。

外来診察でのリーメンビューゲル装着は、脱臼の程度が軽い場合(タイプA)であれば問題は少ないと考えられますが、脱臼度が強い場合には問題になります。

専門医で一度診察しておいたほうが安心と思います。

御質問116

小学3年生の娘は生後4ヶ月の検診で臼蓋形成不全と診断を受け4ヶ月程リーメンビューゲルを装着しました。予後は順調ですが小学校1年から毎年1回股関節の痛みを訴えます。整形外科ではレントゲンを撮り骨には異常無しということで、毎回股関節炎と診断されますが、以前の臼蓋形成不全と関係はありますか?臼蓋形成不全と股関節炎の脚は同じです。

御返事

メールありがとうございました。
小学校1年から毎年1回股関節の痛みを訴え、整形外科ではレントゲンを撮り骨には異常無しということであれば心配ないと考えます。
臼蓋形成不全と股関節炎は無関係と考えます。

御質問113

はじめまして。生後6ヶ月の娘のことで初めてご相談させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
娘は昨年7月**日に産まれ、生後2ヶ月半のときに、左股関節脱臼と診断されました。おそらくタイプCだと思われます。その後、10月**日にリーメンを装着し、数日おきの入浴時以外は常時装着した状態で3ヶ月が経過し、それでもよくならないので、今度は**医大の先生を紹介され、今年1月**日に転院いたしました。
転院して、最初の1週間はリーメンをはずすように指示され、そして1週間後の1月**日に再び装着、2月*日の診断で、「後ろへ落ちている。これ以上はリーメンでは無理でしょう」ということで、入院による牽引が必要だと指示されました。医大への入院をと言われましたが、長期の入院になるのであれば、実家での入院が良いのかとも思い、現在検討中です。
知人の紹介で、別の整形外科医にセカンドオピニオンを求めたところ、「すぐに牽 引」という手もあるが、リーメンをはずした期間は1週間だけなので、もっと長く(1〜2ヶ月)自由にした後に、再度リーメンをチャレンジする方法もあると言われました。そしてそんなとき、こちらのホームページに出会ったのです。いろいろと勉強させていただき本当に感謝していると同時に、もっと早く出会っていればよかったと悔やまれます。
今、振り返ってみると、最初にかかった医者は、股関節脱臼の診断経験があまりなかったのではないかと感じます。リーメン装着時も、機能に関する多少の説明はありましたが、ひどく泣いたときははずすといったリスクや注意事項の説明は全くなく、3ヶ月間、ベルトの調整もほとんどなく、やったことと言えば、私が3週目以降、娘の成長に合わせて数回ベルトを緩めたことくらいでした。装具が正しく装着されていなかったために、うまく整復されなかったのではないかとの思いもあり、再度チャレンジしてみたい気持ちもありますし、これまで完全母乳・添い寝で育ててきたので、この時期の長期入院にはとても不安を感じます。とはいっても、こちらのホームページには、タイプCの場合は、リーメンでの効果は薄いと書いてありますし、結局、入院するということになるのなら、先延ばしにせず今した方がいいのかと本当にどうしたらいいものか悩んでいます。そこで、お忙しいところ本当に恐縮ですが、以下のことについて教えていただければ幸いに存じます。

1,入院はできるだけ早くした方がいいのでしょうか。数ヶ月先に延ばすことにどんなデメリットがあるのでしょうか。

2,骨頭壊死になっていないでしょうか。それはMRIでわかるものなのでしょうか。
3,オーバーヘッドトラクションとは、どんな手順でおこなわれるのでしょうか。
4,OHTでの壊死への予防は信頼できるものなのでしょうか。
5,開排位持続牽引整復法を行っている医療機関はどこかるのでしょうか。

御返事


生後2ヵ月半で脱臼が発見され、3ヵ月のリーメンビューゲルを装着し、6ヵ月現在整復位置に無い、となるとタイプC脱臼と考えられます。
この段階からの治療にはいくつかの選択枝があります。
1)一定期間を置いたのちに再度リーメンビューゲルを装着する。
2)オーバーヘッドトラクション法
3)全身麻酔下に徒手整復、ギブス固定
4)開排位持続牽引整復法

それぞれに利点欠点があります。
1)は、もしほんとうにタイプCであれば無駄と思われます。また合併症のことを考えれば勧められません。
2)3)は正しく行えば決して悪い方法ではありません。ただし、ごく少数ですが合併症を覚悟しなければなりません。
4)は私達がおこなっている方法です。もちろん合併症がまったくないわけではありませんが、1)2)3)よりは有意に合併症が少ない方法です**県の近くでは、**先生がこの方法を実践しています。

御質問にお答えいたします。

1,入院はできるだけ早くした方がいいのでしょうか。数ヶ月先に延ばすことにどんなデメリットがあるのでしょうか。

緊急性は有りませんが、できるだけ早くすべきです。数カ月先に延ばしても、もちろん正しく整復することはできます。しかし、脱臼を長く放置しておけば、そのことによる変形がさまざまなところに出現し、治療を困難にします。また、変形が高度になれば、後に変形矯正の手術的治療を余儀無くされる確率が高くなります。すでに整復されないまま3ヵ月間リーメンをつけていたわけですから、臼蓋後方の形成不全など、変形はかなり出現していると考えなければなりません。
ということで、早く治療を開始すべきです。

2,骨頭壊死になっていないでしょうか。それはMRIでわかるものなのでしょうか。

一度も整復されていないとすれば壊死はおこりません。心配ないでしょう。

3,オーバーヘッドトラクションとは、どんな手順でおこなわれるのでしょうか。

入院の上、水平牽引、垂直牽引、オーバーヘッド牽引、外転での牽引という順序で行います。整復率およそ70-80%と思われますが、最終的にはこの方法で整復されなくとも、徒手整復が容易になり、整復率はかなり高くなります。当然の事ですが、子供病院での入院が勧められます。大人の中での赤ちゃんの治療は看護体制、感染症対策、その他いろいろな意味で問題があります。

4,OHTでの壊死への予防は信頼できるものなのでしょうか。

OHTは優れた方法であり、かっては私達もおこなっていました。壊死の確率はリーメンビューゲルより低いと思われます。

5,開排位持続牽引整復法を行っている医療機関はどこにあるのでしょうか。

すでにお答えしたとおりです。

いまがお子さんの一生を左右する重要な時期です。がんばってください。その後の結果もお知らせ下さい。

御質問112

はじめまして。お忙しいところ申し訳ありませんが、今、本当に悩んでます。御返事をよろしくおねがいいたします。

娘は平成13年2月*日生まれです。 平成13年5月**日 個人医院にて、股関節のレントゲンをとり、そこで、脱臼ぎみ、(左足)、 臼蓋形成不全の疑いがあると診断され、県立病院の整形外科を紹介され、翌日に県立病院にいきました。そこで、すぐにリーメンビューゲルを装着と診断され、5月**日、リーメンを作るためにサイズをはかり、5月24日に装着しました。医者からは、かなり泣くかもしれないが、だっこして、なだめたりしてあげてください。1週間ほどで、慣れます。といわれ、その夜は、大泣きし、夜も眠れないほど、ないていました。入浴はだめで、からだをふいてあげていました。8月2日から入浴しても良いといわれ、そのときだけはリーメンをはずしました。そして8月**日、リーメンがとれました。その後4週間ごとに検診に行き、9月から12月までは異常ありません。順調です。といわれていましたが、今年平成14年1月**日に検診に行ったとき、また少し骨がずれはじめてきている。といわれ、いままでは正常だった右もずれ始めている。といわれ、その原因は、ふとももの外側の筋肉がつよすぎるから、骨がひっぱられているということと、1人立ちや、伝い歩きを始めたこと。の2つでした。そして、2月1日の午後、医師から自宅に電話があり、早急に入院して、ひっぱる治療をしましょう。といわれたので、2がつ4日から入院し、現在、片足に1.5キロのおもりをつけ、からだは、ベッドに固定し、(あおむけ)、動けない状態です。この状態を2〜6週間続けるとのことです。
 こちらのホームページをよんでいると、現在の治療もとても不安ですし、リーメンがいけなかったのかとか、親である、自分の勉強不足で、
子供につらいおもいを、させているのではと不安でしかたありません。どうか、アドバイスをよろしくおねがいいたします。

御返事
メールありがとうございました。
1才になり、立位開始とともに股関節が不安定になった状態、と理解しました。
問題はこの不安定性がどの程度であるかということです。もし不安定の程度が強く、跛行や内転筋の拘縮があれば治療の必要があります。現在入院して牽引(これは開排位持続牽引とは違うと思いますが)しているということですから、不安定性が強いと判断されているものと思われます。

牽引の後には、自由にして経過を見るだけなのか、装具を装着するのか、あるいは手術的治療をおこなうのか、さまざまな選択枝があります。1才という年齢を考えると治療方針を決めることも、また治療そのものもむずかしくなります。

まず、牽引を行った後にはどのような治療方針をとるのかしっかりと主治医に尋ねることが重要です。その結果、御家族が納得すればそのまま治療を続けるべきですし、なにか疑問が残るようであれば小児整形外科専門医を訪ねたほうがよいと考えます。

以上御検討ください。

御質問111

こんにちは。先股脱についてお聞きしたくメールを送らせて頂きます。
先月の*日に3188gの女児を出産しました。産婦人科に入院中に左足が股関節脱臼ではないかと思っていたのですが、退院時の小児科の検診時には大丈夫と言われました。しかし、どう見ても(素人の私が見ても)納得いかなく、とりあえず1ヶ月検診まで待とうと思いました。納得いかない理由としましては、
@向き癖がある
A太もものしわの数が違う
B左足の長さが短い
C左足の動きが悪い・伸ばすことが少ない
です。

2月*日の1ヶ月検診では、やはり臼蓋形成不全・股関節脱臼と診断され専門の整形外科受診を勧められました。そちらの病院の場合やはり、治療方法としては、入院から始まり、ギブスをしてリーメンビューゲルという事になるのでしょうか?
私自身、先股脱で重症だと診断され、生後4ヶ月頃からリーメンビューゲルを装着し、外してからも12年間通院し完治しました。(28年前です)
多少時間がかかっても、入院しないで治療は出来ないものでしょうか?
あと1つ、気になる事があります。Bで述べた足の長さなのですが、2cm程、差があります。診察してみないと詳しい事は分からないとは思いますが、これほどの差は、かなりの重症なのでしょうなのでしょうか?真の脱臼なのでしょうか?
まだ、1ヶ月ですが、すぐに受診して治療へ移れるのですか?
お忙しいとは思いますが、至急お返事頂ければ幸いです。

御返事

メールありがとうございました。
臼蓋形成不全・股関節脱臼と診断されているとのことですが、まず重症度を診断することが必要です。本センターでは、重症度によって治療法を選択しております。軽度であれば、外来通院で経過だけをみることもありますが、そうでない場合には入院治療が必要です。昔はリーメンビューゲルを外来で装着して治療していたのですが、この方法ですとかなりの確率で障害が発生することがわかっています。このことは、日本中の施設から報告されています。
お母さんが先天性股関節脱臼であったならば、この疾患の重要性は充分にわかっておられると思います。お子さんにとって最良と考えられる方法をとるべきです。

下肢の長さの差は、骨盤の傾きなどによって影響を受けますので、実際に診察してみないとわかりません。

御質問107

私は**県に住む、4ヶ月 男児の母です。
一応看護婦なのですが、学生時代から整形は苦手で・・シロウト同然です。おととい、4ヶ月検診にて股関節の動きが悪いことを指摘されました。それまで、私は、硬いと感じなかったので驚きでした。左右差も感じませんでした。4ヶ月に入ってすぐ寝返りが出来ています。昨日、整形外科を受診しX線でみたところ、脱臼はないが臼蓋形成不全があるとのことでした。生活指導のみで装具はなく、2ヶ月後にまた様子を見るということになりました。脱臼ではなかった、ということでヤレヤレと安心していたのですが本日、貴院のサイトに巡り会い開排制限を有し、X線画像上「脱臼は無いけれど臼蓋形成不全を認める」という症例では、前方操作法による超音波診断を行うと「ほとんどの場合脱臼を伴っている」ということが明らかになったのです。という説明をみて、不安になってしまいました。

質問・その1
別の病院に行き、超音波断層像や MRI によって詳しく見てもらった方が良いのでしょうか。


質問・その2
障害の程度によって治療方針が違ってくるとのことですがサイトに書かれている 「タイプ AI-I」「タイプ AII 」などの分類は全国共通の表示なのでしょうか?私が受診した整形外科で、「この子はタイプ何でしょう?」と聞けば意味が通じるのでしょうか?

質問・その3
この子はいわゆる「おデブ」で、出生時3700g、4ヶ月で8900gもあり、太股もムチムチしています。紙オムツはLでぴったりです。股に肉が付きすぎて、開脚しにくいということはあるのでしょうか?

オムツについてですが
検診の小児科と整形外科ともに「股がよくひろがるように」「布おむつを」と指導がありましたが、貴院のサイトでは「薄く 幅の狭い」オムツをと書かれていたので驚きました。
お仕事お忙しい中、的を得ない・返答に困るような質問をしてしまって申し訳ありませんが、もしお時間が許されましたらお返事いただけますでしょうか?

貴院のサイトの内容充実度、また質問に親切丁寧な対応をされているのを読み、とても感激しました。患者さんへの愛情を感じました。特にオムツのことなど、私は誤った方法をとってしまうところでした。今日ほど、インターネットをやっていて良かったと思ったことはありません。このような情報を提供していただいて、本当に感謝致します。ありがとうございました。

御返事

メールありがとうございました。
4ヵ月男児で、開排制限があり、レントゲンでは脱臼はなく臼蓋形成不全であったと理解しました。レントゲン診断が正しいとすればタイプA I-IIの脱臼と推測され、大多数はそのまま様子をみても自然治癒します。ただ、臼蓋形成不全が著しければ治癒までの期間が長いので、私達のところではそのような場合には1997年から治療をするようにしています。

御質問にお答えいたします。
質問・その1

別の病院に行き、超音波断層像や MRI によって詳しく見てもらった方が良いのでしょうか。

御心配であれば、レントゲンで本当に脱臼はないのか?、臼蓋形成不全は著しくないのか?、ということを確かめれば良いと思います。

質問・その2
障害の程度によって治療方針が違ってくるとのことですがサイトに書かれている 「タイプ AI-I」「タイプ AII 」などの分類は全国共通の表示なのでしょうか?私が受診した整形外科で、「この子はタイプ何でしょう?」と聞けば意味が通じるのでしょうか?

タイプ分類はまだ全国共通ではありません。国際的には認められ、少しずつ広まっているところです。


質問・その3
この子はいわゆる「おデブ」で、出生時3700g、4ヶ月で8900gもあり、太股もムチムチしています。紙オムツはLでぴったりです。股に肉が付きすぎて、開脚しにくいということはあるのでしょうか?

無関係です。

御心配なことがあればいつでも御連絡ください。その後の経過もお知らせ下さい。

その後のおたより

さっそくのお返事どうもありがとうございました!
正直言って、こんなに早くお返事がいただけるとは思ってもみませんでした
日々診療でお忙しい中、無償のボランティア精神でここまでしてくださるとは・・
感激です。

お返事のことですが

**県では超音波診断はしていないのですね。タイプ分類もまだまだ全国には普及していないのですね・・わかりました。

前回受診時、臼蓋形成不全の「程度」について伺うのを忘れてしまいました。そうですね、軽度から重度まであるんですよね、うっかりしていました。脱臼でない、と言われただけで安心してしまって・・・次回受診時(2ヶ月後)には、もっとしっかり聞いてきます。「CE角」とか、開排角度を聞いてくればよいでしょうか。その時はまたメールでご報告させて頂きたいと思いますので
どうぞよろしくお願い致します。

レントゲン写真もない、メールだけの要領を得ない相談にも快く回答くださって、本当にありがとうございました。何の問題もなくパスできると思っていた健診で思いがけない結果となり落ち込んでいたのですが、すばらしいサイトに巡り会い、鈴木先生に親身に相談に乗っていただけて、とても心強く、励まされました。 気を取り直して頑張ります!

長くなってしまいましたが、最後に・・
貴サイト「医学生コーナー」にありました「医療行為にやりがいを感じ、患者さんの喜びを自分の喜びとすることができる」という感性がなければなりません。というお言葉に感銘を覚えると共に、私自身の過去の看護婦としてのあり方を反省いたしました。今回、鈴木先生はじめいろんな方々から受けたご厚意を、いつか、今度は私達親子から社会にお返ししよう・・・と心に決めました。

本当にありがとうございました!!

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御質問104

現在1歳1ヶ月の女児の母です。生後4ヶ月で右足の先天性股関節脱臼がわかり、5ヶ月から6ヶ月の4週間入院し、牽引治療をしました。その後、8ヶ月ごろまでは足を開いた状態にする固い装具をつけ、その後、10ヶ月まではリーメンビューゲルをつけていました。その後、装具はなく、今は経過観察の状態です。
主治医の先生は普段はエコーを使っての診察で、先日、1歳の時点では入院時以来、2度目となるX線をとりました。
その結果、素人の私が見てもわかるくらいに、足の骨の上の部分にできている丸い骨(臼蓋?)の大きさがちがいました(脱臼していた右のほうが小さかったです)。このことを先生にお伺いしたところ、「正常な赤ちゃんの場合でもちがう場合があり、心配することはない」とのことでした。また、特に日常の生活で注意することもなく、次は4ヶ月後の診察でいいとのことでした。ただ、1歳1ヶ月の現時点で、まだ「はいはい」ができない状態(もちろん伝い歩きなどもまだです)なので、先生はそのことを少し心配されていて、4ヶ月後にまだ「はいはい」できないようなら、小児神経科を紹介するとのことでした。(ただ、同じ病院内の小児科の先生は心配することはないと言っておられます)
そこで質問なのですが・・・
1. 先天性股関節脱臼は完治した、と言えるのでしょうか?
2. 今後、きっちりと経過観察を続けていくことで、変形性股関節症などの病気を必ず防げるのでしょうか?
3. 15歳くらいまで1年に1回くらいの診察のようですが、そのたびにX線を撮 られるのでしょうか?(「1歳以上になると、エコーでは見にくくなる」と先生はおっしゃっていました) その場合、その被爆による副作用は本当にないのでしょうか?
以上、お答えしていただきたく思います。
主治医の先生にお伺いすべきことだとは思いますが、初めての子供がこういう病気になってしまい、第3者の先生のご意見をお伺いしたいという気持ちをわかっていただきたく思います。決して主治医の先生を信頼していないわけではないのですが・・・・。
よろしくお願いいたします。


御返事

メールありがとうございました。
通常脱臼側の「足の骨の上の部分にできている丸い骨」は小さいのがふつうです。経過が順調であればそのうち反対側に追い付きます。小さいこと自体は心配ありません。脱臼がただしく治療され(整復され)ていれば問題ありません。歩行が遅れるのも普通です。神経学的に問題がなければ(すなわち脳性麻痺その他の疾患がなければ)問題ありません。そのうち歩行開始します。

質問にお答えいたします。

1. 先天性股関節脱臼は完治した、と言えるのでしょうか?

これは診察しないとわかりません。主治医が経験あるの医師であれば信頼してよいでしょう。

2. 今後、きっちりと経過観察を続けていくことで、変形性股関節症などの病気を必ず防げるのでしょうか?

防げます。

3. 15歳くらいまで1年に1回くらいの診察のようですが、そのたびにX線を撮
られるのでしょうか?(「1歳以上になると、エコーでは見にくくなる」と先生はおっしゃっていました) その場合、その被爆による副作用は本当にないのでしょうか?

股関節の状態によります。問題があれば年1度撮影が必要かもしれません。私達は順調であれば、5才、8才、12才、成人後、にそれぞれ1度撮影します。
もちろん年に数回撮影しても、それぐらいの被爆は問題となりません。

それではがんばってください。

御質問100

明けましておめでとうございます。 お仕事ご苦労様です。
年始早々お忙しいところ誠に恐れ入りますが、以下に内容につきご意見賜れば幸いです。
さて、昨年10月**日に**より息子の先天性股関節脱臼の件で先生の診察を受診させて頂きました。その節はお世話になり、ありがとうございました。息子は現在、生後11ヶ月になり、11月中旬頃よりハイハイをするようになり、今はまさにつかまりだちをしようとしている状況です。
10月22日の診察の際に、持参させて頂きましたレントゲンと、エコーなどの診察の結果、「最初から股関節脱臼をしていなかった可能性が高い」ということをおっしゃって頂き、安心しておったのですが、現在のハイハイの格好が左右対称でないことに一抹の不安を感じています。 右足は膝を床からあげお尻を持ち上げてのいわゆるたかばいの格好になっており、左足は膝をつけての通常のハイハイの格 好で前に進むのです。 たいていいつもそうなのです。お座りする時の格好に不自然さは特に感じられません。 また、立たせた時の足のつっぱり具合というか、左右差は特に感じられません。これは一体何を意味するのでしょうか。 3ヶ月リーメンを装着していた際に成長が阻害され、その結果左右の足の筋肉に差が出たのでしょうか?それとも、股関節の角度に差が有る為なのでしょうか? 「歩き始めてから再度受信を」ということでしたが、それまでこのままで大丈夫でしょうか?
お忙しいところ恐れ入りますが、コメントを頂けますでしょうか。どうぞ宜敷くお願い申し上げます。

御返事

結論から言って心配ないと思います。
ハイハイからつかまり立ちの過程で、このような非対称性はよくあることで、股関節とは無関係と考えます。独立歩行が出来てから診察予定になっていると思います。それまで様子をみて良いでしょう。

それでは次回の診察をお待ちしております。


御質問91

こんばんは。はじめまして。私も医師なのですが、貴ホームページをみて大変感動いたしました。常に最新の情報に基づき、治療をされているからです。勉強させていただきました。ありがとうございます。

さて1歳になる息子のことで、悩んでいますので、お忙しいことと思いますが、質問させてください。
母親が変形性股関節症のため、乳児3ヶ月で股関節のレントゲンをとり、臼蓋形成が不十分だといわれました。股関節脱臼は、認められていません。1歳のとき、角度が30度なので、装具をすすめられました。装具は、開脚位で固定するもので、少なくとも1年つけるように言われました。(古い先生ですが、股関節の権威と言われている方です。)
息子は、開排制限もなく、順調に成長し、自由に歩いています。不安定性はありません。
貴ホームページで、装具装着は望ましいものでないという点で、私も同意いたしました。
このような場合、装具療法の可否について、専門的お立場からもう少しご意見聞かせてくだされば、幸いです。
ご多忙中誠に申し訳ありませんが、よろしくお願いします。

御返事

メールありがとうございました。
1歳になる息子さんの股関節臼蓋形成不全についていろいろ判断に迷われておられると思います。
1才でレントゲンによって脱臼は無いが、臼蓋角が30度であった場合、そのまま経過観察をする先生が多いと思いますが、昔の先生であれば装具装着を勧められる方もおられるかもしれません。いまから20年以上前の整形外科学会でもこのことが話題になりましたが、大方の意見は、脱臼のない臼蓋形成不全は特別な治療を要しない、というものだったと記憶しております。

私達の装具についての原則的立場は、「効果が科学的に証明されている、あるいは理論的に効果が確実であると考える場合には厳格に装具装着をおこないますが、効果が証明されていない、あるいは理論的にも問題が有る場合には装具治療に対しては慎重であるべき」というものです。お子さんの場合に装具を1年以上行うというのは、「効果が証明されていない、あるいは理論的にも問題が有る場合」に相当すると考えます。

まず、脱臼のない臼蓋形成不全にたいして装具療法が有効であることを示す科学的証明はありません。
次に、理論的にも装具治療には問題があります。装具自体によって直接的な害は無いと考えますが、もし数カ月以上装着するとなれば、装具によって股関節伸展位での運動は出来なくなる為、外転筋発育が抑制されてくるはずです。そうすると骨頭を臼蓋内に安定させる力も弱くなり、臼蓋のY軟骨を押し広げる力も弱くなります。さらに外転筋が働きにくいことにより臼蓋を外に傾ける力も弱くなり、また股関節を屈曲位に保つことにより大腿直筋によって骨頭を覆うための臼蓋を前外方に引き下げる力も働かなくなるはずです。結果的にはかえって臼蓋形成不全をさらに悪化させるかもしれません。
また、精神的な影響も考えなくてはなりません。この時期の子供の知的、精神的成長は著しいものです。知的、精神的発達は、自分の意志で自由に移動し、見たりさわったりして促されてゆきます。この大切な時期に1年以上にわたって移動能力を奪うのはよいことではありません。

脱臼のない臼蓋形成不全が放置して取り返しのつかないことになるのであれば問題ですが、5才くらいまで残存しても、現在では確立された安全な手術によって完全な股関節を形成することができます。

以上のようにさまざまな理由から、お子さんの場合には装具療法は必要無いと考えます。今後は、1年に1回の検診で良いと思います。

御質問の続き

こんばんは、先日メールでお尋ねさせていただいた**です。お忙しいところ、メールでの質問に対して、迅速にかつ丁寧に返信してくださり、本当にありがとうございました。*******

装具をつけず、経過観察したいと思います。そこでお忙しいところすいませんが、先のことが少し不安なので、質問させてください。すいません。

1、経過観察した場合、だいたい何年くらいで、正常化(臼蓋角20−25度)しますでしょうか?男の子の場合、早いということはありませんか?

2、もし5歳になっても、、臼蓋角30度のままでしたら手術した方がいいのでしょうか?それともまだ経過観察してもいいですか?
骨成長が止まる12歳ごろまだ臼蓋角30度のままでしたら、やはり手術でしょうか?

3、経過観察中には、激しい運動は避けたほうがいいですか?脱臼に発展する可能性がありますか?また水泳などで股関節周囲の筋肉を鍛えたほうがいいのでしょうか?

4、いろいろ医学文書を調べるですが、なかなか先生のような生きた情報を見つけることができません。なにかお勧めの本は、あるでしょうか(専門的な書物でもかまいません)?

ご多忙中、たくさん質問して本当にすいません。もしよろしければ、ご教示してくださればうれしく思います。
いろいろとありがとうございました。失礼いたします。

御質問の続きに対するお答え

メールありがとうございました。
質問にお答えいたします。

1、経過観察した場合、だいたい何年くらいで、正常化(臼蓋角20−25度)しますでしょうか?男の子の場合、早いということはありませんか?

過去の調査では、ほとんどが2-3年以内に改善しています。

2、もし5歳になっても、、臼蓋角30度のままでしたら手術した方がいいのでしょうか?それともまだ経過観察してもいいですか?
骨成長が止まる12歳ごろまだ臼蓋角30度のままでしたら、やはり手術でしょうか?

手術の適応は臼蓋角だけでは決まりません。歩行の状態、関節の不安定性、CE角、臼蓋の形などを参考にします。もし5才の時点で臼蓋角30度以上で、CE角が5度以下であれば一応Salter 手術の適応とはなります。また、レントゲンの推移も参考になります。
12才では臼蓋角よりもCE角が重要となります。CE角が12才で15度以下であれば手術が必要です。この場合の手術は triple osteotomy がよいと考えます。15-20度は迷うところです。20度以上あればまあまあです。25度以上あれば問題ありません。

3、経過観察中には、激しい運動は避けたほうがいいですか?脱臼に発展する可能性がありますか?また水泳などで股関節周囲の筋肉を鍛えたほうがいいのでしょうか?

脱臼は無い臼蓋形成不全で、1才過ぎてから改めて脱臼がおこった例は経験ありません。運動の制限は不要です。水泳はもちろん良いことです。

4、いろいろ医学文書を調べるですが、なかなか先生のような生きた情報を見つけることができません。なにかお勧めの本は、あるでしょうか(専門的な書物でもかまいません)?

Lovell and Winter's Pediatric Orthopaedics ( Raymond T. Morrissy, Stuart L. Weinstein ) 5th edition Lippincott Williams & Wilkins を勧めます。ただし、これも成書ですので、現在の進歩のスピードについてゆくには、Journal of Bone and Joint Surgery, Journal of Orthopaedics, などの雑誌が必要です。

御質問87

突然のメール大変恐縮です。
私は***にて前期研修を受けており、先天性股関節脱臼の患児を受け持たせてもらっている研修医です。
以前、先生の乳児先天股脱セミナーに出席させて頂いたことがあります。
当院にて右先天性股関節脱臼にて現在入院治療中の1歳1ヶ月の患児について、失礼とは存じますが可能でしたら先生のご意見を伺えないかと思い一筆書かせて頂きました。

以下、これまでの経過を簡単に説明させて頂きます。

患児は既往歴として出生児より軽度の胸郭の変形、側弯(Cobb角20°)があり、出生時に新生児一過性多呼吸として入院加療されておりました。その後も体幹筋の筋力低下を指摘されておりますが、確定診断としての病名はついておりません。首の据わりは7ヶ月頃で、現在はお座りができる程度です。知能発達遅滞はないようです。

当院4ヶ月検診にて両側先天性股関節脱臼および両側臼蓋形成不全と診断しました。持続開排牽引法にて両側とも整復位となりギプス固定後リーメンビューゲルとしておりました、その後、右股関節の再脱臼を来しました。(おそらく私の診断ミスでギプス内ですでに再脱臼していたのだと考えております。左股関節は整復位で安定しているようです)。
11ヶ月の時点で再入院の上、再び持続開排牽引を行いましたが整復が得られず、牽引の角度をいろいろと調節し、結局は垂直牽引が最も有効と考えられ、垂直牽引としました。
 現在の股関節の状態としては垂直牽引中は臼蓋内背側縁に骨頭があるような状態であり、牽引していなければ常に背側に脱臼しています。整復後に開排位とすれば臼蓋背側縁にかかった状態で臼蓋内には入っているのですが、患児が力を入れると後方へ脱臼しようとします。

以上ですが、患児は現在体重約6.5kgで、2.5kgの垂直牽引を1日約8時間ほどできている状態です。垂直牽引に変更してから約1週間で臼蓋内にまで牽引できるようになり、その後更に3週間を経ましたが、臼蓋の求心位にまで達しないためMRIを施行しました。関節唇の肥厚・内反と思われる所見を認め、それらが整復阻害因子になっているのかと考えますが、このまま現在の牽引を継続していくのがよいか、持続開排牽引へ変更していくのがよいかなど判断に迷っており、先生のご助言をいただければと考えております。

レントゲン写真、MRIの画像を貼付で付けさせていただこうかとも考えましたが、データが大きくなりすぎ、ご迷惑かと考え今回は見送りました。(もし、ご迷惑でなければいくつかの画像をメールで送るか、日時の都合が付くようならこれまでのフィルムを貴院へ持参致したいと思いますが。)

御返事

メールありがとうございました。
これは難しい症例と考えます。

「垂直牽引中は臼蓋内背側縁に骨頭があるような状態であり、 牽引していなければ常に背側に脱臼し、整復後に開排位とすれば臼蓋背側縁にかかった状態で臼蓋内には入っているが、患児が力を入れると後方へ脱臼しようとする」というのは、後方臼蓋の形成が非常に悪かったり、関節内介在物が著しく多い場合です。こういうケースも稀にあります(得に治療歴が有る場合)。その時は一旦フリーにして、数カ月後にもう一度トライします。

しかし、この症例ではまず診断が重要と考えます。もし、神経筋疾患やその他の先天性疾患が合併しいる場合は保存的治療の適応が無いことがあります。現在1才1ヵ月ということですから、もし、こうした合併症があればあまり保存的治療に固執すべきではありません。

また、側弯がありますので、もし彎曲のために骨盤が傾いていると、片方の股関節の脱臼の整復は不可能となります。したがって側弯のために骨盤が傾斜している場合にはまず側弯の治療をおこなわなくてはなりません。

ということで、最近の単純レントゲン1枚とMRI(1部でOKです)、をメールで送っていただければ参考となります。重たくてもかまいません。よろしくお願いいたします。

御質問76

つい3,4日前にHPを拝見させて頂き、初めてメールさせて頂きます。
10月初旬で生後8ヶ月になる息子の両足の先天性股関節脱臼についてです。ご多忙のところ誠に恐れ入りますが、ご返事頂ければ幸いに存じます。

< 経過 >
6月**日(生後4ヶ月)- 市の4ヶ月集団検診の際、外科医の診断により、両足の開排制限があり、 クリックサインが陽性故、整形外科のある総合病院に行くように指示を受ける。
6月**日 **病院の小児整形外来を受診。 レントゲンの所見では異常は見られないが、クリックサインが陽性であることから、「念の為、3ヶ月間リーメンを装着しましょう。」と言われた。 重症度をたずねると「亜脱臼ではなく脱臼は脱臼です。」とも言われた。
7月*日(生後5ヶ月)- リーメン装着。 1週間連続装着の指示。 「装着後の副作用的なものがあり、そのサインとして、ひどくくずるような事があれば夜中であれすぐに連絡をするように」との指示。 リーメン装着後は、動き辛さからぐずることはあったが、ものすごく激しく無くということはなかったように記憶する。生活上、手がとれず泣かせざるを得なかった時もあったが、抱き上げると泣きやむという状況であった。ただ、帰宅後、脇下ベルトをつり下げる両肩ベルトが肩に食い込む程あまりにもきつく、勝手な判断で両肩ベルトの穴を1穴ずらすという失態をし、このことは1週間後の検診で強く注意されることになる。
手持ちの複数の資料にも先股脱の場合は大抵の場合がリーメンを装着して整復し、成功率は80〜90%と記述されてあったので、リーメンの装着に対しては、しかたないとは思ったが、その是非に疑問は感じなかった。しかしながら、外来で短時間のうちに装着がなされ、リーメンの整復原理の詳しい説明はもとより、生活上の注意点などの説明がほとんどなかったことは、以後節々で生活上の疑問や不安をまねくことになる。 例えば、帰りのチャイルドシートに乗せる時から始まり、寝返りをさせてもいいのか、この動作はしてもいいのだろうか、あの動作はどうだろうかとか、ベルトの穴の位置はほんとうにこれでよいのだろうか等々。
7月**日- 1週間後の様子を確認。 「今日以後は、お風呂の時などにははずしていい」と言われた。
7月**日- 検診 レントゲン(2回目) 「経過は順調」とのこと。
8月**日(生後6ヶ月)- 検診 レントゲン(3回目) 「経過は順調」とのこと。
9月**日(生後7ヶ月)- 検診 レントゲン(4回目) 「2週間後の10月**日にはずしましょう」と言われた。また、ベルトの穴の位置が今日に至るまで全く変えられておらず、かなりきつくなっていたので、その旨伝えると、脇下ベルトの横幅を一穴ずらされた。この部分をずらされた故、脇下ベルトが限りなく脇下から腹周りにおりた。 前ベルト及び後ろベルトの穴の調整はいっさいなかった。
    
<質問事項>
上述の特記事項のことがあり現在は安静を努め、外出も極力控えている状況です。 リーメンをはずす時期も間近にせまっており、恐らくいきなりはずされることになるはずですので、貴病院の徐々にはずしていくという方針と異なっている点も心配なのです。

御返事

メールありがとうございました。
クリックサインが陽性の先天性股関節脱臼で、7月*日(生後5ヶ月)にリーメン装着、10月**日除去予定、と理解しました。

「装着後の副作用的なものがあり、そのサインとして、ひどくくずるような事があれば夜中であれすぐに連絡をするように」との指示があったことにホットしています。

「ものすごく激しく無くということはなかったように記憶する。生活上、手がとれず泣かせざるを得なかった時もあったが、抱き上げると泣きやむという状況であった」、とすれば、このタイプの脱臼における副作用の起こる確立はそれほど高くない(皆無ではありませんが)、と推測されます。

質問にお答えいたします。

現在は安静を努め、外出も極力控えている状況とのことですが、特別な安静は必要ありません。この時期には、いくらだっこしても構いません。お母さんが監視していればうつぶせもかまいません。すでに整復されているならば、この時期にこれらのことによって再脱臼することはありません。

リーメンのはずしかたですが、10年以上前まではいきなりはずすのが普通でした。しかし、股関節はそれまでリーメンによって屈曲位を強制されていたのですから、赤ちゃんは、はずした直後に股関節を伸ばす(下肢を伸ばす)ことはできません。伸ばすことのできない股関節をそのままにしておきますと、無理に他動的に伸ばされる機会が多くなり、場合によっては股関節の不安定を招きかねません。そこで、すこしづつ除去することにより、無理に下肢を伸展してしまう機会をできるだけ無くそうと意図しています。このようにして、股関節が徐徐に伸ばす事ができるようになれば、ある程度他動的に伸展しても問題はおこりません。

御質問74

唐突ですが、アドバイスをお願いいたします。パソコンを使うこと自体慣れていないため、失礼がありましたらお許しください。
先天性股関節脱臼の治療について教えてください。生後三週になる娘のことです。38週0日で2525g骨盤位のため帝王切開で生まれました。へそ緒が36センチという短さだったためにおなかの中で体位をずっと変えられず、右が外れたまま生まれてきたようです。生後8日目に見つけ股関節専門の先生を紹介され生後2週で受診しましたが、「完全に外れ大腿骨が骨盤の収まる位置よりも上に上がっている。もともと収まるところに異物がたまっている。今はいじれない。5〜6ヵ月後に大学の先生と相談しながら手術(成長の度合いを見ながら)家では、筋肉や筋が固まらないようにオムツがえや入浴のときにマッサージをしうつぶせにしてできるだけ開脚させるように」というおおすじのお話でした。レントゲン写真とエコーの写真を見ながら説明していただきました。10月3日にまたエコーを見ながら診察するとのことですが、こちらのホームページを見つけ私のできる範囲で理解すると、このままでいいのかと不安を感じたのでアドバイスをいただけ
たらと思います。
 1.大学というのは、**なのですが、この症状はやはり小児整形外科専門の先生に見ていただいたほうがいいので
   しょうか。だとしたら、どのような手立てをとって診ていただいたらいいのでしょうか。
 2.大学病院と相談しながら手術という感じであれば、直接大学病院にかかったほうがいいのでしょうか。
 3.こちらのホームページを拝見すると、娘はかなり重度のような気がするのですが、今後親としてどんな治療を受けさせて
   あげたらいいのでしょうか。そちらに直接かかることは可能なのですか。
 今娘は母乳をたくさん飲みめきめきと大きくなってきています。右足には不自然なしわができ、その深さが深くなっているのを毎日見ていると、このまま数ヶ月も何もしないでいることが切なくてなりません。せっかく早期に発見できたのにと思うと、ますます何もしないでいることが悔しくてなりません。

これからの方向性についてのアドバイスを私たち親子にください。たいへんお忙しい中とは思いますが、よろしくお願いいたします。

御返事

メールありがとうございました。
娘さんの先天性股関節脱臼につき、大変ご心配のことと存じ上げます。

**医大は小児整形外科専門ではないのですが、先天性股関節の研究および治療では歴史のあるところです。今もその伝統は続いていますので、治療はそちらで良いと考えます。
「完全に外れ大腿骨が骨盤の収まる位置よりも上に上がっている。もともと収まるところに異物がたまっている。今はいじれない。」ということをそのまま信じれば高度な脱臼ということになります。
高度な脱臼の場合には、全身の奇形や、なんらかの症候群に伴った脱臼(専門的には奇形性脱臼と呼んで、通常の脱臼と区別しています)ではないか等、注意深く検索する必要があります。おそらくそちらの病院で他の合併症の有無も検索もなされつつあると思います。全身の奇形や、なんらかの症候群に伴った脱臼で、なおかつ脱臼の程度が高度であれば、リ−メンビュ−ゲルや牽引などの試みは多くの場合無駄です。手術をせざるをえません。治療する医師によって考え方が異なるのですが、一般的に手術は1才前後に行われます。早い先生では6ヵ月で行うこともあります。
もし、奇形的脱臼でなければ高度脱臼でも保存的治療(手術以外の方法)を試みる価値があります。本センターの経験では、脱臼がたとえ高度でも、奇形的脱臼でなければこれまで多くの場合保存的治療(開排位持続牽引整復法ーホームページ参照)に成功しているからです。

それでは娘さんの完治を祈っております。
御心配なことがあればいつでもメールしてください。

御質問73

初めまして、
先生のHPを拝見させていただきぜひアドバイスをいただきたいと思いました。
私の娘は、生後6日目の超音波検査で「左先天性股関節脱臼の疑い」と診断され、整形外科医から臼蓋の形成が悪いがこれから成長する時期なので1ヶ月まで経過観察することになりました。1ヶ月検診で再度超音波検査を行いましたが臼蓋形成は進んでいなかったようです。この時、布オムツをあてること(下肢を自由に動かせる程度に)、抱き方の指導がありました。
診断名も確認したのですが、あまりはっきりせず、亜脱臼でもなく、このままの状況であれば脱臼に向かうと言われました。現在2ヶ月になったところです。私から見た下肢の外観上は、
@左の大腿の付け根の位置が右より若干高い
A下肢を伸展した時膝の位置が若干違う
B左下肢の動きが右に比べると悪い
といった状況です。
次回3ヶ月時に受診予定ですが、先生が予防としてご指導している内容の他に 何か注意できる事があればお伺いしたいと思いました。
今現在迷っているのは、布オムツを2枚に重ねるようパンフレットに書いてあるのですが、そうした方がいいでしょうか。若干股関節を強制的に開かされているのではと心配しています。
また、次回の受診でどのような点を中心に主治医から確認する事が1番大切でしょうか。脱臼のタイプによって治療方法が異なると知り、主治医によく確認しなければと思っています。
**の整形外科を受診しています。

お忙しい中申し訳ありませんがよろしくお願いいたします。


御返事

メールありがとうございました。
生後1ヵ月以内の場合には診断が難しい場合があります。しかし、2ヵ月を過ぎれば脱臼が有るのか無いのかは、はっきりしてきます。脱臼があればタイプ分類をおこなって治療方針が決まります。このへんのことはホームページにあるとおりで、もう確立した方法となっています。

さて、ご気付きの点ですが、

@左の大腿の付け根の位置が右より若干高い

これは、脱臼がある為に左骨頭が上方に移動しているか、もしくは、左股関節の拘縮がある為に骨盤が傾いているためと考えられます。

A下肢を伸展した時膝の位置が若干違う

これも(日)と同じ理由です。下肢の長さも異なって見えると思います。

B左下肢の動きが右に比べると悪い

脱臼があれば動きは悪くなりますし、脱臼がなくても拘縮があれば活発ではありません。

さて、おむつの当て方ですが、布にせよ紙にせよ、おむつの股の部分はできるだけ狭くして股関節が可能な限り自由に動かせる(伸ばすことも、曲げることもできる)ようにすることが重要です。股の部分を広くして無理に股を開かせるような布オムツはよくありません。もちろん2枚重ねもよくありません。

生後すぐからこのような注意をするのは、脱臼を戻す目的ではありません。あくまでも予防です。ホームページに載せましたように、軽度の脱臼(タイプAI-I)であればこれだけで自然治癒することが多いのですが、あくまでもこれは予防であって、通常の脱臼(タイプ AII, B, C ) では本格的な治療の対象となってきます。

お子さんの股関節ですが、少なくとも3ヵ月の検診では詳しい結果はわかると思います。次回の受診で主治医から聞くことは、
1)脱臼があるのかどうか?
2)もし脱臼があるとするなら、どの程度の脱臼であるのか?
すなわち骨頭は臼蓋からどれだけずれているのか?できればタイプA,B,Cのいずれかであるのか?ということがわかれば良いのですが、これは専門家でないとわからないかもしれません。

**の整形外科は先天性股関節脱臼について昔からすぐれた研究をしています。私の知っている専門の先生はもう退職されていますが、優れた仕事は継続していると信じています。

万が一、まだ診断がつかないことがあれば御連絡下さい。

御質問71

拝啓
股関節脱臼に関するページを探して、貴病院を知りました。
私の長女は、現在11歳小学校6年生です。生後6ヶ月で先天性股関節脱臼と診断され3度に渡る入院で、1度目は牽引に失敗し腓骨神経麻痺となり、左足が外反母趾になりました。2度目で徒手整復をしましたが成功せず、2歳になるのを待って両股関節を手術しました。右足が5ミリ程度短く、その為左足が湾曲してきています。運動制限は、平泳ぎ・持久走・跳び箱などです。年に2回程度定期検診を受けていますが、担当医により対応に違いが見られまた、現状をどう受け止め、日常生活に対処していけばよいのか苦慮しています。
診断当初より同一病院にて受診していますが、来春の中学入学を控え進学校を選択しなければなりません。現在は、30分以上歩行による登校は大変とのことで、徒歩5分程度の小学校にカバンも持たずに通学しています。居住区の中学は、自転車通学となりますが、殆ど自転車にも乗ったことがありません。判断の基準が分かりません。何かアドバイスを頂けたら幸いです。どうぞ宜しくお願い申し上げます。
                                                

御返事

メールありがとうございました。
先天性股関節脱臼に対し、手術(手術的整復)をされておられますので、今後の正確な経過観察が必要です。現在平泳ぎ(?)・持久走・跳び箱などの運動制限があるとのことですから、なんらかの問題があると推測されます。考えられることは、骨頭肥大による相対的な臼蓋形成不全、骨頭壊死による骨頭変形や骨頭の向きの異常、再脱臼による変形、等です。これらによって下肢長差や、大転子高位(大転子という部分の位置異常)が発生して跛行が生じたりします。大腿骨頭の向きを変える手術や臼蓋形成不全に対する手術、或は大転子の位置を変えることによって大きく改善される場合があります。

さて、「牽引による腓骨神経麻痺」というのは骨折治療で稀に起こることが有ります(牽引中に金属台により神経が圧迫されるとか、重い重垂を維持するために強く包帯を巻かざるをえない、などにより)。先天性股関節脱臼の牽引で麻痺が発生したというのはきっといろいろな事情があったことと推測されます。麻痺が治癒していれば良いのですが、もし残っているならば歩行が障害されますので治療が必要です。クレンザックという短下肢装具を装着すると歩行が改善されます。装具がわずらわしければ、後脛骨筋腱の移行術をおこなうと日常生活の不自由はなくなると思います。数年前に別の病気で麻痺のあった患者さんに手術を行いましたが、いまバスケットボールができるようになっています。

お子さんは来年中学ということで、大変重要な時期です。やって良いことと、やってはならないことをはっきりさせなくてはいけません。また、はやく処置をすれば大きな改善が得られるかもしれません。

御質問67

はじめまして、もうすぐ7ヶ月になる女の子の母親です。
1ヶ月検診の際に先生より『開きが悪いので3ヶ月になっても改善しないようなら一度整形外科の先生に診てもらいましょう』と言われ、同じ先生に3ヶ月検診の際に『改善されてるので大丈夫でしょう、でもお母さんが心配なようですから一応紹介状を書きますね』と書いて下さいました。その紹介状を持ってすぐに市民病院へ行き、レントゲンを撮っていただいたのですが担当の先生の所見では『脱臼していないようなので様子を見ましょう』とのことで月に一回、通院しています。3回目通院の際にはエコー検査もしていただき『脱臼してなさそうです』とのことで少し安心していました。が、その後、それまで時々鳴っていたグキッという股関節の音が日増しにひどくなっていきゴキッボキッと鳴るようになったので、とても心配で4回目の通院で先生に相談すると『今回のレントゲンで見ても脱臼はしてない様なのですが、音が鳴るのは確かにあまり良くないですし、お母さんが心配でしょうから一度付けてみましょう』と、リーメンビューゲルを装着しました。
娘は装着の日の2日前にハイハイを始めていたのですが、装着後は寝返りもハイハイも思うように出来ず、よく泣くので見ていてとてもかわいそうですが『今治しておいたほうがいい』と思いそのまま装着させていました。

今回ホームページを読ませて頂き、娘の場合は本当にリーメンビューゲルを装着させたままで良いのかどうかが不安になり、投書させていただきました。

どんなアドバイスでも結構です、ご意見お聞かせいただけないでしょうか?
(特に股関節の音が心配です)

御返事

メールありがとうございました。
お子さんにはリ−メンビュ−ゲルなどの治療の必要はないと推測されます。

理由は、すでに数回のレントゲンで整形外科医師が脱臼は無い、と診断していることです。整形外科医師が、3ヵ月以降のレントゲン診断を誤るとは考えにくいのです。しかもエコー診断でも脱臼は無いといわれているわけですから、現在治療を必要とする脱臼は無いと考えてよいと思います。

乳児の場合は、股関節や膝関節が他動的に動かした(御両親などが動かすこと)ときに、音をたてるのは良くあることです。この音は、注意深い触診を行えば、脱臼による音かどうかはすぐにわかります。脱臼による音とは、大腿骨頭が臼蓋から出たり、あるいは入ったりする(脱臼したり整復されたりする)ときにはっする音もしくは術者が感じる感覚で、専門的にはクリックサインと呼んでいます。もしこのような状態であれば、年齢的に考えて明らかにレントゲンあるいはエコー上異常がでているはずです。

今後の方針は、脱臼が無いことを確認すること、そして必要がなければバンドをはずすことと考えます。そしてその音の原因を検索し、その原因に対して必要があれば治療をおこなわねばなりません。

御質問65

はじめまして。3歳になる娘のことでご相談申し上げます。
30週1620gで骨盤位・帝王切開で出生,(脳性麻痺・奇形等の合併症はなし) 生後4ヶ月に左の開排制限を指摘されて居住地の市立病院整形外科を受診、レントゲンも撮り「亜脱臼」といわれ2ヶ月弱リーメンビューゲルを装着しました。装着後も2週間ごとに受診、レントゲンも毎月撮って「経過は順調」とのことでした。外した後も2歳少し前まで月1回の受診で経過観察・レントゲン撮影をしていただきました。
1歳半で歩行するようになりましたが,どうも左側が内旋していてややびっこをひいているようで、自分で自分の足にひっかかり転ぶことが時々ありまして受診時にも相談しましたが歩行後のレントゲンでも問題なく,足の内反などの変形もないので心配ないのでは、とのことでした。その後特に症状が悪化しているというわけではないのですが、3歳になった今も同様で,左が内旋していて走ったりすると転ぶことがあります。周りの人にも「歩き方ちょっと変だね」と言われることがあり気になっています。通院をやめて1年以上経っていることから、このままでいいのか不安です。
(1)この症状は先天性股関節脱臼と関係があるのか
(2)1年少し前まで心配ないといわれていたが再度受診の必要があるか
(3)要受診の場合やはり以前通院していたところではなく小児整形外科がよいのか、
以上3点、御多忙中恐縮ですが宜しくお願い申し上げます。

御返事

メールありがとうございました。
下肢内旋歩行には、3つの可能性があります。

1)全体の約70-80%は大腿骨頚部(股関節)の過度の前捻が原因です。大腿骨頚部の過度の前捻の原因は不明です。基礎疾患がない場合でもおこります。先天性股関節脱臼があった、もしくは現在ある場合には多くの場合過度の前捻があるのが普通です。脳性麻痺等の麻痺性疾患でもよくみられます。
基礎疾患がなければ、たとえ過度の前捻が残ったとしても日常生活を送る上で問題になりません。そのうち気にならなくなるでしょう。先天性股関節脱臼の場合は、脱臼そのものを正しく整復すればやがて問題とならなくなります。脳性麻痺がある場合で、内旋歩行が著明な時は手術的治療が必要な場合があります。

2)下腿内捻。しばしば見かけます。上向きに寝かせ、股関節90度、膝関節90度に曲げ、足が内側に捻れているので診断できます。6才ころまでは改善傾向がありますが、6-7才すぎても極端な内捻で、歩行時に両方の足がぶつかったりするときは手術的治療を行います。手術はイリザロフ法によって安全おこなえます。

3)中足骨内反。足の指で中足骨とよばれている部分が内側に曲がっている場合で、時々見られます。60%は自然治癒しますし、1才過ぎても治癒しない時はギブスあるいは装具によく反応します。多くの場合、靴を履く頃になると目立たなくなってしまうので(靴によって隠れてしまうので)、あまり気にならなくなります。まれに極端な場合があって、靴が履きにくいとか、年長児では痛みが出現することがあります。この場合には手術が必要ですし、これにより完全に治すことができます。

ということで、まず内旋の原因を突き止めることが重要です。

御質問56

お忙しいところ恐縮ですが、質問があります。7ヶ月に入った娘の事でメールしました。先天性股関節脱臼についてですが、私の娘が3ヶ月で股関節脱臼と診断され約2ヶ月間装具を装着していました。うまく入らなかったということで、入院し,牽引を行っています。牽引方法は、京都大学の石田勝正先生の方法によるものと説明を受けました。説明を受けた内容は下記の通りです。
1.水平牽引・・・右と左が同じ位置にくるまで牽引をします。判断はレントゲンを週一回撮影していた。
2.垂直牽引・・・約0.5週、垂直に牽引をする
3.開脚牽引・・・次ステップに行くための予備開脚牽引で約1週間
4.開脚牽引・・・最後のステップでレントゲンで判断、約2週間から6週間
と私の説明不足かもしれませんが、何でも、オーバーヘッドトラクション改良 法(MOOK、NO.25)と聴きました。
現在の私の不安は下記のとおりです、開排位持続牽引整復法
1.入院施設には超音波機がない
2.開排位持続牽引整復法との違いが分からない
3.石田勝正先生の方法の現状がよく分からない
以上、私は、少しでも先天性股関節脱臼について知ろうとこのホームページに出会いました。本来なら直接そちらで治療を受けたいとも思いましたが、入院後に知り、ご質問を受けて頂いているとの事、お忙しいところ誠に恐縮ですがご対応の程宜しくお願いいたします。

御返事1

メールありがとうございました。石田先生は大学時代における私の先生でもありましたので、オーバーヘッドトラクション改良法についてはよく知っております。優れた方法であり、かって私達も用いていました。

開排位持続牽引整復法がオーバーヘッドトラクション改良法と一番違う点は、超音波断層像によって確認しながら徐々に骨頭を臼蓋の中に入れる、ということです。このようにして骨頭に加わる圧迫力をできるだけ避けることができ、また整復も確実になるわけです。
開排位持続牽引整復法を行うには特殊技術とかなりの経験を必要とします。

しかし、オーバーヘッドトラクション改良法は骨頭壊死の発生率もきわめて低く現在でも有効な方法です。さまざまな事を考慮すると、お子さんの治療は現在の施設での方針で良いかと存じます。

御質問の続き

先日はお忙しい中メールありがとうございました。
***です。早速ですが、オーバーヘッド改良法について質問があります。大変恐縮ではございますが、ご教授いただければ幸いです。現在の状況ですが、オーバーヘッド改良法の第4クールに入り外転・・・55度、屈曲・・・100〜110度 という状況です。
このような状況な中で、下記5つの症状がでています。
> (1)”ごりっ”と音がする。
> (2)動きが悪くなっている。(反対の足はよく動かす)
> (3)牽引を外すとき(巻き返し)に固定していない
> (4)安定の判断
> (5)機嫌が悪い
以上5点についてご教授いただければ幸いです。主治医にも聞いてみましてが、文献に載っていないから良くわかりません。との事でした。本来、鈴木先生にお尋ねすべき内容でない事は十分承知しておりますが、このクールが失敗すると手術になるという事を聴き、現状の疑問を少しでも把握できればと思っています。また、看護婦さんがあまりたっちせず(できないようです。組織上)24時間ついている妻(看護婦)がある程度観察するしかないようです。どうか、お手数とは存じますが、ご教授の程宜しくお願いします。

ご質問の続きにたいするお答え

***様

外転・・・55度、屈曲・・・100〜110度 という段階で、”ごりっ”と音がする、というのは、牽引が効果を現して骨頭が整復できる状況になったことを示していると考えます。動きがわるくなっているとは、おそらくそうした状況下に整復位をとっているためと思われます。全体的にいえば、オーバーヘッド改良法は順調な経過をたどっているようです。

牽引を外すとき(巻き返し)に固定していない、のはやむをえません。このとき一時的にはずれるかもしれませんが、牽引を再開すれば整復位をとるはずです。

安定の判断は、超音波断層像ですぐわかるのですが、これもやむをえません。

機嫌が悪くても、激しく泣くようなことがなければ良いと思います。

もし、このクールが失敗して手術という事であれば、御連絡下さい。とにかく、これくらいのことで保存的治療を諦めてはいけません。しかも、牽引が効果を現して骨頭が整復できる状況になっていると思われますので必ずや手術無しで整復できるはずです。

それではがんぱってください。

御質問55

4ヶ月の娘の股関節脱臼のことでご相談させてください。3ヶ月検診で右足の開きが若干悪く、左右の太股のしわの数、足の長さが違うことを指摘され、近所の総合病院の整形外科を受診したところ、右足が亜脱臼しているとのことで、現在、リーメンビューゲルを装着しています。最初の診察時にX線写真を撮り、どれくらいの角度が正常か判らないのですが、右が28度、左が25度で、左も屋根ができていないが、成長と共にできるでしょうといわれました。リーメンビューゲルの装着に関しては、日常生活で特に制限されることはなく、お風呂もリーメンビューゲルを外して入って良いとのことでした。骨頭壊死などの説明は何もなく、ただ、付け初めの1週間ぐらいは嫌がるが慣れるまで我慢してくださいといわれ、案の定、最初の3,4日は非常にぐずったのですが、外してはいけないものと思い、抱っこしていると安心するのか、抱っこを要求する娘をずっと抱?こしていました。そして、装着2週間後に再度X線写真を撮り、角度が右が32度、左が22度、左は屋根ができて、右はうっすら屋根が見えるような気もするが…いるといわれ、右の角度が前より悪くなっていることを質問すると、X線の撮り方で角度は変わるからあまり関係ないといわれ、亜脱臼している右足の開きも良くなっているので、このままリーメンビューゲルを付けて2週間ごとにX線写真を撮って、右の屋根ができたら外そうといわれました。角度が悪くなっていることも心配なのですが、それ以上に2週間ごとにX線写真を撮られることに抵抗を感じ、骨頭壊死になっていないかも心配で、こちらのホームページを見させていただいていると、間違った治療をしている気がして、病院を変えた方がよいのかとも思っているのですが、どういう基準で病院を選んで良いものか悩んでいます。さらに、ベビーオイルを使ったベビーマッサージをすることで治りが早くなるし、情緒の安定などにもつながるとのことで現在週1回ほどリーメンビューゲルを外してやっているのですが、これもいかがなものかと迷いながらではありますが、スキンシップもとれるし、リーメンビューゲルを付けているので筋肉の緊張が少しでも取れればと思い、行っています。お忙しいことと思いますが、ご助言いただければ幸いです。よろしくお願いします。

御返事

メールありがとうございました。
抱っこを要求する娘さんをずっと抱っこしていた、というのはまことに正しい処置です。よかったとおもいます。これだけでも壊死発生率はかなり低下したと考えます。
リーメンビューゲルの装着方法や期間、レントゲンの回数などは、脱臼の程度によってかえなければなりません。「亜脱臼」というのがどの程度正確に診断した結果の結論なのか知りたいところです。  
ありがとうございました。

御質問続き

総合病院の整形外科に電話で問い合わせたのですが、股関節脱臼の診断を超音波でやっているところはなく、小児の整形に詳しい先生はいらっしゃらないのかなと思っていたところです。主治医の先生は早くリーメンビューゲルを外してあげようと言う気持ちで何度もレントゲンを撮られるのかなとも思うのですが、私としては早くなくて良いから、確実に治したい気持ちです。お忙しいとは思いますが、何とぞ宜しくお願いいたします。

御返事の続き
**県内における小児整形外科、特に先天性股関節脱臼の専門家は、++先生です。***からは少し離れているかもしれませんが、この疾患の重要性を考えれば専門家に診てもらうのが良いとおもいます。是非たずねてみてください。

御質問の続き

本日、ご紹介いただいた++先生を受診いたしました。結果は右足の角度がぎりぎり正常範囲の上限であるが、リーメンビューゲルを装着する必要はなく、1ヶ月の経過観察となりました。以前の診察とは比べものにならないくらい、いろいろな角度から診察をしていただき、また、納得できる説明を受け、専門の先生にみていただいて本当に良かったです。ご紹介いただいたこと、また、いつも迅速なメールの送信をいただいたこと、的確なアドバイスをいただいたこと本当に心から感謝いたします。一人目の子供ということもあり、ついつい神経質になりがちですが、やはり股関節のことは、将来のことを考えるとできるだけ的確な治療をしたいと考えます。娘も足が開放されてうれしいのか、今まで以上に足をバタバタと動かし、リーメンビューゲル外してまだ数時間しか経っていませんが、ぐずりも少ないように思えます。まだまだ完全に正常とはいかないので、まだまだ予防に心懸けないといけませんが、今回のことで人の心の痛みみたいなものが少しわかったような気がします。今後もいろいろご相談するかと思いますが、よろしくお願い申し上げます。取り急ぎ、御礼まで。 

御返事の続き                

安心しました。
心配なことはいつでも御連絡ください。

それではお子さんが完治されることを願っております。

御質問54

**市に住んでおります。
7月**日で7ヶ月になる娘のことでご相談させていただきます。(セカンドオ ピニオンとして)

1)状況
*1ヶ月:検診で、股関節が固いので以後の検診でフォローしてもらうよう言われた。
*3ヶ月と20日:+++病院の整形外科で診察を受け、レントゲン検査の結果、全く問題なし、と言われた。
*5ヶ月と20日:入浴時に左右のお尻の位置と大腿部のしわが顕著に非対称であることを発見した。                         *6ヶ月と3日:市内の個人病院にて、**大学付属病院の先生に診察を受け超音波検査の結果、(臼蓋と大腿骨の骨頭の間が?)”開き気味”なので大学病院で詳しく診察するように言われた。
*6ヶ月と8日:**大学付属病院にて診察を受け、超音波検査の結果、以下のように言われた。
>  −右の骨頭がお尻の方にずれ気味だが、完全に外れてはいない
>  −膝の高さが若干違う
>  −とりあえず1ヶ月間装具を付け治療する(85%は1ヶ月で整復される)
>  −装具を装着していても子供の活動には一切制限は無い
*6ヶ月と15日:リーメンビューゲルを装着。担当医が休みの為、代わりの先生が装具の装着状態をチェックしたが、貴ホームページ上にある様な、骨頭の壊死に関する注意事項等は一切なかった。また、その代理の先生は見学医に対し、開排制限がある、とは言ったが、股関節脱臼とは言ってなかった。この日の娘の状態は:
14時ごろ装着した時は泣いたが、その後抱っこしている間は泣かなかった。装着前は寝返り・ハイハイを盛んにしていたが装着後は置いた位置からまったく動こうとはしない。そばに誰もいなくなるとぐずる。17:30に授乳すると眠りにつき、18:40に泣いて起きてから19:30に入浴させるまではずっと泣きっぱなしだった。泣き方はだんだん大きくなり、最後のほうはもう泣き声も出ずのどの震えとしゃくりあげで泣いていた。装具屋さんに、泣いても抱かずに置いておき、足をばたつかせるほど良いと言われていたので、抱っこをしなかった。入浴のために装具をはずししばらく抱っこするとすぐに落ち着き、その後は入浴中も、入浴後再び装具を装着した後も機嫌よくしていた。
*6ヶ月と22日:装具装着後1週間での診察で、先生に以下のように言われました。
−装具装着の結果、若干開きが良くなった。
−病名は先天性股関節脱臼(右足)で、程度は中程度(代理の先生の行っている事と整合性がない?)
−臼蓋形成不全かは今のところ不明、2才頃で予測する。


2)質問及びお願い
*上記の一連の処置は現在の標準的な処置かどうか?
*リーメンビューゲルを装着するのは適当かどうか?
*装具を付けたまま座ったり、腹ばいのまま腰を高くあげたりしていますが、股関節に悪影響はないでしょうか?
*適当でない場合、装具をすぐにはずすべきか、あるいは装着していても悪影響を緩和できる体勢は?
*装具を装着した当日の娘の様子から、大腿骨頭壊死の可能性はあるか?その診断はどの様にして行われるのか?また、その後遺症は?
*今の時点で臼蓋形成不全は診断できないのか?今できる予防法はないか?
*娘の場合、完治は可能か?
*貴センターの外来で診察後、自宅に近い医療施設へ紹介・転院できるか?
***市の近郊で貴センターと同様な治療を受けられる、医療施設があれば紹介下さい。

以上、長文になってしまい申し訳ありませんが、よろしく後回答のほどお願い申し上げます。

御返事

メールありがとうございました。さぞ御心配のことと存じ上げます。
先天性股関節脱臼の治療における最大の問題は骨頭壊死であることはホームページに記載した通りです。

**大学付属病院の実情は詳しく知りませんが、「骨頭の壊死に関する注意事項等は一切なかった」というのは意外です。これも私達小児整形外科医師の力が不十分な為に起こったことと思います。申し訳ございません。大学病院では普通このことはかなり強調して説明するはずです。とくに研修医師や学生には徹底的に叩き込まなければなりません。たとえば京都大学ですと、まず学生講義でこのことはしっかり教え込みます。つぎに本センターの臨床実習で患者さんを前にして繰り返し強調します。したがって、京都大学の関連病院では高度の脱臼は小児整形外科専門医に紹介する傾向が強くなってきておりますし、もちろん先天性股関節脱臼を大学で扱うような事はありません。滋賀医科大学でも今年から私達が講義を担当しますがこのことは必ず教え、試験にも出すつもりです。

さて、お子さんの脱臼について骨頭壊死が起こるかどうか、ということですが、結論から言うとその可能性はそれほど高く無い、と考えます。

理由は、
3ヶ月と20日:+++病院の整形外科で診察を受け、レントゲン検査の結果、全く問題なし、と言われた、ということから推測して、脱臼があったとしても軽度と考えられるからです。タイプB、Cの脱臼であればたとえ小児整形外科医専門医でなくても「全く問題無しと判断する」とは思えません。もっとも**大学の先生が程度は中程度(代理の先生の行っている事と整合性がない?)と言っておられるのは少し気になりますが。お子さんの場合はおそらくタイプAI,もしくはAIIの脱臼と推測されます。タイプAIであれば壊死の確率はきわめて低く、AIIであっても2%以下です。

ただ、お子さんの場合は、17:30に授乳すると眠りにつき、18:40に泣いて起きてから19:30に入浴させるまではずっと泣きっぱなしで、泣き方はだんだん大きくなり、最後のほうはもう泣き声も出ずのどの震えとしゃくりあげで泣いていた、ということですので、壊死の可能性を否定できず、今後長期にわたって経過を観察しなければなりません。

御質問にお答えいたします。

1)上記の一連の処置は現在の標準的な処置かどうか?

お答えは難しいです。脱臼の程度によるからです。

2)リーメンビューゲルを装着するのは適当かどうか?

タイプAIであればこのような治療でも良いと思います(装着時の注意を守ることが前提ですが)が、AIIの脱臼であれば私達は入院のうえ慎重に整復を行います。

3)装具を付けたまま座ったり、腹ばいのまま腰を高くあげたりしていますが、股関節に悪影響はないでしょうか?

ありません。

4)適当でない場合、装具をすぐにはずすべきか、あるいは装着していても悪影響を緩和できる体勢は?

もう激しく泣く状態はとっくに過ぎていますので、今はずしたりするのは得策ではありません。ただ、開き過ぎないように下腿に小枕(おしめをいくつかに折って、股関節が75度以上開かないようにする)ことはすぐにおこなってください。ホームページの先天性股関節脱臼の項を参照してください。

5)装具を装着した当日の娘の様子から、大腿骨頭壊死の可能性はあるか?その診断はどの様にして行われるのか?また、その後遺症は?

可能性はあります。重度壊死の場合は早い時期にわかりますが、軽度の場合にはすぐには診断できません。1年後にはっきりします。診断はレントゲンです。後遺症は壊死の程度によります。今はなんとも言えません。

6)今の時点で臼蓋形成不全は診断できないのか?今できる予防法はないか?

できます。レントゲンもしくは超音波診断、或はMRIです。脱臼が正しく整復されていれば多くの場合臼蓋形成不全は改善します。

7)娘の場合、完治は可能か?

骨頭壊死が発生しなければ完治させることができます。たとえ骨頭壊死が発生しても軽度であれば生涯問題が起こらないようにすることができます。もちろん臼蓋形成不全が残存した場合には追加手術が必要となるかもしれませんがそれによって完治できます。

今後の方針ですが、もう装具装着してかなり経過していますのでいま治療方針を変更する必要は無いと思います。ホームページの先天性股関節脱臼の項を参照しながら、開き過ぎないように下腿に小枕(おしめをいくつかに折って、股関節が75度以上開かないようにする)をいれることはすぐにおこなってくだい。

それではがんばって下さい。

御質問53

初めまして、娘の先天性股関節脱臼について伺いたいのですが。
現在、1歳1ヶ月の娘は、生後4ヶ月検診時〔左足〕先天性股関節脱臼と診断されました。 RBを3ヶ月使用しましたが治らず、造影剤を挿入した結果、7ヶ月から2ヶ月間入院、牽引等による治療を行い、退院後ギプスを使用し現在〔11ヶより)装具を使用中ですが、レントゲンを見ると骨の位置が近すぎる〔後方にあるのでは〕との事ですが、触診ではまあまあの位置という事でこのまま様子を見るという事でした。
そこでご意見を伺いたいのですが
1、このまま様子を診るだけで良いのでしょうか?
2、病院を変えたほうが良いのでしょうか?
3、将来、手術が必要でしょうか?
4、なんでも結構です教えてください


御回答
メールありがとうございました。

生後4ヶ月左足先天性股関節脱臼で、 RBを3ヶ月使用しましたが治らず、牽引等による治療を行い、徒手整復後ギプス固定をおこない現在装具を使用中ということと理解しました。心配なのは、レントゲンを見ると骨の位置が近すぎる〔後方にあるのでは〕ということです。ギブス固定や装具固定中に後方に脱臼してしまうのはよくあるケースです。脱臼したままおいておくと本当に難治な脱臼に移行して行く場合があります。
いますべきことは、超音波断層像なり、MRIなりでほんとうに骨頭が正しい位置にあるか診断することです。直ちにおこなわねばなりません。

御質問47

3ヶ月の娘のことでご相談させて下さい。出生直後から両足をクロスさせた状態をとっておりまた、おむつかえの際も股関節が大変に硬く不安でした。というのも母親の私自身が右の股関節脱臼でギブス治療を行っており、現在変形性股関節症になっているからです。また、上に3歳の娘がおりますがやはり、左の臼蓋形成不全でした。左右の足の動きの違い、しわの数の違いを不安に思い、4月**日ちょうど1ヶ月の時、上の子でお世話になっている、***先生を受診したところ、触診とレントゲンにより、「脱臼している」との診断をいただきました。6月**日にリーメンビューゲルのサイズを測定し、明日装着の予定です。けれどもこちらのHPを拝見してリーメンビューゲルを装着して良いものかどうか大変に悩んでおります。大腿骨骨壊死、骨頭の変形が不安でなりません。自分が同じ病気で苦しんでいるにもかかわらず、呑気すぎた、もっと病気について勉強するべきだったと後悔しています。
先生に良く伺わなかったのもいけないのですが、娘の脱臼の度合いがひどいのではと心配しています(こちらのHPで脱臼のひどい場合のリーメンビューゲルでの修復率の低さに愕然としました。)。何とも修復率の低さを知って悩んでいます。
明日もう一度良く伺ってみようと思っていますが、下記のことを教えていただければ幸いです。お忙しいとは存じますがよろしくお願い申しあげます。
1.大腿骨骨頭壊死はどの段階でどの位の期間で起こるのでしょうか?
2.もし、バンドを掛けたとしたら赤ん坊が泣くなどのサインがあり、防ぐことは可能でしょうか?
3.貴院の推奨していらっしゃる治療法では骨頭への変形も少ないのでしょうか?
4.娘の脱臼のタイプは分かりませんが、脱臼とのことですのでBかCと考えると骨頭の変形率はどの位なのでしょうか?
5.貴院では治療を始める最適な時期はいつ頃とお考えでしょうか?
6.我が家のように遠方からでも赤ん坊の入院治療が可能でしょうか。(親の決断だとは思いますが、入院が必要であるとやはり簡単には行かないと思いまして)
7.最近の小児整形外科の先生方の研究結果ではリーメンビューゲルの治療に対する評価はどのようなものなのでしょうか。

色々書いてしまいました。お忙しいところ大変恐縮です。 何卒よろしくお願いいたします。

御返事
メールありがとうございました。御自身が先天性股関節脱臼そして現在変形性股関節症ということで、この疾患の重大さは誰よりもよく知っておられることと存じ上げます。
まず、御質問にお答えいたします。

1.大腿骨骨頭壊死はどの段階でどの位の期間で起こるのでしょうか?

いろいろな意見があります。多くの研究者は整復直後の数時間、少なくとも24時間以内と考えています。もちろん、極端な開排位を長期間続けてもなりうることは否定できません。

2.もし、バンドを掛けたとしたら赤ん坊が泣くなどのサインがあり、防ぐことは可能でしょうか?

まだ科学的に実証されたわけではありませんが、バンドを付けた日の夜に激しく泣く、というのが骨頭壊死発生のサインと考えられています。これは経験ある先生の一致した感想であり、私もそのように考えています。

3.貴院の推奨していらっしゃる治療法では骨頭への変形も少ないのでしょうか?

骨頭壊死の判定は、1年以上経過してから判定します。1999年までに治療をおこなった例では発生していません。2000年に治療した中で、1例だけ疑っているのがあります。まだ断定できません。この例は、ギブス固定の際に股を開き過ぎていたことが確認されています。

4.娘の脱臼のタイプは分かりませんが、脱臼とのことですのでBかCと考えると骨頭の変形率はどの位なのでしょうか?

Bとすれば、バンドによる整復率は78.3%、そのうち33.3%に骨頭壊死が発生し、そのうちの17%に重度の障害がおこることがわかっています(世界でもっとも権威のある整形外科雑誌 Journal of Bone and Joint Surgery より)。
Cであればバンドで整復されることは稀です。したがって整復合併症である壊死は発生しません。もちろん、その後、徒手整復や手術的な整復を行った場合には発生する場合があることは言うまでもありません。

5.貴院では治療を始める最適な時期はいつ頃とお考えでしょうか?

いろいろな意見があります。我が国では、3-4ヵ月が最適と考える研究者が多く、私もそのように考えています。これにはいろいろな理由があります。

6.我が家のように遠方からでも赤ん坊の入院治療が可能でしょうか。

可能です。東京からは骨形成不全症や先天性奇形などの患者さんが手術の為に大勢来院されます。東京からの先天性股関節脱臼治療の為の入院はまだありませんが、可能です。ただし、本センターは付き添い無しを原則としておりますので、御家族は近くのホテルなどに宿泊していただくことになります。

7.最近の小児整形外科の先生方の研究結果ではリーメンビューゲルの治療に対する評価はどのようなものなのでしょうか。

ホームページにあるとおりです。すべての研究者が壊死の発生を認めております。言い換えると、壊死の発生を認めなかった施設はありません。これは、今日リーメンビューゲルを信奉している医師でも認めています。発生率は1-15%と幅がありますが、これは母集団をどこまで含めるかによって差がでるので、幅があって当然です。タイプBに限定すれば整復された中で33.3%ですが、母集団をA,B,C 全てとすると重度の骨頭壊死発生率は1%となります(Aの総数がB、Cと比べて圧倒的に多いのです)。

リーメンビューゲルを装着されるということですが、装着時に以下の2つの厳重な注意があるはずです。1)帰宅してから、激しく赤ちゃんが泣く場合には、ただちに装具を完全にはずして抱っこする。2)股が開き過ぎないように膝下におしめを折り曲げたものを入れて、股が70-75度以上開かないようにする。この2点は厳格に守ってください。このことでかなり合併症を防げると考えています。

それではお子さんの脱臼が合併症なく完全に治癒することを祈っております。

御質問46

私は5ヶ月になる男の子の母親です。1ヶ月と1週間で風邪をひき、小児科に行ったところ股の開きが悪いということで整形外科への受診をすすめられました。

その後その整形外科にて、エコーをとり「右足が亜脱臼しているとのこと、股の開きも悪いのでリーメンビューゲル装具をつけましょう」といわれ、リーメンを装着しました。約1ヶ月リーメンをつけて生活し、1ヶ月後の診察〔レントゲンと触診(股を広げてみるだけ)〕で「亜脱臼は心配ないが股の開きがかたいだけ、リーメンをはずして二重オムツに切り替えましょう」と言われほっとしていました。しかし3週間すると股の開きは悪くなり再びリーメンをつけた生活に戻ってしまいました。(その際もレントゲンをとっています。)四週間後にはリーメンははずれましたが、「二重オムツをしてください」と指示をうけました(レントゲンあり)。しかし、二重オムツをしていても足は閉じたまま、なかなか良くならないので色々と調べるとこちらのHPに出会いました。
それからは二重オムツを取った生活をしています。(たった1週間ですが...)ただそれが良くなっているのかどうかはわかりません。(足を開いたとき約45度の傾斜があります。)

次回7月**日にもレントゲン検査があります。
それは受けるべきでしょうか。(担当医師にエコーではだめですか?と質問したところ太ももの
肉が分厚くなってきたのでエコーでは無理ですといわれました。)(レントゲンの際生殖腺は
隠してもらっていません。)また、二重オムツをすすめられる医師の診察を今後も受けて行くべきなのでしょうか?
病院を変えるべきなのでしょうか?変えるとなれば先生のような考え方のお医者様に出会えるのでしょうか?もし先生が病院を変えるべきといわれるのであれば、******近辺でご紹介いただけないでしょうか?

お忙しいでしょうが、よろしくお願いします。

御返事

メールありがとうございました。

最初に亜脱臼と診断を受けリーメンビューゲルを装着し、1ヵ月後に亜脱臼は治癒したのでリーメンビューゲルは除去し、二重おむつに変えたが3週あとに股の開きが悪くなったのでふたたびリーメンビューゲルを装着し、4週後に再度二重おむつ、という経過と理解しました。ここで問題は、股の開き具合によって治療方針が揺れているという点です。しかし、5ヵ月の時点で重要なことは、股関節に脱臼(亜脱臼、臼蓋形成不全を含めて)があるのか否か、という点だと考えます。脱臼がなければ開きが悪くても問題となりません(脳性麻痺等の基礎疾患があるときは別です)。股関節の自由な運動を妨げないことで解決するはずです。したがって、今必要なことは股関節に脱臼があるのか否かを正しく診断することです。

御質問44

初めまして、ホームページを拝見させていただきました。とても参考になりました、ありがとうございます。 私は現在1歳*ヶ月の娘を持つ母親です。娘の先天性股関節脱臼について是非相談にのっていただきたくメールさせていただきました。
娘は1歳*ヶ月の時先天性股関節脱臼と診断されました。3ヶ月の保健所の健診では「若干開きが悪いようですが気にすることはない」と言われました。その後の健診でもそのことについて相談しましたが「問題なし」と言われましてパスしていたのでまさかと思いましたが、1歳すぎても歩く気配がなく(つかまり立ち、手放したっちはしていました)どうも左右のひだの数が違うと母が言うものですから念のため総合病院の小児科へ行ったところ同じ整形外科へとのことで見ていただいて判明しました。
次の週にすぐ入院、牽引なしで造影剤を注射し整復、ギブスをしました。ギブスは1ヶ月でその後装具を1ヶ月、現在リーメンビューゲルになって1ヶ月になります。1ヶ月たって朝、夕1時間ずつリーメンを外す許可が出たところまできました。
当初、3歳ぐらいまで様子を見て場合によっては手術しましょうと言われていたのですが、先日はっきりと2歳ぐらいをめどに手術しましょうと言われてしましました。用語など勉強不足で申し訳ないのですが左足が脱臼していますが骨とうが右に比べて明らかに小さく、臼蓋も出来ていないそうです(角度が右足が30・に対して左が45・とのことです)手術の内容ははっきりとはまだ言われておりませんが骨きりと言われるものではないかと思っています。

心配ごととしましては先天性股関節脱臼のホームページなど、どこも小児整形を薦めている点です。

親としての選択が間違っていないか不安で仕方がありません。

娘を直接見ていただいているわけではないのでもちろん判断に困られるとは思いますが判断できる範囲で結構です。ご回答いただければ幸いです。お忙しいところまことに申し訳ありませんがよろしくお願い致します。

御返事

メールありがとうございました。

1歳すぎてから発見された先天性股関節脱臼で、徒手整復、ギブス固定、ひきつづき装具、リーメン装着という方法は、我が国でよく行われている一つの典型的な治療方法です。この方法も正しく行えば多くの場合良好な結果が得られます。正しく行うという意味は、まず整復を全身麻酔下で行う、無理な整復をしない、内転筋の拘縮があれば徒手整復時に処置をする、ギブス固定の角度に気をつける等です。経験のある先生であればこれらのことに細心の注意を払うはずです。

もちろん、1歳以後に発見された場合には、すでに臼蓋の発達もかなり遅れていますので、多くの場合ソルター手術をいうのを追加することがおおくなります。当初、「3歳ぐらいまで様子を見て場合によっては手術しましょうと言われた」という場合の手術というのは、我が国においては、ソルター手術(骨盤の骨切り)を意味していることが多いのです(英国などでは、大腿骨切りのほうが好まれています)。ソルター手術は安全で、確立した歴史のある手術法で、徒手整復ギブス固定が成功した場合には3-4歳以後に行われることが多いのです。ところが、お手紙では、はじめは3歳ぐらいまで、というのが「2歳ぐらいをめどに手術しましょう」ということですから、推測するに、現在臼蓋形成が悪い為に(角度が45度というのは相当に悪いと考えて下さい)再び脱臼傾向がおこるかもしれない、あるいはすでにその徴候がある、と判断されているのかもしれません。もし、そうであれば、治療方にはいくつかの選択肢があります。

直接診察しておりませんので、確かなお答えができませんが、まず、主治医の先生が意図しておられる手術の内容を正確に聞く必要があります。遠慮なく聞いて下さい。

次に、治療方法にはいくつかの選択肢があると推測されますので、現在御心配なことがすこしでもあればセカンドオピニオンを求めるべきです。複数の医師の意見を求めた方が良いと考えます。

以上が現在できるお答えですが、複数の医師の意見がそれぞれ異なる場合にはまた御相談ください。

追伸

セカンドオピニオンで他の施設を訪れる時は、必ずそれまでのレントゲン等を拝借していってください。お願いしにくい事かもしれませんが、被爆を減少させる意味でも、無駄を防ぐ意味でも重要なことです。信頼できる先生であれば喜んで申し出を受けられることと思います。

御質問42

ホームページを拝見して、とても参考にさせていただきました。         
さて私は、現在6ヶ月の男児の母です。これまでのいきさつですが、かかりつけの小児科で4ヶ月検診の際に股関節が硬いので専門医に見せるようにいわれました。近所の整形外科に走りましたが診察の前にすぐにレントゲンを撮る旨告げられて驚き、まずは診察してもらいたいとお願いしました。触診の結果は脱臼のおそれは多分ないだろうがX線写真を見ないとはっきりと答えられないとのことでした。

私の素人目では、子供はいつも元気で足もよく動かしています。このまま自然に治る(やわらかくなる?)のを待つのでいいと思っていますが、もし近くに超音波検診を行っている医療機関があれば受診したいとも考えています。もしご存知であれば教えていただけないでしょうか。また、アドバイスなどもしていただけると幸いです。

自分で調べた範囲の医療機関ではX線撮影しか行われていません。そして、もし治療することになると毎月1回X線撮影されるとのことで、被爆の影響が懸念されてなりません。お忙しいところまことに申し訳ありませんがよろしくお願いいたします。

御返事

大変御心配のことと存じます。
まず、診察しないでいきなりレントゲンを撮る、というのには驚きました。これもわたしたち小児整形外科医師がまだまだ未熟で正しい方法を伝えきれていないことに起因するものと反省しています。
股関節脱臼というのは、視診、触診でおよその診断はつくものなのです。超音波その他は、その診断を確かめ、それに治療につなげるために行うものです。

超音波診断を行っている施設を御紹介いたします。

それではがんばってください。

御質問41

大変恐縮ですが、お教え頂きたい事があります。私の1歳3ヶ月になる娘のことです。
娘は1歳を過ぎたあたりから、歩き始めたのですが何となく「右足をひきずるな・・・」と感じてはいました。
しかし、定期検診で何も言われず、私が不勉強なこともあり「歩き慣れれば治るのでは」と思っていました。
そんな中、先月末に予防接種に行き、よそのお子さんを見てもそんな様子は見られません。そこで、今月6日、地元の総合病院の整形外科を受診しました。レントゲン検査の結果、「先天性股関節脱臼」との診断で、入院及び、牽引治療が必要との事で、即日入院となりました。
主治医の先生によると、「約3週間牽引治療を行ない、改善が見られなければ手術もありえますが、現段階では考慮していません。」とのことでした。現在、右足を牽引しています。膝上を斜め上方に、膝下を下方へ(真っ直ぐ)牽引する、といった形です。(0.5〜1.0kgの重りです)今となっては、ただただ先生を信じ、娘の回復を祈るばかりです。
そこで、質問です。
娘の年齢(1歳3ヶ月)でも完治は可能ですか?現在かかっている医療機関の治療方法で大丈夫でしょうか?
もし、完治させることのできる手段があれば何でもするつもりです。
どうか、よろしくお願いいたします。


御返事

メールありがとうございました。

歩行開始後に先天性股関節脱臼が発見されることが最近おおくなってきました。まだあまり取り上げられていませんが、何のための検診か?ということでやがて大問題となるはずです。滋賀県では検診医師の研修がおこなわれ始め、先日講演をしてまいりました。

まず、歩行開始後の脱臼の治療は長期にわたる場合が多いことをしっかり認識し覚悟を決めてください。もう説明は受けられていると思いますが、治療方法はいくつかあり、その長所と合併症などの欠点、そして成長過程でどのような問題が生じてくるか、またそれにどのように対処するか、を知っておいてください。また、わからなければ主治医にしっかり聞く必要があります。歩行開始後の脱臼に対しては専門家による直接のきめ細かな治療が必須です。なぜなら、治療の過程で数多くの問題に直面し、そのつど患者さんに応じた処置が必要となるからです。このときに経験がなければどうにもなりません。口頭では表現できないコツがどっさりあり、いちいち誰かの指示を仰いでいるわけにはいかないのです。

たとえば、まず、完全脱臼であれば、0.5〜1.0kgの重りでは上方に上がっている骨頭を引き下げるのはむずかしいと思います。かといって重りを2-2.5kgまで増やすと、なれた看護婦が巻かないとすぐ包帯がはずれてしまうはずです。外れないように巻くと、今度は皮膚の発赤が生じたり、と、このように牽引そのものから困難にぶつかるかもしれません。

正しく治療を行えば、完全に治すことが可能です。

御質問39

はじめまして。4ヶ月ちょうどになる女の子のことで御相談があります。

先天性股関節脱臼ということで、***病院でリーメン・ビューゲルによる治療に入りました。 装着してもらい、帰宅したのですが、帰宅直後(14:00ころ)から泣きはじめ、19:30ころになってもいっこうに泣き止まず、 また、あまりにも激しい泣き方で、われわれも心配になってしまい 結局、リーメンを外してしまいました。(あまりに異常な泣き方が続くようならば躊躇なく外すようにご指示もありましたので・・・)
本当は、子供も親も我慢しなければならないのでしょうが、どの程度までが我慢するべき泣き方の範囲なのか、 また、どのような泣き方を(医学的にみて)異常とみるべきかわれわれでは、なかなか判断ができず、困ってしまいます。

御回答

大変気になることがあります。「リーメン・ビューゲルを 装着し、帰宅直後から泣きはじめ、19:30ころになってもいっこうに泣き止まず、また、あまりにも激しい泣き方」ということです。これは、骨頭壊死の危険が高いことを示唆しています。リーメンを外した、というのはきわめて正しい処置です。**病院でもこの点については説明があったと思います。御家族の判断ではずしたのは本当によかったと思います。ホームページにも載せましたが、昔、長崎大学において、異常な泣き方をしてもそのままにしておいたところ、35%にとりかえしのつかない障害を発生させてしまった、という苦い経験があります。このことは、小児整形外科医師であれば知っていなければいけない事実なのです。

おそらく、泣くのをそのままにして装着を続ければ、とりかえしのつかないことになる確率が高かったと思います。リーメン・ビューゲルというのは本当に恐いものなのです。

もちろんリーメン・ビューゲルははずしたままにしておいてください。さて、次の方法は、**病院ならば入院して牽引治療ということになるのではないか、と思います。

それではがんばってください。心配なことがあればいつでも御相談ください。

御質問36

4ヶ月になる息子のことについてです。1ヶ月検診で左の股関節の開きが悪いと言われて2ヶ月から毎月レントゲンを撮っています。先日、4ヶ月でレントゲンを撮ったのですが、脱臼はしていないのですが、骨盤の発育があまりよくないとのことでした。先生は、装具をつけるかどうかはとても微妙なところだとおっしゃいます。
そこで、質問なのですが
 1.病院によって同じ症状でも治療の方針が違うのでしょうか
 2.小児整形を受診したほうがいいのでしょうか
 3.今治療しなかったことであとでなにか問題は起きないので
   しょうか
できることなら、装具はつけたくありません。でも、それで今の症状が進んでしまうのならとても心配です。お忙しいとは思いますがよろしくお願い致します。

御返事    

メールありがとうございました。

まず御質問にお答えいたします。
1.病院によって同じ症状でも治療の方針が違うのでしょうか。
脱臼はないけれども臼蓋形成不全がある、それも軽度の臼蓋形成不全の場合というのは、治療法にいろいろ議論のあるところです。ひと昔前の整形外科医であればほとんどの先生が装具を処方したとおもいます。ということで、個々の医師によって考え方が異なるのが現状です。昔の先生程装具にこだわると思います。

2.小児整形を受診したほうがいいのでしょうか。
小児整形外科専門医を受診すべきです。

3.今治療しなかったことであとでなにか問題は起きないのでしょうか。
最近では、臼蓋形成不全に装具がどれ程効果があるのか疑問となっています。装具治療をしたにも関わらずあとで手術を必要とした例は枚挙にいとまがありません。これらの経験から、私達は装具に懐疑的です。
装具するにせよ、しないにせよ、もし臼蓋形成不全が著しければ最終的には確立された安全な手術によって完全な股関節を形成することができます。


ホームページにも載せましたが、装具は子供の活動を妨げます。子供はその時期にしか学ぶことが出来ないことを現在学んでいます。装具をつけないと取り返しのつかないことになるならば装具はやむをえません。しかし、そうでないのならば、その大切な時期の装具装着は慎重にしております。

御質問34

生後3ヶ月からリーメンビューゲルバンドをつけ、今で約3週間になります。
レントゲンを撮ると、開脚位では整復しているのですが、伸展位では脱臼してしまい、不安定な状態です。臼蓋の育が悪いとの事でした。とりあえず、あと2週間つけて様子を見ることになりました。今は、お風呂の時のみバンドを外しています。 2週間たって、まだ不安定な状態であると、1歳頃に観血的整復術が必要と言われています。そこでお聞きしたいのですが、 観血的整復術とはどんな手術ですか?

貴病院のHPに手術をしなくても大体が治療できる、とありましたが、うちの子供でも手術をする必要がないのでしょうか?バンドをつける期間は3ヶ月位は必要と大体が書いてありますが、私がかかっている医師は着けすぎると逆に障害をきたすから、1ヶ月位でやめてそれでだめなら1ヶ月休んでまた着ける、と言っています。そんな着け方で良いのでしょうか?整復していても、また外れるのではないでしょうか?右の股関節脱臼なのですが、その足をほとんど動かしません。ベルトを取るとちゃんと動くようになるのでしょうか?まだ寝返りもできないのですが、この先お座りや歩行も長らくできないのでしょうか?後に歩行障害が生じないでしょうか?

いろいろ質問し、申し訳ございません。毎日心配でしかたありません。 お忙しいとは存じますが、お返事よろしくお願い致します。

御返事

メールありがとうございました。

お子さんの大切な股関節について大変ご心配のことと存じ上げます。

現在の治療法にはいくつかの問題があるようです。


1。リーメンビューゲルで整復を行った場合には、少なくとも数カ月ははずしてはなりません。整復後は股関節が不安定であり、リーメンビューゲルをはずすないなや再脱臼するからです。再脱臼を繰り返せば、臼蓋の形成はますます悪くなります。リーメンビューゲルを最初からはずしてもよい場合は、股関節の安定しているタイプA1の場合のみです。

2。観血的整復術は、最後の最後にやむを得ず行う手段です。本センターではすでに何百例と治療をしてきましたが、3才までに治療開始した場合には特別な例(脳性麻痺とか、先天性多発奇形などを合併している)を除けば、全例保存的(非手術的)に整復できています。

3。『バンドをつける期間は3ヶ月位は必要と大体が書いてありますが、私がかかっている医師は着けすぎると逆に障害をきたすから、1ヶ月位でやめてそれでだめなら1ヶ月休んでまた着ける』、というのには異論があります。バンドで整復する場合に、1週以内に整復できなければ休んで再びつける、という方法はありますが、整復できた場合は股関節安定化のため2-3ヶ月はつけたままにしなければなりません。一方整復されない場合には、脱臼位状態でバンドを長く続けるのは整復をより困難にするのでよくないことと考えます。

4。以上、リーメンビューゲルで治療する場合のコメントをしましたが、お子さんの脱臼は、お話から推測しますとタイプB脱臼と思われます。ホームページにも書きましたように、このタイプの脱臼をリーメンビューゲルで治療した場合、約66%が整復されますが、このうち33%に骨頭壊死がおこることがわかっています。

御質問28

はじめまして。私は25歳の女です。3歳のとき右足の股関節脱臼の手術を受けました。それ以後特に制限もなく普通の生活をしてきました。高校生のとき右膝の半月板を何度か痛め、お皿が脱臼しやすいことがわかり、膝蓋大腿関節不安定症と診断され手術を受けました。
最近、膝や股関節の痛みが少し出てきました。股関節のほうは中学3年の検診を最後にレントゲンも撮っていません。受診したほうがよいのでしょうか?また、なにか気をつけることなどありますか?1月に無事長男を出産したのですが、その長男も少し左の股関節の開きが悪いといわれ整形に通っています。遺伝の可能性などあるのでしょうか?ちなみに私の兄も手術こそ受けていないものの、股関節脱臼でした。私自身も心配なのですが、なにより息子のことが心配です。私と同じような思いはさせてくありません。

御返事

メールありがとうございました。
3歳のとき右の股関節脱臼の手術を受けたということであれば、定期的な診察が必要です。もし股関節に問題があるとしても、25才であればまだ変形性変化が少ないことが多く、その場合には将来痛みがおこらないような手術が可能かもしれません。遅く無い時期に信頼のおける整形外科を受診してください。
先天性股関節脱臼は遺伝の影響を受けます。この点についてはホームページの先天性股関節脱臼のところをお読み下さい。とくにお母さんが脱臼だった場合はお子さんも脱臼である可能性が高くなります。お子さんは、小児整形外科専門医を受診し、早い時期に正確な診断を受けなければなりません。3-4ヶ月の乳児であれば、たとえ脱臼でも完全に治すことができます。歩行開始後に発見された場合には治療がむずかしくなります。

それではがんばってください。

御質問27

はじめまして。 生後7ヶ月前の女の子です。6ヶ月半ばで足のしわの位置の違いに気付き小児科を受診。そこから総合病院(整形外科)へ紹介されました。触診とレントゲンの結果、間排制限、左股関節脱臼(亜脱臼)と診断され、同日装具装着となりました。すでに寝返りやお座りをしていたため、装具で身動きが制限されるのがつらいのか1日中泣いている状態です。


質問としては、
1.  だいたい装具は一般的にどのくらいつけるのですか?人の話では3ヶ月ぐらいと聞きましたが。
2.  椅子に座ったり、ベビーカーに乗せるのは股関節への影響はどうなのか?
3.  オムツのあて方、抱き方
   我が子は出産後より成長が著しく、紙おむつが早くからLサイズとなりそれ以上はなく、少しきついのを我慢して当てていました。それも影響の一つでしょうか?
4.  4ヶ月検診でひっかかっていないということは、後天性なのでしょうか?
たくさんの質問をしてすみませんがよろしくお願いします。

御返事

メールありがとうございました。

まず、ご質問にお答えいたします。

1.  だいたい装具は一般的にどのくらいつけるのですか?人の話では3ヶ月ぐらいと聞きましたが。
平均3ヶ月くらいです。しかし個々の患者さんの脱臼の程度によって異なります。

2.  椅子に座ったり、ベビーカーに乗せるのは股関節への影響はどうなのか?
亜脱臼の程度と治療の段階によって影響は異なります。例えば亜脱臼の整復中であればこれらの使用は慎重にしなければなりませんが、すでに整復されて数週間たっていれば股関節が安定してくるのでこれらの使用は可能です。

3.  オムツのあて方、抱き方。我が子は出産後より成長が著しく、紙おむつが早くからLサイズとなりそれ以上はなく、少しきついのを我慢して当てていました。それも影響の一つでしょうか?

なんとも言えません。きついために股関節の自由な運動が阻害されていたならば影響の1つとなるかもしれません。

4.  4ヶ月検診でひっかかっていないということは、後天性なのでしょうか?
それまで正常の股関節が4ヶ月以後に異常となることは特別の場合(神経疾患や筋肉疾患を合併している)以外にはないと推測します。

生後6-7ヶ月の場合の先天性股関節亜脱臼、臼蓋形成不全、の治療で重要なことはやはり正確な診断です。たとえば亜脱臼でも股を開くだけで骨頭が良好な位置に来るようであればリ−メンビュ−ゲルも1つの選択枝となります。しかし、亜脱臼であって、どのような股関節の位置をとっても骨頭が正しい位置にこなければ、まず骨頭を臼蓋の中心に向けて完全な求心位にもって行くことから始めなければなりません。この操作をリ−メンビュ−ゲルで行うのも1つの方法ですが、この場合開排制限が除去されて骨頭が良好な位置にきたとしても、股関節を内転したときに求心位がとれない場合がありますので、適応は狭くならざるをえません。この場合はやはりギブス固定が必要となります。
一方で臼蓋形成不全に対しても対処が必要です。亜脱臼の場合はほとんどの場合臼蓋形成不全を伴います。臼蓋の改善には結構日数がかかるので、年齢的なことを考えると装具によってこれを完全に治癒せしめるのは難しいかもしれません。

やはり専門医によって正確な診断と今後の見通しをつけることが重要です。

御質問26

はじめまして。3ヶ月の息子のことについてご相談します。1ヶ月検診で小児科の医師から左の股関節の開きが悪いといわれ2ヶ月でレントゲンを撮ったところ心配ないといわれました。足の長さの違いもなく音もしていません。一応3ヶ月でもレントゲンをとったところ脱臼はしていないのですが骨盤の発育がよくないといわれました。4ヶ月でまたレントゲンを撮ってみて、どうしてもいけないようなら装具を着けるといわれてしまいました。骨盤の発育がよくないというのはどういうことなのでしょうか。私自身、先天性股関節脱臼で3歳の時に手術を受けました。遺伝の可能性はどうなのでしょうか。まだ、小さな息子を見ているとかわいそうでなりません。私と同じような思いはさせたくありません。

御返事

メールありがとうございました。

御自身が先天性股関節脱臼の手術を受けられたとのことで、さぞ御心配のことと存じ上げます。
さて、2、3ヶ月の2回レントゲン検査を行い、脱臼はないが骨盤の発育がよくない(おそらく臼蓋形成不全のことと思われます)とのことですから、まず脱臼はないと推察されますが、とにかく正確な診断がすべてに優先します。もし臼蓋形成不全であれば、治療をするか否かは難しいところです。詳しくは、御質問にお答えするコーナー(2001年3月まで)のなかの御質問9と11に対する私のご回答をお読み下さい。

この疾患は遺伝が関与しています。どの程度関与しているかはわからないのですが、タイプB、Cの患者さんの場合、血縁関係者に脱臼があるのは3〜4割です。

御質問25

はじめまして ホームページを拝見させていただき相談させていただきたくメールしました。 3ヶ月になる娘の股関節の事です。娘は頭位正常分娩にて誕生しました。 生後より おむつがえの時など長男に比べて股関節がかたく、かえにくさを感じておりました。全体的にも娘は緊張型といいますか股関節に限らず力を常に入れているようなタイプです。首の据わりもはやく、手足もよく動かします。特に痛がる様子もなく、股関節に関しては動かしにくさはないようです。3ヶ月になり整形外科にて股関節の検診を受けましたところ、やはりちょっと、かたいなあという先生のお話でした。X線撮影を行いましたが、脱臼はないとの事でした。心配なら1ヶ月後に再診してくださいとのことでおむつ指導洋服等の注意をきき帰宅しました。帰宅後やはり気になっていると、股関節の硬さがめだち、開きにくさを感じます。力を入れているようにも思います。脱臼を認めないのになぜ、開俳制限があるのでしょうかほかに原因があるのでしょうか もしこのまま硬さがつづけば、治療の必要があるのでしょうか 毎日の育児にも脱臼をしないだろうかと不安があり、娘の取り扱いに戸惑っています。また、チャイルドシートや市販のだっこおんぶ用の補助用具の使用などは差し支えないでしょうか。 ホームページを拝見しているともっと重傷の症状で悩んでいるかたがたには申し訳ないような内容ではあります。また先生もお忙しい事とは思いますがお暇なときのお返事お待ちしております。もう一度娘の様子を書きますと、股関節の開きがかたい・両足をピンと伸ばしたり、力を入れる事が多い・屈曲はスムーズ・動き、しわに左右差はない・左足がちょっと短いような気がするときがある(気のせいかも・・という程度です)・機嫌が悪い痛がる様子はみとめない私の気のつく範囲はこのぐらいです よろしくお願いします。

御返事

メールありがとうございました。学会出張の為御返事が遅れてすみませんでした。

さて、御質問にお答えいたします。
生後2-3ヶ月以後でのレントゲン診断では専門医が見れば脱臼の有無ははっきりします。おそらくお子さんの場合は股関節の開きが悪い状態を矯正する目的でバンドをつけたのだと推測します。

3ヶ月のX線診断で脱臼がないならば問題ありません。緊張の高くなる疾患、例えば脳性麻痺、筋緊張性筋肉疾患、ファイバータイブヂイスプロポ−ションなどの疾患がなければ、今後脱臼が起こることはまずありません。

全身の筋緊張が高いことについては若干気になります。念のため一度小児神経専門の医師にチェックをしてもらってください。そこで問題がなければ、股関節については心配ありません。今後はあまり小さいことにとらわれることなくおおらかに構えるのが良いと思います。

御質問24

はじめまして。ホームページを拝見し、ぜひ質問させていただきたく、メールさせていただきます。
6ヶ月になる娘が、出産をした**病院で1ヶ月健診をうけたときに、左足の股関節がかたいので、整形外科で診てもらってください、ということでした。翌日、同じ病院の整形外科を受診し診た感じでは大丈夫そうだが、生後1ヶ月ではレントゲンを撮っても写らないので、来月撮って様子を見ましょう、ということでした。その後、レントゲンをとっても、「大丈夫だと思うけど、また来月診てみましょう」ということで、翌月も、その翌月も同じ解答で、6ヶ月になった今月まで、毎月月に一度通院し、2回に一度の割合いでレントゲンを撮ってきました。レントゲンを見ても脱臼はしていない、でも左足のかたさは変わらず、左右のしわも非対称である、ということで、ついに今月、「やっぱりバンドをつけましょう」ということになり、リーメンビューゲルのサイズをはかり、先生の出張があるので、ゴールデンウィーク明けに装着しましょう、ということになりました。先月までは、「90%大丈夫です」とおっしゃっていたので、大して心配していなかったので、今回の診断はかなりショックで、私も質問をしなかったのが悪かったのですが、具体的な状況は何も教えていただけず、家に帰って心配になってインターネットで調べているうちに先生のサイトに行き着き、これまでの不勉強を悔やむことになってしまいました。
**病院の先生には、厚くおむつをし、またの間に腕を入れて横抱きにする等の指導を受けましたし、一人目の先生がいなくなられて途中で他の先生に変わったのですが、はじめの先生や、4ヶ月検診のときの小児科の先生は、「大丈夫そうなのに、まだ通院するの?」とおっしゃっておられたので、今回の診断結果に疑問が湧いてきました。 レントゲンを撮るだけで、超音波で見ることもありませんでした、小児整形外科の専門の病院が私の住んでいる***にはないようなので、だれにセカンドオピニオンを求めていいのかわかりません。装具を装着するのは娘が7ヶ月になる目前で、一番成長のめざましい時期に、縛り付けて動きを制限するのがかわいそうで、つけなくてもいいようならつけたくないのが本音です。リーメンビューゲルをつけて治療した方がいいのでしょうか?他の整形外科の先生に見てもらった方がいいでしょうか?
もっと深刻な病状の方もいらっしゃる中で、お忙しいことと思いますが、できましたら教えていただければ幸いです。

御回答
御質問にお答えいたします。
生後2-3ヶ月以後でのレントゲン診断では専門医が見れば脱臼の有無ははっきりします。おそらくお子さんの場合は股関節の開きが悪い状態を矯正する目的でバンドをつけるのだと思われます。

開きの悪い状態が長く続いても、単に開きが悪いだけであれば治療は不要です。しかし、軽度でも脱臼(軽い脱臼と考えて下さい)がある場合には、脱臼の程度が進行することがあります。その意味では早急に本当に脱臼(軽いのを含めて)が有るのか否かを正確に診断する必要が有ります。

一般的には、開きの悪い状態は、ホームページにあるような注意をすれば2-3ヶ月で改善します。厚くおむつをし、またの間に腕を入れて横抱きにする等は大きな誤りです。こうするとお母さん側の下肢は無理矢理閉じられ自由な運動ができません。こうしたことも開きが改善しない理由の1つかもしれません。

また、特別の場合(治療中の場合等)以外には2ヶ月おきにレントゲン撮影する必要はありません。できるだけ被爆は少なくしなければなりません。

ということで、すみやかに専門医の受診をお勧めいたします。

それではお子さんの将来のためにがんぱってください。

御質問23

はじめまして。

小児整形外科について、友人の医師に質問をしたら、ここのホームページを紹介されました。
6ヶ月になる娘なのですが、2ヶ月半の時に、両足のしわの本数が違うことに気がつきました。ただ、際立って足の長さが違うとか、足を曲げないとかはなく、3ヶ月検診の時に、症状を言うと保健婦さんから「整形外科へ行ってください。」と言われました。その後、町の形成外科では「クリック音も、ほとんどしないし分からない。心配なら総合病院へ行って見れば。」といわれ、4ヶ月時に総合病院へ行きました。
総合病院では、レントゲンを撮ったのですが、「疑わしいけど、今は分からない。2ヶ月毎にレントゲンを撮って経過を見る。」といわれまた。現在の症状としては、足を伸ばしたとき、左右の太ももー膝間のしわが左足2本、右足1本と違うのみで、手に両足を持ったり、オムツ換え等は、特に問題なく、両足の長さも一見しては差がありません。そこで、質問なのですが、
1.本当に股関節脱臼の所見として、左右のしわの数が違うことは関係あるのか?
2.このような状態で、2ヶ月毎にレントゲンを撮ることが、赤ちゃんに対して影響はないのか?」です。特に、2.はできれば避けたいと思うのですが、かかりつけの医師に言えるものなのでしょうか?お忙しいところ申し訳ありませんが、よろしくお願いします。

御回答
メールありがとうございました。

さぞ御心配のことと存じ上げます。

ご回答いたします。
1)まず、大腿部の皺の非対称というのは絶対的なものではありません。脱臼があると非対称のことがおおいのですが、その理由は脱臼側では、大腿骨が短縮したり、内転拘縮のために皮膚がたるむためです。逆に、非対称だから脱臼というこにはなりません。重要なことは本当に脱臼が有るのか否かを早く診断することです。お子さんの場合、4ヶ月でレントゲンを撮影されていますが、この月齢でのレントゲンでは脱臼の有無ははっきりしているはずです。「疑わしいけど、今は分からない。2ヶ月毎にレントゲンを撮って経過を見る。」というのは、推測ですが、少なくとも大きな脱臼はないことを意味していると思います。しかし、たとえ僅かな脱臼としても、もうそれがはっきりと診断ができていなければなりません。

2)特別の場合(治療中等)以外には2ヶ月おきにレントゲン撮影する必要はないと考えます。もちろんこれまでのレントゲン撮影が赤ちゃんに影響を与えているとは思いませんが、できるだけ被爆は少なくするにこしたことはありません。
それではがんばってください。

御質問19


はじめまして。 先日5ヶ月の娘が臼蓋形成不全と診断されました。私も臼蓋形成不全で、私の姉も赤ちゃんの時亜脱臼でした。先生の話では、リーメンビューゲルはつけずに、半年に1回、経過を見ていくことになりました。 そして抱き方と衣服で注意するようにといわれましたが、衣服のことで具体的に何を着せたらいけないのかわかりません。うちは布おむつをしてますが、紙おむつの方がいいのでしょうか。布おむつは2枚重ねています。そしてズボンも細目の動きにくいものはいけないとのことですが、スパッツやタイツなどはいいのでしょうか。 マチがついているものでなければいけないでしょうかまた足を突っ張るのが好きみたいなのですが、(これがいけなかったのでしょうか)
なるべく床やひざに立たせるような体勢はいけないでしょうか。また、経過がわるければ5歳くらいになったら手術もありえるとのことでしたが、どのくらいの割合で手術はするのでしょうか。
おしえてください。

御回答

メールありがとうございました。

さて、兄弟、姉妹、親に臼蓋形成不全がある、或はあった、というのはよくあることです。たくさんの例を見てきました。脱臼・亜脱臼を伴う場合もあり、純粋に臼蓋形成不全のこともあります。

衣服については、「赤ちゃんが下肢を自分であらゆる方向に自由に動かすことができる」服であればなんでもかまいません。このことを基準に選択してください。

おむつも、下肢が自由に動かせることができるならば、布おむつでも紙おむつでもかまいません。厚く何枚も当てるのはよくありません。

足を突っ張るのはかまいません。床やひざに立たせるようないけません。まだ立位能力がないからです。

手術が必要なの少数例です。臼蓋形成不全の程度によってその割合は変わります。手術は慣れた先生にしてもらうのが鉄則です。

それでは、臼蓋形成不全が治癒することを祈っております。

御質問17
はじめまして
1歳2ヶ月になる女の子ですが、最近になって足の長さが違うのに気づき、近くの病院に診断してもらったところ、片方の股関節が完全に脱臼しているとのことで、入院して牽引治療が必要と言われました。3ヶ月検診や1歳検診でも発見されず、すでに、伝い歩き状態にあり、発見が少し遅く完全に治癒するかどうか大変心配です。
そこで、以下の3点について教えていただければ幸いです。
1.1歳2ヶ月から治療をしても治るのでしょうか。(遅すぎないか)
2.牽引の後に麻酔をかけて一気に整復する方法と開排牽引による方法があると聞いていますが、どちらの治療法が良いのでしょうか

御回答

メールありがとうございました。

歩行開始後に発見される先天性股関節脱臼が増加しています。本センターでも昨年5-6人の患者さんの紹介を受け、治療をしました。5才の患者さんは手術をせざるをえませんでしたが、その他は保存的に整復成功しております。将来のことを考えると、脱臼は完全に(股関節ではわずかの曖昧さも許されません)なおさなくてはなりません。

御質問にお答えいたします。

1.1歳2ヶ月から治療をしても治るのでしょうか。(遅すぎないか)

成長過程で何回かの手術は必要かもしれませんが、完全になおすことができます。

2.牽引の後に麻酔をかけて一気に整復する方法と開排牽引による方法があると聞いていますが、どちらの治療法が良いのでしょうか

牽引の後に麻酔をかけて一気に整復する方法、手術による方法、開排牽引による方法などがあります。いずれも長所と短所があります。どれを選択するかは、病院の方針、医師の得手不得手にも影響されます。わたしたちは、開排位持続牽引整復法を行っております。これは1993年に私達が開発した方法で、まだ5-6箇所の施設でしたおこなっておりません。

歩行開始後の開排位持続牽引整復法ではまず、全身麻酔下に内転筋切腱と鋼線牽引をします(麻酔時間を含めて20分くらい)。牽引を2-6週くらい(期間は症例ごとに異なります)おこない、その後1週間かけて整復し、ギブスを巻いて退院です。入院期間がおよそ2ヶ月でその後2週おきに診察となます。退院後2-3ヶ月すると、3-6ヶ月ごとの診察です。順調にゆけばやがて1年おきの診察となります。

それではがんばってください。

御質問16

はじめまして  私は4ヶ月の子供を持つ母親です。この前、3ヶ月検診のときに左足の股関節脱臼と診断されました。3週間前からバンドをしてまだはいっていないと言われ入院治療(牽引治療)を勧められました。 今、診てもらっている病院は市の総合病院なのですが、やはり大きい小児病院で診てもらった方が良いのか悩んでいます。お忙しい中申し訳ありませんがお返事頂けたら幸いです。

御回答

メールありがとうございました。
大変御心配のことと存じます。

3週間リ−メンで整復されなければ直ちに他の方法に切り替えなければなりません。4ヶ月で他の方法というと、1)牽引もしくはしばらく(数週から数カ月)なにもしないでおいて再びリ−メンを装着する。2)全身麻酔下徒手整復、3)オーバーヘッドトラクション、4)少し間をおいて(6ヶ月-1歳で)手術的整復、5)開排位持続牽引整復法、などがあります。私達は、5)が断然優れていると考えますが、残念ながらまだこの方法は私達が1993年に開発した方法で、まだ5-6カ所の施設でしかおこなわれていません。我が国では、1)、2)、3)、中でも3)が一番多くとられる手段です。入院治療(牽引治療)ということですのでおそらく3)ではないかと推測されます。

いずれの方法も、専門家の手にゆだねなければなりません。一般病院での小児の治療は好ましいものではありませんが、現在の先生が先天性股関節脱臼の専門医であれば引き続いてそこで治療を継続してもよいでしょう。

御質問15

はじめてお便りします。

12年9月**日産まれの女の子です。妊娠41週、頭位で自然分娩でした。1ヶ月健診から「脱臼かも?」といわれていました。
2ヶ月健診では、「大丈夫だと思います」5ヶ月健診で「脱臼はしていないが、右が少し制限があるようなので、一応レントゲンを撮ってください」といわれました。(**市では4〜5ヶ月に医療機関で健診です)市の集団撮影で撮ったところ、「臼蓋形成不全」なので、5月*日に整形外科による診察、説明を行います。とのことでした。保健所に確認してみると、重症の子はすぐに医療機関を紹介したので、その日程でよいというお医者さんの判断では?とのことでした。

しかし、娘は5月ではもう、8ヶ月目前なのです。もともと、首すわりも寝返りも早めの子だったので、つかまり立ちを始めるのでは?と心配です。その頃からの治療で果たして遅すぎないのでしょうか?今のうちに医療機関を受信していたほうがいいのでしょうか?先生はレントゲンを見た際「月齢に比較して発達していない」といったそうです。

お忙しいところ申し訳ありません。もし、お時間がありましたら、アドバイスよろしくお願いします。

御回答

メールありがとうございました。

結論から申し上げます。
市の指示に従ってよいと思います。その理由は、3-4ヶ月でのレントゲン診断はかなり信頼できるからです。もちろん、ホームページにも書きましたが、レントゲン診断では軽度の脱臼がわかりにくいことがあり、特に1-2ヶ月未満の場合は専門医でないと見逃すことがあります。しかし、3ヶ月以上になってきますと、骨化がすすみますので、治療が必要な脱臼と、経過を見るだけでよい脱臼・臼蓋形成不全の区別は付くはずです。特に**市の検診制度は我が国で先駆的なものであり優れた実績があります。そこでの検診医師がレントゲン診断で見逃しをするとは考えにくいのです。もちろん不安でしたらレントゲンを拝借して専門医を受診されることお勧めします。精神的にも落ち着くかもしれません。
お子さんの診断は、臼蓋形成不全ということですので、この場合は超音波検査で軽度の脱臼が見つかったとしても自然治癒する範囲のものと考えられます。ただし、わたしたちの経験から、臼蓋形成不全で経過を見ていると、少数例ですが成人しても臼蓋の発達が不十分なことがあります。程度にもよりますが成人するまで経過のチックは必要と考えます。

御質問14

初めまして。
このHPにたどり着いて、早々にメールさせていただきました。

娘は、ちょうど生後1ヶ月ですが、母親が娘のお尻を見て左右の大きさが違うこと(右の方が大きい)に気づき、一度整形外科に見てもらったほうが良いとのことになりました。(母は元産婦人科の看護婦です)診断(超音波、レントゲン)の結果、右股関節の亜脱臼であると診断されました。
しかし、まだ生後1ヶ月であることから、3ヶ月になるまで、装具は装着せず右太ももの血行を良くし、筋肉をやわらかくし股関節の発育を促すためにレーザー治療を行うということになりました。


ここで質問なのですが、
1.股関節脱臼が、生後1ヶ月で外観からわかるほどの現象は、一般的ではないのでしょうか?(骨の発育に関わる病気などは考えられるのでしょか?)
2.両腿のしわは同じなのですが、お尻の山に左右差が有る(右が大きい)という症状はどのような理由からなのでしょうか?
3.現象を認識して初めてわかったのですが、右のお尻が大きいためか、何もしなければいつも左向きに顔を向けて寝ています。これは、顔を右向きに寝かせるように仕向けたほうが良いのでしょうか?
4.筋肉の血行を良くし筋肉をやわらかくする治療というのは、一般的なのでしょうか?

お忙しいところ申し訳ありませんが、アドバイス頂けたらと思います。よろしくお願いいたします。

御回答

メールありがとうございました。
さて、先天性股関節の診断でお尻の形から診断するというのは興味深い方法です。通常は仰臥位で診察しますのでお尻をみることは少ないからです。
一般的にこの疾患では、脱臼側の筋肉(大殿筋、中殿筋などの股関節周囲筋)は萎縮しているのが普通です。ところが娘さんの場合は逆に脱臼側が大きいということですので、この原因を考えなくてはなりません。可能性のあるものとしては、
1)右股関節の脱臼もしくは亜脱臼があるため、うつ伏せで股関節を屈曲したときに脱臼した骨頭が後方に転位しそのためにお尻が大きく見える場合。
2)右の臀部に血管腫などの腫瘍がある場合。
3)右大腿骨近位部の変形(congenital short femur,骨折後の変形など)がある場合。
4)片側肥大症(この場合は右側の肥大)がある場合。
5)骨盤の傾きなどがあって見かけ上の殿部突出がある場合。
6)病変はなく、単に右殿筋の肥大がある、言い換えれば個性と考えてよい場合。
7)その他

このようにいろいろなケースが考えられます。1)が最も可能性が高いと思われます。2)は稀ですが、数例経験したことがありますので完全に否定できません。3)も稀ですが、何例か経験しました。4)これも時々経験します。私達の施設では脚延長術をすることが多いので、この疾患が集まってきます。この疾患では内臓の腫瘍を伴うことがありますので、小児科で精査が必要です。5)6)の確率は不明です。

さて、御質問にお答えいたします。
1.股関節脱臼が、生後1ヶ月で外観からわかるほどの現象は、一般的ではないのでしょうか?(骨の発育に関わる病気などは考えられるのでしょうか?)

脱臼の程度が強ければ外観からわかります。下肢の位置や短縮、拘縮の具合、その他から疑いをもちます。骨の発育に関わる病気の場合もあります。例えば3)4)です。他に考えればきりがありませんが、これらは診察すればわかります。

2.両腿のしわは同じなのですが、お尻の山に左右差が有る(右が大きい)という症状はどのような理由からなのでしょうか?

両側の皺は診断上絶対的なものではありません。脱臼があっても両側の皺が同じことがあります。

3.現象を認識して初めてわかったのですが、右のお尻が大きいためか、何もしなければいつも左向きに顔を向けて寝ています。これは、顔を右向きに寝かせるように仕向けたほうが良いのでしょうか?

無駄です。いくら顔を右向きに寝かせてもすぐ左を向いてしまいます。

1ヶ月で先天性股関節脱臼を見つけるのはまれではありません。もうこの年齢ならば脱臼か亜脱臼か、それとも何か他の可能性があるかは確実に診断できます。とにかく右臀部の突出の原因を早く突き止めなければなりません。

ところで、「普通の亜脱臼は必ず治る」というのは誤解です。わたくしの表現が悪かったと思いますが、亜脱臼のうち、タイプAIは自然治癒することが多いのですが、同じ亜脱臼でもタイプAIIは自然治癒は稀です。

お子さんをよく観察されていること感心しております。こちらも勉強になりました。
ありがとうございました。

御質問12

初めまして。昨日このHPを拝見して早速不安を聞いていただきたくてメールしまし
た。娘は生後一週間で病院を退院する時、股関節が固めと言われ4ヵ月健診まで三重オムツをするよう言われそのとおりにしていました。(駄目だったんですね。)4ヵ月検診でレントゲン検査の結果左の股関節が完全に脱臼しているうえ臼蓋形成不全と診断されました。そして当日いきなりリーメンを装着。次は4週間後にと言うことでしたが、足首にリーメンが食い込んでいるようでかわいそうなので3週間後に先生にその旨伝えると赤ちゃんはぽちゃぽちゃしているのでこんなもんでしょうと言われそのまま様子を見ることになりました。そしてその2週間後再びレントゲン検査をしました。骨盤から飛び出していた骨がだいぶん内側には来ているようでしたが、関節が入ったと言う先生の言葉はありませんでした。今度はまた4週間後と言うことなのですが、それまでの間姿勢の制限(おすわりをしてもいいのか、チャイルドシートやベビーカーに乗せても影響はないのか、抱っこ紐はできるのか等)について質問してみましたがなんとなくはっきりしない答えが返ってきて親としては不安でしかたがありません。娘を見てもらっている病院は総合病院ですが普通の整形外科で小児専門でもありませんのでいろんな患者さんがいて、毎回気が遠くなりそうな待ち時間です。それに行く度にいつも違う先生なので(4回で4人の先生)なんとなく信頼も持てません。幸い娘はリーメンを装着しても機嫌も悪くなることもなく元気に足を動かしていますし足もよく開くので、普段はそんなに神経質にはなっていませんが、ふとした瞬間に不安に押しつぶされそうになります。骨頭壊死の問題や将来への不安、診察の回数の少なさや説明不十分(骨盤の角度など細かい説明があまりない)などの病院へ対する不信感等相談できる人もいないので長々とメールに託してしまいました。お時間があればよいアドバイスをお願いします。

御返答

メールありがとうございました。
ほんとうに御心配のことと存じ上げます。

今後の方針を述べます。

まず、脱臼の状態を早急に診断しなければなりません。超音波で調べれば脱臼が整復されたか否かは簡単に判ることです。もし、リーメンを2週ほどつけて整復できなければ、もうリーメンの適応はありません。整復されないまま装着をつづけると、臼蓋の変形などが発生し、整復はますます困難になります。脱臼が整復されないまま数カ月放置された症例がしばしば紹介されてきますが、こうした場合には次ぎの整復操作が難しくなることが多いのです。

三重おむつ、外来でのいきなりリーメン装着(おそらく過開排予防の下腿枕などはないと思われます)、足首へのリーメンの食い込み(バンドと皮膚の間には1横指の余裕が必要)、4週間後という長い診察間隔(2週おきの診察により医師自身が絶えずバンドの長さを調節しなければなりません)、説明不足(忙しいか専門医でないためわからないかのどちらかだと思われます)、診察の度に医師が変わる(視診、触診が重要なのに、これでは前回の状態との比較ができない)、瀕回のレントゲン検査、気が遠くなりそうな待ち時間(院内感染が気になります)など、こういうことをできるだけなくそうということで子供専門の整形外科があるわけです。待時間が長いのは本センターも同じですが、できるだけ改善する努力をしております。

御質問11

はじめまして。このホームページにもっと早くたどり着いていたらとくやむことしきりです。

生後7ヶ月半をすぎた娘についての相談です。単でん位分娩で生まれました。生後入院中も、1ヶ月健診(超音波で診察)でも
脱臼はしていないとのことでしたが、ずっと、開きの悪さ、しわの違いは気になっていました。そして4ヶ月健診で開排制限と診断され、3週間「厚おむつ」をしました。(反省)それでも改善が見られないと言うことで、総合病院へ。(小児整形ではありません。)
生後5ヶ月:第1回診察。
        レントゲンの結果脱臼ではないとのこと。
生後6ヶ月:再度レントゲン。
       脱臼はしていないが、開きが悪いので、
       装具(フエルト生地のひも)を装着することになりました。
生後7ヶ月:3度目の診察。レントゲン。
       開きはよくなりましたが、
       右側の受け皿の骨(臼がい?)の角度がややきついようなので、
       もう1ヶ月装具をつけておいてくださいといわれました。
そして現在に至っています。(もものしわはまだ対称ではありません。これは脱臼の印ではないのでしょうか???)

疑問がいくつかあります。教えてください。
1,脱臼していないのに開排制限、というのはどういうことでしょうか。
  開排制限イコール脱臼ではないのですか?
  同様に、しわの非対称イコール脱臼ではないのですか。
2,レントゲンでの悪影響がとても心配です。
  超音波の方が骨の変化がよく分かるとも聞きましたが、 
  どうなのでしょうか。
  レントゲン、超音波それぞれのメリット、デメリットを教えてください。
(担当医師は「亜脱臼はレントゲンでは分かりづらい」とつぶやいておられましたが、そうなのですか。)
3、最近では、装具をしていても寝返りや、力任せのハイハイもどきをして激しく動
いています。自由にしておいて大丈夫でしょうか。

お忙しいところ申し訳ありませんが、お返事いただけましたら幸いに存じます。寒い日が続いています、ご自愛下さいませ。

御返事

メールありがとうございました。

まず疑問点からお答えしようと思います。

1,「脱臼していないのに開排制限、というのはどういうことでしょうか。」

開排(股関節を90度屈曲させて、そこから開くこと)制限とは、股関節が開きにくい場合をいいますが、実は定義が曖昧で、どのくらい開かないと「開排制限」とするかは検者によって異なっていると思います。私は、60度以上開かなければ一応異常としていますが、60度以上開いても左右で開く程度が異なっていれば、開きにくい方を「開排制限」としています。むしろそのような左右差に注目する方が診断としては役立つ場合が多いと思います。開排制限とはこのように股関節開き具合についての表現ですので、脱臼の有無とは直接関係がありません。したがって「股が開きにくい場合イコール脱臼」ではありません。

「開排制限」は多くの場合、股関節の内側にある内転筋が緊張したり或は短くなったりして起こる現象です。脱臼があると出現する場合が多いものですが、脱臼がなくても出現する場合があります。「開排制限」がある場合には本当に脱臼があるのかどうか正確に診断をしなければなりません。

「しわの非対称イコール脱臼」でもありません。しわの非対象は、左右の開排度が異なる為、大腿内側の皮膚の距離に左右差が出現して起こる現象です。また、左右の開排度が同じでもおこりますし、脱臼がなくてもあらわれる事があります。

2,レントゲンでの悪影響がとても心配です。
超音波の方が骨の変化がよく分かるとも聞きましたが、どうなのでしょうか。レントゲン、超音波それぞれのメリット、デメリットを教えてください。
(担当医師は「亜脱臼はレントゲンでは分かりづらい」とつぶやいておられましたが、そうなのですか。)

脱臼には重度のものから極めて軽度のものもあって(これはいかなる病気でも同じですね)、レントゲン診断では分からないような脱臼もたくさんあります。その理由は、レントゲンは投影像だからです。骨頭が臼蓋の前方にずれている場合には前後方向の投影像では診断がつけにくいことがお判りと思います。超音波断層像は投影像ではなく、断層像(股関節を断層面を観察できる)ですので、このような骨頭の転位が診断できるのです。特に股関節の超音波横断像ではっきりと診断できます。実際には、レントゲンで判らないような脱臼というのは極めて軽度な脱臼(正確には軽度の亜脱臼)である場合が多い為、特別な治療を行わなくても治癒する場合が多いのです。そのためレントゲン診断で脱臼が無い、と診断しても困らない場合が多いのです。
診断がより正確であること、放射線被爆が無いこと、などがレントゲンと比較して超音波診断の優れている点です。

3、最近では、装具をしていても寝返りや、力任せのハイハイもどきをして激しく動
いています。 
自由にしておいて大丈夫でしょうか。

大丈夫です。寝返りや、力任せのハイハイもどきをして激しく動くこと自体は股関節に悪影響があるとは思えません。私は、装具による合併症は、装着直後から間も無い間に起こると考えています。少なくとも装具をしてから数カ月たっているわけですから、これから新たに合併症が出現するとは考えにくいと思います。ただし、装具は成長に合わせて医師が調節しなければなりませんから、診察の度に装具チェックを医師がおこなっているかは確かめてください。装具が身体に合わなくなっていると様々な合併症が発現することが予想されます。

さて、娘さんの病状ですが、開きはよくなっても、右側の受け皿の骨(臼がい?)の角度がややきついとのことですので、おそらくは臼蓋形成不全と診断・治療されていると推測されます。お母さんにとっては、いったいいつまで装具をするのか?、これから何回レントゲンをとられるのか、いろいろ心配なことと存じます。

開排制限が持続すると股関節に異常が出現することがありますので、開排制限を除去するという意味で装具(おそらくリ−メンビューゲル)は役にたったと思います(ただし骨頭壊死などの合併症がなかった場合ですが)。
しかしながら、開排制限を除去するのに装具が役立ったとしても、今度は臼蓋形成不全を治療するのに装具が効果的かどうかについては不明です。これまでの日本整形外科学会における議論では、純粋な臼蓋形成不全に対しては治療不要である、という意見が多いのですが、まだ意見が別れていると思われます。娘さんの治療経過を振り返ると、1ヶ月おきにレントゲン撮影をしていますから、おそらく同じような間隔でレントゲン診断がなされると思います。担当の先生は臼蓋形成不全に対して装具が効果あると考えて治療されているわけですから、臼蓋形成不全が続いたとしたら引き続いて装具治療を行うことになります。このような場合にはいつの時点で装具を除去するのか迷うはずです。そしてこのことにより多くの親御さんが不安に打ちのめされてしまうことが多いのです。

私達の考え方は以下のものです。
まず、本当に脱臼が無いかどうか正しく診断します。脱臼があればまず脱臼の治療をおこないます。
脱臼がなく、純粋な臼蓋形成不全であれば、臼蓋形成不全を治療するのに効果的かどうかはっきりしない装具治療は少なくともこの年齢では中止します。何故かと言うと、7ヶ月半の子供にとって何が大切であるか考えるからです。この時期には、ハイハイなどの移動能力を高め、このことにより様々な物に近付き実際に触ったりして知的発育を促すことが実は一番大切なことと思うからです。この年齢ではこの時期にしか経験できない事柄がたくさんあるはずです。臼蓋形成不全の方は、万が一残ったとしても、あとで完全に治すことができるからです(もちろん手術的にですが)。装具を中止することによるメリット、デメリットと、装具を続けるメリット、デメリットを比較すると、わたしたちは装具を中止することに全く迷いはありません。
次のレントゲン診断の時期は、1才を過ぎてそして独立歩行を始めた時です。それまでは不要です。

御質問10 

メールでは、初めましてです。

娘は、1歳3カ月になりました。ちょうど、1年前、センターへ、入院し、治療をしていただきました。順調に成長はしているのですが、まだ、歩きません。股関節脱臼の治療をされたお子さんは、だいたいどのくらいで、歩くようになるのでしょうか?家の子は、さいきん、膝立ちで歩くのですが、問題はないのでしょうか?普通に歩く方が楽だろうに。

その他、個人差はあるかと思いますが、健全なお子さんより、いろいろな発達について、どのくらい遅れるのか等、データにしていただけるとうれしいのですが。親としては、やはり、子供の成長は気になりますし、回りのお子さんとどうしても比べてしまったりするので宜しくお願いいたします。次の検診は6月です。そのころまでに、どのくらい、骨が出来てきているのか楽しみです。では、こういうHPができ、良かったと思います。

御返事

メールありがとうございました。返事が遅れまして申し訳ありませんでした。歩き始める時期が少し遅れてもご両親にはとても気になることことだと思います。近所の子は1歳になる前にすでに歩いていたのに・・・・というように、またおばあさんおじいさん達、周囲の孫がかわいくて仕方ない人たちからもいろいろと気をもむことでしょう。股関節脱臼で、本格的な治療、特にギプスを必要とした場合、入院からベルトまでの一通りの治療に通常4−5ヶ月かかります。したがってこの期間あとにずれこみ歩き始める時期が遅れることはよくあることですし、逆に4−5ヶ月治療に要した子が1歳で独歩しはじめるのは早熟であるかもしれませんが、一般には例外的なことであると思います。ですから私どもは治療に要した時間は歩き始めるのは遅れるかもしれない、しかし1歳半になったときは周りの子とくらべ遜色無い状態になっているはずだ、2歳になったら全く正常で、あれだけ心配していた親御さん達も過去のこととして忘れ去っていることが多いと説明することにしています。***ちゃんはタイプBでしたから、入院約1ヶ月ギプスベルトに3ヶ月かかったと思います。11ヶ月からつかまり立ちしていましたし、治療期間から考えるとそれほど遅れているわけではないと思います。また通常(まったく普通の場合)1歳半までに歩行できれば正常とします。人間の発達には運動発達と知的発達があります。知的発達も遅れていれば問題かもしれませんが、そのようには見えませんでした。6月には歩いている***ちゃんにお会いできることを期待しております。

御質問9

はじめまして。3ヶ月の娘のことで相談させてください。
本日、保健所の育児相談にて「左股の開きが悪いので、4ヶ月検診のときにレントゲ ンを取ります」と検診の先生にいわれました。 4ヶ月検診まで関節が開くよう、布おむつを厚くあてておいてくださいとのこと。いてもたってもいられないくて、ネットでいろいろ検索しているうちに、こちらのH Pにたどり着きました。2/12更新の「先天性股関節脱臼」の方読ませていただきまして、専門の先生に診ていただきたいと思いました。(脱臼にもABCなどいろいろなレベルがあるのですね)
現在転勤にて***に住んでいます。里帰り分娩先の生後1ヶ月検診にて「左股、やや開き固い様。3ヶ月検診にてみてもらってください」と言われ(その時は、特に処置や指示なし)。その後***に戻ってきました。2ヶ月に入ったころ風邪を引いて来院した総合病院の小児科にて左の股関節について聞いたところ、「脱臼はしてないみたいだ」とのことで少しホっとしていました。今回別件にて保健所の育児相談の検診に参加したところ、やはり左股の開き具合が固いということで次回の正規の検診(4ヶ月)にてレントゲンを取るとのことでした。
治療を今からでもはじめられるなら始めたい。ということと、確実な診断をいただいて(レントゲンを取らないとなんとも言えないということでしたので)から治療に入りたいという気持ちでいます。
是非こちらの病院を受診したいのですが、通院になった場合や入院のことを考えると、二の足を踏んでしまいます。***の方にも、こちらの様な股関節脱臼の診断方法をとっている病院があれば受診してみたいのですが、もし、先生がご存知のところあれば教えていただきたいのですが。

御返事

メイルありがとうございました。

娘さんの股関節についてさぞ御心配のことと存じます。
さて、この件に関しては、いくつかの問題点があります。

まず、「4ヶ月検診まで関節が開くよう、布おむつを厚くあてておいてください」というのは、大変な誤りです。決して「布おむつを厚くあてて股を無理に開かせること」をしてはなりません。じつは、この誤りについては歴史があるので簡単に説明します。

我が国で1970年の中ごろまで、先天性股関節脱臼の発生率が2%と極めて高かったことは「先天性股関節脱臼」で説明したとおりです。1970年代の後半には先天性股関節脱臼を専門に研究していた若い(当時)先生方が脱臼の予防運動を提唱され、これが全国に広まりました。この運動の中心は、当時京都大学整形外科におられた石田先生です。私も若輩ながらこの運動を支持し積極的に実践してきました。この予防運動は整形外科医師だけでなく、保健婦その他の人々をも巻き込んで全国的に展開され、大きな成果をあげました。学会でも様々論議され、各地からの予防運動実践により先天性股関節脱臼の発生率が大幅に減少したことがたくさんの論文に報告されています。

この時の脱臼予防の基本的概念は、「赤ちゃんの下肢の自由な運動を妨げない」ということです。その当時までは、赤ちゃんの下肢は、まっすぐに伸ばされた状態でまきおしめによってぐるぐる巻きにされていました。この姿勢が先天性股関節脱臼のおおきな原因の1つになっていたのです(詳しくは、「先天性股関節脱臼」を参照)。
したがって、このまきおしめを止め、股だけに薄く幅の狭いおしめをあてて、赤ちゃんが下肢を自由に動かせるようにする、というのが「脱臼予防運動」の本質です。赤ちゃんは裸にしておけば、下肢を曲げたり、また伸ばしたりもする、この自分で行う運動が大切なのであって、「股におしめを厚くあてて赤ちゃんの下肢を無理に開かせること」が予防ではないのです。それどころか、無理に開かせることにより、大腿骨頭の壊死という重大な合併症状がおこることがあります。私はそのような例を実際に見てきました。「関節が開くよう、布おむつを厚くあてる」というのは、大変な誤りです。

ところが、1部でこの脱臼予防運動の本質が誤解され、「関節が開くよう、股の間におむつを厚くあてる」というように間違って伝わった地域がありました。私が今勤めている滋賀県も私が赴任した13年前までは、保健婦がお母さんに「関節が開くよう、股の間におむつを厚くあてる」ように指導していました。毎年の保健婦講習会での講演や、誤解をされていた整形外科医師の方々には様々な方法で連絡をとり、いまではそのような指導はないと思います(すくなくとも滋賀県ではそのような指導を受けたということは聞いておりません)。10年ほど前に、ある整形外科の学会で「関節が開くよう、股の間におむつを厚くあてる」発表をした先生(もちろん小児整形外科専門医師ではありません)がおられ、「いまだに脱臼予防を間違えておられる先生がいる」、ということで大きな問題となったことがあります。現在では、このような誤解をされている整形外科医師は少ないと思いますし、小児整形外科専門医師ではこのようなことはないと信じております。

さて、先天性股関節脱臼が疑われた場合は、すみやかに確定診断が必要です。股関節は最も重要な運動器であり、先天性股関節脱臼は完璧に治さなくてはなりません。小児整形外科専門施設をすぐ訪ねてください。

次ぎに、検査について一言述べます。先天性股関節の診断の基本は、視診、触診です。このことは、私は医学生の授業や、実習、そして、様々な講演会でいつも強調していることです。赤ちゃんをよく診察すれば、それだけで脱臼の有無は分かるものです。そして、それを確かめる為に超音波診断をおこない、さら超音波により脱臼の程度を診断し(タイプ分類)治療方法を決めるわけであります。あくまでも「視診、触診の結果を確かめるのが画像検査」であって、それが逆転して、「脱臼の有無がわからないのでレントゲンを撮影する」、というのは正しくありません。
先天性股関節脱臼の確定診断がレントゲンでなされてきた、という歴史があるので、今日でも多くの整形外科医師がレントゲン診断を重視する傾向がありますが、被爆のことを考えれば、できるだけレントゲンは避けたいと思います。もちろん必要があればやむを得ません。本センターでも治療の必要な先天性股関節脱臼の場合には様々な理由から、レントゲン撮影をおこなう場合があります。

御質問8

4ヶ月の娘ですが、1ヶ月検診で先天性股関節脱臼を指摘され、現在リーメンビューゲルを装着しています。リーメンビューゲルの治療では合併症がおこることがあると聞いておりますが、どのようなものかお教え下さい。

御返事

先天性股関節脱臼に対し、外来診療でリーメンビューゲルをいきなり装着する、というのは我が国においては現在でもよく行われている治療法です。リーメンビューゲル法は、1960年代に画期的な方法として我が国で広まりました。それ以前におこなわれていた「徒手整復、ひきつづき極端に股を拡げた状態でのギブス固定」という方法に比べれば、簡便で整復率もよく、合併症も少なくて成績が良好なことは明らかであったのです。しかし、沢山の症例を経験する過程で、リーメンビューゲル法が、かならずしも手放しで喜べないことがわかってきました。10-15年程前から、リーメンビューゲルによる治療法においても数は少ないけれどもしばしば重度の合併症が発生することが様々な医療施設から報告され、問題になってきたのです。現在でも様々な専門施設で臨床研究が進められているところです。このことに関して詳しいことは、日本の代表的な整形外科の雑誌の1つ、(臨床整形外科24巻 No.5, 1989年、598-629 page)を御覧下さい。

どのような疾患でも同じですが、病気の重症度は個々の患者さんによって異なります。先天性股関節脱臼においてはまず、整復操作(脱臼した大腿骨頭を本来の受け皿である臼蓋に正しくおさめる操作)の出発点である股を開いた状態で、脱臼の程度が亜脱臼か、真の脱臼か診断することが極めて重要です。亜脱臼とは、関節が本来の正しい位置になくても、大腿骨は臼蓋の中にあって、両者にはまだ接触がある状態です。真の脱臼とは、大腿骨が臼蓋から離れ、両者には接触がなくなっている状態をいいます。治療成績や治療による合併症の発生率は亜脱臼と脱臼では大きく異なっており、特にリーメンビューゲルを用いた整復において顕著です。私達の研究では、亜脱臼に対してリーメンビューゲルを用いた場合には整復成功率も高く、合併症状も少ないのです(ただしまったくないわけではありません)が、真の脱臼にたいしては整復成功率は約50%で、整復成功しても骨頭壊死発生率は30%にも昇ることがわかりました。このことに関しては、整形外科雑誌で世界的にもっとも権威のある(Journal of Bone and Jointo Surgery 78-B,1996 年発行、631-635ページ)を参照してください。私達は、これらの研究結果に基づき、1993年から開排位持続牽引整復法という新しい方法を開発し、真の脱臼(ホームページの解説で、タイプB, C の脱臼)にたいし応用し、1例の合併症をも出さずに良好な結果を出しています。

先天性股関節脱臼は昔と比べれば数も減少し、先天性股関節脱臼をまだ見た事がない若い整形外科医師が大勢いるようになりました。また、この疾患の病理学、治療学は、研究すればする程奥が深いことがわかってきます。合併症を防止し、完全に治癒指せるためにはきめ細かな配慮、複雑な手技が必要で、もはや、救急医療や、成人の変性疾患などの診療の片手間にやれるような簡単な疾患ではなくなりつつあるのが現状です。たとえば、京都大学を受診した先天性股関節脱臼の患者さんはほとんど本センターもしくはその他の小児整形外科専門の施設で治療がなされるようになっております。

御質問1

生後3ヶ月半の男の子のことですが、小児科で股関節が少し硬いといわれ、整形にまわされました。レントゲン検査の結果股関節脱臼はしていないが、片方が硬いので装具を2ヶ月ほど短ければ1ヶ月ぐらい装着する、との診断でした。
装具を着けることの合併症もあるとのこと心配しております。やはりこのような症状でも装具の必要があるのでしようか?

御回答


股関節が硬いが、レントケン検査の結果股関節脱臼はなかった、とのことですが、生後3ヶ月半のでのレントゲン検査でもし脱臼や臼蓋形成不全があればまず見落とすことはありません。したがって、診断された方が、小児整形外科医、もしくはこの疾患に精通した整形外科医であれば、「脱臼、もしくは臼蓋形成不全はなかった」、と判断してよいと思います。

さて、装具を2ヶ月ほど短ければ1ヶ月ぐらいと装着を勧められたのは、開排制限を除去するためと考えられます。開排制限に対し、装具を着けるか否かというのは現在のところ、個々の医師が判断している、というのが実情と思います。開排制限が持続すると、レントゲン検査では分からないような軽い脱臼が増悪することがありますので、そうした方法も選択枝の1つと考えます。

したがって、治療する側が、小児整形外科医、もしくはこの疾患に精通した整形外科医で、装具を正しく装着することができる医師であれば問題ないと思います。装具(リ−メンビュゲルと思われますが)を正しく装着するというのは、たとえば、股関節屈曲角度が正しいか、後方のベルトがきつく無いか、装着時には下腿枕などで過開排にならないような注意がされているか、そして、医師が定期的にチェック(少なくとも2週ごと)しているか、などです。

参考までに、お子さんの股関節に対しての当センターの方針を述べます。
まず、超音波断層像で、脱臼のタイプ分類を行います。レントゲン検査で脱臼や臼蓋形成不全がなかった、ということをそのまま信じれば、おそらくタイプAI-Iということになりますので、赤ちゃんの抱き方やおしめの当て方の指導をし、そのまま経過をみることになります。1995年以降、タイプAI-I の176例はすべて経過観察のみにしましたが、治療を要したのは5例でした。もし、自然治癒の傾向がなければ臨床所見が持続しますので、その時点て治療を開始すれば良いと思います。

その後

患者さんは軽度のタイプAI-Iであり、赤ちゃんの抱き方やおしめの当て方の指導をするだけでそのまま経過をみましたが、3ヶ月後には順調に改善に向かっております。

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