足の変形は様々な原因で発生します。したがって、診断にあたっては、全身状態をよく見て、先天性内反足以外の内反足と鑑別することが大切です。
まず、脊椎を詳しく観察します(足の変形を見たら脊椎脊髄疾患を疑うこと)。二分脊椎などでは下位の障害でも足の変形が生じます。先天的な脊椎奇形による神経麻痺が原因のこともあります。生まれつきの骨系統疾患、たとえばラルセン症候群などでは内反足は必発です。脊椎骨端異形成症、クニースト症候群、 diastrophic dwarfism, その他いくつもの疾患で高い発生率となります。神経筋疾患たとえば関節拘縮症(とくにdistal arthrogryposis)なども重要診断項目です。もしこうした疾患が根底にあるとすると、他の変形治療との関係で治療方針はガラリと変わることがあります。これらが原因となって発生する内反変形の治療はほとんどの場合手術療法が必要です。脳性麻痺において発生する場合は通常後天的ですが、時に先天的な場合もあります。
局所に目をやれば、拘扼輪症候群、半肢, 中足骨内反, などとの鑑別も必要となってきます。中足骨内反と内反足は混同しやすいので気をつけなければなりません。中足骨内反では、足の指の骨(中足骨)が内側に曲がっているもので内反足とは変形部分が異なっております。6割りが自然治癒することがわかっています。また、しばしば間違えられるのが、単なる内反位足です。これはお母さんのお腹のなかで内反位をとっていた、ということが原因と考えられますが、外見は似ていても、骨どうしの配列には問題が無く、柔らかく殆どが自然治癒します。時々先天性内反足と間違われてとんでもない治療を受ける例があります。ただし、先天性内反足と内反位足は見た目だけでなく、レントゲンでも鑑別できないことがあるので注意が必要です。この問題は簡単ではありません。とにかく正しい診断が重要です。半肢(特に脛骨欠損)の場合は見た目は内反足でも病態と治療方針は先天性内反足とはまったく異なります。
内反足変形が上に述べたような疾患によるものでないことがわかれば、変形した足そのものを丁寧に診察します。まず、全体を眺めると足首のところで内側にまがっているように見えます。ただし、この変形は実際には足首(正確には下腿骨と距骨のつくる関節)ではなく、距骨とその他の足の骨との関係がずれたために生じた形態異常です。距骨に対し、その先端にある舟状骨は内側に移動しており、丁寧に触診するとこの舟状骨が内側に転位し、変形が強い場合には内果(内側のくるぶし)と接触していることがわかります。またこの為に、足の内側部分はくっきりとした皺を伴って大きく曲がっています。逆に足の外側も同じ方向にカーブを描いて曲がっています。また、踵骨の前方部分は内転かつ回旋しながら距骨の下に潜り込んできますので、踵骨の後方部分は上に移動し、さらに短縮したアキレス腱に持ち上げられて本来あるべきところには触れません。距骨は前方が持ち上げられるため、外側からよく触れることができます。矯正するときはこの距骨をしっかりと認識することが極めて重要です。足全体は可動性が失われ、変形を本来の形に戻すことは容易ではありません。
先天性内反足であることが確実になったなら、解剖学的診断と重症度評価をおこないます。視診・触診でおよその重症度は判定できます。矯正位でX線撮影をおこなって診断するのも良い方法です。しかし、生後間も無い赤ちゃんでは骨がまだ出現していないため正確なX線診断が出来にくいことがありますので、やはり視診・触診が重要となります。