先天性内反足の仕組み


 

発生率は0.1%といわれています。この疾患における変形の本質は、足にある骨(足とは通常の靴を履く部分と考えて下さい)のうち距骨と、距骨と関節を形成している骨(踵骨、舟状骨)とが正しい位置関係を失った状態、すなわち、距骨に対し、周りの骨群が全体として回転(内回旋)していると考えられます。回転の中心は、距骨と踵骨を繋げている骨間靭帯です。そのため、この靭帯より前方の骨は内方に、後方の骨、すなわち踵骨の後方部分は逆に外側にはみだしてきます。最近 MRI , 三次元CTによって変形の様子がより明らかになってきました。

    

上の図は3次元CTによる足の立体画像で足の裏から眺めたところです。左図が正常足(左足像)で、右図が内反足(右足像)です。正常足(左図)で見てみましょう。図の一番下にある骨(立体図の一番下でかつ手前の骨)が踵骨です。その上に乗っているのが距骨で、距骨の先端は丸く、その先にある小さい骨が舟状骨です。

距骨と舟状骨の関係を見ると、正常足(左図)では舟状骨は距骨の先端部分に対しやや外側に位置しているのですが、内反足(右図)では、舟状骨は距骨に対し大きく内側に転位していることがわかります。

距骨と踵骨の関係を調べると、内反足(右図)では、踵骨は距骨の下に向かって時計と逆方向に回転・内向きに回旋しながらもぐり込んでいるのがわかります。踵骨の回転中心は両者を繋いでいる骨間靭帯です。踵骨は単純に内転しているのではなく、厳密には回転していので、踵骨の後方部分は外側に張り出してきます。したがって、矯正の際には踵に外反力を加えないことが重要です。この点を明確に指摘したのはポンセッテイ先生です。距骨と踵骨は重なりが多くなるため、X線写真の側面像では2つの骨が平行に近くなっているように写っているのです。また、距骨の前方部分は上に持ち上げられ、足全体としては凹足(足の甲が高い)となってしまいます。正常骨(左図)を見ると両者の骨は関節によって結合しているのですが、距骨の前方の球形部分は踵骨の内側の支えから離れており真下にあるわけではないことに注目してください。内反足ではこの重なりによって、距骨と踵骨の前方にある関節が機能不全となり、固くなってきます。内反足が単なる内反位足と異なり固いのはこのことも関係しています。

別の患者の立体像を後ろから観察してみましょう。右が正常で左が内反足です。正常側では、距骨と踵骨との先端がお互いに開き、距骨の頭がわずかに踵骨の内側に沈み込んでロックされています。逆に左の内反足では距骨の頭の真下に踵骨先端が位置しているのがよくわかります。

このような病理を理解すれば、初期の矯正をどのようにおこなえばよいかわかります。まず、距骨を触れ、それをしっかりと指で押さえて距骨以外の骨を外に向け(外転)ます。この段階で注意することは外反は加えないことです。踵骨が移動する前にこの骨に外反力を加えると母指が底屈し厄介な変形が生じつからです。この点を指摘したのもポンセッテイ先生です。次に踵骨の先端が距骨頭から外側にずれたのを確認してから足関節を背屈させ、踵骨と踵骨の先端どうしを上下に交差させてゆくわけです。距骨頭と踵骨先端が十分に開かない状態で足関節を背屈させても別の関節が背屈する(舟底変形)だけであって正しい矯正はできません。したがって、矯正のポイントは、距骨頭と踵骨先端を十分に開くということです。

内反足における骨どうしの配列は細かい点ではさらにいくつかの異常があります。また、研究者によってはそれらの細かい変化については意見が異なる場合もあります。しかし、すべての研究者が認めているもっとも大きい変化でかつ内反足の本質的な部分は、踵骨は骨間靭帯を軸に、内反を伴って回転しながら距骨の下にもぐり込み、同時に舟状骨は距骨の先端から内方に転位している、ということです。簡単にいえば、距骨の周りの骨(踵骨、舟状骨、その他)が距骨に対して本来の位置から回旋を伴いつつ内方に回転してずれている、といえましょう。治療法は様々あり、治療者によってやり方は異なる事もありますが、この変形の本質的な部分を矯正する操作であれば、いかなる方式をとっても良いと考えます。

先天性内反足のまま成長すると、足底が正しく接地することが出来ず、足の外側をついて歩く事になります。このような状態では靴も履きにくく、歩行が著しく制限されます。治療にかかわらず変形が残存すると、歩行時に体重が足の外側に過度に加わり、足の指の骨折や、痛みを将来する原因となります。また、歩行時に筋肉が正しく働かない為に、疲れやすくなります。内反足がある側の筋肉は萎縮しているのが普通で、下腿は細く見えます。これは治療の有無に関わらず存在します。治療は早い時期に距骨と、踵骨、舟状骨の位置関係を正すことが大切であり、場合によっては2次的に生じた変形を矯正することも必要となります。治療開始が遅れた場合には多くの場合最初から手術療法が必要です。

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