アキレス腱の皮下切腱術について
内反足の矯正が順調に進んで内反変形が矯正されても、多くの場合、下腿の筋肉の短縮が強い為に踵が下りてきません。このような場合には適切な時期にアキレス腱皮下切腱を行います。
アキレス腱皮下切腱は少量の局所麻酔下にわずかな皮切で行うもので危険はありません。小さな皮切ですので糸での縫合も必要ありません。切り傷は、やがて外から見てもほとんどわからないくらいに治癒してしまいます。また、アキレス腱を切っても、小児では組織の再生能力が旺盛な為、切り離されたアキレス腱はすみやかに繋がってしまい、歩行などにおける機能的な問題を残すこともありません。
術後はギブス固定をおこないます。アキレス腱皮下切腱から数日間は機嫌が悪いのが普通です。これまで1度も足関節の背屈をとったことがないわけですから、急に背屈位に固定されるので痛みや不快感があるのは当然です。また、出血の為、ギブスに血がにじむ場合があります。しかし、大きな血管は損傷していませんので、血の滲みがどんどんひろがらなければ問題ありません。
ギブス固定期間は約3週です。多くの場合、この後デニスブラウン装具を装着しますが、内反矯正がまだ不十分な場合には引き続き矯正操作ならびにギブス固定を続けます。
少量の局所麻酔でおこなう簡単な処置ですので、いまでは日帰り入院でおこなっています。
以下は、アキレス腱切腱を受けられる場合に参照してください。
内反足に対するアキレス腱皮下切腱
2016年10月17日
距骨と舟状骨、ならびに距骨と踵骨の矯正が終わったのちに足関節後方に拘縮があって尖足(踵が上に挙がっている状態)となっている場合に行う処置です。
腹臥位(うつ伏せ)でおこないますので、腹臥位の練習(目覚めているときに、1日5分くらい)をさせておいてください。来院2時間前から絶食をしていただきます。
処置は、少量の局所麻酔下に、短縮したアキレス腱の直上に約0.5〜1cmの皮膚切開をおこないます。アキレス腱を確認して切離し、創はテープで寄せておきます。縫合はしません。処置そのものは5分くらいで終了します。ポンセッティによって確立した安全な方法(内容的には簡単な処置ですので手術とは呼んでいません)です。
その後足関節を最大背屈し、ギブスを巻きます。
3週後に来院していただきます。来院の前日に自宅でギブスをはずしていただきます。
考えられる合併症は、
1. 局所麻酔薬によるショック。実際には0.5cc以下の少量の局所麻酔薬をつかいますので危険は極めて少ないと考えます。万が一発生した場合には酸素吸入など応急手当を行います。
2. 予期しない大量出血。本人が血友病である場合に可能性があります。血友病の場合にはこの処置はできません。また母親が出産の際に大量出血の既往がないかどうかも重要であり、場合によってはこの処置ができません。
3. 創の感染。アトピー体質など本人が感染しやすい体質の場合に起こるかもしれません。アトピーなどの状態によっては処置ができません。
4. 足先の血流障害。ギブスによる圧迫などで生じる可能性がありますが、これはギブスを巻いた後に血流障害がないことを確認することにより回避できます。足先の状態などは常に見ておいてください。もし血流が悪いようでしたら病院に連絡してください。
5. ギブスによる褥瘡。ギブスの中に発生するので確認が困難です。たとえ発生してもギブス除去後には自然治癒します。
6. 本人にとってこれまで経験のない足関節の背屈が強制されていますので、帰宅後、2〜3日はミルクの飲みなどが悪く、機嫌のよくない状態が続きます。こうした症状がどんどん進行するようであれば病院に連絡してください。
写真左は切腱前、右写真は切腱後にギブスを巻いたところです。