ペルテス病にたいする大腿骨内反骨切り術


手術的療法の目的は、骨頭を臼蓋に深く包み込んで、骨頭を球形に整える準備をすることです。手術療法を行った場合には通常、装具その他で特別な肢位をとる必要はありません。
ここで説明する手術は、大腿骨切り術です。具体的には、大腿骨の股関節に近い部分で骨切りを行って骨頭の方向をかえ、骨頭を臼蓋によって充分に包み込むようにします。包み込んだ後には股関節を動かすことによって(日常生活がリハビリとなります)変形した骨頭を徐々に球形にしてゆきます。


手術時間はギブス固定を含めて約1時間30分くらいです。さらに麻酔導入、ギブス巻きなどのために1時間30分必要です。9時に手術場に入室すれば12時ころ帰室となるでしょう。

手術の実際
5才女子で、左ペルテス病です。
骨頭の全体が壊死となっており、反対側と比較すると扁平になっているのがわかります。
大腿骨骨切り術によって骨頭は臼蓋に完全に包み込まれました。

術後1年9ヶ月です。包み込まれている間に壊死部分は吸収されそして骨再生がおこり、骨頭は球形に修復されています。本人は元気に走り回っています。将来的にも問題はありません。


下図は、2005年9月から2014年3月までの水野病院におけるペルテス病にたいする109例の内反骨切り術の手術時間と出血量です。最初の5例以外は、小児麻酔専門医による低血圧麻酔を行なったため、特別な場合を除けば出血量は極めて少なくなっております。もちろん輸血準備は不要です。手術時間と出血量は当然関連しています。手術時間が短ければそれだけ出血する時間が短くなるのでその量も少なくなります。肥満があると、脂肪組織の為に骨へ到達するのに時間がかかり、さらに低血圧麻酔に反応しにくくなるために手術時間ならびに出血量とも大きくなります。手術前には痩せていること有利であることはいうまでもありません。





手術合併症
1)出血によるショック:この手術においてはこれまで重篤なものは経験しておりません。可能性は低いのですが万が一合併症が発生したときは輸血を含めた救急対策、ならびにその原因の追求を早急におこないます。ギブスは出血を吸収する機能があり、このことによって手術創内に血液がたまるのを防いでおります。出血によりギブスが汚染されることがありますが、少量の汚染ならば問題にはなりません。

2)肺炎、尿路感染症:全身状態が良く無い場合には可能性が高くなります。術後の体位変換を定期的に行って肺炎防止を行います。また必要に応じて抗生物質の投与を行います。

局所の合併症としては
1)下肢短縮:1-3cmの大腿骨の短縮がおこります。手術後1-2年くらいは跛行がありますが、多くの場合、数年の後には脚長差も自然に解消して跛行は消失してしまいます。たとえ短縮が残って2cm未満の短縮であれば歩行に影響はでません。下肢短縮が最終的に2cmを超えるようであれば、脚延長術もしくは健側の骨端線固定術が必要となるかもしれません。

2)骨癒合不全による関節変形:骨が脆い場合や、局所の感染のためににピンの固定が不良となっておこる可能性があります。この場合は手術的にピン固定をやりなおします。

3)創感染:創感染発生はまだ経験ありません。感染の場合には骨癒合を待ってからピンを抜くと治癒します。

4)褥そう:まだ経験がありません。万が一発生しても最終的には完全に治癒します。

5)大腿骨の股関節に近い部分の外側への突出:やせ形のお子さんでは目立つことがありますが、数年以内には目立たなくなります。

術後1週ほどして全身状態が安定したらギブスのまま退院可能です。ギブスは体幹から手術側の足首までかかります。

  

股関節は約30度屈曲していますので写真のように車椅子で移動可能です。この車椅子の取扱業者は病棟から紹介いたします。食事は30度くらい体を起こした状態で可能です。排尿は尿器を、排便はおむつや便器を差し込んだりしておこないますが、慣れればご家族の方が支えてトイレ便器使用も可能です。

大腿骨切り術単独の場合は、術後2〜3週で再入院していただき、ギブスをカットしてレントゲンを撮影し、問題がなければ股関節を動かす訓練をおこないます。股関節の動きが良好となり、筋力がある程度回復したら座位ならびに松葉杖歩行を開始します。松葉杖歩行が安定したら退院です。退院後はおよそ1-2ヵ月おきに診察があり、ここでは股関節の動きの状態、骨頭の修復の状態などをチェックします。
抜釘(骨を止めた金属の除去)は術後4−6か月でおこないます。
体重をかけるのは骨頭の形成が完成してからであり、手術後1〜3年たってからです。

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