様々な足の変形

足の変形には内反足以外にもたくさんの種類があります。医学教育ではこうした問題にほとんど触れられることがないので、正しい診断がされることは稀なくらいです。しかし、足といってなめてかかってはいけません。診断を間違えることによって、無駄な手術がなされたり、かえって変形を増強したりすることがあるからです。

1.中足骨内転

足の前のほうにある5つの骨が中足骨です。これらが全体として内反してくる状態で、よく内反足と間違えられます。内反足と異なり、6割は自然治癒しますし、1歳すぎても持続する場合には徒手矯正後にギブス固定を行うと短期間で良い結果が得られます。

2.外反母趾

第1中足骨が内反し、その先にある基節骨というのが外反する疾患です。成人女性によく発生することで広く知られていますが、小児でも起こります。原因はよくわかりませんが、扁平足が根底にあるといわれております。私は、昔、中足骨内反と外反母趾は関係しているのではないかと考え調査しましたが、確認できませんでした。

3。外反偏平足

この疾患の構造は、内反足の逆と考えると理解しやすいと思います。簡単に言うと、内反足は、距骨に対しその周囲の骨群が内方かつ下方へ内旋しながらずれているのですが、外反扁平足では、距骨に対しその周囲の骨群は外方かつ上方へ外旋しながらずれています。下の写真は典型的な外反偏平足です。正常足であれば距骨頭(距骨の先端)の正面に舟状骨があるのですが、これが距骨頭の外側に位置をかえていることがわかります。また、側面像で足の骨のアーチが無くなり偏平になっています。

  

外反偏平足では、距骨とその周囲の骨群との間に不安定性があり、体重をかけると足の前方部分がグニャッとなって外に向いてしまいます。この時、足の内側が突出しますが、こと突出した部分は距骨の頭であり、靴を履いているとこの部分があたって痛みがでることがあります。不安定性がありますので、歩行の時の蹴り出しに力が入らず、走るのが遅く、長距離歩行では疲れやすくなります。

この変形は脳性麻痺でしばしば発生します。下肢の麻痺があると、足関節に関与する筋肉のバランスが崩れ、腓骨筋が後脛骨筋よりも緊張することによりこの変形が起こるとされています。

脳性麻痺に伴う外反偏平足の矯正には手術が必要な場合が多いのですが、特別な基礎疾患が無い場合には予後良好です。変形が強く、歩行の際に不自由があれば装具などが必要となります。不自由がなければ特別な治療は不要でしょう。滋賀県立小児保健医療センターでは、2001年までに72例の治療を行っていますが、そのうち基礎疾患があるのが33例でそのうち19例に手術をおこなっています。全例経過良好です。基礎疾患がない場合は、39例でそのうち10例が自然治癒もしくは改善していることを確認しています。他の29例はその後通院されていないか改善がみられないかです。通院していない場合は気にならなくなっているので来院しなくなった、と推測します。改善がない場合でも日常生活で困ることはなく、御両親も気にならなくなっているのがほとんどです。
外反扁平足の術後は、足の形がよくなって靴が履きやすくなるだけでなく、歩きやすくなって全員の方が手術に満足しておられます。手術は安全で合併症もほとんど考えられませんし、片側づつ手術を行えば負担も少ないので、この病態で困っている場合には積極的に手術を勧めます。

4.凹足

俗にいう甲高です。神経の変性疾患や、ある種の筋ジストロフィーでしばしば診られます。踵骨は引き下げられ、中足骨の前方は逆に下がって来るため土踏まずが高くなります。ほとんどの例では、下腿3頭筋の筋力低下があります。初期治療は保存的、それでもだめな場合は、足の底の腱膜を切開しますが、それでもだめなときは中足骨の骨切りをします。よくある誤りは、踵が地に着かないということでアキレス腱を延長することです。しかし、すでに下腿3頭筋の筋力低下があるわけですからアキレス腱を延長するとますます凹足を促進する結果を招きます。

5。垂直距骨

  

垂直距骨は土踏まずが消失するなど外観は外反扁平足と似ている部分もあるのですが、外反扁平足とは別の疾患です。病理学的にはこの両者の関係について議論のあるところですが、ここでは省略します。垂直距骨では、距骨に対し、舟状骨が上方に完全脱臼し、この二つの骨の間に動きがなくなってしまいます。足全体(足首ではなく、靴の中に入る足の部分)がかたくほとんど動きがありません。視診触診でおよその見当がつきますが、レントゲンの動態撮影(足の様々な位置でレントゲンを撮ること)をとれば診断が確定します。
この疾患は、関節拘縮症や、二分脊椎、染色体異常などの先天性疾患に伴って発生することが多いものです。したがって、この診断がついたときは全身の精査が必要です。

歩行可能なお子さんであれば手術の絶対適応です。距骨の上に舟状骨という骨がのっかってロックされているため手術以外の方法ではこのロックされた状態が解除されないからです。そのままでは痛みのために歩行は大きく障害されます。

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