哀しみの風
3
「ちきしょう!」
「レヴィン様、ティルテュ様達は?」
「大丈夫だと思う。パメラ達が追いついているだろう。それより城の方は?」
「今の所は敵の姿はみえません」
「そうか。城に戻る前にティルテュたちの所に向かうぞ」
「はい」
レヴィン達は敵に姿を見られないように慎重に隠れ家へと向かった。
「父上!!怪我したの?大丈夫?」
「心配するなアーサー」
そこにアーサーを心配してティルテュが出てきた。
「アーサーまだ外は危ないわよ。レヴィン!!その傷は!?」
「ちょっとしくじっただけさ」
「ちょっとどころではないでしょう。さあ こっちにきて傷の手当てを」
ティルテュは強引にレヴィンを家へと入れた。
傷の手当てを受けながらレヴィンはパメラとティルテュにもっと奥地に逃げるようにと言った。
「ですがレヴィン様、これ以上奥地となると連絡を取るのにも時間がかかります。
それに兵を配置したりしたら敵にアーサー様達が居ると教えているようなものです」
「護衛はパメラと数人で良い。ティルテュも戦えるし、それにあそこが襲われた時は
シレジアが陥落した時だ」
「レヴィン様・・・」
「ティルテュも承知してくれるな」
「解っています。アーサーとティニーは私が守ります」
「頼んだぞ」
「父上、僕も母上とティニーを守るよ」
「そうか・・・だが敵は強いぞ」
「大丈夫だよ。僕には父上から貰ったウインドがあるもん」
アーサーはまだ六歳だっだがフォルセティの継承者として才能を開花させ始めていた。
レヴィンとフュリー、それに主だった天馬騎士達はティルテュ達の避難を見届けると
ラーナの待つシレジア城へと戻っていった。
「フュリー、お前達家族もティルテュ達の所に行ってくれるか?」
「いいえ。今回はレヴィン様と共に戦ます。彼もそのつもりでいます。
子供達は母の元に疎開させました」
「死ぬかも知れないぞ」
「貴方とフォルセティのある限りシレジアは滅びません」
「フュリー・・・・」
レヴィンはいつに無く強気の幼馴染に苦笑した。
だが二人はこれから起こる悲劇を身体で感じていた。
****
数ヵ月後、シレジア城にグランベル軍が押し寄せた。
「ちきしょう・・・おいアレク、フュリーと母上を連れてこの城を脱出しろ」
「それじゃあ貴方も一緒に・・・・」
「馬鹿言え、俺は王だぞ逃げれるか。それに俺にはこれがある」
レヴィンはそう言ってフォルセティの魔道書を見せた。
「分かりました。ですがラーナ様の所に行くのも命がけだ」
「俺が道を開く。行くぞ」
レヴィンはエルウインドを放ちながら道を作った。
「なんとかついたな」
ラーナ達のいる部屋までたどり着き中からの悲鳴に慌てて扉を開けた。
「母上、フュリー大丈夫か?」
そこにはマンフロイの黒魔法の攻撃で命のともし火が消えかけたラーナと
必死に守るフュリーがいた。
「おのれマンフロイ!よくも母上を!」
「これはレヴィン王よ。ゆっくりなおでましで、お母上様も頑固な方だ。
貴方の妻子の居所を教えてくださらないからこういう目にあうのです」
「なに!?」
「フリージ家から頼まれているのですよ。ティルテュ公女を助けて欲しいと」
「ティルテュには指一本触れさせない」
レヴィンはフォルセティを放った。
「くっ・・前より魔力が増しましたね。ですがまだ完全にわたしは殺せない。
では暗黒魔法の餌食になって貰いましょうか」
マンフロイはフュンリルを放った。
だがそれは瀕死のラーナによって阻まれた。
「レヴィン逃げて!今はまだ貴方は死んではいけません。
さあ、アレク、フュリー貴方達も!!」
「ラーナ様!」
アレク達は放心状態なレヴィンをひっぱり強引に部屋を脱出した。
部屋にはこときれたラーナと胸に剣を突き刺されたマンフロイだけが残った。
「さすがオードの血筋の事だけはある。瀕死でなければ急所に刺さっていたわ。
まあよい、あやつらが公女の元に案内してくれるだろう。フフフフ・・・・」
マンフロイは不気味に笑うと玉座の間へと向かった。
レヴィン達は城を脱出しフュリーの母が居る村へと向かった。
「レヴィン様、大丈夫ですか?酷い怪我です」
「くっ・・・おいアレク!ティルテュ達の所に連れて行け」
「なに馬鹿な事言ってるんですか!!そんな身体でいける訳ないでしょう。
今は怪我を治す事だけ考えて下さい。フュリーを見に行かせますから・・・・」
「くそ・・・何故アイツはフォルセティを止められるんだ!!」
「俺は魔法の事はよく解りませんが、アイツからはとても強い邪悪な気が感じられます」
「ロプトウスにでも守られてるのか・・・・」
傷の手当てを終えるとフュリーはティルテュ達の元へと向かった。
「気をつけろよフュリー」
「大丈夫よ、それよりレヴィン様をちゃんと見ててね」
「おい、その言い方はなんだ!子供じゃないんだぞ俺は。
アレクが見てなくたってここから離れたりしないぞ」
「そんなにムキにならなくても・・・・」
フュリーは笑いながら天馬に乗ると飛び立って行った。
そのころアーサー達は追ってを気にしながらも、平穏な時を過ごしていた。
「ねえパメラ」
「なんですか、アーサー様?」
「父上はどうしてあんまりここにいらっしらないの?」
「それは・・・・今悪い奴らがこの国を狙っているのです。
お父上は王としてこの国の民を守らなければならないのです」
「ふうーん。でも父上にはフォルセティがあるんだから悪い奴になんて負けないよ。
ねっホークもそう思うだろ?」
「はい」
「アーサー様、父上が恋しいのですか」
「ち・違うよ。それにホークと約束したんだ。父上に褒められるように魔法を上達させるって」
「そうですか・・・ホークも頑張らないとすぐアーサー様に置いていかれるわよ」
「母上、アーサー様はフォルセティの継承者ですよ。比べられてもこまるよ」
「あらレヴィン様は貴方は頑張れば光の魔法も使える賢者になれると言っていたわよ」
「へえ、すごいねホーク」
アーサーはパメラの言葉を聞いて自分の事のように喜んだ。
三人が談笑している部屋に向かって慌しい足音が聞こえてきた。
「何事だ!?」
「大変です。敵に見つかりました!!」
「そんな。ここまで敵が来ると言うことは城は・・・・」
「早く脱出しないと囲まれてしまいます」
「解った。アーサー様、ホーク。私から離れないように」
「でも母上達は?一緒に行った方が良いんじゃない」
「いいえ大勢だと目立ちます。
それに他の者が安全な所にお連れになっているはず。さあいそいで」
アーサー達はグランベル兵にみつからないように林を抜け、追っ手がかかった時に
隠れる洞窟にたどり着いた。
けれどもそこには居るはずのティルテュ達の姿はなかった。
「母上達いない・・・・どうしたのかな」
アーサーは不安気にパメラを見上げた。
その時急にホークが
「母上誰か来ます」
「なに!?二人は奥に」
パメラは剣を抜くと身構えた。
「パ・パメラ・・・・」
「フュリー!?貴方なの」
パメラは慌てて外に出ると怪我をしたフュリーがいた。
「どうしたのその傷は?」
「レヴィン様に頼まれてこちらに向かっていたのだけど、つけられていたのね。
村の近くまできたら攻撃を受けて」
「そうだったの」
「それよりティルテュ様たちはご無事なの?」
「それがアーサ様は一緒なのだが、ティルテュ様達がまだこないの」
「そんな・・・」
フュリーはその言葉を聞くと、慌てて村に行こうとした。
「待ってフュリー、そんな怪我で行くのは無謀だわ」
「行かなくては。グランベルの狙いはティルテュ様」
「何ですって!解ったわ、私が行くから貴方はここに居て」
「いいえ、これは私の油断が招いた事一緒に行くわ」
「そう・・・わかったわ。ホーク!!」
「なあに母上?」
「今からフュリーとティルテュ様達をこちらに連れてきます。アーサー様と二人で待っていて。
ここから出ては絶対に駄目よ」
「うん。解りました」
パメラは子供達を気にしつつ村へと戻った。
一方ティルテュ達は、グランベル兵から逃れてはいたが、敵兵が多くて村から出れずにいた。
「アーサー、大丈夫かしら・・・」
「王妃様ご安心を。パメラ様がついておられますから」
「そうね・・・ティニーもうちょっと我慢していてね。すぐに安全な所に行けるから」
「うん、ははうえ」
まだ四歳にしかならないティニーはティルテュにしがみ付いていた。
ティルテュ達が敵兵の隙を見つけ林に向かおうとした時、幼い悲鳴が聞こえた。
「うわーん、かあ様助けて!!こわいよー」
それはパメラの娘フェミナだった。
さらにグランベル兵は村人を引きずり出した。
「ここにシレジアの王妃が居る事は分かっているんだ。どこに隠れている?」
「知りません!!」
「この子供がどうなってもいいのか!?」
兵士はそう言うとフェミナを頭上に持ち上げそこから地面に投げようとした。
「待って!!私はここにいます。その子を放して」
「ティルテュ様いけません!!」
グランベル兵は声のする方に振り向きティルテュを確認すると
フェミナを村人の方に放りなげた。
「ティルテュ公女ですね。我々と一緒にグランベルに帰って頂く。
ブラーム様もお待ちになっておられます」
「お兄様が・・・・」
「大人しくしていただければこの者達には危害は加えません」
「ほんとうですね」
ティルテュはティニー達の隠れている所を横目で見ながら
一歩づつグランベル兵の方に向かって行った。
その時
「ははうえー、ティニーも行くう」
とティニーが彼女の後を追いかけて来た。
「ティニー!!来てはダメ」
「ほう、ご息女ですか。これは可愛い子だ。おいこの子も連れて行け」
それは先ほどまでシレジア城にいたマンフロイだった。
「貴方は・・・」
ティルテュは彼の邪悪な気に飲まれながらもティニーを奪われてなるものかと
しっかり抱きしめた。
「ティルテュ様、お初にお目にかかります。私は暗黒教団司祭のマンフロイと申します。
お見知りおきを。それにしても貴方のご夫君はしぶとい方だ。
フェンリルを向けても中々死なない。でも今回は重症のようですね、ここにこられないのだから」
「うそ・・・・・」
「嘘ではありませんよ。そうそう前王妃には死んでいただきました」
「えっ!?」
「なかなか貴方の居場所を言わないのでね。クックック」
「おかあさま・・・」
ティルテュはガクリと膝をついた。
「さあティルテュ様達をお連れしろ」
グランベル兵は強引にティルテュを立たせると、用意した馬に乗せようとした。
「待て!」
そこにパメラ達が現れた。
「ティルテュ様を帰して頂こう。さもなくば空から槍が降ってくるぞ」
「まだ天馬達が残っていると言うのですか?
まあやれるものならおやりなさい。
ただ此処にいる者達が暗黒魔法にやられても良いというなら」
「なっなに!」
パメラ達が怯んだ一瞬の隙をついてグランベル兵が襲いかかって来た。
「ぐっ」
「パメラ!フュリー!止めて言うとおりにするから彼女達を殺さないで」
「そうですか、ではお乗り下さい」
ティルテュ達は馬に乗せられ動きだした。
「ティルテュ様!!」
「パメラ、フュリー・・・・・」
ティルテュは物言いたげに二人の名を呼び見えなくなっていった。
ティルテュの姿が見えなくなるとマンフロイは不気味な笑みを浮かべた。
「さあ、お楽しみはこれからです。暗黒魔法で貴方達皆をあの世に送ってあげましょう」
マンフロイはティルテュの言う事など聞く気は無かったのだ。
村人達全員を広場に集めると
「フッフッフッ、レヴィン王の嘆きが見えるようですよ。
貴方達も心配なさらずに。王もいずれあの世に送って差し上げますから」
マンフロイが呪文を唱え始めたその時
「ウインド!」
マンフロイ目掛けてウインドが放たれた。
「くっ何奴・・・」
「お前!悪い奴だな。僕がやっつけてやる」
「なんだ子供か。しかしその髪・・・・そうかティルテュ様の子か。
しかし今の魔力は低級のウインドでこの力とは危険な子だ。ここで始末するか」
マンフロイはフェンリルを唱えるとアーサーに向かって放った。
「うわっ!」
「アーサー様!!」
パメラとフュリーは駆け寄った。
「ふむ一度では死なぬか・・・さすが聖戦士の血を引くだけのことはある。
だがこれで終わりだ」
マンフロイは三人目掛けてもう一度フェンリルを放ったが、一瞬それより早く
「エルウインド!」
ホークが渾身の力で放った魔法で直撃は免れた。
「おのれ!そのガキを切り殺せ」
マンフロイはホークの近くにいた兵士に命令し、ホークは避ける暇もなく切られてしまった。
「うわっ!」
「ホーク!」
パメラは動かぬ体で息子のそばに行こうとした。
「クックックッ楽しいのー、人々の嘆き苦しみが充満して。
さあ泣け喚け、それがロプトウスさまの糧になるのだ」
「きさま!もう許さないぞ」
アーサーはそう言って立ち上がった。
そしてアーサーの周りには吹き荒れる突風とバチバチという静電気が渦巻いていた。
彼はティルテュからトードの血も受け継いでいて、極限状態により怒りを発動させていたのだ。
「アーサー様?」
「ウインド!!」
それはウインドの魔法であるはずなのに、
フォルセティ並みの威力があり敵兵をなぎ倒していった。
「うっこれは!?」
マンフロイも油断したため傷を負ってしまい、ワープで脱出した。
「僕、ヤッタよね」
アーサはそう言って力尽き倒れた。
「アーサー様・・・・」
フュリーはアーサーを抱きしめ彼こそがシレジアの希望なのだと実感した。
広場は安堵の声で溢れていた。
アーサーの攻撃で敵兵は事切れたかもしくは再起不能になっていたのだ。
「フュリー・・・」
「パメラ、ホークは大丈夫なの?」
「ええ、背中を少し切られただけ。ルッツの鎖かたびらが守ってくれたみたい」
パメラはルッツの鎖かたびらを手直しして彼に着せていたのだ。
「それよりアーサー様の手当てを・・・・」
「パメラ様、フュリー様、私たちがお怪我の手当てを貴方方も酷い怪我です」
村人達がそう言って家へと招きいれた。
怪我の手当ても済み、死者の弔いを済ませた頃、森のほうから馬の嘶きが聞こえた。
パメラ達は怪我を押して身構えたが、知った姿を見つけホッとした。
それはアレクとレヴィンだったのだ。
二人は村人に案内されパメラ達の元にやって来た。
「パメラ、フュリー大丈夫か」
「レヴィン様どうしてここに?」
「とてつもない魔力の波動を感じてな。それがお前達のいる所に近いと感じたので
慌ててやってきた。皆、無事か?」
「申し訳ありません!」
パメラ達は動かぬ体を無理に動かし膝まづいた。
「パメラまさか・・・」
「はい・・・ティルテュ様とティニー様は敵にの手に落ちました。
我らの命を盾にとられティルテュ様はついて行く代わりに我々の命を助けようと」
「そうか・・・だがあの魔力は?」
「あれはアーサー様です」
「なに!?アーサーは無事なのか?」
「はい。マンフロイが我々を皆殺しにしようとした時、突然すざまじい魔法を」
「だがアーサー様はウィンドしか持っておられぬはず」
アレクが不思議がった。
「あれはトードの力も合わさっていたのですわ。すごい静電気でしたもの」
とフュリーが言った。
「そうか・・・・」
レヴィンはそう言ってアーサーの寝ている部屋に向かった。
「アーサー・・・良く頑張って皆を守ったな」
レヴィンは寝ていると思い小声で囁いた。
すると
「父上・・・・御免なさい」
「アーサー起きていたのか、何を謝るお前は頑張ったぞ」
「でも母上とティニーを守れなかった」
アーサーはそう言ってレヴィンに抱きついた。
「いいや、俺が悪いんだ。お前達の側についていてやれなかった。すまん」
「ちちうえー」
アーサーはレヴィンに会えたことにホッとして気が緩んだのか
声がかれるほど泣いて眠りについた。
数日後動けるようになったアーサーをレヴィンは頼もしげにみつめ
「おいアーサー、お前に良いものをやろう」
「なあに父上」
アーサーはあれから泣く事はなかった。
母親は恋しかったが、攫われた責任を感じ我慢していたのだ。
「さあ手を出して」
レヴィンがアーサーに渡したのはフォルセティだった。
「父上!これは父上の大事な魔道書でしょ」
「ああ、だがこれから父は旅に出る、だからこれで皆を守って欲しいんだ」
「えっ旅に?母上達を助けに行くの?それじゃあ僕もいく!」
「ダメだ。怪我がまだ治ってないだろ。それにこれは母上達を助けるだけの旅じゃない」
「そんなー」
「いいから言う事を聞くんだ。
お前にはまだこれは使えない、きちんと勉強して使えるようになりなさい」
「はい・・・でもいつ帰ってくるの?」
「分からない、何年も帰って来れないだろう」
「ちちうえー」
アーサーはレヴィンにしがみついた。
****
二日後、離れたがらないアーサーほ宥めるとレヴィンは村を後にした。
「レヴィン様、途中まで送ります」
「アレク・・・・何か言いた気だな」
「そりゃあ少しは。でも止めておきます。言っても聞きそうにないし」
「まあな。それよりアーサーの事頼むな」
「分かってますって。それより気をつけて」
父が旅だった後、アーサーはレヴィンの消えた方角をみつめていた。
「アーサ様・・・・・」
「ホーク、僕・・一人ぼっちになっちゃった」
「そんなことないです。僕だって母上だってフェミナもいます。
皆アーサー様が大好きだから、だから・・・・泣かないで」
「ホーク、ずっとそばにいてくれる?」
「勿論です。絶対に離れません」
ホークは心の底から、アーサーのそばを離れないと決心していた。
まだ六歳でしかないアーサーが大勢の命を救ったのを見て
アーサーの手助けをしたいと幼心に思ったのだ。
そんな二人をフュリー夫妻とパメラが見守っていた。
「頼もしい側近の誕生だな」
「ええ、ホークなら将来、王となったアーサ様を立派に補佐してくれるわ」
「二人とも気の早い事をいうな
」
「パメラ!レヴィン様がいない今、アーサー様だけがシレジアの民の拠り所なのよ」
「解っている。それで二人に相談なんだけど、アーサ様と子供達を連れて
あまり人に知られていない場所に隠れようと思う。
また敵がきたらやっかいだから。
連絡はフュリーかアレクがする事」
「護衛をつけないのか」
「その方が良い。目立たないから」
「わかった」
それからパメラ達親子とアーサーは、人知れず村を離れシレジアの森に消えていった。
けれどシレジアの民は知っていた。
いつか銀色の髪の王子が現れると、今は傷ついた心と身体を休めているのだと・・・。
それから約十年後、ペガサスに乗った銀色の髪の少年をシレジアの人々は見ることになるが
それはシレジアの解放を予感させる出来事であった。
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