2010年5月1日(土) 

 もう、初めての子でも、常連みたいな顔をして来ている。結構、年も学校も違うのに、すぐに仲間になれるのは、このラオスの子どもたちのいいところなのかもしれない。男の子も女の子も抵抗なくいっしょに遊ぶ。
 朝は、瞑想からである。カオちゃんが、「みんな目をつぶって、心を静かにして」と。結構、ちゃんと素直に目をつぶって、瞑想?している子どもたちの中で、ガキ大将レェは、もち米をかじりながら、めっぽうふざけた顔をして見せる。

 まったくこのレェが、「ゲームをやろう、ゲームゲーム」と騒ぐので、結局、この朝も、音楽に合わせて踊っていて、音楽が止まったら、その形のままストップするというゲームなどなどをやり、さんざん大騒ぎ、その後おえかき・・・・と「ここの子たちは、本があんまり好きじゃないのかなぁ?」と思ったが、午後、「まずは、本を読むのよ」と言うと、それはそれで、また読みだしたので、安心した。でも、ゲーム大好きのレェは、「読まないよ」と言う。そこで、私が「さんびきのやぎのがらがらどん」を渡して、これ読んでごらん・・というと、途中、ちょいと間違えながらも、なんとか1冊を、私に読んで聞かせてくれ、それはそれで、彼も嬉しかったらしい。
 午後は、図書館の貸し出しカードを登録しはじめる。12人ほどが、カードを作り、さっそく本を借りて行った。


 
5月2日(日)
 昨日とはうってかわって、朝からおとなしく、本のページをめくっている。子どもたちが一生懸命読んでいる姿はなかなかいい。それぞれが本を読んだり、絵を書いていると結構、静かになる。それだけみんな集中しているのだろう。ゲームやらをやる時は、もっぱらうるさいけど。

 昨日、はじめてやってきた小学校1年生のスッグという、ちょいと気の弱そうな顔をした、昨日はおんぼろの服を着てずぶぬれでやってきたのだが・・・・本を読んでもらって、楽しかったのだろう。今日も、昼休み前にやってきた。
「もう、お昼だから、1時に来てね」というと、午後またやってきた。絵本を抱えて、「読んで、読んで」と。カオちゃんも手いっぱいだし、私はラオス語の本はあまりすらすらは読めないし…夫のノイを呼んできて、「子どもに本を読んであげてよ」というと、「ぼくは、お話なんかできないからいやだ」と言う。彼もあまり本を読むのが得意ではないからであるが、実際に来てみたら、小さな男の子が絵本をかかえて「誰か読んでよぉ」という情けなさそうに待っているのを見て、思わず笑って、読んであげていた。
 少しずつ、来る子たちの顔ぶれが、バラエティに富んで来ているが、中学生と小学生が、隣に並んで一生懸命絵をかいたり、お話を聞いたり、ゲームをしたり・・・に、「こんな幼稚なことはできない」といったカッコつけ?がない。(まぁ、そういう世代は来ていないのかもしれないけど)

「明日の月曜日は、学校休みなんだから、ここも開いてよ」と言うので、
「明日は、学校は休みでも、図書館はお休み。私だって、他の仕事があるもの」というが、子どもたちは、学校が休みの日は図書館が開くべきだと思っているらしい。もうすぐ、夏休みになるし・・・・平日も少し開かなくちゃいけないかなぁ・・・・
「だって、学校休みだと、家で一人でいるんだもん、つまんないんだ」と一人の子が言った。彼らがどういう生活を送っているのか、少しずつ知りたいと思うが、おいおい訪ねてみたいと思う。
 
 小学校1年生のポックは絵が大好き。真剣に描く。本人はちゃんと、何を描いているかわかっている。「名前はまだ書けないの」と言う。



5月8日(土) 糸電話を作りました

 朝から暑い。ここのところ、暑さが厳しい。本来なら、もうそろそろ雨がきちんと降り始めて、少ししのぎやすくなるはずだと思うのに、いやぁ、雨も十分に降らないし、朝から暑い。困るのは、面している水路の水がよどんで臭いことである。これが、一番頭の痛い悩みである。

 さて、少しずつ、工作やらを取り入れていこうと思い、昨日、えらく久しぶりに、自分で糸電話を作ってみた。子どもの頃に、ほいほい作った覚えがあるのに、実際作ってみて、旦那のノイを相手に試してみようと思ったら、すぐ糸がはずれた。やっぱり、糸を通すだけじゃなくて、紙にセメダインをつけて、補強しなきゃだめか・・・・とか、また補強してきて、今度は成功。ノイはどうも、糸電話ははじめてなようで、「わぉ」とか、言っている。私が、糸電話の紙の震えを振動させて、犬に向かって、犬の名前を呼ぶと、犬どもがやけに興奮して吠えついたので、笑ってしまった。まるで違った声に聞こえたのだろう。

 さて、ノイが昨日1日かけて紙芝居舞台を作ってくれたので、朝まずは、それを使った紙芝居から。舞台があると、子どもたちも、やってみたくなるようで、ピーとピムが出て、紙芝居を読む。


 今日は、ガキ大将レェをはじめ、割と大きい子はあまり来ていない。こんなに暑いし、プールに泳ぎに行ったという。それは、正しい選択である。ただ、小さめの子の常連たちは、来ている。気の弱そうに見えたスックも来ていて、「バーバパパ」のシリーズや「11ぴきのねこ」のシリーズの絵本を持ってきては、「読んで、読んで」と言う。どうしてこのバーバパパは、子どもたちが好きなのだろう?不思議。ここには、まだ数冊しかそろってないが、とにかく好きなのである。11ぴきのねこも、不思議にそうである。本を開くと、ページの中から、折り込み広告が落ちて、ふと開いてみると、馬場のぼるさんの写真が出ていた。とても飄々として、絵本の中に登場してきてもおかしくないような、そのお顔に、一瞬、私は勝手に感動してしまった。
 
 午後は、「今日は、携帯電話を作るからね」。 「え〜?本当?」 「本当よ、携帯電話作るわよ」と私が言うと、アンという小2の男の子が、「缶からにさ、ビニール貼って糸張ってやるやつ?」と言うので、「あんた知ってるの?」というと、「知ってるさぁ」と得意そうな顔をした。でも、他の子は「何?何?」と、あまり知らないようである。
 私が昨日作った見本を持ってきて、試してみると、「え?なんで聞こえるの?」と不思議そうな顔をしている。
「自分で作ったら、持って帰っていいよ」と言うと、みんな張り切る。適当な大きさに厚紙を切って、一人二つずつ配ると、
「絵描いていい?」と、みんな、それぞれ好きな色を塗ったり絵を描いたりをはじめた。絵が描けた子から、まずホッチキスで丸く留め、それから、糸を通したパラフィン紙を張るのであるが、私がパラフィン紙に糸を通して、紙で補強するところまで、やってやることになり、みんな、順番待ちで、「次はぼく」「次は私」と騒動になったが、関心するのは、「小さい子は先だよ」と、小さい子には順番を譲ってやるのである。
 みんな得意で家に持って帰るんだろうな・・・と思うと、それは、私にとっても嬉しいのである。するとカオちゃんが「明日は、私が小さい本作りを教えるわ」と言った。




5月9日(日) 暑い日曜日
 まぁ、とにかく暑い。今日も暑かった。しかし、子どもたちは、もう8時から
「ウアイ・キヨコ(清子ねえさん)、私たち、来たわよ」と、怒鳴る声が聞こえる。見ると、もう10人くらいが、扉の前で待っている。嬉しいことだが、こっちもまだ、朝食は食べてないし、洗濯なんかはしているし・・・・すぐに行くわけにもいかない。
「9時からだよ。9時」と言って、いったん追い返したが、8時半頃には、もう再び来る子がいるので、開いてしまった。
 今日は、カオちゃんの指導で、ノート作りをした。A4の紙を半分に折り、ノリで張り付けて、作る簡単なうすぺらなノートだけど、昨日の糸電話もそうだが、家に持って帰れるというのが、うれしいらしい。何度も「ほんとに持って帰っていいの?」と聞く。「いいんだよ。家で、毎日のこととかを絵日記にして、書いて持っておいで」とカオちゃんが言うと、何度も「ねぇ、絵を描くだけでもいい?」とか、「名前は書くの?」とか、あれこれ聞いてくる。
「好きなものを描けばいいんだよ。絵だけでもいいよ」と言うと、みんな一生懸命描きはじめる。中には、ラオスの絵本の文字を、一生懸命、全部写そうとしていた子もいたし、ぐりとぐらの絵本を見て、ぐりぐらのいろんな場面を写している子もいる。絵が大好きなポックはまだ、自分だけではノートが作れそうにないので、紙を半分に折るところだけをやってもらって(きれいに半分に折れた)、あとは私が、のり付け作業などをして作ってあげると、さっそく、絵を描きはじめる。この子は、黒のサインペンで、もう没頭して描くのがなんともかわいらしい。


5月22日(土) 子どもの日の準備
 
ラオスでは・・・というか、日本の子どもの日が、日本独特なのであろうが、インターナショナルな(それともラオスの?)子どもの日というのは、6月1日らしい。これまで関わってきたモンの村は、そのようなインターナショナルな暦とあんまり関係ないので、「子どもの日」という行事をやったことがなかった。
 が、しかし、首都のヴィエンチャンともなると、子どもたちも、その手の情報に強い。
「6月1日は子どもの日だよねぇ・・・・子どもの日は、お菓子を配るんだよ」などというどこからともなく聞こえてきた。
 そうか・・・・子どもの日か・・・・せっかくだから、何かやるか・・・・普通(の公務員や、少裕福な家庭では・・・)は、その当日は、家族が子どもを遊びに連れに行ったり・・・するらしい・・・・が、どうもこのあたりの子どもたちは、そのようなことに無関係みたいな気がして、「6月1日どうするの?」と聞いてみると、「別に…何もないよ」という答えの子が多い。
 そこで、私たちは、6月1日・・・・という子どもの日に、ドンパレープ子ども図書館の行事をすることにしたのである。
 まずは、新聞紙で服を作ってファッションショーはやってはどうか?と言うと、
「でも、できなーい、どうやっていいか、わかんなーい」と子どもたちが言うので、どんなものか、試しにやってみることにした。

       

 こんなのがいろいろできた。(今回は、大人も少し手伝ったが・・・・)女の子はもちろんなのだが、男の子たちも、結構張り切って作っているのが、おかしい。ズボンを作った子は、まるで「おしめ」みたいで笑えた。でも、新聞紙ですぐ破れてしまうから、今日は、試しだけ。「本番のは、前日に作るよ」と。さて、本番でどんなのができるか楽しみ。
 また、子どもたちに紙芝居を読んでもらうことに。高学年の子たちが、一つずつ、紙芝居を選んで、順番にみんなの前で読む。まだまだ、棒読みで上手とは言い難いが、新聞の帽子をかぶった小さな子たちが、かぶりつきで、ずっと見ているのが、律義でまた可笑しい。彼らはそれぞれ、紙芝居を家に持って帰って、練習してきていいことになった。

 

 紙芝居の舞台はノイの手作り。紙芝居は舞台があると、やはりいい。
 
 こんな中でも、回りの声や騒ぎを気にせず、一心に本を読むのに没頭している子もいるのである。それができる子は、なかなか素敵である。




5月23日(日) ラオの子どもたちは踊りが好き

 常連が決まってきている。朝、9時始まりだというのに、8時半頃には来て、昼休みを挟んで、4時までいる。まったく、昼休みも帰りたがらない。「だって、お腹すいてないもの」などと言うが、こっちも昼休みがないと困るから、「すいてなくても、帰っておいで」と、追い帰すけれど、どうも、昼飯を食べていない子もいるようである。お菓子をポリポリかじって終わり・・・の子もいるようだ。 

 スムというなかなかしっかりした顔をした5年生の女の子は、甥にあたる2人のきょうだいをいつも連れてやってくるが、かばんに着替えを入れてきていて、着替えさせたり、オヤツや水を飲ませたり、まるで小さなお母さんみたいである。このヴィエンチャンの子たちは、山の農村のように、畑仕事を手伝ったりということはないが、小さな子の面倒見たりは、みんなしている。きょうだい、親戚の子たちが多いからだろう。


 これも、「子どもの日」への準備であるが、女の子たちが踊りを練習している。5年生を中心に、自分たちで、あーだこーだと話し合いながらやっている。なかなか揃わないし、熱心にやる子も、すぐどこかに行ってしまう子もいるけれど、でも、結構みんな上手で、踊りがさまになっているのである。ほんと、ラオスの人たちは、踊るのが好きだけど、子どもたちも同じである。山の村のモンの子どもたちは、ここまで踊ったり歌ったりはしない。やはり、民族のカラーというものはあるんだなぁ・・・と思う。



「もうすぐ4時だよ」と言うと、子どもたちは、次々と本を借り、そして、最後は、子どもの歌に合わせて、みんなで思い切り歌って踊って、「じゃあねぇ〜」と帰って行った。
 
 今日は、子どもたちに聞いたのだろう。小さなおばあちゃんが本を借りて行った。常連の子の親戚のおばあちゃんだそうだ。普段は、縫製工場で掃除婦をしているという。
「時間がある時に、読みたいからね。私が読むんだよ」と。そのおばあちゃんも、帰ったと思ったら、また来て、最後まで子どもたちを眺めて、そして帰って行った。




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