6月1日(月) ちまたは子どもの日


 本当の子どもの日は、6月1日なのだけど、私たちの図書館は6月3日に開くことにした。一つには、旦那のノイが、ベトナムに仕事で行って1日の夕方戻ってきた。ノイがいないと、あれこれ準備が立ち行かないので、延ばしたのと、1日にはいろいろなところで、子どもの日の行事が開かれていて、そっちへ行く子もいるからである。
 やはり、1日は、来る子どもたちも少なかった。アイテックというラオスの国際展示場みたいなところで、行事が開かれているそうで、子どもの服がやけに安いとかで、親が連れて行ってくれる子は、そっちに行ったようである。しかし、近所のどこにも行かない子たちは、図書館に来る。
 もう、新聞紙の服を作り始めよう! ということにすると、熱心に作りだす。
 私は、私たち大人が、演じて見せようと思っている、3びきのやぎのがらがらどんのペープサートを作っている。もっと早くから準備したかったのだが、先週は、知り合いの日本人の爺さんの入院騒ぎがあって、本当に自転車で走り回っていて、結局、自転車操業だが、昨夜やっとペープサートの下書きを書いて、作り始めたのである。まったくの練習なしで演じることになりそうで、このクソ忙しいのに、また・・・・ということであるが、子どもの日に、私たち大人が演じる演目も見せたいのである。

 さて、本を借りて行く子どもたちの中には、一人でたくさん借りて行くので、
「そんなにたくさん読めるの?」と聞くと、
「お母さんも読むの。お父さんも読むの。みんなで読むの」という子がいる。
 嬉しいことである。今日も、お母さん連中が3人連れ立ってやってきた。一人は、熱心に、もう片付けているというのに、構うでもなく、ずっと本を読んでいた。子どもの薄っぺらの絵本であるが・・・・この図書館は、まだ全然宣伝をしていないのだが、少しずつ子どもたちから輪が広がっていっている。

 でも、である。うちの常連となっている小学校5年生たちは、そろいもそろって、みんな進級試験を落第したという。図書館は開いて、まだ1カ月だから、図書館の責任・・・ではないだろうけれど。一つには、試験費を払えない子がいるらしい。25000キップ(300円くらいか)。試験費を払えず、試験を受けていない。それは落第するに決まっている。来年は、合格してくれい。

 夕方、図書館を閉めて、帰ったと思ったら、近所の3人が来て、「きよこ、きよこ、お腹がすいた。ご飯を食べさせて!」と言う。
「なんで?家で食べなさいよ」
「親が出てしまって、朝からご飯を食べてないんだ」などと言う。
「うそ!いつからいないのよ」「2,3日前」
「今日は、朝からご飯を食べてない」「うそ!」「ほんと」
 え〜・・・と思いながらも、ノイが「全部あげていいよ」と言ったベトナムから持ち帰ったキャンデーと、余分にあった食パンを1斤あげる。本当にご飯を食べていないんだったら、お腹すいているだろうが、どうしたらいいのだろうか・・・などと思いながら。
「今日は、うちもまだご飯してないからね。それで我慢してよ」
 というと、ワァ〜と駆けて帰った。しばらくすると、また戻ってきて
「ごめんなさい。うそだったの。だましてみただけなの。うそはいけないよね。返す」
と、食パンをそのまま持ってきた。
「何よ、あんたたち。信じたじゃないの。うそついちゃだめ。でも食パンあげてもいいよ」と言っても、
「私たち、ウソついたから、いらない」と返してきた。

 まったく・・・・・と思いながら、家に入ると、またしばらくして、「きよこ〜」とやってきて、今度は、ハスの実を2束持ってきて、「さっきはうそついてごめんなさい。お詫びにあげる」と言う。
女の子二人が、1人1束、まるで花束贈呈のように、ハスの実の束をくれた。男の子は、何もないから、くれる真似だけする。
「わかった。ありがと」
と、結構かわいいじゃない…悪いと思ったんだ、と思いながらもらうと、今度は
「今日、図書館で寝せてね!家は暑くて、眠れないの。だって電気もなくて、扇風機もないんだもの」と言って、3人は図書館に上がりこむと、さっそく横になる。
「何よ、図書館じゃ、寝せないよ。帰りなさい。あんたたちの親が心配するでしょ」
と言うと、「親には了解得てきたモン」
「だーめ、寝せないよ」「今日だけ今日だけ」
「だめ」「だって、家暑いんだもん」
 しばらく問答していたが、もう〜っと怒って家に入ると、しばらくすると、バタバタ、扉を開けて走って行った。「帰るよ、怒られるからね」と。
 まったく、どこまで本当かウソかわからない!まったく、からかわれている。
 頭に来るやら、可笑しいやら・・・・である。


6月2日(水) 子どもの日の準備

 子どもの日の準備。
 今日は、近くのベトナム学校で、子どもの日の行事をやっているとかで、一部の子は、午前中はそっちに行っている。でも、やはり、近所の子どもたちで、そちらに参加しない子は、朝から来ている。
 図書館の飾り付けを、新たにやり直し、紙の帽子を作り・・・新聞紙で服を作り・・・みんなそれぞれ準備。でも、一番大変なのは、スタッフのカオちゃんで、みんなに
「ウアイ・カオ(カオねえさん)やって、やって」と、てんてこまい。でも、彼女は、順番に一人ずつ丁寧に対応していて、感心する。



 ノイが、家の庭にいつのまにか生えてきた(それとも植えたのか?)数珠を切って
「これで、ネックレス作ったら」という。
 みんな、またまたこぞって、糸に通して、ネックレス作り。小さい頃にやったよなぁ・・・と、妙に懐かしい。薄緑色のまだ若い数珠だが、糸に通しておくと、すぐに乾いて真っ白な玉となる。プーという女の子が、「あげる」と、首に数珠のネックレスを結んでくれた。
「真珠よ、真珠」と。
「ありがとう。明日が終わったら、宝石屋に売りにいくわよ」と冗談を言うが、でもなかなかきれいなもんである。



 久しぶりに、最初は常連だった、ガキ大将レェが来た。なかなかおしゃれな赤白縞のシャツを着ている。ベトナム学校の行事に行ってきたらしい。彼は、引っ越したのである。それで、家が遠くなったので、あまり来なくなってしまった。それは、亡くなったお母さんが、果物を売ってためたお金で買った土地で、そこに柱を立てたところでお母さんは亡くなったのだという。その家が、やっとできたのだ。お母さんはいないけれど、レェはつい数週間前、そこへ引っ越していったのだ。
「明日、子どもの日やるんだけど、来てよ」と言うと、「ご飯出るの?」「でないよ。でもお菓子はある」と言うと、いきなり張り切りだして、「来る来る」。と、さっそく新聞紙で服を作ったり、帽子を作ったり、女の子と一緒におどりを踊ったり、とても元気である。もともと、身体の中のバネがはずんでいるような子で、回りの子たちも楽しそうである。レェがまた、常連で来てくれればいいんだけど。彼も、ずっと生まれ育った場所であるから、嬉しいんだろう。

 風船を膨らましはじめたが、暑いせいか、パァーン、パァーンと次々と割れるので、「やめやめ、明日」ということに。
 最後には、大きい子たちに、お菓子の袋詰めを手伝ってもらう。明日、何人来るかわからないけれど、80袋ほど、お菓子の袋。そして、歌や踊り、お話をした人へのご褒美も包んだ。



 夕方、日よけのテントも立てたところに、急に、大風、それこそ、小さい子なんて吹き飛ばされてしまいそうな風が吹く。ノイが、テントのあちこちに、重い椅子や机をしばりつけて、なんとか飛ばないように。その後、大雨。

6月3日(木) 私たちの図書館の、「子どもの日」




 朝から子どもたちが来る。小さい子たちも、きれいなワンピースやら、小ざっぱりした格好をしている子もいる。親が着せてくれたのだろう。もちろん、普段と変わらない子がほとんど。
 風船をふくらませ、飾り付け・・・・そして、準備期間に来なかった子たちが、「帽子、ぼくにもちょうだい」「私にも作って」と。本当は、来ると予想できた人数分の帽子を作ってあげられたらよかったのだが、とてもとてもそこまでの準備ができていなかった。

 9時過ぎ。だいたい子どもたちも集まり、さぁ、そろそろ始めようという頃、電話が立て続けに入る。やはり私が関わっている山のモンの村の図書館が、大雨で、茅屋根から雨漏りがして、びしょびしょになってしまったという・・・
「本がびしょびしょなの?」「本は大丈夫。床ばびしょびしょ」
「じゃあ、悪いけどさ、大きなビニールシートがあるはずだから、それでなんとかしのいでよ」
 などと話すうちに、もうカオチャンが始めている。大慌て。

 話はそれるけれど・・・・モンの村では、なかなか、この子どもの日・・・のような行事ができないのである。一つには、「やったことがないこと」がある。それと、モンの子は、農作業に忙しく、図書館にフルに1日来る子は少ない・・・・から、なかなか特別な行事などが組めない・・・準備する暇がない・・・ということもある。それと・・・やはり、民族的に集団行動が得意かそうでないか・・・・ということも、あるような気もするが、まだそれはよくわからないが、それぞれの子どもたちが、それぞれの家の仕事を抱えている山の村では、子どもたちを集めにくいということも確かである。
 それにしても、この図書館もオープンしてまだ1カ月ちょっとだというのに、一応、子どもたちの出し物を中心としたこんな行事を催すことができる。どこが違うのか?ここは一応、都会の子でもあるし、学校でいろいろ踊りを教えてもらったり、歌が歌えたり・・・・ということもあるし、人前に出ることをあまり恥ずかしがらないということもあるかもしれない。また、子どもたちが集まってこられるということもある。また、山と平野に住む民族の違い・・・・などと言うことは、あまりにも大胆すぎる気もするが、でも、民族による子どもたちの違いは、確かにある・・ような気もする。

 さて、あいさつの後、3びきのやぎのがらがらどん。
 私とカオちゃんとノイの3人で、ぶっつけ本番である。
 トロルの仮面は、ベトナムから帰ったばかりのノイに「悪いけど演じてよ」と、素顔に化粧でもいいと思って頼んだら、さっそく、もち米を蒸す籠に、CDの目玉やらをつけて作ってくれた。舞台も、昨晩、へとへとになりながら描いたので、ノイには、「なんで忙しい中、わざわざやるんだ?」と怒られたが、私は、とにかくやってみたかったのでありました。
 ノイがトロル、カオちゃんが子やぎ、私が、中やぎと大ヤギを演じる。まぁ、まぁ子どもたちは大笑いして見てくれたので、よしとしよう。ということ。



 その後は、おどり、歌、そして紙芝居。
 マイクが、なぜか外部の音を拾ってしまい、いきなり、へんてこな男の人の声が入ったり・・・とさんざんで、子どもたちには申し訳なかった。
 紙芝居は8人もが準備していたのだが、長すぎて、最後には、ずっと聞いていた子どもたちがあきてしまったので、数人はカットとなり、かわいそうなことをしてしまった。



 最後は新聞紙のファッションショー。へんてこな衣装を作ればいいのに・・・と思っていたが、みんなラオスの衣装シン。ガキ大将のレェも、昨日いきなりやってきたのに、踊りにもこのショーにも参加。このファッションショーにも参加して、しっかりとご褒美をもらっていった。



 10人ほどは、お母さん、お父さんたちも見に来ていて、よかった。最後にお菓子を配り、お開き。最初に、「ゴミはごみかごに捨ててね」とあれほど言っておいたのに、終わってみたらゴミだらけ。
「大きい子たちは、掃除して行ってよ」とお開き。まぁ、お菓子をもらうと、みんな満足げに帰って行った。
 あれこれ、反省点はあるのだが、(小さい子が参加できるゲームがあればよかったとか、みんなで踊ったりできたらよかったな・・・とか、同じ子が出過ぎてしまったな・・・・とか)・・・・
 まぁ、それは次への教訓として、なんとか、ドンパレープ図書館初の「子どもの日」は終わりました。おー疲れ様。


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