山道を子どもたちと歩く          


  ラオス・シェンクワン県・ノンヘート郡 7月、雨季。ベトナム国境にほど近いモンの村を再び訪ねた。ゲオバトゥ村。この村でいつも泊めてもらうサイガウ爺さんの孫・・・・リー、トン、ガオジェ。小4の兄、小2の弟、まだ小学校に上がらない妹の3人きょうだいだ。 昨年は、ガオジェはまだ鼻たらしの女の子だったのに、今年は、おにいちゃんたちの仲間入りして、3人組となった。3人は小気味のいい早回しの映画みたいに、いつも走り回っている。

 夏休み。子どもたちは、毎日、山の畑に行く。トウモロコシもぎ、山芋掘り・・私もついていく。雨季なので、湿った道を通ると、みんなが手の指をグジュグジュと動かして、「ほら、このあたりはンブラハーがいるよ」と言う。ヒルだ。ヒルはピコピコと土から針のようなしっぽ(頭?)を出してうごめいたと思うと、吸い付いて血を吸う。「つめたいな、って思ったら、ヒルさ」と子どもたちは、しゃがんでは自分の足についたヒルを取っている。
「あ、パヌンの靴を上ってる」「ぎゃあ!取ってよぉ」私はヒルが恐い。子どもたちは笑いながら取ってくれる。

 歩いて40分ほど。山の麓のトウモロコシ畑。子どもたちは、実ではなくて、まず茎を折って、「ほら、食べてごらん、甘いよ」とかじりだす。青くさいけどほんのり甘い。あっちの茎こっちの茎を折って「ほら、これ甘いよぉ。ねっ!」「あぁ、これはもっと甘い」なんてひとしきり茎を折っては食べてから、トウモロコシもぎの仕事にとりかかる。「ほら、これも生でかじるとおいしいよ」とトウモロコシをかじり、また、下の地面に植えてあるキュウリをもいでは食べ(これは私は固辞した。キュウリは大の苦手なので)・・・



山に働きにくるのは、おやつ探しタイムでもあるのだ。なんだかどこまでが仕事で、どこまでが遊びかわからないが、楽しい。
まぁ、子どもたちの目のいいこと。帰り道、あっ木の実!と、するすると木に上って、ジャムみたいな小さな実を、次々と放り投げてくれる。


 山芋は、1年前にお母さんと一緒に植えたんだそうだ。お兄ちゃんのリーは、山の斜面を黙々と掘り、長い山芋を掘り出した。すると、トンも負けずと手伝う。妹のガオジェは斜面に膝を抱えて座って、そんな兄たちを見ている。そして、「お兄ちゃんたちは芋掘りでぇ〜」と節をつけて歌いだした。モンのグゥツィアという即興歌の節だ。ガオジェだって、もう少し大きくなったら一人前に芋掘りをするだろう。でも、今はまだ、自分にはできないことを知って いる。ガオジェは、自分の小さなかごに入った芋を、「リーにいちゃん、私持てないよぉ。そっちに入れるよ」と、おにいちゃんのかごに入れて、ほとんど空のかごを背負うと、思いっきり顔をくしゃくしゃにして笑い、元気に駆けだした。モンの子どもたちは、こうやって、遊びながら、働きながら、いろんなことを身につけていくんだろう。        (いおぺ9号より 2002年10月)

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