ひきがえるととら  

むかしむかしのある日のこと、とらがひきがえるに出くわした。とらは言った。

「ひきがえる、いったいおまえそこでなにやってるんだい?」 ひきがえるは答えて言った。 「おれは、とらの胆のうを食べようとまっていたところさ。」    

「お、おれさまだって、ひきがえるを食べようとさがしていたところだぞ」と、とら。とらは続けて言った。

「それだったら腹の中のものを吐いてみようじゃないか」 「いいよ、それなら先に吐いておくれよ」と、ひきがえるがいうので、とらは腹の中のかえるの肉を吐いてみせた。

ひきがえるが吐いたのは、苦いくだものの汁。とらがなめてみると、たしかに胆のうみたいに苦いじゃないか!

「い、いったいどうやって食べたんだい?」              

ひきがえるは答えていった。

「とらが口を大きくあけたときに、さっと飛び込んで食べたのさ」        
「おい、おまえがそんなにすばやいのなら、ためしにかけっこしてみようじゃないか」 
「ああ、やってもいいよ」

 谷川につくと、二ひきは話し合った。                    
 「この谷川を、遠く先の方までとびこえた方が勝ちだぞ」       
 「おまえ、はじめに行けよ、かえる」と、とらがいうと、ひきがえるは言った。   
 「いや、あんたがはじめに行っておくれ。だってかけっこしようといいだしたのはあんただからね」

 そこでとらは跳ぼうとからだを丸めた。ひきがえるはそうっととらのしっぽの先の毛をくわえた。

 とらがえいっと川を跳び越えた時、ひきがえるは、はねかえったしっぽにビュンとばされ、ずっと先の方までとんでいった。

「おーい、こいよ、かえる。」と、とらがふりかえって言うと、前の方からかえるの声がする。
「とらよ、おれはここでさっきから、とらを一頭食べながら待っていたんだぜ」

 とらがかえるを見ると、かえるの口にはとらの毛が本当についているではないか!

 とらはすっかりこわくなって逃げ出し、3つの山3つの谷を越えていちもくさんに走っていった。そこでとらは、山ねこに出会った。

「とら、いったい何をにげているんだい?」                   
「ひきがえるから逃げてるんだ。やつがぼくの胆のうを食べようっていうんだよ」

山ねこはいった。「へーん、なんでぇ、あんなあばたやろう。おれを連れていけよ」

「それだったら、こわくないように、しっぽをつないでいってくれよ」と、とらはいった。 そこで二頭はしっぽをつないでいった。2頭はこうして池へとやってきた。ひきがえるは葉っぱの上にいたので、とらと山ねこからは見えなかった。

 ひきがえるは、とらと山ねこがそろってやってくるのを見ると、すっかりふるえあがって池にとびこんだ。
ドッボーン!!という大きな音をにとらはびっくり。 

「か、かえるがおそってくるぞ」

 とらは山ねこと手に手を・・ではなく、しっぽにしっぽをつないで いちもくさんに逃げだし、3つの山、3つの谷を越えたところでやっと一息いれ、ふるかえってみると、山ねこがキバをくいしばり、一枚の葉っぱを葉に歯にひっかけて、ねころがっている。とらはいった。

「おいおい、おれは息がはぁはぁしてるっていうのに、おまえさんは草笛を吹いて遊んでるのかい?」とらがよくよく見てみると、山ねこは引きずられて、死んでしまっていたのだ。そこでとらは穴をほって山ねこを埋めてやることにした。

 とらは山ねこを埋めてやると、パッと走り出そうとした。すると、山ねこが穴から飛び出してきてとらのおしりにぶつかってくるではないか。とらは頭にきた。

「山ねこのやつ、おれが息を切らしながらも埋めてやったっていうのに、まだ起き上がってぶつかってこようとしやがる。おかずにしてやるぞ」とらは、山ねこを食べていって、しっぽのところにくると、気がついた。        

「そうか、おれたち、しっぽをつないでいたんだったっけ。」                おしまい!

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