ねこが畑を耕す話

二人の兄弟がいた。兄夫婦は弟につらくあたって、弟は貧しくて何もなかった。弟は仕方なく、猫をつれて畑にいき、猫にすきを引かせて畑を耕した。猫が「ニャーン」と鳴くと、石が笑った。すると、その石の口から金銀がざくざく出てきた。弟はその金銀を拾って、持ち帰り、それで、なべ、かま、さじ、鎌や刃物などを作って、家にも金銀があふれかえった。

兄嫁はそれを見て、弟を訪ねてきた。「いったい、どうしたっていうんだい?どうしてこんなに金銀があるの?」       「姉さんと兄さんがぼくに何もくれないし、ぼくには何もないから、しかたなく猫を使って畑を耕したんだ。そしたら、石が面白がって笑った。すると、その口から金や銀が出てきて、ぼくはそれを拾ってきただけだよ。」 「おやまぁ、それで、なべかままで金銀で作っちまうなんて!一つお兄さんにもおくれじゃないか」 「それはだめだよ。姉さん」弟はことわった。 兄嫁は家に戻ると夫に話した。「わたしたちゃ、弟のことをかわいがってやらなかったけど、今じゃ、すごいもんだよ。金銀が家にあふれていて、皿やさじまで金や銀だよ。」

 その話を聞いて、兄は弟に会いにいき、弟の話を聞いた。「よし、それならわしたちもそうしてみよう」

兄夫婦は弟と同じように猫を使って畑を耕した。すると、石が口をあけて笑った。その口から金銀が出てきた。兄は「もっともっと出せ!」と、石の口に手を入れてかきだした。「もっと出せ!もっと!弟よりたくさん」と、兄がやめようとしないので、石は笑えなくなり口を閉じてしまった。兄は手を石にはさまれて抜けない。引っぱっても手は抜けない。たくさんの人を呼んで来て、引っぱったが兄の手は抜けない。来た人は帰りに金銀を持っていってしまったので、兄の金銀はすっかりなくなってしまった。

 ある男が通りかかると言った。 「これは坊さんに頼んでお供えをして、祈祷してもらうしかないよ」

 そこで、兄嫁は、坊さんを呼んでたくさんの金銀、食べ物、酒を差し出して祈祷してもらい、それでようやっと兄の手は抜けた。

おしまい!!             ラオス、シェンクワン県、ゲオバトゥ村 

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