二人のどろぼう

 

 この話に出てくるモンの家の造りであるが、ホワイトモンの家は、二つ扉がある。正面の扉と側面の壁についている横の扉である。モンの家には窓もなく、出入り口はこの2つしかない。(ブルーモンの場合は横の扉はなく、正面扉が一つしかない。)この話では、正面扉をあけられないように閉めてしまったので、男は逃げ道を失ってしまうのである。

 モンも餅をつく。モンの臼は舟型である。木の幹を横に割ってくりぬいたものである。男はその中にかくれるわけである。

 

 むかしむかし、ある夫婦がいた。夫は毎日毎日、畑仕事へいっていた。妻は家にいて、毎日他の男と浮気をしていた。

 夫もそのことに気がついていた。ある日、夫は妻に言った。

「今日は畑で寝るからな。米や塩とかを袋につめておくれ。一晩畑に泊まって帰ってくるからな」

そこで、妻はあれこれ袋につめて準備をした。夫は正面の扉をきつく閉め、きつくしばりつけてあかないようにすると、臼をたてかけておいた。

 夫は畑に行ったが、暗くなるとそっと戻ってきた。男はもう来ていて妻と寝ている。夫はそっと横の扉をあけた。男は誰かがきて扉をあけるのに気がついて、跳び起きると正面の扉から逃げようとした。だが、きつくしばってあるのであかない。男は逃げ道がないので、たてかけてあった臼の中に身体を折曲げて隠れた。

 夫は、横の扉もきつーくしばりあげて、一人の泥棒も逃げられないようにした。そして、火を明りにつけて探し出した。すると、たてかけてある臼の下に男がじっとしているではないか。そこで夫は、そっと近づくと臼を男の上にかぶせてしまった。男は臼の下で耐えられずにとうとう死んでしまった。そこで、夫は男を臼の下にきちんとかくし、妻には黙っていた。

 夫は寝に行くと妻に言った。

「おい、この2、3日天気が悪くて、服が湿っているから明日干そう。でも、この村には泥棒がいるから気をつけろよ」

 翌日、二人は服を一日干し、夕方にとりこんで、たたんだ。夫は妻に言った。

「今、世の中があんまり平和じゃないから、いつどうなるかもわからない。だから、荷物をまとめておこう。小さい袋には服やらボロを入れておいて、大きな袋には金や銀なんか貴重なものをいれていつでも持ち出せるようにしておこう」

 二人はたたんだ服を小さい袋に入れた。夜になって食事が終わると、夫は妻に言った。

「もう遅いからおまえは寝なさい。後は俺がやっておくから。大きな袋に大切なもの、金や銀財宝を入れてちゃんとしばって置いておくよ。いつ何が起こってもすぐ持ち出せるように置いておくからな」

 それを家の外にいた泥棒が聞き耳をたてていた。「聞いたぞ。大きい袋だな」

 妻は寝て、夫は、死んでしまった男を大きな袋に入れしっかりと口をしばった。そして妻に言った。

「いつ何が起こってもすぐ逃げられるように、扉もあんまりしっかりしめるのはよそう。すぐ開けられるようにね」

 それを聞いて泥棒は、しめしめと思っている。夫は寝床に入った。泥棒はしばらく待った後、もう夫婦が寝た頃だと家にしのびこんだ。二人の泥棒は大きな袋をかつぐと大急ぎで駆け出した。気づかれて追いつかれては困るので、二人は走って走り続け、夜明け方になるまで大きな袋をかついで走り続けた。

 後ろ側を走っている泥棒は、じきに明るくなって、二人で分ける前に、少し中身を自分だけでとってしまおうと思った。袋から金銀を取り出して道端に放っておいて、後で拾いにきたらいい。そう思って、袋にそっと手を突っ込んだ。すると、髪の毛が手に触れた。なんだか人間の頭みたいなので、こう言った。

「おい、なんだか人みたいだぞ」

 すると前を走っていた泥棒は、「人がいるなら、もっと早く走れ!」

と、ますます早く走りだした。走りに走っていくうちに夜明けが近づいてきた。後ろの泥棒は「今のうちに金銀を放り出しておかないと、明るくなってはできないぞ」と思い、また袋に手を入れた。すると、やはり、人の頭みたいのが手に触れる。

「どうも人みたいだぞ」すると、前の泥棒は「人がいるなら、もっともっと早く逃げろ」と足を早めるので、二人はますますますます早く走った。

 もう遠くまで来たし、腹もすいたので、二人はそれぞれ分けて持ち帰ることにした。そこで、休むことにして袋をあけて見ると、金や銀ではなく、男の死体が目をひんむいている。泥棒たちはたまげて、男を葬ると帰っていった。

 この話は、人の妻と一緒に寝たり、泥棒をしたりするとろくなことがないよ、ということだ。金を手にいれるつもりで泥棒をしても、走って逃げるばっかりで、結局は金も手に入らず、何の得にもならないこともあるということだ。

(ラオス、シェンクワン県、ノンヘート郡)