年齢操作で高校生☆
でも、これは・・・もはやゴーレツとは言えないのかもしれない(^^;)。



「Gradation」



弟の豪が、失恋をした。


それが豪にとっていくつ目の恋か知らないけど、多分今までで一番真剣だった。
何度か見かけた相手の子はおとなしくて、柔らかい感じの女の子。
豪は、その子のことスゴク大切にしていたし、
見ていてちょっと悔しいくらいにお似合いのカップルだったと思う。
原因は何なのか知らないけど、
あのバカの落ち込みようから、きっと豪がふられたんだろう。


兄弟で、レンアイの話なんてほとんどしないし。
僕には関係のないことなんだけど。
いつも、鬱陶しいくらいにうるさい弟がおとなしくしてるのは
・・・やっぱ、ちょと居心地が悪い。
だからって、僕になにか出来るわけでもなくて
僕はいつもと変わらない日常を繰り返す。


「あ、烈兄ちゃんっ!今、帰り?」
自転車置き場に向かうところで突然声をかけられて振り向くと、
ジュンちゃんが立っていた。
「うん。ジュンちゃんこそ、今日は部活ないの?」
歩きながら返すと彼女はそのままついてきた。
「試験前だから、お休みなの。ね、そのまま帰るなら後ろ乗せてってよ」
いいでしょ?と言いながら僕の前に回り込む彼女に断わる理由はない。
「かまわないよ。じゃぁ、自転車取ってくるからここで待ってて」
「ラジャー☆」


2人分の重さを乗せた自転車は坂道を凄いスピードで降りていく。
昔はよく豪を後ろに乗せて2人乗りしたな。
いつ頃からだろう?
身長も体重も随分追い越されちゃって、でも豪に乗せてもらうのなんか
絶対イヤで、2人乗りなんてしなくなった。
ま、それ以前に2人で出かける事なんて今ではほとんどないんだけど。
「ね、烈兄ちゃん?」
背中からジュンちゃんの声が聞こえる。
「豪の、事なんだけど・・・。」
風がきる音でジュンちゃんの声が遠い。
少しスピードを落として先を促す。
「豪が、どうかしたの?」
「最近、ちょっと様子がおかしいから。結構派手に遊んでるみたいだし。
 振られたの、そんなにショックだったのかな?」
幼なじみにまで、心配かけて・・・ほんとにどうしようもないな。あのバカ。
「んー、そーとーキテるみたい。
 でもほっとけば、そのうち落ち着くよ。ジュンちゃんが心配することないって」
「そうだね。でも、なんか・・・豪があんなだとこっちが落ち着かないのよね」
そう言って苦笑するジュンちゃんの気持ちは分かる気がした。
僕もこの可愛い幼なじみも、なんだかんだ言ってあいつのことを放っておけない。
「あ、ここでいいわ、買い物あるから。ありがとう」
商店街にさしかかったところでジュンちゃんを降ろす。
じゃぁ、またね。と言って再び自転車を走らせようとしたところで
ジュンちゃんのつぶやきみたいな声が聞こえた。
「あれ・・・豪?」
彼女の視線をたどると確かに豪がいた。
女の子と一緒に。
思わず、ジュンちゃんと顔を見合わせてしまう。
そして僕の苦笑と彼女のため息を残して今度こそ本当に自転車を走らせる。
さっきの子、前の彼女と全く違うタイプの女の子だった。
そんなに、豪の傷は深かったのだろうか?



もうすぐ、日付が変わる。
豪、最近帰りが遅いのが続いてる。
部活にも出てないみたいだし。
会ってる女の子はいつも違うらしいってジュンちゃんが言ってた。
〜〜〜って、もう!
なんで僕が豪のことでこんな気持ちになんなきゃいけないんだよ!
なんか、腹立ってきた。
「・・・頭、冷やしてこよ。」
僕は上着を羽織ると、外に出た。
特に行くあてもなく散歩してると、近所の公園が見えた。
よく、ここでミニ四駆してたな。
夜の公園なんていつもなら近づきたくない場所だけど、
僕はなんとなく懐かしさに公園へ足を踏み入れた。
あの弟が恋愛で悩むなんてあの頃は思ってもみなかった。
夢中でマシンを走らせて。
すぐに泣いて、よく怒って、散々笑った。
こいつ、もっと大人になれないものか、っていつも思ってたのに。
「大人」になられちゃうと案外淋しかったりして。
・・・淋しい?
あぁ、そうか。
豪のヤツ、昔は聞きたくもないことまでベラベラとなんでも喋ってたのに、
いつからか、大事なことは話してくれなくなって、淋しかったのかもしれない。
今回だって。
そりゃ、僕には話を聞いてやることくらいしか出来ないかもしれないけど
一人で抱え込んでるのをただ見てるのは、結構ツライ。
あれ?知らなかった、僕って実はやさしい兄貴だったんだ。
なんて、自分の気持ちの出所が見つかって、自画自賛までし始めたとき
僕はやっと少し離れた所に人の気配があることに気づいた。
夜の公園で恋人達を覗く趣味は僕にはない。
そっと、その場を離れようとして、何気なく人がいる方に目を向けた。
目に映ったシルエットは一人は派手っぽい格好の女の子。
もう一人は、見間違えようがないくらい、よく知ってるバカ男。
・・・豪。
早く、ここから離れたいのに、目がそらせない。
女の子、この前見かけた子と違う。
豪はすごく優しい仕草で女の子を抱き寄せる。
2人の唇が重なるのを見た瞬間、頭が真っ白になって
・・・・・僕は公園から逃げ出した。
気がついたら駆け出していた。
なんで僕が逃げなきゃいけないの?
何から逃げてるの?
わかんない。
でも。
イヤダイヤダイヤダ・・・!!!


家に戻ってから、すぐにベッドに入ったけど全然眠れなかった。
見てきた場面が頭から離れない。
朝方になって、ようやくうとうとしだして、夢を見た。
内容は、覚えていないけど・・・目が覚めたとき、なんだかすごく悲しい気分だった。
目が覚めてしばらくはなんとなく体を起こすのがだるくって
ベッドの中でゴロゴロしてる。
せっかくの日曜日だし。
たまには寝坊してもいいよな、なんて思いながら時計を見たらもうお昼近かった。
しかたがない。
ベッドからでて、のろのろと着替えを始める。
・・・リビングに降りるの嫌だなぁ。
もしかして、豪がいるかもしれない。
きっと、いつもと同じに振る舞えない。
ボロが出る。
はぁ。
ここんとこ、ため息つきっぱなしだ。
ため息つくと、幸せが逃げるんだぞ。どうしてくれるんだ。
だいたい、豪は・・・
−コンコン
ドアをノックする音で僕の思考が遮断された。
なんとなく訪問者が予想できてしまう僕はベッドに腰掛けながらドアを見つめていた。
思わず近くにあったクッションを握りしめながら
あきらめてどっか行ってくれないかな、と思ってみる。
−コンコンコン
「兄貴、もう起きてんだろ?入るぞ」
いつまでも返事をしない僕にしびれを切らして、予想通りの訪問者が部屋に入ってきた。
勝手に僕の椅子に座って話しかけてくる。
「今起きたのか?珍しいな、兄貴が寝坊なんて。」
・・・誰のせいだと思ってるんだ。
とは、さすがに言えなくて。
手にしていたクッションをいじりながら上手い言い訳を探す。
でも、僕が何か言う前に豪が口を開いた。
「・・・オレのせい?」
「へ?」
思わず、間抜けな声を出してしまった。
僕、今、口に出して「お前のせいだ」なんて言ってないよなぁ?
なんで・・・
「昨日、兄貴もあの公園来てただろ?」
なんで?なんで知ってるんだ、コイツ。
表情で僕が言いたいことがわかった豪は
「ラブシーンの最中にいきなり駆け出す音がしたらビックリするに決まってんだろ。
 それに、後ろ姿が見えたんだよ。暗くても兄貴かどうかって事くらいわかるし。」
とこともなげに言う。
全部知られてたと思うと恥ずかしくて、顔が熱い。
ちょっと恨めしそうに豪の方を見ると、のんきに窓の外なんか見てて・・・
自分ばっかり感情的になって、バカみたいだ。
なんだよ、バカはお前の専売特許だろ?
感情的になった豪を僕が冷静に抑えるのがいつもの「ボクたち」なのに。
「兄貴、気にしてるかな、と思って。
 その・・ちょっと様子見に来ただけなんだ。
 あいつとは、もう別れたし、兄貴も見たこと忘れてくれちゃっていいから」
急にこちらに顔を向けたかと思うとそう言って豪は椅子から立ちあがった。
なんて、自分勝手なんだ。
勝手に部屋まで入ってきて、言いたいことだけ言って、出てくつもりか?!
しかも、あの子とはもう別れた?
まるで、昨日までは付き合ってたみたいな言い方。
本当は・・・まだ忘れてないくせに。
誰とも本気で付き合えないくせに。
「・・・豪。」
「あ?」

パシッ

あぁ、豪のことひっぱたくのも久しぶりだな、何年ぶりだろう?
「ってーな、何すんだよ?!」
「うるさい。殴りたかったから殴っただけだよ」
あ、クッション床に落としちゃったな。
「なんでオレが殴られなきゃいけないんだよ?昨日のことだって
 オレは別に悪くねぇんだぜ?兄貴が勝手に覗いてただけなんだからな!」
「僕だって好きで見たわけじゃないよ!豪があんなとこにいるなんて思わなかったし。
 それに、あんな嫌な思いするもの、なんでわざわざ・・・」
そういえば、まだ起きてからご飯食べてないや。
「何だよ、嫌な思いって?」
「え?」
そうだ、スゴク嫌だった。
豪が女の子といるところなんて、別に始めて見たわけじゃないし。
なんでだろう?
「知らないよ。なんか、嫌な気分になっただけ。
 自分の弟が好きでもない女の子とキスしてるのを見て情けなくなったのかもね」
あ、地雷。
「・・なっ」
「まだ、忘れてないんだろ?あの子のこと。
 だからって他の子、とっかえひっかえ・・・しかも彼女と違うタイプの女の子ばっかり。」
わかってる。それだけ、豪の傷は深かったんだ。
わかってても、口がとまんない。
「情けないと思わないのか?」

肩が、痛い。
天井が見える。
覆い被さってる豪を見て、ベッドに押し倒されたんだとわかった。
「・・・兄貴に何がわかるんだよ?
 オレだって、ひどいことしてるってわかってる。
 でも、そうしてないと自分が1人ぼっちみたいで、不安で・・・」
怒ってるときの豪の目は我が弟ながらちょっと格好いい。
でも、今はその目を見るのがつらくって・・僕は顔を背けた。
「なんで?なんで一人だと思うのさ?周りを見ようともしないで。
 父さんも母さんも最近お前の様子がおかしいって心配してた。ジュンちゃんも。
 だいたいあの女の子達がお前の何を知ってるっていうんだよ!
 僕だって、すごく、心配して・・・」
肩口に置かれた手の力がゆるんでいくのがわかる。
僕は少し体をずらして上体を起こす。
「僕の方が、いつもお前と一緒にいて、ずっと豪のこと知ってるのに
 でも僕には何もできなくて・・・」
そっか、淋しかったんじゃないんだ。
「そんなの・・悔しいっ・・」
もっと甘えてくれてもいいのに。
もっと、頼ってくれてもいいのに。
僕は、豪の兄なんだから。
「兄貴・・・」
豪が、いつのまにか僕より大きくなった手で僕の目元を拭う。
そこで初めて自分が泣いてたことに気づいた。
あー、もう。やっぱり、僕ばっかり、バカみたい。
「ごめん、豪。今のは・・・ん・・」
え?
いま、コイツ何した?
「ご、ごぉ・・・お、お前、キ、キ・・・」
「だって、他の娘の代わりに兄貴が慰めてくれんだろ?」
「そ、そういう意味じゃなーい!!」
そう言って、今日2発目の平手をくらわせてやろうと思ったんだけど。
その時、豪が見せた笑顔はあの子と別れる前と変わらない、太陽みたいな笑顔だったから。
・・・だから今日だけは許してやることにした。


結局。
僕は一人でいろいろ考えて、悩んで、しかも豪になんにもしてやれなかったんだけど。
豪は何故か「ありがとう」って言って笑ってくれる。
よくわかんないけど、豪がいつもみたいにうるさくまとわりついてくるのも
結構嫌いじゃないから、ま、いいか。と、僕も笑う。
あのバカと血が繋がってるだけあって、案外、僕も単純だな。なんて思いながら。


おわり。

うわっ、寒っ!(笑) 初めてちゃんと書いたレツゴ小説だから、これで許してやって(涙)。 結局、2人はフツーの兄弟のままだし。 烈、鈍すぎるし。 これじゃあんまりにもだし、ちゃんとラブラブになるように続きも書こうかなぁ・・・むぅ。 これじゃグラデーションなのに淡いまんまだもんなー(^^;)。 ★Gradation2へSTORYのTOPへ戻るHOMEへ戻る