last resort −Side;Jun Sagami 退屈なHRがやっと終わった。 担任の話ってば長すぎ。 豪、今日の部活はミーティングだけだから早く終わるって言ってたよね。 図書室でも行って時間潰そーかなぁ。 そういえばこの前烈が勧めてくれた本があったっけ。 鞄に教科書を詰めながら、その本のタイトルを一生懸命思い出していると 数人のクラスメートにくるりと机を囲まれた。 何? あまり付き合いがあるわけでもないけど仲が悪いわけでもない"友達"。 剣呑な空気は無いし、たいした用事ではないと思うけど・・・・一体何? 首を傾げると、真ん中に立っている子が思い切って、というふうに口を開いた。 「佐上さんって、星馬くんと付き合ってるのよね?」 「・・・そうだけど」 それが何か・・・? 「それじゃ、星馬先輩とも結構仲いい?」 幼なじみだもの。 結構どころか女の子の中じゃ、かなり仲いいほうよ。多分。 「星馬先輩に彼女出来たって・・・ホントかなぁ・・・知ってる?」 ・・・・・・この子達、烈のコト好きだったんだ。知らなかった。 烈ファンは豪ファンと違って控えめに活動してるからわかりずらいのよねー。 と、そんなことはいいとして。 「・・・・・・彼女ってミキ先輩のこと?」 コクンと首を縦に振るのを見てやっぱりと思う。 烈の彼女、か。 そう見えるわよね。 あんなに仲いいんだもの。 ・・・・・・まるで、私と豪みたいに。 でも、違うのよ。 残念ながら。 「烈、彼女はいないわよ。 ミキ先輩とは友達だって言ってた」 先輩が、本当に烈の彼女だったら、どんなにいいだろう。 「ありがとうっ」と言いながら離れていくクラスメイトの背中を見送って溜め息をつく。 友達なんて。 スゴク曖昧な定義だと思う。 相手との距離が1でも100でも、同じ"友達"なんだから。 ウソでもいいから、言っちゃえばよかったかな。 烈には彼女がいるのよ。って。 そんな、言ったところでどーにもならないことをぼんやりと考えながら 机の中に残った教科書を鞄の中に放り込んだ。** ** ** ** ** 「ジュンちゃんが図書室来るなんてめずらしいねー」 図書室のドアに手をかけたところで背中から声をかけられた。 振り向かなくてもよーく知ってる声。 それでも、一応振り向くと予想通り、さっきまで話題になっていた星馬烈、その人だった。 適当に空いている席を見つけて荷物を置く。 豪の部活が終わるまで時間を潰すつもりなのだと教えると 「豪のヤツ愛されてんねー」と冷やかすように笑った。 「この前烈が言ってた本、あるかなぁ?」 「あー、あると思うよ。探してきてあげよっか」 「あ、じゃぁ一緒に行く」 「多分ジュンちゃん好みの話だと思うんだよねー」 屈託なく笑う顔はホントに憎らしいくらいに可愛いのよね。 これが年上の男だなんて信じられないくらいに。 「烈は自主勉?」 私には届かない少し高めの棚から目当ての本を取り出す烈。 昔は私の方が背、高かったのになぁ。 「まぁね」 「相変わらずエライんだぁ」 「なんか褒められてる気がしないんだけど」 「ハイ」と文庫本を渡される。 「やるべき勉強しないヤツよりはずっとエライと思ってるってば」 「あんなのと比べられたくないって」 誰が、がなくても成り立つ会話。 「今日だって、豪のせいで図書室までくるハメに・・・」 「豪のせい?」 「・・・・・・あ」 明らかに「しまった」って顔よね。コレ。 普段あまり表情に出さないくせに変なトコで正直なんだから。 私の無言の圧力に屈した烈は まぁ、黙ってなきゃいけない義理もないか。と話しだした。 「明日のリーダーの予習をね、さっきまで教室でやってたんだけど・・・ 昼休みに豪に英語の辞書貸したままでさ。 ココなら辞書も貸し出してるから、と思って」 ・・・・・・英語の辞書? 「あ、でもなんかアイツ、ジュンちゃんには忘れ物したの知られたくないって わざわざ俺のとこまで来たみたいだから。 いちおーオレから聞いたってことは言わないどいてね」 豪が、辞書を忘れるはずなんてないじゃない。 だって、アイツのロッカーの中は英和、和英に古語辞典、現社の資料集まで 一通り、1年中入りっぱなしなのよ? 夏休みにだって持って帰りゃしないんだから。 それ以前にね。 今日の午後の授業。 豪のクラス、英語なんてないのよ? それなのに。 「ジュンちゃん・・・・・・どうかした?」 「・・・・・・・ううん。ちょっと呆れただけ。 今回は見逃すけど、今度烈のとこに借りに来たら追い返していいからね!」 わざと頬を膨らませて。 豪と付き合うようになってから、いろんなワザを身につけたわ。 豪が、何も話してくれないなら、私は知らなくていいことなのよね? だから、私も。 烈に余計なことは言わないわ。◇ NEXT ◇ aiko's NOVEL TOP◇ 影の主役ジュンちゃん、4話目にしてやっと登場。(遅っ) もたもたと話が進んでて、イヤだよぅ。 もっとサクサクいきたいねっ。 ところで、今って英語の授業、リーダー、グラマーってあるの? 現役を離れて久しいのでなー・・・。<言い訳