last resort −Side;Go Seiba





思ってたよりも、長引いたミーティングがやっと終わった。



ケータイを見るとジュンからのメール。
図書室で待ってるから終わったら迎えに来い、という
しおらしいんだかエラそーなんだかよくわかんない内容だった。










図書室に入ると、独特の緊張感に包まれる。
こういう静かな空間は苦手だ。
ジュンを探そうと、部屋を見渡してある一点で目が止まった。
探すまでもなく目に飛び込んでくる人。



「ジュン、悪い、待ったか」


俺の声に2人同時に振り向く。

烈兄貴は俺を見ると「よっ」と手をあげ、
ジュンは「烈と一緒だったから退屈しなかった」といい机の上を片づけはじめた。

ジュンは、手にしていた文庫を借りてくる、とカウンターに向かう。

残された俺はそっと烈兄貴を盗み見た。

昼休みに様子を見に行った時にはもう顔色もよかったし、
兄貴はこー見えて実はタフだったりするから、そんな心配はしてないけど。
・・・・・・調子悪い時くらいさっさと帰れよな。
なんでこんな所で勉強なんてしてんだよ。

心の中で悪態をついているとこちらを見上げる烈兄貴と目があった。

「・・・・兄貴、まだ帰らないのか?」

さりげなく。あくまでさりげなく。
なんて兄貴に通用するかわかんないけど、
はやく帰れ。って気持ちを込めて。


     が。


兄貴はオレの顔をちらりと見ると大仰に溜め息をついた。

「コレ、明日の予習なんだよな。
 本当は家でゆっくりやろうと思ったんだけど、
 昼休みから英語の辞書が行方不明でさー。困った、困った」

コツコツと兄貴が指で叩いてる机の上には
「持ち出し禁止」というラベルがでかでかと貼られている図書室閲覧用の辞書。




「・・・・・・マジ?」

「・・・・・・マジ」




戻ってきたジュンに兄貴と一緒に昇降口で待ってるように言うとオレは教室へ走った。

もちろん兄貴に借りた辞書を取りに。








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腕時計を盗み見る。 学校を出て、そのまま家に帰った烈兄貴と別れてから1時間くらいが経っていた。 子供じゃないんだし、心配することなんてないってわかってるけど。 オレのせいで少し無理させたかもだし。 って、さっきの烈兄貴はもう完全復活してそーだったけどな。 そーじゃなくて。 あーぁ、明日返しに行けば、また顔みれるな。なんてこと考えんじゃなかった。 久々の放課後デートとは名ばかりのジュンの買い物に付き合わされ、 荷物持ちをしながらつい、思考が烈兄貴に及んでしまう。 話しかけてくるジュンの声に集中しようと思うのに、上手くいかない。 こんなんじゃいけない。 そうは、思ってはいるのだけど。 ジュンと居るときはジュンのことだけ考えよう。 付き合うと決めたとき、オレは密かにそう誓っていた。 ジュンは"大切な人"だった。 ずっと、ガキの頃から。 それこそ泥だらけになって兄貴と競い合ってた頃から一緒にいた。 きっと、兄貴の次に付き合いが長い。 いつもすぐ近くにいた人。 だけど、その間には一人分の距離。 男とか女とか関係なく、俺達は親友だと思ってた。 彼女が赤い顔で想いを告げてくる時までは。 オレはその時、既に烈兄貴のことを好きだって自覚があったし、 ジュンのこともそんな風には見れなかったから、当然断った。 他に好きな人がいるんだと。 だけどジュンは「そんなことくらい判ってる」と笑った。 「伊達に幼なじみしてたわけじゃないんだから」と。 「豪はその人に、想いを告げられるの?」 ジュンはオレが一体誰を好きなのかまで、判っている口振りだった。 「言うつもりがないなら、私と付き合って」 どうしてそんなことが言えるのかがわからない。 オレの気持ちはジュンにはないのに。 それをジュンはわかっているのに。 「豪が、その人のコト好きなの、辞めなくていいから」 どうして。 と、思いながら。 徐々に、全部わかってて受け止めてくれるジュンとなら、 出口のないこの想いから逃げ出せるかもしれない。 なんて、甘えた考えに侵されて。 オレはジュンの言葉に頷いていた。 それでもやっぱり、オレ達の間には。 相変わらず1人分、間が空いていて。 少し前まではぼやけていたその空間は、      徐々に輪郭を濃くしているようだった。
to be ... ◇ NEXTaiko's NOVEL TOP

おぉ。last resotっぽくなってまいりました。(やっと) つーか、そのまんまじゃん、自分。 豪的にはもっといろいろとココロの葛藤なんかが あった末にジュンちゃんと付き合うハズなんですが・・・ 回想シーンであんまグダグダすんのもなんなので。 いちおーこういう経緯で2人は付き合ってるのね。くらいなもんで。