last resort −Side;Retsu Seiba





「兄貴・・・もう寝た?」

そぉっと・・・という表現がぴったりの様相で豪が部屋に入ってきた。

今日の豪はなんか変だ。

いや、今日だけじゃない。
ここ最近、豪の態度は少しおかしかった。
それは子供の頃のようにあからさまではないけれど、妙に甘えてきたり、
かと思えば急に突っぱねてきたり。

そう、今日だって。
ケーキをお土産に買ってきてくれたジュンちゃんと、豪、僕、
それから帰りにたまたま会って家に来てたミキと
4人でお茶してたとき      あいつがピリピリした空気を
ビシバシ出してたおかげで2人ともすぐに帰っちゃったんだよな。
まぁ、ミキはそろそろ帰そうと思ってたからちょうどよかったんだけど。

学校で別れた時はべつに機嫌悪くなかったよなぁ?
ジュンちゃんと何かあったんだろーか。
そのわりには2人で仲良く家まで来てたし。




「烈兄貴・・・?」

豪は電気もつけずに既にベッドに潜っていた僕の側までくると、もう一度声をかけた。

その頼りなさそうな声に何か相談でもあるなら起きた方がいいよな、と
瞼をあげようとしたところで深く、深く、豪が息を吐き出す音がして。
なんとなく、そのタイミングを失ってしまった。


「兄貴さ、誰か好きなヤツいる?」


返事は求めていない呼びかけだった。
寝てると思って話しかけているんなら、却って起きないほうがいいだろうか。
面と向かっては相談できないことなんだったら。

そもそも恋愛相談じゃたいして役にたてるとも思えないし。
情けないけど。


「どーしてこんなに好きになっちゃったんだろーな」


相談ってゆーか・・・惚気?

しかし、その後、豪は何もしゃべろうとしなかった。
ただ、そのまま床に座り込んで、じっと、動かない。











いいかげん、寝たふりしてるのもツライ。
というか、本当に睡魔に襲われてきた。
豪も、これ以上何か話す気もなさそうだし、このまま寝ちゃおーかな。


そう、意識を手放しかけた時。






「烈兄貴・・・・・・オレ、もうだめかも」






豪の声は、今まで聞いたこともないような弱さで。
だからもう夢を見始めてるんだと思った。
あの豪が、こんな声、出すわけないんだから。

それから顔の上に何かが覆い被さってる気配。

次第に近づいてくる、それは、いつも隣にあるのがあたりまえの、よく知った空気。

頬に吐息のようなものを感じる。

夢なのに、なんてリアル。

間近にある気配が更に動いて、唇ギリギリの場所に何かがあたった。





























それは一瞬だったけど。


夢では決して味わえないその感触は、微睡んでいた僕の意識を戻すには充分のものだった。



すぐ近くにあった気配はスッと離れ、どうやら豪は部屋から出ていったようだった。

人ひとり減ったせいか、布団の中にいるにも関わらず
さっきより少し肌寒いような気がする。


さっきの気配はやっぱり豪のもので。
ということは、ココにあたったのは豪の       。

そこまで考えて頭に血が上る。


なんでこんなコト?
あぁ、もう寝たふりなんかするんじゃなかった。
これじゃ怒鳴りつけることもできないっ。
って、そもそも起きてたら豪もこんなことしなかったんじゃないか?
タチの悪いイタズラだ、とも思うけれど
イタズラだったら寝てる僕にしても意味がない。
てゆーか、そーゆーテンションじゃなかったしさ。さっきの豪。




じゃぁなんで?



豪の言葉にヒントを探す。

『どーしてこんなに好きになっちゃったんだろーな』
『烈兄貴・・・・・・オレ、もうだめかも』


豪が好きだっていう相手。
そんなのはもう決まってて。
       やっぱり、今日機嫌が悪かったのはきっと
ジュンちゃんとなにかあったからなんだと結論づける。
何がダメなのかも、なんで豪があんなことしたのかもよくわかんないけど。


混乱した頭のままそこまで考えて。


不意にさっきの感触を思い出した。






豪は、ジュンちゃんにもあんな優しいキスをするんだろうか。
どっちかというと、あんな軽いキスはしないかもしれない。
2人は恋人同士なんだし。
もっと          。








意識して、顔が熱くなる。


         豪とジュンちゃんは恋人同士なんだ。


もちろん、そんなことは知ってるけど。
なんで、今急にこんなコト意識しなきゃいけないんだろう。

2人が付き合うと聞いた時は、なんだ今まで付き合ってなかったのか?とさえ思った。



ジュンちゃんは小さいときから僕達と一緒にいるのが当たり前の女の子で。

だから。

三角形の1辺が"幼なじみ"という呼び方から"恋人同士"に変わっても・・・
僕らの関係は別に変わらないんじゃないかって、漠然と思ってた。



でも、それはきっと違うんだと。


今になって気づいてしまった。












突然、手の掛かる弟と可愛い幼なじみの関係が現実味を帯びてしまったせいか。


それとも弟に寝込みを襲われた(?)せいなのか。





その夜、何故かお腹の上辺りが気持ち悪くて、僕はちっとも眠れなかった。










to be ... ◇ NEXTaiko's NOVEL TOP

ここにきてやっとゴーレツチックな展開に。 烈・・・鈍い、鈍すぎるよ!! でも、いいの。今回は天然記念烈を目指してるからv<何ソレ。 烈は頭カタイから。 豪に対して手の掛かる弟以外の感情が起きるとは夢にも思ってなくて自覚が遅れてるんですね。きっと。 ところで、あいこは夢の中でも感触とか結構リアルに感じるんですが 普通はどーゆーもんなんでしょうか。