last resort −Side;Jun Sagami 幼なじみから恋人同士に。 ホントなら近づくはずの距離が。 少しずつ、離れていくみたい。 今まで、お互い隠し事なんてなかったけど。 だけど全部を話せるような仲でもなくて。 核心には、触れることはおろか近づくことさえできない。 どちらか片方でも、真実に近づこうとすれば、それは終わりを意味するのだから。 豪と、烈と、私と。 3人でよく遊んだ公園で。 今、私は豪と向かい合っていた。 繰り返し、繰り返し。 頭の中で何百回もシュミレートした場面。 できれば、こんなシーンは永遠にこないで欲しかったけど。 でも、避けて通れないことも判ってた。 予測でも予感でもなく。 必ず来るのだと、知っていた。 だから 、いつ、その場面に遭遇しても取り乱さないように。 アイツが私を振ったことを後悔するくらい。 最後までイイ女を演じきる為に。 繰り返し、繰り返し。 それこそ毎晩のように。 なのに、頭の中で考えるのと、 実際に豪の声で聞くのとではこんなにも違って。 気を抜くと、膝が震えそう。 ねぇ、私、ちゃんと笑えてる? 「豪から言ってくれてヨカッタ」 豪の別れの言葉にゆっくりと息を吐いて、 傷ついたそぶりなんかみせるもんかと 私が吐き出した言葉はなかなか穏やかなものだったと思う。 その私の言葉にも豪は無表情のまま。 でも、その表情は豪が冷静なせいじゃなくて。 むしろ、いろんな感情がごちゃまぜになって、 どんな顔をしていいのか自分でもわかってないだけだ。 バカな豪。 「豪と付き合えてすごく嬉しかったし、幸せだった。 それは本当だけど、やっぱり同じくらい苦しかった」 私が初めて漏らした"苦しい"という言葉に豪の眉がキュっと寄る。 「最近は苦しいことの方が多くて、だけど、自分からは言えなかったの」 豪と私の不安定な関係。 それを、望んだのは私だけど。 もうちょっと。 あと、少し。 貪欲になっていく自分がイヤでしかたなかった。 「だって、アタシ、豪のこと好きなんだもん」 バカ豪の顔が本格的に歪められたのを見て、 昔の、事あるごとに、ピーピー泣いていた豪を思い出す。 豪は変わった。 きっと烈のこと好きだって自覚した、その頃から。 何かあっても泣かなくなった。 強くなろうと藻掻いてることもあった。 感情を殺すことを覚えた。 優しく笑うようになった。 ずっと、ずっと見てきた。 豪を変えたのが自分じゃないのが悔しかった。 でも、そうやって変わっていく豪をカッコイイと思った。 そんな豪をまた、変えたのは、やっぱり私じゃなくて。 ミキ先輩が烈の隣に立つようになってから。 ううん、これは変わったんじゃない、戻ったのかもしれない。 自分の気持ちを無理矢理抑えるなんて方がらしくない。 目標を見据えたら、周りなんか見えなくなる方がよっぽど豪らしい。 「・・・・・・ゴメン」 そんな辛そうな声ださないでよ。 私だって我慢してんだから。 「無理して付き合って、って言ったの私だよ。 豪が謝ることないじゃない」 豪は優しい。 私は"友達"の時には存在しなかった種類の豪の優しさを手に入れた。 引き替えに。 友達のままでいれば見ない振りだってできた痛みもついてきたけれど。 それでも、やっぱり幸せだった。 もう、その腕に抱かれることはないけれど。 「私たち"親友"に戻れる?」 公園を出ると、もう陽が暮れかかっていた。 付き合えるかどうかだって賭けみたいなものだった。 だから、こんなの今更だって思う。 だけど、すごく胸が苦しくて。 豪の真剣な眼が。 不器用に、それでも一生懸命に動かしている口が。 辛そうな顔が。 苦しい、苦しい、苦しい。 逞しい腕が。 広い背中が。 優しい笑顔が。 立ち止まると、涙がこぼれそうな気がして そんなのはゼッタイにイヤだったから、私は駆け出した。 涙も、想いも、全部振り切るように、ただ、ただ、走った。to be ... ◇ NEXT ◇ aiko's NOVEL TOP◇ ジュンちゃんファンから批難豪ゴー(死)。 一応、ココがこの話もメインです。 2人の別れが書きたかった小説なのでね。 とりあえず、歌詞とセリフがかぶんないよーに 気を付けたつもり。<1カ所のぞく。 だって、そんじゃないと歌のまんまになっちゃうんだもーん。<手遅れ