イギリス滞在記 第2章〜生活編
20. ブラックキャブとミニキャブ


1988年もおしつまり、だんだん仕事が忙しくなってきました、休日出勤もたまにするし、平日でも終電近くまで仕事をして、時にはタクシーで帰ることも何度かありました。

ロンドンでタクシーといえば黒塗りの通称「ブラック・キャブ」が有名ですが、そのほかにも「ミニキャブ」というのがあって、決定的な違いは「ブラック・キャブ」の運転手になるにはロンドンのあらゆる通りの名前を暗記しなければいけないなど、厳しい試験に合格しなければいけません、また料金はメーター制でマナーもいいので安心感・信頼性は非常に高いというわけです。

                  

一方の「ミニキャブ」はそういった試験はなく、使われる車両は普通乗用車、料金を先に交渉で決める仕組みでメーターは付いていません、交渉次第では安いけど何となく柄が悪い感じ。

で、残業で終電がなくなり、呼んでもらうタクシーはほとんど「ミニキャブ」でした。
運転手はアラブ系移民が多く、中には妙な発音の人もいます、たとえば「Pardon?」を「パルドン?」みたいに妙に巻き舌でしゃべる運転手がいたりして、行き先がちゃんと通じているか心配になったりします。

ある夜、いつものように僕とE塚さん、それにSさんの3人でミニキャブを呼び、ボンド・ストリートでSさんが降りたあと、僕は次の行き先を「ネクスト アビーロード プリーズ?」と伝えたのですが、その日に限っていつもと違う方向へどんどん走って行きます。途中で不安になって
「ドゥー ユー ノウ アビーロード?」と念を押すと・・・
「ワッ?アビーロード? アビーロード??オー!エィビーロード!」とようやく通じ、危うい所でとんでもない場所に連れて行かれずに済みました。
そのあと、その運転手は「ユア プロナンセーション イズ ロング!」(あんたの発音が悪い)とか何とかぶつぶつ言ってましたけど、こちらは反論する材料も英語力も無く、ただ言われっぱなしでした。(泣)
それ以来、行き先を言う時は意識して「エィビーロード」と言うことにし、その後間違えられることはありませんでしたが。

でもやっぱり日本語では「アビーロード」ですよね、だって「エィビーロード」だと旅行雑誌になっちゃうもんね。

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