イギリス滞在記 第2章〜生活編
7. ABBEY ROAD


そして土曜日、1週間過ごしたアボカハウスホテルに別れを告げ、フラットに引っ越しました。E塚さんが僕の部屋を見たいらしくて車でやって来て手伝ってくれました。ただ引越しといっても荷物はスーツケースとバックだけなので楽なものです、おまけに地下鉄で1駅隣なのでちょっとした移動だけで引越しは完了してしまいました。

E塚さんはしきりに僕の部屋を羨ましがります、その理由を聞くと場所がいいんだそうです。ここセント・ジョーンズ・ウッドはE塚さんの住んでいるスイス・コテージからわずか1駅なのに場所的にはこっちのほうが高級住宅地らしく、そのうえすぐ近くにビートルズのアルバム「アビーロード」のジャケット写真が撮影された横断歩道があるんだといいます。僕たち2人はさっそくその場所に行ってみる事にしました。

            

建物の玄関を出るとグローブエンド ロード、これを左に行くと地下鉄セントジョーンズウッド駅ですが、僕たちは右に行きました、そしてほんの数十メートル行くと道は少し斜めのT字路になっていてアビーロードにぶつかり、グローブエンド ロードはここで終わりです、T字路の真ん中は島状になっていてそこに小さなオベリスクの形をした記念碑のようなものが建っています。E塚さんは「ここ、ここ!」といいながら交差点そばの横断歩道を指差しました。

            

僕はビートルズの「アビーロード」を持っていません、けれどそのジャケットをどこで見たのかはっきりとは覚えていないものの、写真のイメージははほぼ鮮明に覚えていました、横断歩道を4人のメンバーが1列に並んで歩いていて、その中でポールマッカートニーが何故か裸足だったこと、で、その場所に実際立って見ると、なるほど記憶の風景と実際の風景がピタリと一致します。
考えてみると僕がもし「イギリスの通りの名前を挙げよ」といわれたら唯一知っているのは「アビーロード」だけ、(おっと失礼、ボンドストリートを忘れていましたねホームズ君)そしてそれはビートルズのアルバムタイトルで知っているわけで、この広い世界のまさにピンポイントのようなその場所のすぐ近くにこれから住む事を思うとなんだか不思議な感覚をおぼえました。

ビートルズの実質的に最後のアルバムである「アビーロード」はレコーディングスタジオが「アビーロード」にあることから名付けられました、そのスタジオはジャケット写真に写っている横断歩道のすぐそばにあります、それは白い建物で入り口脇のプレートには「EMI ABBEY LOAD RECORDING STUDIO」と書かれています。
1969年まさにこの建物の中で「アビーロード」のレコーディングが行われ、(僕の勝手な想像ですが)おそらくメンバーの誰かの思いつきで、すぐそばの横断歩道でジャケット写真の撮影が行われたのでしょうか。

数日後、僕はさっそくピカデリーのCDショップで「アビーロード」のCDを買いました。

            


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