「貯水池」      混合技法  73×60p 1996


その貯水池は私の前に突然現れた。

大きな冷蔵倉庫の横にある人造の池の透明感は自然のものではない。

幼かった私はその池の中に生息している小さな海老の一種を発見し狂喜した。


日がな一日、たもでその生き物を採取することに明け暮れた。

ガラスのような水中にそっと差し入れたたもを、そいつの逃げ道に置き、

そいつがたもに入った瞬間に水面に引き上げる行為を延々と繰り返す。

その子供の指ほどの、海老ににた生き物は子供の目にしか判別できぬほど透明であった。

私の手の中に捕獲されたそいつは、しばらく痙攣した後、

まるで氷のように溶けて消えた。