「私の生まれた港町は朝日に輝く」     混合技法  60×73p 1980

      朝まだ暗いうちに起き出し、頭がしびれているせいなのか、

      裸電球に照らされた朝市の光景は、

      万華鏡のように、くるくる、くるくる、目の前を回る。

      穴から出てきた蟹のように、老婆の岩のような顔が

      表情もなくとおりすぎる。

      川の水面は暗さで見えず、無気味に満潮の時を予感させる。

      空が白む瞬間までこの朝市は続く。

      蛸に当たる強い電球の濃い影にひそむものは、海虫なのか。

      若い男が、くるくる、くるくる、回る。

      空が白んだ一瞬、すべては止まる。  

      闇の形は夕暮れを待ち、静かに眠りに入る。