11
秘書課 和也の執務室。
八畳ほどの広さにデスクと本棚がふたつ。小さな飾り棚がひとつ。
飾り棚には地球を中心に宇宙を模した造形物が飾られている。
大きなものではないが、透明のピアノ線と球体で構成されたそれは、オブジェとして部屋全体を引き締めていた。
そして応接用ソファに和也、真向かいに橋本、その横に遼二が座っていた。
「杉野君は初めてですか、この部屋に入るのは」
橋本は遼二の緊張を解きほぐすような、温和な顔でゆっくり話した。
「はいっ」
思わず声が裏返ってしまった。
橋本が温和であればあるほど、解きほぐれるどころか先ほどの橋本×進藤の余韻が遼二の緊張をさらに高めた。
「そんなに緊張しなくていいよ。ここは本来私の部屋じゃないし」
「はぃ・・・?」
斜め前、和也の言葉に遼二は一瞬だけ緊張がとれた。
「そんなこと言われてもわからないですよ、杉野君は」
ポカンとした遼二をかばうように、橋本がやんわり和也に言った。
「それもそうだね」
ごもっともと頷く和也の後を、橋本が遼二に説明した。
「ここは明良君が来社した時の為に用意された部屋でもあるのです。
秋月さんは明良君の教育係ですから」
「総務課と企画部と・・・あと営業部か。
A&Kは三つの部と三つの課から成る。
遼二は橋本から渡された書類を順番に各部課に届けている最中だった。
今度の書類は処分ではなく、届け物だった。
執務室から書類袋を抱えて出て来た遼二は、咄嗟に長尾、進藤の席に目をやった。
ほとんど条件反射と言って良い。
秘書室に二人の姿はなく、高田と吉川だけだった。
遼二はホッとした。何しろ怒り心頭の進藤にどこまでも不穏な雰囲気の長尾。
グッドタイミングで書類の届け物を橋本に頼まれた。
ほとぼりを冷ますにはちょうど良かった。
顔を合わせず行けるのが、遼二にとってはなお良かった。
「あっ杉野君、初めてのお使いだね。・・・気をつけて行っておいでよね」
書類袋を抱える遼二に、高田から声が掛かった。
一瞬、社内なのに何に気をつけるのだろうと思った遼二だったが、すぐその意味を理解した。
「はい、各部課全部なんで渡し間違えのないように気をつけます。それじゃ、行ってきます!」
高田の忠告に、遼二は素直に応えて秘書室を出た。
「・・・高田さん、杉野君気をつけるって意味、理解はしてるけど解釈は間違えてますね」
遼二が出て行った方角から目を移しながら、吉川が持ち前の理屈を発揮する。
「うん、長尾さんと進藤さんに遭遇しないよう気をつけてって意味だったんだけど・・・。
あれだけ二人から難くせを付けられてたのに、普通ならそう解釈するよねぇ」
それが普通かどうかはわからないが、散々二人から難くせを付けられて来た高田が先輩らしく遼二を気遣った。
が、切り換えも早かった。
「まっ、いっか。杉野君悪運強そうだし・・・」
ひとつひとつ書類袋の名前を確認しながら、丁寧な挨拶と新人らしい爽やかさで遼二は各部課を順調に消化していった。
最後に営業部が残った。
「営業部か・・・」
橋本から営業部への書類は、くれぐれも園田に手渡すように言われた。
園田は営業部のナンバーワンである。
営業部の仕事は得意先回りと、新規取引の開拓でほとんど外回りが多い。
担当者には、マンツーマンではなく複数のアシスタントがつく。
アシスタントは他に電話当番があるので、流れとして電話当番に当たったアシスタントの穴を同じ担当者のアシスタントが埋める。
アシスタントの多くは女性だが、A&Kは能力主義である。
担当者が男性でアシスタントが女性とは限らない。
出来る者がそのポジションの仕事をする。
園田も普段は他の皆と同じように外回りに忙しいが、たまに一日を会社で過すこともある。
会社に居れば居たで、電話やら書類整理に追われる多忙な園田だった。
そして営業部には真紀がいる。
研修期間中はあちこちのレストランへ行かされ、真紀とも同じ職場になったりもしたが、それはそれで楽しかった。
まだ配属前で遼二自身アルバイト感覚が抜けていなかったのかも知れない。
だが部署も決まり少なからず社員としての自覚が出てくると、どうも彼女がいる部署に行くのは気恥ずかしい感じがするようになった。
「失礼します。秘書課杉野です」
遼二は営業部のドアを軽くノックして、開けながら瞬時に視線をめぐらせた。
早業が身に付いてしまったらしい。
真紀は居なかった。居るとつい必要以上に意識してしまう。
―やった!これでスムーズに終われる―
遼二は書類を渡すべく、軽やかな足取りで営業部に入っていった。
「園田さんはいま・・・あっ!」
軽やかに足を踏み入れた遼二だったが、ぐしゃっと紙を踏んでしまった。
「わあぁっ!あぁぁぁっ・・・あ・・足をどけろーぉ!」
中にいた男性が、悲鳴とともに遼二の足元に飛びついてきた。
「す・・すみません!・・・でも何でこんなに紙が散らばって・・・」
遼二はすぐ足を退けたが、見ると書類が床に散乱している。
営業部は横三列向かい合わせのボックス並びなので、真ん中の席は両隣と繋がっている。
その境目がわからないほどデスクの上も乱雑に物が溢れていた。
遼二が初めて秘書室に入った時、整然とした風景に見とれてしまったが、それに慣れると今度は営業部の雑然とした風景に見とれてしまうのだった。
もちろん、同じ見とれるでも受ける意味合いは真反対なのだが。
「・・・帰れよ」
遼二の足元から声がした。
「はっ?」
かがんで書類を拾い集めていた男性が睨み上げている。
睨みながらも訴えるような形相はほとんど涙目だった。
「いつもいつも・・・」
「・・・いつもいつも?」
かがんでいた男性が立ち上がったかと思うと、
「いい加減にしろぉー!バカヤロォォォ―――!!」
絶叫とともに、遼二の胸ぐらを掴んだ。せっかく拾い集めた書類がまた散らばり落ちてしまった。
いきなり胸ぐらを掴まれて、遼二も持っていた書類袋を落しそうになった。
遼二は必死で書類袋を抱え直しながら、
「ちょっと!く・・・苦しい!何なんですか!俺は園田さんに・・・」
男性の手を振り解こうと応戦した。
ぐしゃっ!ぐしゃっ!ぐしゃぐしゃぐしゃ―――っ!
「てめぇ!また踏みやがったぁ!!」
「あんたも踏んでますよ!!」
散らばった書類の上で揉み合いになった。
「ですからその件は、てめぇ・・・あっ、いや違います!違います!て・・手前どもと申し上げたのですが!はいっ!!
で、それはあんた・・・あっ、いえ!あん・・あんした・・あした!手前どもが!私、園田が明日お伺いさせて頂きまして!!
はははっ、どうも電話の調子がおかしいようですね!少々お待ち下さいっ 〜♪♪」
電話応対中の園田は一旦保留にすると物凄い勢いで席を立ち、遼二と揉み合う男性の襟首を掴んで引き剥がし、そのまま側のデスクに上半身を押し付けて4〜5発尻を叩いた。
バシッ!!バシッ!!バシッ!!バシッ!!バシーッ!!
そして呆然とする遼二から書類袋をひったくるように取ると、再び自分のデスクに戻った。
「〜♪♪ お待たせいたしました!ええ!席を移動いたしましたのでこの電話ならもう大丈夫かと!!」
遼二は明良の時に続いて、またしても目の前で尻叩きを見てしまった。
それも今度は子供ではなく自分と同じ社員、大人なのだ。
しかし、意外にもその光景に固まっているのは遼二だけだった。
電話当番の女子社員たちは遼二たちのすったもんだなどまるで無視して、先ほどから円陣を組んでのミーティングに夢中の様子だった。
おのずと残ったもうひとりの男性社員が、自分の片付ける仕事そっちのけで電話の応対に追われていた。
さらに園田に尻を叩かれた本人でさえ、もう必死で書類を拾い集めている。
遼二は気を取り直して・・・いや気を取り戻して、せめて挨拶だけでもと思ったが、園田は電話中だし他の社員も忙しそうだった。
とにかく書類は園田にひったくられたが手渡った。
スムーズに終わるどころか、かなり時間を喰ってしまった。
遼二は急いで部屋を出ようとした。
「ちょっと、そこのあなた。お待ちなさいっ」
遼二の後ろから声が掛かった。女性の声だった。
「・・・俺のことですか」
振り返ると、女子の円陣の中央にいたひとりが遼二に詰問しながら近づいて来る。
「あなた見かけない顔だけど、新人さんね?どこの部課?」
ずんずん近づくに従って、遼二は思わず身構えた。
―でかい!!―
175cmの遼二と目線はほぼ同じである。ローヒールを履いているのでそれを差し引いても170cmはある。
円陣の女子の中では一番年長のようだった。
女子としては長身の背筋をさらに伸ばし、胸元で腕を組む。
威風堂々の威圧感は女性でありながらも壮観であった。
「何だかうちの子と揉めていたようだけど、けんか両成敗って言葉知らないのかしら。
ひと言の挨拶もなく帰ろうとするなんて、今年の新人はやけに礼儀知らずね」
ついでに言い掛かりもはなはだしかった。
遼二はあまり真紀のいる営業部で揉め事を起こしたくなかったが、一方的に突っ掛かられた上に首まで絞められたことを両成敗にされたのではたまったものではない。
「お言葉を返すようですが、秘書課杉野と名乗りましたよ。そしたらいきなり突っ掛かられて・・・。
礼儀を知らないのは営業部の方じゃないんですか」
他にも言いたいことはあった。
名乗って入って来たのに誰も知らん顔だったし、書類だって乱雑に床に散らばっていて、踏むなもないものだ。
「いきなり・・・?どういう事かしら?園田君」
事実を確認するのは当事者同士より第三者(目撃者)が適正だろう。その点について彼女は間違ってはいなかった。
ただ、確認した相手が園田だった。
「まっ・・松本女史!園田さんは電話中です!」
電話応対に追われていた男子が、慌てて注意を呼びかけたがまるで通じない。
身長170cm、園田を君付けで呼び、電話中でもおかまいなしの女性松本女史。
『アシスタントの多くは女性だが、A&Kは能力主義である。
担当者が男性でアシスタントが女性とは限らない。
出来る者がそのポジションの仕事をする。』
今では営業部ナンバーワンの園田も、新入社員の時はアシスタントからだった。
当時は担当者とアシスタントのマンツーマンで、園田が付いた担当者が三年先輩の松本女史だった。
園田は松本女史から営業のいろはを、文字通り尻を叩かれながら叩き込まれた。
だが元々園田には営業は天職のような素質があり、松本女史が教える以上にぐんぐん頭角を現していった。
一年で松本女史と園田のポジションが逆転した。
しかし例えポジションが逆転し、またどれだけ園田の地位が上がろうとも、園田は今もって彼女にだけは逆らうことが出来ない。
ヒナが最初にエサをもらった相手、つまり尻を叩かれた相手を親鳥と思うのと同じ、刷り込み以外の何物でもない。
―女子社員の中で一番年長の女性が勝手にお茶の時間を決めている―
勝手が通用するのは園田すら逆らえない人物、松本女史のことだった。
「園田君、聞こえないの?あなたいつからそんなに偉くなったのかしら?」
園田は電話中なのだ。だが松本女史は意に介さない。
遼二はムッとしてつい言い返してしまったものの、松本女史の傍若無人さに焦った。
「あの・・・もういいですから。俺、別に謝ってもらおうとかそんなつもりで・・・」
「もういいかどうかは私が決めます!あなたはどんなつもりか知らないけど、これは営業部全体の問題よ!」
憤慨する松本女史だったが、その割には揉め事の理由はわかっていないのだ。
遼二は収集のつかない顔で松本女史と園田を交互に見比べるばかりだった。
園田は勘弁してくれと言わんばかりに眉間に皺を寄せて、また電話を保留にした。
「申し訳ございません、今度は雑音!が入るみたいで。そちらは大丈夫ですか?・・・そうですか。
どうやら手前どもの電話だけ!のようですね。少々お待ちください〜♪♪ ですから、尻を叩いておきましたっ! 〜♪♪
お待たせいたしました!ほんとうに重ね重ね・・・いえいえ!滅相もございません!で、先ほどの件ですが・・・」
尻を叩いたのはたんにやかましかったからなのだが、とりあえずここは雑音を追い払わなければならない。
案の定、園田の尻叩きは松本女史を納得させるものだった。
「それを早く言いなさいよ。ごめんなさい、誤解があったようね」
園田にはあくまでも高飛車の松本女史だったが、非は営業部の方と納得すると遼二にはあっさりと謝罪した。
「いえ・・・ほんとうにもういいですから・・・。それでは失礼し・・・」
「松本女史ぃ〜。秘書課の杉野さんって、真紀ちゃんの彼氏ですよぉ」
遼二はやっと帰れると頭を下げた途端、一番触れられたくない話題を持ち出された。
勘弁してくれと思うのはどうやら園田だけではないらしい。
「あらっ、そうなの。真紀ちゃんは明るくてはきはきしていて、とてもいい子ね」
後ろの女子社員たちの声を受けて、松本女史は遼二に優しい笑顔を向けた。
園田に対するのとは天と地ほどかけ離れている。
もちろん遼二も自分の彼女を褒められて悪い気はしない。だが、今は仕事中なのだ。
しかもかなり時間をロスしている。
「ありがとうございます。高野をよろしくお願いします」
遼二は軽く礼を述べるに留めた。
「秘書課のみなさんは礼儀正しいわね」
そもそも礼儀知らずと言い掛かりを付けられたことから始まったのだが、そんなことはすっかり忘れているようだった。
ご機嫌の笑顔で遼二を見送りながら松本女史は続けた。
「長尾さんと進藤さんによろしくお伝えして。さっきまでいらっしゃったのよ」
遼二は部屋を出掛かったところで、思わず足が止まった。
―さっきまで二人が・・・―
だからどうと言うことはないのだが、何となく引っかかるものがある。
遼二は必死で書類を拾い集めていた男性社員を見た。
どうにか書類は拾い集め終わったらしく、デスクで整理している様子だった。
男性社員が視線に気付いて遼二の方を見た。
落ち着いて見るとまだ若く、人の良さそうな男子だった。
「すみませんでした」
遼二は深々と頭を下げて、営業部を出た。
各部署の配置は、受付から、右側に広報課、資材部、秘書課、左側に営業部、総務課、企画部となっているので、秘書課は営業部とは反対側にある。
A&Kカンパニーは五十階部分全フロアを占めるので広い。
遼二は急いで秘書課に戻った。
秘書課の入り口も受付になっていて、その造りは重厚にして豪華VIP対応の雰囲気を漂わせていた。
珍しく橋本が立っていた。
遼二は息を切らせながら、受付に立つ橋本に事後報告をした。
「ちょっと・・・遅くなりました・・けど、届け終わりました」
「ご苦労様、と言いたいところですが、遅かったですね」
橋本から遅いと言われたのはこれで二度目だった。
一度目は初日、あの時も橋本が受付に立っていた。
今にして思えば自分を待っていてくれたのだ。
遼二は今回遅れたことは不可抗力だと思ったが、あえて言い訳はしなかった。
「次から気をつけます」
橋本は遼二の言葉に、いつもの温和な表情のまま微笑んだ。
「ちょっと遊びに行ってただけじゃんかー!!」
「君のちょっとは1時間なの。よくわかりました。
それじゃ、君には1時間くらいお尻叩いたってちょっとのことなんだね」
「ばっ・・・ばっかじゃねぇの!そんな屁理屈通用するかー!!」
「通用するかどうか、試してみないとね」
喚き倒す子供の声とそれとは相反した穏やかな声。
会社の入り口の方から、ズリズリと引き摺る音と一緒に聞こえて来る。
明良と和也だった。
「ほんとうに君たち、同じようなことを言いますねぇ。明良君もちょっとって言ってますよ」
温和な表情のままの橋本ではあったが、少し困ったようなニュアンスの物言いだった。
遼二はしまったと思うものの、もう遅かった。
君たちと言うことは、また明良とセットにされている。これも二度目だった。
遼二は明良が来ていたのは知らなかった。たぶん書類を届けている間に来たのだろう。
明良は肩あたりを掴まれていて、カッターシャツの裾が制服のズボンから半分はみ出ている。
和也は、言い方は穏やかだが扱いは手荒かった。
二人は秘書課受付手前の部屋で立ち止った。
「あっ、兄ちゃん!」
バシーンッ!!
「っ・・・じゃねぇや、杉野さん・・って、痛てぇな!!」
明良が遼二に気が付いた。和也から遼二に対する呼び方を注意されていた。
兄ちゃんと呼んだ瞬間に、和也から尻を叩かれたのだった。
「ほら、入って」
「何で入んだよ。オレ、関係ねーじゃん!」
拒む明良だったが、そんな主張は聞き入れられたためしがない。
そのまま和也に引き摺り込まれた。
秘書課・会議室。
明良が引き摺り込まれた部屋なのだが、 当然遼二も知っている。ただ、未だ入ったことはなかった。
―明良君!会議室でオシオキ!1時間の尻叩き!!―
入ったことはないが、連れ込まれるイコール尻叩きの図式がすでに遼二の頭の中では出来ている。
兄ちゃん!と呼ばれても、和也相手に明良を助けてやることは出来ない。
遼二は気が引けながらも秘書室に戻ろうとした。
「どこに行くんですか?杉野君」
受付に立っている橋本が遼二を呼び止めた。
「あっ・・・すみません。代わります」
橋本を受付に立たせて、自分が部屋に帰るなんて気配りが足りなかった。
この時点では、まだ気配りの足りない自分を反省出来る余裕が遼二にはあった。
「代わらなくていいですよ。君を待っていたんですから。さぁ、行きますよ」
受付のカウンターから橋本が出た。
「俺を待って・・・?どこに行くんですか」
二度目も橋本は自分を待っていてくれた。遼二は慌てて橋本の後ろについて行った。
「会議室です」
「ひっ!!」
再び遼二の頭の中に図式が走る。それも遼二のほうが断然分が悪い。
明良1時間に対し遼二は2時間のちょっとだった。
―俺!会議室でオシオキ!2時間の尻叩き!!―
この時点ですっかり余裕を無くしてしまった。
「はっ・・橋本さん!遅れたのには理由が!!営業部でいきなり突っ掛かられて、でっ、それで、首絞められたんです!
その後・・帰ろうとしたら、ガリバーみたいな女の人に言い掛かり付けられて!それから・・・そしたら、あの・・そのガリバーがっ・・・!」
遼二は今回遅れたことは不可抗力だと思ったが、あえて言い訳はしなかった・・・つもりだった。
「・・・君、ここは会社だ」
橋本は言い訳にも聞こえないほどの、お粗末な遼二の説明に半ば呆れた。
会議室の前に着いて、そこで遼二はぐいっと腕を引っ張られた。
橋本の顔からは温和な表情は消えている。
抵抗するすべもなく、そのまま橋本に引っ張り込まれた。
秘書課・会議室。ドアを閉めて鍵をロックすると【会議中】の表示が点く。
現在【会議中】―。
*コメント
遼二、とうとう会議室へ。
方や引き摺り込まれ、方や引っ張り込まれ、明良と遼二ほとんど同じシチュエーションで。
やはり二人はセット!?
営業部より松本女史、新キャラ登場です。
A&K女性社員は、男性社員とはまた違った意味で充実した会社ライフです。
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