番外ー2
  



秋桜(コスモス) 風に揺れて

家の曲がり角 空き地の一角

野に咲く花 淡紅色は清楚に美しく




秋月和也が腹違いの弟、一谷明良の公私を含めた教育係になって早や一年が過ぎた。

会社では後輩の長尾、進藤に社長付きを譲り、私(わたくし=公私の区別)では生活を共にすることで和也は全面的に後継者育成の側になった。

腹違いとはいえきちんと認知され、明良と同等の権利を持つ和也だったが素性を公にすることは拒んだ。


―お家騒動の種は少ない方がいいでしょう―


ここでも社長である父は、和也の意向を呑むかたちとなった。

明良に甘いのは周知の事実だったが、表現が違うだけで和也に対しても私の部分では甘い父だった。

その代わり社長(公の部分)として、和也に会社の命題ともいうべき後継者の育成を任せたのだった。







日曜日、和也のマンション。

起床時間は休日でも変わらない。

朝食後はお互い手分けして、掃除や洗濯に取り掛かる。

手分けといっても、和也の指示で動かされる明良は常に鬱陶しい。


「君の部屋お菓子のくずがいっぱい落ちているから、掃除機念入りにあててね」

「オレの部屋だ!!見るな!!放っとけ!!入るな―――!!!」


「タオル類と靴下は一緒にしないようにって、言っているでしょう」

「・・・おいっ・・・待てよ。何でオレのパンツも除(よ)けんだよ!!」


掃除や洗濯は週に一度ハウスクリーニングが来るので軽く済ます程度なのだが、揉め事は軽く済まないようだった。

それでも何とかひと通り家事を済ますと、二人ともそれぞれに自分の時間を過ごす。

和也はいつもならダイニングテーブルでパソコンを開くのだが、今日は出掛ける予定があった。

それも明良を連れて出掛けるつもりのようだった。

しかしリビングでTVを見ている明良は、気だるそうに和也の誘いを断った。


「明良君、行かないの?」

「・・・・・行かねえ〜」

「間際になって全く・・・。夫人は君に会えるのを楽しみにされているのに。
この夏休みだって帰ってなかったでしょう」

「・・・・・・・・・・」

明良は無応答だった。



それは二日前に遡る。

中学三年中間考査最終日のことだった。

試験の終った開放感から酒にまで手を出してしまった明良は、その後和也から散々叱られる羽目となった。

尻だってまだ痛いし、酒は抜けたといっても匂いや酔い潰れた感覚は頭の中にこびり付いている。

そんな回復しきっていないところに、母親のあのテンションで寄って来られてはたまらない。


―明良ちゃん!明良ちゃん!明良ちゃーん!!・・・―


「明良君?」

「!!!痛てえぇっ!!みっ・・耳が!!何にすんだ!!」

明良はいきなり後ろから耳を引っ張られた。

「聞こえてる?」

「行かねえってんだろ!!確認するのに耳!引っ張んのかよ!?」

相変わらず手の早い和也に、明良は腹が立ってしょうがない。

「・・・・・・・・・・・・」

「うがあぁっ!!」

「・・・君、耳掃除してる?耳垢が・・うわっ・・汚いんだけど」

またしても耳を引っ張られた明良は、今度は中まで見られる始末だった。

「だから!!耳!引っ張んなってんだ!!ってか、オレの耳の中までとやかく言われる覚えはねぇ!」

「とやかく言わないから、耳かき持っておいで。耳掃除してあげる」

横に座った和也に、明良は両耳を塞いで飛び退いた。

「いいって!!おふくろのところ行くんだろ、さっさと行けよ!!
遅れるとまた電話掛かってきてうるせぇんだから!!」

「・・・仕方ないな、わかりました。それじゃ私ひとりで行って来るけど、耳掃除ちゃんとしておくんだよ」

心残りの表情を浮かべて、和也は立ち上がった。

「その残念そうな顔は何だよ。オレの耳は和也さんの掃除の対象じゃねぇぞ」

和也の心残りが耳掃除にあると、完璧に勘違いしている明良だった。

「あははっ、それもそうだね。君の耳がつい掃除し甲斐のある汚さだったから」

「汚い、汚い、言うなー!!」







高速を走る愛車の半開きの窓を、和也は髪が乱れるのも気にせずさらに全開した。

十月半ばの風は、体の熱を冷ますのに充分だった。

マンションを出る前に、明良と取っ組み合いになった。

一年前は向かって来ても簡単に転がすことが出来たが、いまは背も伸びて力もついている。

明良が少年から青年にかわりつつあるのを、和也は肌で感じていた。


―負けられない―


それはいろいろな意味で、和也の気持ちを引き締めるものだった。

アクセルを踏み込む。車は一路明良の実家へ向かった。





そこは普通の家屋が建ち並ぶ住宅街だった。

和也が着いた先は、さほど広い敷地は取っていないがしっかりした造りを思わせる日本風家屋の家だった。

木の門構えの横に、小さなくぐり戸がついている。

門からは敷き詰められた小さな小石の中に浮かぶような石畳が、格子柄引き戸の玄関まで続いていた。

和也は隣のガレージに車を置くと、くぐり戸から明良の家に入った。

玄関の引き戸を開けると、明良の母、美耶子(みやこ)が和也を待っていた。


「お待ちしていたわ、和也さん」



美耶子はいつも通り、和也を私室のリビングに案内した。

私室は普段家族が使用する部屋で、家の外観は純日本家屋風だが私室の内装は全て洋間になっている。


「明良は元気にしている?電話をかけても出ないことが多いし、メールも返って来たためしがないわ」

「元気ですよ。一緒に来れたら良かったのですが・・・。電話の件は、注意しておきます」

「あっ、そういう意味で言ったんじゃないのよ。いいのよ、別に。もう諦めているから」

ワゴンに用意しておいたコーヒーを立てながら、美耶子は意外にもあっさりした表情だった。

「そんな顔しないで。いつから私はあなたにコーヒーを出すようになったのかしら。
気がついたらあなたは大人になっていて・・・。傍にいてもいなくても、男の子は面白くないわ」

和也は黙って聞いているだけだった。

美耶子の「諦めている」も「面白くない」も、言葉の裏側に隠された心の襞(ひだ=複雑で微妙な部分)が、和也にはわかるのだった。


カチャリ・・・小さな音がした。

白地に二色の青で描かれたコーヒーカップ。落ち着いた和の花模様。和と洋の迎合。

「いただきます」

「どうぞ。たまには日本の器も良いでしょう?私は好きなの」

目の前に置かれたコーヒーは、香りと味と器を楽しむ大人の嗜好品のひとつ。

ゆったりと流れる大人の時間。

和也と美耶子は、暫く取り留めのない雑談に興じた。


「ところで肝心な明良の話ですが、三年生になって成績がグンと伸びました。
一学期の席次が学年で・・・」

和也が成績表のコーピーやそれに類する資料を広げながら話を始めたすぐだった。

「明良の話はいいわ」

遮る言葉とは裏腹の、優しいトーンの声色だった。

資料から顔を上げた和也は、美耶子と視線が合ってつい言葉が出てしまった。

それも和也が、自分の一存では決められないことを口にするのは珍しかった。

「明良を帰しましょうか。生活の方は、もう大丈夫でしょう」

寂しい笑顔。美耶子の目鼻立ちのはっきりした顔は、感情の表れも良くわかった。


「和也さん、あなたにはわかっているはずよ。あの子が帰ってきたところで、あの子は既に私の手を離れてしまっているわ」

「・・・明良も十五歳ですから」

「奇遇ね。あなたはその歳に由紀子さんを亡くし、私は明良を取られた」

「美耶子さん・・・」

「ふふっ・・・本当のことを言うとね、私はあなたと二人で話したかったの。
今日は明良と一緒じゃなくて良かったわ」

世間からいえば、和也は愛人の息子。

普通は相容れない立場の和也が、皮肉にもいまは美耶子の一番の理解者だった。


「取られたとは、また穏やかではありませんね。そんなふうに思っていらしたのですか」

「ええ、一谷に」

「・・・それを言われるのなら、後継者の権利を放棄した僕のせいでしょう」

「それは建前に過ぎないわ。あなた、一谷が明良をあのままで放っておいたと思う?」

和也は言葉に詰まった。

社長である父が明良に甘いのは周知の事実だった。

しかしもっと広い視野で父を見ると、野放図な明良の矯正の場として父はもっとも厳しい環境を作った。

父が明良に対して、甘いばかりでないのを和也はこの一年で感じていた。


「和也さん、初めてあなたと会ったのも、いまの明良の歳だったわね。覚えてる?」

「もちろん、覚えています。季節もちょうど同じ頃でしたね」


―和也が明良の母の美耶子に初めて会ったのは、ひとり暮らしになって数週間が過ぎた頃だった。
まだ中学生で、母と過ごした家に居た。そこへ美耶子が訪ねて来たのだった―


「もっと大人びていると思っていたけど、あなたは十五歳の少年そのものだった」


―美耶子は和也に会うなり、いきなり大粒の涙をこぼした―


「子供らしくないと、よく社長に・・・父には言われていましたから」

和也はその頃のことを懐かしむ仕草で、目を伏せた。


「和也さん、私は十五歳より以前のあなたに会っているのよ」

「えっ?」

思い掛けない美耶子の言葉に、パッと和也の目が開いた。

「私の前を、走り抜けて行った。・・・明良を生んだ年だったから、あなたは十二歳ね。
秋桜が一面に咲いていて、九月か十月頃だったように思うわ」

「十二歳・・・小学校六年生の秋・・・。秋桜が・・・」

和也はその記憶を辿った。



秋桜 風に揺れて

家の曲がり角 空き地の一角

野に咲く花 淡紅色は清楚に美しく

―和也くーん!―

母の呼ぶ声・・・



土曜日の昼下がり。塾からの帰り道、家の曲がり角が見えると和也は駆けた。

母の由紀子が、和也の帰りを迎えに出てくれているからだった。


「和也くーん!」


由紀子は和也の姿が見えると、きまって手を振って名を呼んだ。


「恥ずかしいから、いい加減やめてよ。母さん」

本当は嬉しくて、でも来年はもう中学生なのだ。

笑って「ごめんなさい」と言う母に、和也は少し頬を赤らめふいっと目を逸らすのだった。


懐かしい少年時代の思い出・・・。



「すみません・・・どこでお会いしたのか、覚えていません」

「当たり前じゃないの。すれ違っただけの通行人の顔なんて、覚えている人はいないわ」

美耶子は席を立って、リビングの窓を開けた。

窓からは、土を盛ったところに小さな草木や石などを配した箱庭が観賞出来た。

爽やかな風が庭の草花を揺らしながら、リビングに吹き込んだ。


「秋桜を見ると、母を思い出します」

小さな草木の揺れる草花の中には、秋桜もその淡紅色の花びらを揺らしていた。

「私もよ。風に揺れる秋桜の中で、あなたに手を振っていた由紀子さんの笑顔が忘れられないの」

窓際を背にした美耶子の後ろで、秋桜が揺れていた。


母の由紀子は秋桜に限らず、いつの季節の草花も愛でていた。

それなのに和也は秋桜を見ると母を思い出した。

十五歳の秋、今年もまた家の曲がり角や空き地の一角に秋桜が咲いて、しかしそこに母の姿はなかった。

若い故にガンの進行は早く、夏の終わりに再び病の床に着いた由紀子は、二度と和也を出迎えに立つことはなかった。


学校からの帰り道、


―和也くーん!―


ポツリと手に落ちた涙の雫で、何度足が止まったことだろう。



「由紀子さんは、たぶん私や明良の顔はご存知なかったと思うわ。
知ろうとする必要もなかったのかも知れないわね。あなたがいたから」

「さあ・・・それはどうでしょうか。母も女ですから。結局は父と別れられなかった」

「由紀子さんは、とても幸せそうなお顔をしていらしたわ。
わき目も振らず駆けて行くあなたは利発そうで、ひと目で一谷が離そうとしないのがわかった」

「母が父と別れなかったのは、僕のためだと・・・」

それも確かにあったと思う。しかし母は、二、三ヶ月に一度訪ねて来る父を当たり前のように迎えていた。

そこには母としてだけではない、女としての思いがあったのではないかと、後年になって和也は思うのだった。


「母である前に女なのか、女である前に母なのか・・・。明良が生まれて、はじめてあなた達の存在を一谷から聞かされたわ。
子供が出来た幸せなんて、一瞬で消し飛んでしまった」

和也を前に、美耶子は偽りの無い心情を吐露した。

「一谷の女癖は、傍にいたあなたも充分知っていたでしょう?」

和也は「ええ」と、苦笑交じりに答えるしかなかった。

「私がそれを我慢できたのは、一谷が他所で子供だけは作らなかったからよ。
それが私と結婚するよりもずっと前に子供がいたなんて、詐欺師って言ってやったわ」

いまでこそ落ち着いているものの会社が現在のビルに移転する前までは、父はろくろく家に帰っていなかったのを和也は覚えている。


「当然離婚も考えたわ。でもその前に、どうしてもあなた達を見ておきたかった。
あなたの家の近くの通学路に立って・・・私の前を駆け抜けて行った子供」

和也の記憶にはないが、美耶子の話は少年の頃の記憶と重なり合った。

「その時決心したの。一谷とは別れないけれど、明良も渡さない」

共通した記憶の中の重なり合う部分は、二人にとって愛と憎しみの究極の部分だった。


「私は明良に教育よりも食育を選んだの。一谷の後継ぎにはあなたがいる、明良をその保険にはしたくなかった。
野放図になってしまったけど、裏表のない心と健康な体に育った明良に、私は充分満足だった」

「・・・心と体は人としての一番の基本ですから、明良を見ていてそう思います」

美耶子は無言で首を振った。

「一谷に明良を連れて行かれた時、これで気が済んだかと言われたようだったわ。
母親失格ね、明良を取られて気が付くなんて」


「この間明良が学校から歯科検診の結果を持って帰って来たのですが、虫歯ひとつない健康な歯でした。
明良が好き嫌いなく何でも食べるのは、美耶子さんに育てられた賜物です」

「・・・ありがとう。明良は可愛い?」

「はい、とても」



ヴーッヴーッと和也の背広の内ポケットが震えた。

「失礼・・・明良からです」

[ もしもしー?オレ!何やってんだよ、オレ腹減って・・・ ]

「明良ちゃん!明良ちゃん!明良ちゃーん!!どうして今日来なかったの!?
ママねー、秋月さんと・・・明良ちゃん??・・・切れたわ」


美耶子と和也、幾多の愛憎を超えて二人を繋ぐもの。


[ ・・・何で和也さんの携帯にババアが出んだよ ]


可笑しそうに笑う美耶子は、すっかり母の顔だった。


「今日はこれで帰ります。明良には、時々は顔を見せるように言っておきます」

「期待せずに待っているわ。・・・和也さん、あなたは本当に立派な大人になったわね」

美耶子は瞳を潤ませた。

「どうしたんですか、急に・・・」

美耶子に泣かれるのは、これで二度目だった。

「不思議ね、女としての感情は風化していくのに、同じ母親としての思いは増すばかりなの。
由紀子さんに、大人になったあなたの姿を見せてあげたかった」

「母は・・・幸せそうな顔をしていたんでしょう?僕も幸せでした。
明良は背がずいぶん伸びました。160cmを超えて、この間は高校生に間違われたそうです」

「そう・・・男の子は素っ気ないわね。感傷に浸ることも出来ないわ。
明良に伝えておいて、160cmじゃ、ヒールを履いたらまだ負けないわよって」




明良の家を辞して、和也は帰路に着いた。

車中で、和也は母のことよりも父のことを考えていた。

たくましい女性遍歴の中で、父が最も愛した二人の女性。

人の心は愚かで愛は時に不道徳を生み出すが、愛と同じだけの責任も父は持ち合わせていた。

美耶子は由紀子を幸せそうだったと言ったが、母は間違いなく幸せだったと和也も思う。

割り切れる愛などないのだ。

和也は大人になるに従って、父を許すとか許さないではなく理解することが出来るのだった。







「腹減った!メシ・・・何!?」

明良は待ち構えていたように、帰って来た和也を急っついた。

「カレーライス。煮込むからもう少し待って」

「遅せぇんだよ・・・どうせオレの悪口ばかりしゃべってたんだろ」

「君、何か悪いことしたの?」

「えっ・・・いや・・その・・・おとといのこととか・・・・・・」

明良はまともに聞かれて、答えに窮した。

していないと言うには、まだ尻にしっかり痛みが残っている。

「ああ、未成年でお酒を飲んで何度も吐いて、あげく風呂場で素っ裸のまま倒れてお尻を・・・」

「うるせえぇぇっ!!!」

「そんなこといちいち言っていたらきりがないでしょう。それよりも・・・」

「・・・何だよ。・・・何そんなもん持ってんだよ」

ソファに座った和也は膝の上をポンポンと叩いて、両耳を塞いで抵抗する明良を促した。

「痛くしないからおいで。君、耳掃除は夫人にしてもらってたんだってね」

「ババア、余計なことを・・・。そんなことしゃべってたのかよ!」


和也は門のところまで見送ってくれた美耶子に、出掛ける前の明良の様子を話して聞かせた。

耳掃除を酷くイヤがられたことを言うと、美耶子は口元を押えて大笑いした。



「ほら・・・やっぱり汚いままだ。頭、動かすと危ないからね」

結局、和也の膝の上に頭を乗せる明良。

母親以外してもらったことがないので、いささか緊張しているようだった。

和也は明良の緊張を解すように、声を掛けながらゆっくり始めた。

「・・・どう?こんな感じ・・・痛くない?」

「ん・・・痛くない」

和也の丁寧な耳掃除にだんだん気持ち良くなった明良は、トロトロと眠たくなってしまった。


「明良君、たまには夫人に顔を見せに行かないとだめでしょう」

「ん〜・・・ババアの顔なんか、見たくねぇ・・・」

ビシャッ!! 尻を思いっきりひとつ叩かれた明良は、耳掃除の最高に気持ちいいところだった。

「痛ッ!!何す・・・(ゴリッ)・・・!!!」

「あっ・・・」

「ぐあぁっ!!・・・・・・いま‘あっ’て言ったろ・・・」

「・・・君が頭を動かすからでしょう。・・・大丈夫、何ともなってないよ」

「何ともなくねぇっ!ジンジンする!!耳も尻もー!!」

片耳を押えながら大声を張り上げたところで、明良は和也の膝の上から転がり落ちてしまった。


「ちょっとごめんね、鍋が吹いてる。ルーを入れなきゃ」


美耶子は由紀子を幸せそうだったと言った。

それなら美耶子は幸せだろうか。


「急に立つな!!また鍋かよ!!チクショー!テーブルの足で頭打った・・・」


明良ならきっと言うだろう。


―おふくろ?幸せに決まってんじゃん―



和也はルーを掻き混ぜながら思うのだった。







※コメント

和也の母由紀子に続いて、明良の母美耶子です。

美耶子の人物像については、明良を通してだけしか出てきていなかったので、
それまでのイメージとかなり違った感じを受けられたかと思います。

明良の前では美耶子は母の顔を崩しません。たぶんそれは明良が大人になっても変わらないでしょう。

美耶子には、それ(母以外の部分)を受け止めてくれる和也がいるからです。

和也との会話の中で、明良の背が160cmになったと聞かされて、
ヒールを履いたらまだ負けないと言うようなところは、やっぱり明良のママなのでした^^



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