〜蛍を見に行きませんか? ED:天真〜
「珍しいね、校門で待ち合わせなんて。」
校門で待っていたのは大好きな彼と
彼お気に入りのバイク。
京に一緒に召還される前から、彼はバイクが好きだった。
「たまにはいいだろ?乗れよ。」
そういって私にヘルメットを投げてよこす。
「どこに行くの?天真くん。」
「いいから乗れよ。急がねぇと間に合わねぇ。」
そういって天真くんは自分の後ろの座席に乗るように言う。
一体何に間に合わないのかさっぱりわからなかったが、
とりあえず急いでヘルメットをかぶり、
バイクの後ろの座席へと座った。
「しっかりつかまってろよ。」
そういうと天真くんはすぐにバイクを走らせた。
バイクの後ろに乗るのは嫌いじゃない。
むしろ好きなくらい。
肌に当たる風、ヘルメットの中に聞こえる音、
バイクのエンジン音。どれをとっても結構好き。
特に天真くんが愛用しているこのバイクは、
天真くんが気に入るのもわかるくらい
乗っていて気持ちのいいバイクだと思う。
初めて後ろに乗せてもらったとき・・・
『いい子だね、この子。』
っていったら
『いい子?変わった言い方するなぁ、おまえは。
まぁいいバイクだぜ。乗りやすいし、かっこいいし。
高かったからなぁこれ。』
うれしそうに言ってた。
私がバイクを気に入ったというのが意外だったみたい。
でも私がバイクの免許取りたいって言ったら・・
『やめとけ。おまえ鈍いし。乗りたきゃ俺の後ろでいいだろ?』
なんて言ってたんだよね。納得いかなくて詩紋くんに
聞いてみたら・・・・・
『それはあかねちゃんを心配しているんだよ、天真先輩。
バイクって車と違って転んだりして怪我することも多いから
だと思うよ。』
そんな風に言ってた。ただの照れ隠しだったら・・
うれしいなって思う。
その天真くんのバイクは、夕日に向かって国道の広い道を
ひたすら走っていた。・・・西に何があるんだろう・・・。
「ついたぜ。」
そういって下ろしてくれた場所は・・・
「清滝?こんなところに何の用事?」
着いた場所は、嵐山を過ぎてさらに北へ山を登った先にある
『清滝』だった。確か歴史的な観光名所だったはず・・。
でもそれ以外にこれといったものはない。
ここへつれてきたのが他の人だったら・・まだ
なんとなくわかったかもしれないけど、
ここへつれてきたのは他でもない天真くんだ。
歴史なんて興味あんまりなさそうだし、
ましてこんな何にもない山に・・天真くんが
用事があるなんて、あんまり想像できない。
一体何があるんだろう・・・。
しかも学校からは少し距離がある。
学校を出たときには赤かった西の空も、
今はほとんど紺色・・辺りはすっかり暗くなっている。
こんな時間になんの用事があるんだろう・・・。
「ここから少し歩いたところなんだ。
もう少し暗くなってからの方がいいんだが・・・
そうだ。一応家に電話入れとけよ。帰り遅くなっちまうから。」
「ねぇ、天真くん。一体何があるの?
いい加減教えてよ。」
「おまえが見たがってたものがあるんだよ。
いいから、とりあえず電話入れとけ。
しかられたくはないだろ?」
私が見たがっていたもの?なんだろう・・。
とりあえず私は言われたとおり家に電話を入れた。
天真くんが一緒ということで、家からはあっさりと
OKがでた。理解力がある親でちょっとありがたいと
思ったりもする・・・。
「じゃぁ行ってみるか?暗いからな、手離すなよ。」
そういって私の手をとって、その『私が見たがっていたもの』
がある場所へと向かう。
・・・だんだんと水の流れるきれいな音がし始めた。
(川??ううん、川って言うほど大きくない。
湧き水??小さな小川??そんな感じの音・・・。)
・・そして
「ほら。顔上げて見てみろよ。」
急に立ち止まった。
気がつかないうちに、下を向いて歩いていたみたい。
天真くんに言われたとおり、顔を上げて
初めてその周りを見た。
「うわぁ〜〜!!」
暗闇に光る小さな黄色い光。
無数にあるその小さな光は、ついたり消えたり・・
小さな小川のその周りに沢山ちりばめられていた。
・・・蛍だ。
「これが見たかったんだろう?」
「どうして天真くんわかったの?」
「おまえ、この前のデートの時、
蛍のニュース流れてた街頭のテレビに張り付いて
見てたじゃねーか。あんなに夢中になって見てれば、
誰だってわかるだろ。で、バイク仲間に聞いたら、
清滝なら見れるって聞いたからさ。」
「本物は初めて。すごく綺麗ね・・。」
私はその小さな光に見とれていた。
まるで現実世界じゃないみたい。
自分の家からそう離れた場所ではないのに・・
光り輝くその黄色い小さな光に・・
私は心がとても暖かくなった。
「俺も本物をちゃんと見たの初めてだ。
いいもんだな。街中じゃ絶対見れないしな。」
そういって肩に「ぽん」と手を置いた。
「ありがとう、天真くん。」
私はさっき置かれた天真くんの手を、
両手で持って・・きゅっと握ってみた・・。
ささやかだけど・・ありがとうを込めて・・・。
私の希望をかなえてくれてありがとう・・天真くん・・
天真くんの手を握り締めながら・・そう思っていた。
Fin
ここまで読んでくださってありがとうございます。こちらは天真EDでした。もし興味がありましたら、他の方のEDも読んでやっていただけるとうれしいです。
誤字脱字などございましたら、こそっと(笑)ご報告くださいませ。最後まで読んでいただきありがとうございました。初めての選択性なので、ご意見を頂けるとうれしいです!