〜蛍を見に行きませんか? ED:友雅〜


「急にどうしたんですか!?友雅さん!」

校門で待っていたのは、想像通り、
大好きな彼・・友雅さんと彼愛用の乗用車。

京から一緒に戻ってきた友雅さんは、
龍神の計らいからか、この世界で普通に生活していく為の
環境、知識とも自然に備わっていた。

彼らしくこちらに来て真っ先にしたのは
免許を取得すること。驚く速さで免許を取得したと
思ったら、すぐに愛車を購入。
私とデートの時は大抵この車で迎えに来る。

『こちらの世界はとても便利だね。』

無理なくなじんでしまっているところが、
なんとも友雅さんらしい。

ちなみにこちらの世界での職業はジュエリーショップのオーナー。
センスのいいアクセサリーショップとしてとても有名なお店。
特に20代後半から30代の女性に圧倒的な人気を誇っている。
当然店主である友雅さん自身もおしゃれなアクセサリーを
よく身に着けるようになった。それがまたかっこいいからすごい。
・・センスのいい友雅さんらしい職業なんだと思う。
龍神もよく人柄を見ているな・・と思った。

友雅さんは、こちらにきてもかなり多忙。
それに・・・・

『あかねのプライベートを大事に出来ないようでは、
あかねを守ることなんてできないよ。』

なんて言って、普段は絶対学校まで迎えにきたりしない。
だからとても珍しい・・・。

「どうしても連れて行きたいところがあってね。
週末まで待てなかったのだよ。一緒に来てくれるかい?
私の姫君。」

そういって車の助手席のドアを開ける。

『どこに行くの?』

そんな意味を込めて友雅さんを見上げると

「いいから乗りなさい。これ以上注目されても私は知らないよ。」

そんな風に言うので、あわてて周りを見ると・・
下校途中の人たちから・・かなり野次馬な目線を
浴びていた・・。

とりあえず私は・・言われたとおり友雅さんの車に
乗ることにした。


「ねぇ・・どこに行くの?
珍しいよね。学校まで迎えに来るの。」

流行曲でありながら、決してうるさい曲じゃない。
そういう曲が好みの友雅さんらしく、
車の中には、ジャズ系の有線放送が流れている。
運転も卒無くこなす友雅さんの車は
乗っていてとても快適だ。

「あかねがとても喜ぶ場所だよ。
少し帰りが遅くなりそうだから、先にあかねの家に寄ってきたよ。」

友雅さんはいつも遅くなるときは、必ずうちに
顔を出してから出かける。私の両親が心配すると
いけないから・・という理由からなんだけど・・

「そんなに遅くなるの?」

「夜でなければ、意味が無いからねぇ。」

それ以上は何も言わずにっこりと笑っている。
どうやらどこへ行くかは内緒にしておきたいらしい。
「何も聞かないように!」って無言のメッセージだ。

「そうそう、あかねの家を訪ねたとき、
あかねのお母様からこれを預かってきたよ。
あかねに渡してくれってね。」

そういって胸ポケットから小さく折りたたまれた
メモを受け取った。

『泊まってきてもいいわよv
いい男ばんざい!  BY 母』

・・・・理解力ありすぎる母親に、
彼がわざわざ家に顔を出す必要があるのだろうか・・
と思う今日この頃だ・・・。メモにがっくりとする私に・・

「それだけ信用を頂いているということだよ。」

さりげなくフォローをいれて、相変わらず
目的地に向けて友雅さんは車を走らせていた・・。



「着いたよ、あかね。」

そういって車を止めた場所は・・

「貴船???」

降りてすぐの看板に『鞍馬貴船へようこそ』
なんて書かれてあった。

貴船といったら京都市内でも一番北。
車でもない限り、日帰りなんて出来ない。
高級料亭の多い、観光名所。
友雅さんなら、接待とか・・いろいろで
きっとここには来たことあるだろうけど・・
学生である私には・・縁の薄い場所だった。

「・・・料亭なら今日じゃなくても・・。」

「別に食事をしに来たわけではないよ。」

そういってにっこりと笑う。
・・食事じゃなければ・・一体ここに何しに来たのだろう。

「あかねに見せたいものがあるんだよ。
どうしてもこの時期じゃないとだめだからねぇ。
おいで。ここから少し行った先にあるから。」

私の肩をそっと自分に引き寄せると・・

「暗くなるからね、私から離れないでおくれ。」

そういって少し山手のほうへ足を向けた。


しばらく歩いていると、道が細くなってきた。
あたりも先ほどよりずっと暗くなってきている。
だんだんと水の流れるきれいな音がし始めた。

(川??ううん、川って言うほど大きくない。
湧き水??小さな小川??そんな感じの音・・・。)

・・そして

「あの辺りを見てごらん、あかね。」

友雅さんが小さな小川の土手にある草むらの一点を指差した。

「うわぁ〜〜!!」

暗闇に光る小さな黄色い光。
無数にあるその小さな光は、ついたり消えたり・・
小さな小川のその周りに沢山ちりばめられていた。

・・・蛍だ。

「これが見たかっただろう?あかね。」

「どうしてわかったの?友雅さん。」

「この間のデートのとき、蛍の映像が流れていた
街頭のテレビに張り付いて見ていただろう?
私が隣にいるのに、夢中になって見ているところを見て
ちょっとくやしくてね。本物を見れば、
私の元に戻ってくれるかな?なんて思ったのだよ。
お得意様がここが一番綺麗だと教えてくれてね。
それでここに来たんだよ。こちらの世界では、
街中では蛍は見られないそうだね。あかねが見たがっていた
理由がなんとなくわかったよ。」

「本物は初めて。すごく綺麗ね・・。」

私はその小さな光に見とれていた。
まるで現実世界じゃないみたい。
同じ京都なのに・・少し山に入っただけでこんなに違う・・。
光り輝くその黄色い小さな光に・・
私は心がとても暖かくなった。

「私もこちらにきてからは初めて見たよ。
やはり風情があって良いね。」

そういうと、友雅さんは私の肩から手を離し
なにやら胸ポケットから取り出した。
そして・・私の首に・・冷たいものがあてられた・・。

「友雅さん・・これ・・。」

「蛍が好きなあかねにプレゼントだよ。」

首にかけられたのは、小さな蛍の形をしたものがついた
ネックレス。・・・蛍のおしりの部分には、黄色い
綺麗な宝石がついている・・・。

「蛍が・・ここにいるみたい・・。これ・・・宝石?」

「シトリンという石なのだそうだよ。良く合っているだろう?
今度のデートの時にはそれをつけてきておくれ。」

「ありがとう!友雅さん。」

「いや。お礼を言うことはないよ。
姫君を蛍から取り戻したいという・・
・・つまらない嫉妬から・・だからね。」

そういって友雅さんは再びそっと私の肩を抱き寄せた。

ありがとうの気持ちを込めて・・私も出来るだけ
友雅さんに体を寄せた。

嫉妬・・なんていうのはきっと照れ隠し・・。
いつでも・・どんな些細な願いでも・・
・・・友雅さんはかなえてくれる。

私の希望をかなえてくれてありがとう・・友雅さん・・

私は友雅さんに身を寄せたまま・・そう思っていた。

Fin


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