〜蛍を見に行きませんか? ED:頼久〜


「急にどうしたんですか!?頼久さん!」

校門で待っていたのは、想像通り、
大好きな彼・・頼久さんと彼愛用の乗用車。

京から一緒に戻ってきた頼久さんは、
龍神の計らいからか、この世界で普通に生活していく為の
環境、知識とも自然に備わっていた。

そんな彼がこちらの世界で最初にしたことは、
意外にも車の免許をとることだった。
バイクの免許を持っていた天真くんに教えてもらって
すぐに通い始めた教習所。頼久さんは、
驚くような速さで免許を取得して・・・そして
すぐに今の愛用している乗用車を購入。
私とデートの時は大抵この車で迎えに来る。

ちなみにこっちの世界での彼の職業は警察官。
彼らしい職業に思わず吹き出してしまったほどだ。
龍神もよく人柄を見ているな・・と思った。

ただ・・やっぱり性格は変わったりしないようで・・
現代の知識を得た警察官である彼が
高校生と付き合っている・・ということには
やっぱり抵抗があったらしい。
だから彼はめったなことでは、学校まで来たりしない。

「お連れしたいところがあったので、
お迎えに参りました。・・人目もありますから、
とりあえず車にお乗り下さい。」

そういって助手席のドアを開ける。
普通の彼氏なら・・ここでドアを開けたりしないんだろう
けど・・やっぱりこのへんが頼久さんだ・・。

ひとまず開かれたドアから車に乗ると、
頼久さんはすぐに車を発進させた。

「ねぇ・・どこに行くの?
珍しいよね。学校まで迎えに来るの。」

頼久さんらしく・・車には穏やかな癒し系の
曲が流れている。頼久さんは運転が上手いから、
うっかりすると眠りこけていることがある。
・・眠っちゃう前に・・目的を聞いておきたかった。

「あかねが喜ぶところ・・とだけ言っておきます。
少々帰りが遅くなりますが、先ほど
あかねの家に寄ってきましたから、ご心配なく。」

「寄ってきたって・・。そんなに遅くなるの?」

頼久さんはいつも遅くなるときは、必ずうちに
顔を出してから出かける。私の両親が心配すると
いけないから・・という理由からなんだけど・・

「ええ。少し遠いですから。
それに暗くならないと、行く意味がないですから。
到着にはまだまだ時間がありますよ。
お疲れでしょうから、お休みになって頂いても良いですよ。」

・・・どうやらどこへ行くのかは、
内緒にしておきたいらしい・・・

頼久さんの話し方から・・そう思った私は
これ以上聞いても無駄だと思い、
心地よい車内で少し体を休めることにした。

穏やかな走りをする快適な車の中に
かかっている音楽が心地よくて・・・
私はすぐに夢の中の住人になっていた・・・。



「あかね、着きましたよ。」

体を優しく揺らしながら起こされた私は、
あたりがすっかり暗くなっていて、とても驚いた。

「ここは・・・?」

「鞍馬貴船というところです。」

「貴船!?」

貴船といったら京都市内でも一番北。
車でもない限り、日帰りなんて出来ない。
高級料亭の多い、観光名所。
・・・でも友雅さんのような人ならいざ知らず、
頼久さんのようなタイプの人があまり
訪れる場所じゃない。
一体こんなところに何があるんだろう・・。

そりゃ・・おいしい料理っていうのは
私の喜ぶものだろうけど・・贅沢をあまり好まない
頼久さんがここをセレクトするのはちょっとおかしい・・。

私の・・喜ぶものってなんのことだろう・・。

「お見せしたいものはここから少し歩いた
所にあります。・・あの・・夜道は暗いので・・。」

そういって私の手をそっとつかんで・・

「手を離されませんよう・・お願いします。」

そういって私の手をそっと引っ張りながら、
目的の場所へと歩き始めた。


・・・・見せたいもの。
頼久さんは確かにそう言った。
・・・食べ物じゃない。
じゃぁ一体なんだろう・・・。

私はまだ暗闇になれない目で足元を見ながら、
引っ張ってくれる頼久さんの手を頼りに
少し足場の悪い道を歩いていった。

しばらく歩いていると、だんだんと水の流れる
きれいな音がし始めた。

(川??ううん、川って言うほど大きくない。
湧き水??小さな小川??そんな感じの音・・・。)

・・そして

「お顔を上げてご覧下さい、あかね。」

急に立ち止まった頼久さんにそう声をかけられて
私は言われたとおり顔を上げた。

「うわぁ〜〜!!」

暗闇に光る小さな黄色い光。
無数にあるその小さな光は、ついたり消えたり・・
小さな小川のその周りに沢山ちりばめられていた。

・・・蛍だ。


「ご覧になりたかったのでしょう?あかね。」

「どうしてわかったの?頼久さん。」

「この間ご一緒していたとき、蛍の映像が流れていた
街頭のテレビに張り付いてご覧になられていたので、
よほどご覧になりたかったのだと思いまして・・。
仕事仲間に尋ねたところ、ここが一番綺麗だと
教えていただきました。・・・京と違いこの京都には、
残念なことに蛍はとても少ないのですね。
あかねが見たいというお気持ちがよくわかりました。」

「本物は初めて。すごく綺麗ね・・。」

私はその小さな光に見とれていた。
まるで現実世界じゃないみたい。
同じ京都なのに・・少し山に入っただけでこんなに違う・・。
光り輝くその黄色い小さな光に・・
私は心がとても暖かくなった。

「こちらの世界に来てから、私も初めて見ました。
・・・・なかなか良いものですね。」

そういって頼久さんは、ふわっと私を後ろから
抱きしめた。

「ありがとう、頼久さん。」

後ろから回された腕に、自分の腕を重ねて
腕を握る手の力を・・少しだけ強くした。

ささやかだけど・・ありがとうを込めて・・・。

私の希望をかなえてくれてありがとう・・頼久さん・・

頼久さんの腕に自分の腕を重ねたまま・・私はそう思っていた。

Fin


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