交配・実生の実践講座


ここでは「彩の華」流の交配から実生・播種までの行程をご紹介したいと思います。
ここで紹介します方法はあくまで当園のやり方であって、それが全て正しいとは限りません。
あくまで御自身の交配のヒントとしてお役立ていただければ幸いです。

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《交配の実践》



1.雪割草の魅力は何と言っても交配による新花の作出です。自分の理想とする花を頭に描いたら、早速材料集めです。この花のアノ部分やコノ部分を取り入れたいと思ったらどんどん交配してみる事です。ここではごく普通に行われている交配の仕方を復習してみましょう。理想の花を作り上げるための第一歩です。






天地♂毛無し素心花・西山産



2.交配したい二種類の花を用意します。今回は雌花に「西山産・毛無し素心花」を選び、そこに雄花の「天地」の花粉をつけて「青軸毛無しの色花」作出を理想とした交配を試みてみましょう。







3.雄花に使う花に花粉の吹いている事を確認したら、オシベをピンセットで抜き取ります。この場合、オシベは一度に沢山外さずに、1本か2本づつ使うと色々な交配に使用することが出来ます。特に力の入れている花の花粉は大切に使用しましょう。三段咲きや唐子咲きなど花粉の吹きにくいものはオシベを切断して花粉を吹かせます。
秘技・三段咲きの花粉吹き



4.ピンセットで外したオシベを♀花のメシベに叩く様にして花粉を受粉させます。メスの花はオシベの花粉が吹く前に交配するか、或いは交配する前におしべを必ず取り除いておきます。♂花のオシベが多いものは、数回繰り返して交配すると良い結実が望めます。






5.交配が終了したら必ず、交配番号や交配の目的を示したタグをつけて起きましょう。しっかりとした目的の花を交配するときにきちんとしたデータは必要不可欠です。長い交配名の場合は、ノートなどにデータを整理して、わかり易い番号等で保存しておくと何かと便利です。



6.交配が終了したら、その日の潅水は頭からかけずに株元からそっとかけてあげましょう。受粉には最低でも半日以上を要するので、頭から潅水するとせっかく交配した花粉が流れてしまいます。又、交配は暖かい日の日中に行う事が好ましく、最低でも18度〜20度以上ある日を選びたいものです。更に理想としては、交配したその日は直ぐに寒いところに移動をせずに、比較的暖かいところでじっくりと受粉を促してあげたほうが後の結実が良い様に思います。


《採種の実践》




1.交配後、15日から20日ほどで結実した種子が確認できます。根元にふくらみが見られたら結実していますので、花茎を傷つけないように注意しましょう。






2.花後に結実した種子を良く見ると、花柄の残りが付いている事がしばしば見受けられます。この時期は新葉の成長が盛んな時期ですが、低温期の風のない多湿時に発生する「灰色カビ病」に注意が必要です。古い花柄はカビの発生の原因となるのです。







3.種子の結実を確実なものにするためには、必ず種子の周りについた古い花柄や枯れたシベの残存をピンセットなどで取り除いて、種子を常に清潔な状態に保ちましょう。






4.更に1週間ほどで種子がしっかりと膨らんできているのが確認されます。雪割草の種子は未成熟な状態で落下を始めますので、この状態からは片時も目が離せません。毎日、確かめるように種子に軽く触れてみて、パラパラとほぐれてきたら採種をします。数のある場合はとても全部を見切れないので、袋などをかけて種子を自然な状態で落下させるのも方法の一つです。





5.結実した種子に袋をかけた状態です。袋はパッチつきのビニール袋の一番小さな「A」サイズのものを使用します。それでもやや大きく、そのまま袋を掛けると重みで花茎が折れるので、袋の下を1/3〜1/2程カットしてセロテープで貼り付けます。又、ビニールは通気が悪く直ぐにカビが生えるので、袋の横全面を剣山で穴を開けて袋の中が蒸れない様に加工をします。





6.鉢全体に袋をかけた状態です。とても賑やかです。潅水で袋の中に水が溜まりそうな時は、袋の底にほんの少しハサミ等で切れ込みを入れておくと中に水が溜まりません。同じ交配のものは、一つの袋に数本の花茎を入れてもかまいません。






7.袋の中に種子がこぼれたら、花茎を一本一本切って整理しながら袋の中に種子を落とします。袋の中でカビが生えていたら速やかに袋を開けて、元気な種子だけを分けて別な袋に入れてあげましょう。






8.採種した種子袋は、袋が乾いている事を確認して速やかに密閉できる容器の中に入れて保存します。この時にビニール袋や種子に水が掛かっていたら容器の中は多湿になり直ぐにカビが生えてきます。種子袋は必ず、肌で感じる程度に軽く乾かしてから保存します。




9.容器に入れた種子たちはなるべくなら採り蒔きをするのが理想ですが、なにぶん数が多いと直ぐに全部を蒔くことは出来ません。その場合は完全に密閉できる容器に種子を入れて、蓋をテープで巻いて空気に触れないようにして、冷蔵庫の「野菜室」等の常温のところで保管、毎日蒔く量だけを取り出すと種子の痛みもなく、長期にわたって保存・播種が可能になります。





《タネ蒔きの実践》



1.種子は採り蒔きでも保存蒔きでも何れの場合も発芽は翌春となります。その事を踏まえて播種後の置き場や管理を考えないと、肝心の発芽時に苔が生えて芽が持ち上がらなかったり、せっかく発芽した芽がなかなか育ちが悪かったりすることがしばしば有ります。「蒔いたタネがそのまま育って大きくなる」という事を忘れずに「蒔き床」を考えましょう。





2.蒔き床を作ります。当園では実生苗をなるべくゆったりと育てたいので、容器は3.5号(10.5cm)のプラ鉢を使用します。用土は鹿沼土(中粒)、日光砂(桐沼砂・中粒)、軽石砂(小粒)を等分配合して微塵を抜きます。コンポストの中程にマグァンプKの大粒を10〜15粒程入れて発芽後の元肥とします。





3.はがきを二つ折りにして、その上に種子を袋から出して広げます。この時、未熟な種子やゴミはなるべく取り除きます。











4.ハガキの縁をトントンと叩きながら、まき床に種子を均一に蒔いていきます。種子は余り密蒔きとせずに3.5寸の鉢に30粒前後位までがよいでしょう。






5.種子を蒔き終わったら軽く覆土をします。覆土は多少種子が隠れる程度として余り多くかけません。採り蒔きの場合はカビが生えやすいので、種子を蒔いたあと直ぐに覆土はせずに2・3日してから覆土をかけてあげます。







6.種子を蒔き終ったら底から抜ける位にたっぷりと水を掛けてあげましょう。









7.完成した蒔き床を並べます。種子は来春までは発芽しません。明るい所に置くと蒔き床に苔が生えて、肝心の発芽時に芽を持ち上げられなくなることがしばしばあります。来春まで苔の発生を防ぐためにムシロやゴザ等で覆いをして陽の入るのを防ぎます。




8.種子はネズミやトリ等に食害されることがしばしばあります。蒔き床の表面がデコボコしていたら要注意です。予防の為に蒔き床の上からバイデートを軽く蒔いておくと匂いで寄って来ないかも知れません。

交配マスターになるための心得!!

1.理想の花を考えて目的を持った的を絞った交配をしましょう。
2.目的にあった親探しから始めましょう。
3.親株は山木なら産地、実生なら最低限交配の系統がわかる花を使用しましょう。
4.とりあえず同じ系統や似通った芸風の花を交配して見ましょう。
5.遺伝の仕組みを知りましょう。メンデルの法則を覚えましょう。
6.形態の遺伝、形質の遺伝、色の遺伝等、各方向からの結果を見てみましょう。
7.一度に答えを出そうとせずに、時間を掛けて取り組みましょう。
8.記録はきちんとつけましょう。
9.まずは作場作りから、栽培環境を整えましょう。

1年目 2年目 3年目

左から発芽1年目・2年目・3年目の苗です(写真クリックで拡大します)。当園では発芽後のジベレリンやホルモン等の使用は一切行っておりません。特別、人より早く咲かせる必要も無く、又、お客様に健全で生育の良い苗を、常に一定の水準以上のレベルでお届けするのがプロの仕事と考えておりますので、それらを使用する必要もありません。安心してお求め下さい。
(交配に関する一切の質問はご遠慮ください。一から人に聞くよりもまずは自分でやってみることです。わからない部分は調べてみて、どんどん頭の中に知識や情報を吸収しましょう。人に聞くのはそれからでいいと思いますよ。)

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