『青春を山にかけて』 植村直己、著
 山を始めたころに読んだ本です。植村直己の飾らない人柄がにじみ出てます。
やりたいと思ったことを行動におこす能力には驚かされるばかりですが、それを全然嫌味を感じさせずに読ませるのもすごいと思います。

 傲慢さとか征服欲とかの臭いを感じる本を読むと、いくら山行内容がすごいものであっても、心が醒めてしまい本に引き込まれることはないのですが、彼はとてつもないことをしている割には、けれん味もなくあっさりと書かれているのが不思議であり魅力でもあります。 彼の謙虚さがそうさせるのかもしれない。自分の失敗や弱いところを包み隠さずさらけ出す勇気が読者をグイグイと彼の物語に引き寄せるのでしょうか?

 タイトルにある通り、正に植村の青春が詰まっています。山に興味がない人でも、「青春記」として充分読み応えあります。夢と希望を実現させるために単身日本を飛び出し、金なし語学力なしでも、困難を乗り越えていく意思の力に圧倒されます。個人的には登山の描写よりも、そこにたどり着くまでに悪戦苦闘している部分が好きです。

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