『群馬の山歩き130選』 上毛新聞社

 まだ山歩きに目覚める前に初めて買った山のガイド本です。学生時代、群馬の山奥の村で民俗調査実習をしていたことがありました。その帰り道、高崎の本屋で見かけて手にしたのです。
山歩きなどしたこともない当時の私が、なぜ山のガイド本を買ったのか?今もって不思議です。

 この本は、昭和60年に『群馬の山歩き80選』として初版発行したものを増補改訂して、平成2年に刊行されています。だからもう10年以上も前の本ということですね。道理で手垢に汚れているわけです。登山道などは今の状況とは大分違う部分もあると思われ、そのままこの本をガイドとして山に行くことは今はもうなくなりました。

 いまどきのガイド本のように、きれいな写真を多用しているわけでもなく、詳細な地図や参考コースタイムが記されているわけでもありません。それでも、初期の山歩きには結構役に立ってくれました。各コースの頁には地図ではなく、尾根筋や目印が印された概念図があるのみです。その代わり、国土地理院の地形図で該当するものが示されています。地形図と概念図を見比べながら登れば、読図能力も養われるわけです。
 詳細な地図つきのガイドはそれなりに手ごろで、それだけを見ていればそれなりに山を歩けてしまいますが、読図の力はつかないと思います。その点、『群馬の山歩き』は取り付きにくいけれども、自分で考えながら歩くことを教えてくれました。

 最近、関越道のあるSAで、上毛新聞社の同じシリーズのガイド本が出ているのを発見して、思わず買ってしまいました。『山歩き読本』と『野山を歩く100コース』です。後者は群馬のあまり知られていない低山・丘陵・里山などのガイドで、面白いものです。東京ではなかなかお目にかかれません。
 近頃は雨後の竹の子のように、山の奥地にも「道の駅」ができていますが、そういうところでも、地方出版社の本を老いてくれたらいいなあと思います。地元の農産物もいいのですが、地元の文化の発信地としても機能してくれたら、とてもうれしいです。

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