まかせてみること(その1)
(4月24日 6号)

学級朝会の後,時間があると,ゲームや百人一首をしています。
先日も百人一首の用意をして,さあ始めようとした時,ストーブの石油がないことに気づきました。
そこで,ちょっと不安ながら,
「石油をとりに行くから,だれか代わりに読んでいてくれないかな。」
とだけ言って,すぐに教室を出てみることにしました。

百人一首は,二人一組のチームになっていて,どこも勝敗にこだわっていますから,一人抜けて,読む側になると,その組は一人で二人と戦うことになります。
私は意識的に一言言っただけで,すぐに教室を出ました。
『多分,まだ読んだことのない読み札を一人で前に出て読むようなことはできないだろう。教室に帰って,だれも読み手が出ずにザワザワしていれば,それはそれでよし。そこからまた「協力」の意識化をしていけばいい。』
と思っていました。

さて,そのような覚悟を決めて教室に帰ってみると−−−−

                         (つづく)


(通信枠外の一言)
体育でフットベースボールをしていた時,守備をしていた○君は,飛んできたボールを横っ飛びでナイスキャッチ! かっこよかったなァ。







まかせてみること(その2)
(4月25日 7号)

(前号の続きです)
石油を入れに行くことは,百人一首をした後でもよかったのです。
実際,最初は
『先に百人一首をすませてから入れに行こう。』
と思いました。
しかし,
『教師の過保護がクラスを成長させるとは限らない』
と以前から考えていましたし,(と,言っても,私はどちらかというと過保護的になってしまうことが多いのですが)「協力」を体験させるには,そういう「場」を与えていかなければなりません。
何もかもおぜん立てされた「平和的な状況」の中より,「ちょっと困った状況」の中でこそ,本物の力が自ら育っていくように思います。
とにかく,そんな訳で,子どもたちに「後はまかせる」ことで,出てみたのです。

そして,帰ってみると,案の定,誰も前には出てはいませんでした。
う〜ん,ま,いっか,と気を取り直そうとした瞬間,

「先生,もう済みましたよ。」

の声−−−−。
                         (つづく)


(通信枠外の一言)
フットベースボールでは時折,高〜いフライが飛んでくることがあります。昨日,そんな球をガッチリキャッチしていたのが○○○さんでした。







まかせてみること(その3)
(4月26日 8号)

(前号の続きです)
たかが百人一首。
ほんのお遊び程度のゲームに過ぎません。
それほど大げさなことではありません。
されど・・・

1年間なんて,学校生活なんて,こんな小さな活動の集まりで,あっと言う間に過ぎてしまうのです。
その一つひとつに意味を持たせ,いくらかのこだわりを持って,意識的に行うか,形だけつくろって何となく済ませていくかでは,やはり,ちょっとは子どもたちの成長に違いが出てくるはず・・・と思っているのですが。

さて,私がいない間に百人一首を読んでくれた人は,

−−− もし,この通信を茶の間で家族といっしょに読まれている家庭では,もうとっくに,誰が読んで,どうなったかは子どもさんから聞かれて知っておられるはず。実はそういう親子の話題づくりの一つにでもなればというのが,この通信のねらいでもあります −−−

その人は,○○君でした。
しかも○○君とチームを組んでいた○君は一人で戦い,何と二人を相手に勝っているのです。
ちょっとドラマチックです。

そして,このドラマには,もう少し裏があります。

                        (つづく)


(通信枠外の一言)
「新学期になって,家でもよく話すようになりました。」 家庭訪問で,○○君について,うれしい話を聞かせてもらいました。







まかせてみること(その4)
(4月27日 9号)

(前号の続きです)
人が困っているのを黙って見ていることができない。
それが○○君です。
正義感のかたまり,意欲のかたまり,人のために一肌脱ぐことのできる純粋な心の持ち主なのです。
【誰かが出て読まなければならない】
そういう状況の中で,やはり,やってくれたのは,○○君でした。
そして,自分が一人で対戦することになっても,きっと笑って○○君を送り出したであろう同じチームの○君。
まずこの二人がいてくれて,ドラマのプロローグが始まります。

次に,このドラマが進行するには,二人以外のクラスの人たちの協力が必要になります。
「教師」という見張り役がいる時は,おとなしくしていても,見張り役がいない時に,しかも「遊び」で「勝負している」時は,つい,わがままが出たり,文句が出たりするものです。
もし,クラスの人たちの中にそういう人がいたら,せっかく自分からやる気になって,難しい読み札を読んでくれている○○君も,最後まで読めなかったかもしれません。

このドラマの裏には,○○君のファイトと,それを「ありがたく」思える心を持ったクラスの仲間との「心のつながり」=「協力」があったと思います。


(通信枠外の一言)
「帰ったらまず宿題をさせます。」「字については厳しく言っています。」 ○○さんのお母さんから家庭訪問でお聞きしたことです。お忙しい中,できそうでできにくい,大切なことだと思いました。




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