みんなに・・・
     「みんなにきくんだけど。」

                       ○ ○ さん 

道徳の学習中に,○○さん(3年生)が,発表の中で,急に質問を出してきてくれました。
その時の様子を再現してみます。

      (教材文)
        「らくがき」
 
 恵子は,学校の帰り道,家の近くにある公園で,弟の正と何人かの男の子が,コンクリートのかべにらくがきをしているのを見つけた。
「うわあ,上手にかけているね。」
恵子の言葉に弟たちは喜んで,わいわい言いながら,次から次へとマンガをかき加えていった。

 明くる日,恵子が公園の前まで来た時,トイレの近くにクレヨンが散らばっているのが見えた。
−−正たちのだわ。後かたづけもしないで・・・・。
 落ちているクレヨンを拾い,かべのマンガを見た。弟にしてはけっこううまくかけていると恵子は思ったが,少しかき足して見ばえをよくしてあげた。

 家へ帰ると,弟を連れてまた公園へ出かけた。トイレの前まで来た時,一人のおばあさんが,かべのらくがきをていねいにぞうきんで消していた。
 恵子は「はっ!」として,弟の手を引っぱるようにしてその場をはなれた。
 家に帰ると「ただいま。」も言わずに,自分の部屋に入った。宿題をやろうとしたが,さっきのおばあさんのすがたが目にうかんできて,全然できなかった。
 恵子は,じっとしていられなくなった。
「お母さん,わたし,ちょっと出かけてくる。」
 ぞうきんを手にすると,恵子はむちゅうでかけだした。

 「おばあさん,ごめんなさい。後はわたしがやります。」
恵子はおばあさんにそう言って,力いっぱいらくがきを消し始めた。
 やっと消し終わった時,おばあさんはにっこり笑って,「ありがとう。」と言ってくれた。おばさんのやさしい言葉に,恵子のなみだがあふれていた。



教 「らくがきを消しに行った恵子は,心の中で何と思っているでしょう。」
児(○○さん) 「(らくがきを消すことは)宿題をするより勉強になると思っているんだと思います。」
児 「自分のせいで,おばあさんが消すことになったと思っていると思います。」
児 「自分が書いたんだから,自分で消そうと思っている。」

ここで,○○さんの質問が出ました。

「みんなにきくんだけど,らくがきをしていたのは,恵子の弟たちでしょう?」
「ハイ。」(他の児童)
「だったら,恵子は,弟も連れて消しに行った方がいいんじゃないですか。」

この質問は,とてもレベルの高いものです。
なぜなら,この質問に対して,

児 「それは,弟に注意できなかった自分自身の問題だと恵子が思ったからです。」
児 「自分も書いたのだから,自分が悪いと思っているからです。」

と,また一歩深く考え合うことができたからです。


(通信枠外の一言)
「先生,人は何のために生きているんですか?」Hさん(4年生)の一言です。一人ひとりが自分で答えを見つけていくしかない問題です。




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