51,「サクラソウ(さくらそう科)」



 サクラソウは初夏を彩る可憐な野草です。サクラに似た花の形からサクラソウと名付けられました。普通は山間の湿地に生えていますが,今では限られた場所にしか自生していません。
 ある初夏の日,友達と朝から谷を歩き回り疲れ果てて谷川のたもとに座り込んだ時でした。目の前に真っ白なサクラソウが咲いているではありませんか。サクラソウは普通,紅紫色の花です。ところが,目の前のサクラソウはまさしく白花なのです。初めて見るシロバナサクラソウを写真に収め,そっとしておこうとその場を後にしました。
 次の年のことでした。去年のサクラソウはどうなっているだろうか。胸をときめかして訪ねてみました。するとどうでしょう。去年サクラソウが咲いていた場所は山からの土砂で埋め尽くされていました。しまったことをした。去年発見した時,一株でも持ち帰っておけばよかったと思いながら,土砂を取り除きにかかりました。しかし,莫大な土砂を取り除くことはできません。全滅してしまったのです。しまったなあ。
 あきらめて帰ろうとした時,小指の爪ほどのサクラソウの葉を見つけました。どうか白色のサクラソウが咲きますようにと育てて3年,今年シロバナサクラソウが咲いたのです。嬉しくて嬉しくてなりませんでした。美しく咲いたシロバナサクラソウ。少しずつ増やして元の谷に返しにいこうと夢見ています。やはり地域の自然は素晴らしいですね。
                                    中西 正一 先生


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