53,「ソバナ(キキョウ科)」



 この町の限られた場所に見られる薄紫色の可憐な花です。ソバナの花は恥じらいを含んだ山の少女が微笑んでいるようです。伸びた茎は高さ1メートルにもなります。茎の上のほうは幾つかに枝分かれして鈴なりのつぼみをぶらさげ,やがてつりがねのような花を咲かせます。あまりにも可憐なので一つ枝を折って持ち帰り花瓶にさしましたが,すぐにしおれてしまいました。水揚げはよくないのですね。
 ソバナは,湿っぽい岩肌のようなところに咲いています。道路工事などで岩肌にふきつけが施されると滅びてしまいます。私は,毎年のようにソバナの種を採取しては,ソバナの咲いている周りの岩肌にばらまいています。でも,なかなか増えてはくれません。そのうちに,道路工事でふきつけがされるのではなかろうかと心配しています。
 ソバナと同じキキョウの仲間の中で誰もがご存じの花はキキョウですね。つぼみをポンと割ったり,キキョウの花弁にアリの汁をつけて花の色を変えたりした経験を持たれている人は多いことでしょう。
 この辺りでは,キキョウの他にもサワギキョウ・ヤチシャジン・シデシャジン・ツリガネニンジンなどたくさんの花を見ることができます。
 季節と共に変わりゆくこの町の自然を思う存分楽しみましょう。
 自然は人を育て
    人は自然を守る

                                   中西 正一 先生


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