74,「エサキモンキツノカメムシ」(ツノカメムシ科)

 カメムシの中でもひときわ目を引くのは何故でしょうか。よく見ると背中にある模様がハートの形をしていることに気づきます。人の心を表すハート模様が意外にもカメムシにあるのですから滑稽です。また,このカメムシの名前の由来も滑稽です。工サキ=発見者の名前,モン=紋,キ=ハート紋が黄色,ツノ=肩の部分が角のようにとがっているカメムシという訳です。
 このエサキモンキツノカメムシはミズキ,ハゼノキ,サンショウなどの木にすんでいます。母親は卵から一齢幼虫になるまで子どもを大事に保護します。このように,カメムシのような虫が子どもが自立するまで保護するのですから驚きます。この美しいカメムシも臭い悪臭を出します。この悪臭はカメムシの胸の部分にたくわえられています。そして,敵が近づくとお尻にある管から出すのです。これも自分をまた子どもを守るために備わった武器なのです。
 カメムシは人間からは嫌われ者ですが,工サキモンキツノカメムシのように自然が織りなす美しい模様を持ったカメムシもいます。黄金に輝くカメムシもいます。また,子どもを命がけで守るカメムシもいます。これらカメムシの姿から人間にとって嫌な存在,邪魔な存在の中にもすばらしい価値があることに気づくのです。
  
                                    中西 正一 先生


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