73,「キツネノカミソリ」(ヒガンバナ科)

 八月〜九月にかけて,町内の各地に見られる花です。この花を見ていると口元がとがったキツネに見えてきます。そして,薄暗い中に黄赤色に群がって咲くこの花に圧倒され,キツネにだまされたような気持ちにもなってきます。「美しいなあ」と言うより「気味悪いなあ」と言った方が良いかもしれません。この花は,有毒植物としても知られているので,採取して飾る人も少ないようです。
 ところが,この花には面白いこともあります。晩秋から初夏にかけて見られていた葉は夏には括れてしまいます。葉が枯れてしばらくすると花茎を出し,花を咲かせるのです。だから,夏に草刈りをしたとしても刈り取られる心配はありません。それもそのはず,草刈りをする頃には,葉は枯れ,花芽はまだ地中に潜んでいるのですから。
 もう一つ,面白いことを見つけました。それは,白花のキツネノカミソリがあることです。赤い花があれば白い花があると言われますが,めったにない白花を見つけたときは,正にキツネにだまされた思いでした。
 以前にも書いたことがありますが,これらの花は,球根で増えるので,春から秋にかけて咲く花の球根を違えて植えてみてはどうでしょうか。スイセン…ユリの仲間…ナツズイセン…キツネノカミソリ…ヒガンバナというふうに。
 季節と共に変わり行く花の風情を味わうのも面白さの一つです。
 
                                    中西 正一 先生


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