アドレノメデュリンは、93年、寒川、北村らによってヒト褐色細胞腫から同定された52個のアミノ酸からなるペプチドです。副腎(adrenal gland)から見つかったということでアドレノメデュリン(adrenomedullin)と命名されていますが、主として血管から分泌され、血管を拡張させる働きをもつ血管作動性物質です。
アドレノメデュリンは、血管をはじめ、多くの組織で産生されます。アドレノメデュリンは当初、血管拡張作用を有する物質として注目されましたが、その後の研究から、細胞の遊走、分化制御、内皮細胞再生、抗炎症作用、体液量調節作用、強心作用など多彩な生理活性を持つことが分かってきました。研究は多領域にわたり、過去10年間で関連論文は1500本以上報告され、臨床応用に向けて非常に注目度の高い物質の一つです。
私たちはこれまでアドレノメデュリン遺伝子を血管特異的に過剰発現するトランスジェニックマウスやアドレノメデュリン遺伝子のノックアウトマウスを樹立し、その生体における役割について詳細に検討を行ってきました(Circulation 2000;101:2309, Circulation 2001;104:1964, Circ Res. 2002;90:657)。
アドレノメデュリンノックアウトマウスのホモ接合体では、卵膜上を走る卵黄動脈の発達が未熟であると共に、血管壁の構造自体に大きな異常を認め、胎生14日目に、びまん性出血や胎児水腫が原因で致死である事を報告しました(Circulation
2001;104:1964)(左図)。
更に私たちは、アドレノメデュリンノックアウトマウスのヘテロ接合体を用いた検討から、AMが発生の段階のみならず、成体においても、血管新生に関わっていることを最近報告しました(Circ Res. 2004; 95: 415)。