2017年09月03日
富士宮口 天候 晴れ 気温4度 (登頂時) 風 5ノット
登り 9時間00分(仮眠2時間30分)
下り 2時間45分
「今回は今までで 一番つらかった~」
今年の夏は雨の日が多く、7月8月のシーズン中に行くことが出来ず、今年は諦めかけていたのですが、
よくよく見たら今年の閉山は9月10日とのこと。今日が最後のチャンスです。
スタートは9月2日(土曜)。
小笠原で停滞していた台風も北東に移動開始。2日の午後からは天気も回復しそうで、行くなら今しかありません。
お昼の天気図見てGOを決定。
早めに仕事を終え、急いで車で富士宮口のふもとに向かいます。
さて、今回の予定は
1.おそらく久しぶりの晴天で、富士山は激混のはず。
ツアーの多い吉田口は避けて、比較的少ない富士宮口を選択。
2.交通規制で5合目までは車で上がれないので、2合目に停めてシャトルバスで上がる
最終便は20時。5合目で少し高度順応させ22時にスタート 。5時に登頂しご来光。
3.その後、剣ヶ峰に行き7時に下山開始。
11時頃のシャトルバスで5合目から2合目に行き、中央道の渋滞前に帰宅。
4.このところの運動不足と、気温の低下でキツイときは、8合目で仮眠。
日の出を待って体を温めて再出発。(2年前の教訓)
5.下山は、富士宮が混んでいたら、御殿場から宝永山火口経由で富士宮へ。
最初はこう考えていましたが、駐車場についたらいきなり予定変更。
会社から2時間。19時前に駐車場についてシャトルバスのチケットを買いに行ったら 、窓口のお姉さんが、
「最終は20時ですが、満員で乗れないこともありますので、19時半のバスに乗って下さい」
「そんなに混んでますか?」
「昨日からかなりの人数が上がってます。上もいっぱいだと思います。」
混んでるのは覚悟していたが、ここまでとは・・・
予定を繰り上げ19:30のバスで5合目へ。
「こんなに混んでる5合目は初めてだ・・」
5合目に着くと駐車場には、死んだような顔をして、下山のバスを待つ方々。
今日は午前中は雨だったようで、昼から登っておりてきたのでしょうか。
どう考えても1台のバスには乗れない数です。
展望台も、お姉さんの言葉通り とにかく混んでる。
高度順応させる為に、座ろうと思っても周りは人だらけ。
売店前の階段で座っていたら、「9時で建物は閉めるので出て下さい」との事
「・・・めんどくさい もう上がろう」
21時にスタート。
いつものように 汗をかかないようにゆっくりと6合目を目指します・・が・・
「なんか体が、おかしい・・・」
普段は「わざと」ゆっくり歩くのですが、今回はゆっくり歩いても息切れし、汗をかいてしまう。
いつもは秩父あたりの山で数回歩いてから富士山に登るのですが、今回はいきなりの富士山。
5合目での仮眠もしてない。22時はいつもなら酒飲んで寝る時間。
毎回7~8合目あたりで来る「来なきゃ良かった・・・」が
今回最短記録で5合5勺で来てしまいました。
「青春18切符が余ってたから、水郡線の鈍行旅に行けば良かった」
普段の1.5倍 30分で6合目。
いつもなら、ここから8合目まで2.5時間。頂上までさらに2.5時間。
「今日はキツイぞ、8合目の体調で、戻るかどうか考えよう」
汗をかかないように、心拍数を上げないように、だらだらと歩きます。
後ろからは最終バスで来た登山者が、どんどん上がって追い越されます。
上を見ると、ヘッドライトの帯が頂上まで続いています。
振り返ると、雲海の間に街の明かりが見え、空には月と満天の星。
新7合まで60分。本7合まで70分。さらに60分。
8合目に着いたのは1時前。
普段より1時間遅いペースですが、今回はこれで正解。
ここでしばらく休憩し、行くか戻るか考えます。
「2年前の体調不良の時と比べ、今回はまだ大丈夫だな」
200円払って山小屋のトイレで爆弾投下。
体を軽くして、防寒具のダウンを着込んで、さあ出発。
「おそらく上は気温3~5度。寒ければ9号目で日の出待ちで待機しよう」
だらだらと歩いていると、後ろからにぎやかな団体さんが追い付いてきました。
おそらく8合目の山小屋に泊まったツアー客が、頂上でのご来光目指して上がってきたんでしょう。
9合目到着は2:30
実はこのあたりから登山道は大渋滞。
「剣ヶ峰行く時間が無いから 上がったらご来光を先に見まーす!」
と、ツアーのガイドさんが グループに叫んでいます。
ペースが遅くなり、歩くのは楽なのですが、立ち止まる時間が長く、体が冷えすぎます。
着ているのは、長袖シャツに長袖の薄いダウン、それにカッパの上着の3枚。
普段なら内部から温め、ダウンで温まるのですが、歩かないので寒い!
9合5勺に着いたのは4時。
上を見ると、ヘッドランプの明かりが、登山道で止まっています。
「今日は剣ヶ峰どころか、ご来光間に合わないかもしれませーん!」
ツアーと同じペースなので、ガイドさんの解説をタダ聞きできます。
「こっちも(富士宮口)も多いけど、吉田口はこっちの3倍上がってます。
みんな頂上でご来光待機してるから、頂上がいっぱいで直前で動かなくなるんでーす」
「9合5勺では休憩しません、このまま上がりまーす」
日の出まであと1時間。
ガイドさんは登ることに決めたようです。
さあ自分はどうする?
どうする と言うのも、この富士宮口は、山の陰になって地平線からの日の出は見られないのですが、
8月後半になれば日の出の位置が北東から東に移動し、地平線から昇る太陽を見る事が出来ます。
しかし、この先9合5勺から上に行くと、頂上までの間、岩の陰に隠れ見えなくなります。
ガイドさんは帰りの時間が有るので、賭けに出て上がることを決めたようですが
私はここで日の出を待つことにします。
実は、待機を決めたのは、日の出だけのせいではありません。
体調がとんでもなく悪くなってます。
「とにかく寒い!」「眠い!」「吐き気がする!」「幻覚が見える!・・・・」
歩いていても足元の岩が字に見えて、必死で読んで、ふっと我に気が付きます。
いままで仮眠なしの富士登山は3回目。
3回とも同じ症状のようで、毎回学習しない自分が情けないです。
「上がるどころじゃない、冷静に考えたらすぐに下山するべきだ」
いつの間にか、2年前に体調不良で迷った時以上に、悪くなっています。
『懲りない中高年の遭難』 『弾丸登山を無くすべき』
明日の新聞の見出しがよぎります。
『ジジイは外に出るな』 『救助費払えゴルア!』
2チャンネルのコメントも頭に浮かびます。
すっかり判断能力も無くなりました。
下山の判断時期はすでに過ぎており、動く気力も無くなったのですが、あと1時間で日の出です。
以前も太陽を浴びたら劇的に回復したので、日の出を待つことに。
山小屋の壁際に腰をおろし、膝を抱えて仮眠します。
寒さの震えと、幻覚でハッと目が覚め、また眠ります・・・・・
リュックの中のレスキューシート(畳1枚くらいのアルミホイル)を出そうかと考えているのですが、それすらめんどくさい、考えがまとまらない。
このまま@#$&・・・固まって%&&・・・寝る+#% *・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
「明るくなってきたぞ!」
回りで叫ぶ声で目が覚めました。
段々と東の空が明るくなり、今にも太陽が出そうですが、今日は雲海が有るので、太陽を拝めるのはもう少し時間がかかりそうです。
そして・・・
「出た出たー!」
雲海の上に太陽が顔を出しました。
一瞬、富士の山肌が赤くなりなす。
「よし歩ける。下山しよう・・・」
反省点の多い今年の登山。
「来年から富士山は止めよう、18切符で鉄旅しよう」
そう考えなから 9合5勺から少し下ると、太陽光で光合成が始まったかのように歩く気力が出てきます。
「なんだ? 歩けるぞ?」
体温も上がり仮眠したおかげで、体のスイッチが朝モードに切り替わり普通に歩けます。
振り返って上を見ると、頂上の鳥居が見え、渋滞も無くなっています。
「行けるか?」
立ち止まって考えます。
「今の体調なら行ける」
「ユックリ歩いたので足への負担も無い」
「渋滞の富士宮へ下りるより予定通り御殿場下山道から、宝永山経由で富士宮に帰る方が良い」
「帰るか・・・登るか・・・」
高山病で判断能力が無くなっているので、何度も同じ事を考えて、石段を降りたかと思えば、振り向いてまた登ったり。
壊れたレコードの針のように、フラフラしながら行ったり来たり。
「止めた止めた 登るの止めた・・・じゃなくて止めるの止めたあ~」
結局 酸欠の頭は、再度登ることを決断しました。
もう一度9合5勺の山小屋を、何事も無かったような顔をして通過。
ジグザグの瓦礫道を10往復したら頂上の鳥居が有るはず。
上を見ないで、半歩づつゆっくり歩きます。
次に体調が悪くなったら迷わず下山のつもり、呼吸を整えながらジワジワ上がります。
上を見ないでじわじわ歩いて行くと、すぐ先で大歓声が。
若い女性のグループが、頂上の鳥居で万歳をしています。
「ついた~」 一礼して鳥居の端っこをくぐると、なんだか涙が出てきます。
時間は6時。5合目から9時間もかかってしまいました。
「苦しかったぁ~・・・」
「あそこで帰ったら、来年は富士山でなく、18切符になってたな」
「今年は、お賽銭500円にしよう」
・・・・・・
頂上は思った通り大混雑。
剣ヶ峰は大行列で、写真撮るまでに30分以上は並ぶようです。
しかたありません、今回はこれで良し。7時には下山開始したいので、お参りだけして帰ります。
「神様、今年もよろしくお願いいたします」
「今回は、判断力が欠落しておりました。仕事ではこんなことが有りませんように」
500円のお賽銭が効果あるでしょうか。
さて、登山は上りだけでなく下りも「登山」
体力を残しておかないと、あとで泣きを見ます。
今回はゆっくりだったので 筋肉の疲労は無く、富士宮の石段を降りる自信はありますが、
予想どうり、下山道は大混雑。頂上の鳥居から渋滞中。
当初の計画通り、御殿場ルートから宝永山経由で帰ることにします。
ガラガラの御殿場ルートを下りていくと、昨日のガイドさんがツアーを引き連れて下りていました。
下山道が混んでいるので、このルートを選んだようです。
「今朝はご来光間に合いましたか?」と聞きたかったのですが、止めておきました。
御殿場ルートは、宝永山の火口に一旦下りてまた登るので まっすぐ富士宮で下りるより距離が長いのですが、空いているので気分は楽です。
5合目に着いたのは10時過ぎ。
あのまま渋滞の富士宮を下りるのと、どっちが早かったでしょうか。
すぐにバスに乗って2合目まで下りて帰宅したのは13時。
中央高速の渋滞に巻き込まれないうちに帰りましたが、運転中はとにかく眠い。
高速から見る山の樹木は、また漢字に見えて、読もうと思って凝視してしまいます。
愛車のカローラには、自動運転機能が無いのに意思が伝わったのか、気が付いたらちゃんと会社の駐車場に止まってました。
まあ、とにかく今回は 反省点の多い富士山でした。
反省① 最後のチャンスだったので 混んでるのを承知で来た。
反省② 混んでいたので5合目の高度順応しなかった。
反省③ 9合5勺で仮眠。この高さの睡眠は呼吸不足で逆に高山病になる。
反省④ いったん下山を決意したのに、また登ったこと(これは大減点)
9合5勺では、これが最後の富士登山と思ったのですが、降りたらまた来年行きたくなりました。
私の脳に学習機能が有るなら、来年は上手く登れるかな。
・・・おしまい・・・