13回目 2014年7月20日

2014年7月11日

富士宮口
天候  晴れ 後雨 後晴 気温3度 (登頂時) 風 5ノット 
登り  10時間 (雨宿り・仮眠 3時間含む)
下り  3時間30分 


富士登山 4つの敵

1. 筋肉痛
   日頃使わない腿や膝が痛くなり、毎回下りの最後で泣きが入ります...

2. 体力
  仕事の日は、1日に1,000歩しか歩かないこともあり、普段の運動不足。
  交差点の黄色信号で走っただけで息が切れます。

3. 精神力
  富士山はこれが大きい。最後はやっぱりこれ。

4. 寒さ
  7月の富士山は昼でも5度前後。風が吹くと体が凍りそうになります。
  が、私は寒さに強いらしく、Tシャツ一枚で登ることもあります。

もちちろん一番大事な天候がありますが、天気の悪い日には行かない主義なのでこれは番外。
と、今までは考えていたのですが、実は今回とんでもないことになり、この順位が逆転。
近年にない苦しい登山になりました。
 


金曜午後、職場では天候チェック。梅雨の谷間、台風が過ぎた後。土曜の朝は晴れると予想、仕事が終わった後、
新しくできた圏央道を通って東名にぬけ、御殿場から富士宮ルートへ。

富士宮は7月10日から9月10日まで、完全交通規制。
5合目へ行くには、2合目の大駐車場に車を止め、シャトルバスで行かなくてはなりません。

実はこれが問題。バスの最終は22時発。
始発は6時。今まで、私の登山パターンは、5合目の車で2~3時間仮眠し高度順応させ、1時にスタート、8合目でご来光、7時に頂上の時間割。

バスから降りても、富士宮の5合目は屋外。仮眠する場所もありません。



タクシーもあるのですが、6千円くらい・・・
昨年は、登山者ナンパして乗合で割り勘にしたのですが、今回登山者は数えるほどしかいません。

それもそのはず 「8合目から上は通行止めですけど、よろしいですか?」と、駐車場の入口で係員さんに忠告されます。

これを聞いて、「え~」と、吉田口に向かう登山者と、私のように「はーい」と返事しながら 「コッソリ柵を越えるよ」と内心思っている登山者に分かれます。

結局21時のバスで5合目に上り、信じられないほど誰もいない5合目で、ちょっと高度順応させて22:30にスタート。
このペースだと、頂上でご来光になりますが、日の出前の山頂の気温は 3度程度の予想。この出発時間の選択ミスが、長い苦しみの始まりでした。

7月だというのに、 誰もいない5合目
 

22:30に5合目をスタート。暑がりなので、Tシャツにカッパの上着を着ただけ。
少し歩いたところでヘッドライトの光に、キラキラ何かが降ってきます。...

「虫? いや雨だ」

天気予報は晴れだったのにと、スマホでアメッシュ見たら、ここだけ局地的に雨。
なんと運が悪いこと。急ぎ足で6合目の山小屋に向かい、軒下を借りて、カッパのズボンとザックカバーを取り付けます。
しかし、雨はだんだん本降りに。



「バチバチバチ!」と山小屋の屋根をたたきます。
色気を出して、ご来光を頂上で見ようと、予定より早く登り始めたため、こんなことになってしまいました。

気温も一気に下がったようで、防寒具なしでは寒く感じます。
後から来たグループと数人で、軒下雨宿りをしていたのですが、30分後そのグループはしびれを切らして、大雨の中を登っていきました。

登山なので、ほとんどの登山者は、雨は覚悟の上なのですが、私は「5合目で雨が降ったら出発しない」主義なので、軟弱に雨宿りを続けます。
1時間ほど雨宿りし、スマホでアメッシュを見たら雨雲も東に抜けたようで、雨も小降りになりました。



「よし、上がろう」
嫌な予感を感じましたが、次の7合目を目指します。富士宮は6合目から7合目が長い・・・
小雨の中、黙々と登りますがいつもより体が重い。それも当然。今年は減量は口だけ、普段も歩かず。

10日前には、風邪で熱出してダウン。まったく運動せず。今日もまた、風邪をひいたときのように悪寒がして、休憩の回数が多くなります。
まだ全体の2割程度だと言うのに・・・7合目の次は、8合目かと思いきや、「本7号」と心が折れるだまし討ち。

まあ、最初は驚きましたが、もうここも慣れました。
ゆっくりペースで8号目に着いたのが、土曜の午前3時半。

普段は3時間の距離なのですが、ペースダウンと雨宿りで5時間も経過。
本来なら、そろそろ頂上のはず。しかし立ち止まると、とにかく寒い・・・・

Tシャツとカッパでは寒いのは当たり前か。急いで防寒具の薄いダウンを着こみます。
これは 「まあ使うことも無いけど念のため」とユニクロで 1,980円で買った非常用。

それでも寒く、「アグアグアグ・・・」とアゴが震えます。座ると睡魔も襲って来て、幻覚まで見だします。
毎朝5時起床なので、普段寝るのは22時。

今回は仮眠していないので、眠くて当然です。「これはまずい・・・」
とてもこの先、上がれる体力ではありません。無理して食べた高カロリー食品も、吐き気がして体が受け付けません。

「これは・・・下りたほうが良いかもしれない・・・」




「下山しよう」 と、寒さに震えるグループが下りて行きました。

下山も懸命な判断です。...この8合目からが、本当の富士登山。
8合目まで体力3割 頂上までさらに5割 下山2割の計算です。ここで体力失うようでは、上がるなんてとんでもありません。

「よし、ここは自分も下山しよう」

下山しようと、いったんは、下山仕様に靴の紐を最上部まで結びなおしたのですが、体は冷え切って、下山する気力もありません。こんな時は、太陽で体を温めるしかありません。日の出まであと1時間。

どうせ、5時ごろに5合目に下りても、朝7時までバスは出ません。いまここで動くより、日の出を待って行動開始と決定。

以前も太陽で体を温め、体力が復活した経験があります。屋外のベンチで座って体を丸めて仮眠。周りでも「寒い寒い」と声が聞こえます。たびたび「アグアグアグ」とアゴが震え、座ったまま夢を見ます。



その時 周りから 「出た出た!」と歓声。

雲が赤くなり、日の出のようですが、ここでは水平線からではなく、富士山自身の稜線からの日の出となります。
太陽本体を拝むのには、まだ少し時間がかかります。

太陽に向かってカメラを構え、体を温めているうちに、予想通り悪寒も治まり、仮眠したおかげで、上がれるような気になってきました。

「だましだまし、行けそうだな・・・」



普段なら2時間の頂上ですが、3時間かけて登るようにペース配分考え直します。
この先はトイレもないので、今のうちに200円払って、8合目の山小屋で済ませます。

立ち入り禁止の柵を越えて、さあ、登山再開です。

ゆっくりペースで9合目に到着。
もう昨夜の苦しさはありません。それどころかゆっくり登っているので、筋肉痛も、高山病もありません。

しかし、9合5勺から上は、まだ雪が残っています。

「上はどうでしたか?」

下りてきた人に聞いてみました。

「9合5勺の上で、アイスバーンになってます。アイゼン無いと登れないので、僕は諦めて下りてきました」
事前の情報では、「シャーベット状態で、登れないことはない」 だったのですが、昨夜の冷え込みで、再度凍ったようです。

頂上は目の前ですが、先ほどの情報通り、最後の最後でアイスバーンにぶつかりました。
一見シャーベットのようですが、たたくとカチカチで、ツルツルになっています。滑ったら、9合目まで30秒で落ちそうです。

ご来光で体を温めます

雪がかなり残っています



カチカチの登山道ですが、念のためにアイゼンは持ってきたのと、今回からダブルストックにしたので、何とか行けると判断し、先に進みます。

「ガスッ!」「ザッシッ!」
アイゼンの爪を氷に立て、慎重に登ります。..
ストックも前端のゴムを外して尖らせます。吹きおろしの風にあおられ、気を抜くとスリップして滑り落ちそうです。

この間たった100mですが、アイゼンが無かったら、怖くて登れなかったでしょう。
「ほかの登山者は?」と下を見ると、ブル道に迂回しています。
「そうか、その手があったか・・・」



最後の岩場を登って鳥居をくぐると、そこは富士宮側の頂上です。

「ゴオオオオーーーーール!」ワールドカップを思い出して、万歳します。
「今日は、いや昨日は苦しかった・・・」

しかし、後半の8合から上は楽でした。不思議と体力を残してのゴールです。
いつもは満員の頂上も、ほとんど登山者は無く、カメラのシャッター押してもらう人を探すのに苦労します。

最高地点の碑がある剣ヶ峰にも足を延ばします。
ここも普段は記念撮影の順番待ちで混雑しているのに、今日は貸し切り状態。
コーヒー沸かして飲んでる人にお願いして、シャッターを押してもらいます。



台風一過の富士山は快晴。6,000ftあたりに雲海がモコモコあります。
「今日は飛べるかな?」 週末の空に雲があると、スカイダイビングが気になります。

時間は8時半。この頂上での時間が、なんといっても楽しいので、ついつい長居したいのですが、
富士山は、毎回午後からは天気が悪くなる傾向があります。

昼までには下りたいので、そろそろ帰ることにしましょう。帰りのルートは選択肢が2つ。どっちにしようか・・・


見事に誰もいない 富士宮頂上

最高峰の碑


帰りは御殿場ルートで6合目まで下りて、宝永山経由で帰ります。
来た道を帰るより遠回りですが、岩場を下りずに済むのと、登ってくる人と、すれ違いがほとんど無いので、歩きやすいと判断しました。

この御殿場ルートも、表向きは閉鎖中。案の定、途中雪が残っていましたが、日が昇って時間が経ったので、解けてシャーベットになっています。



瓦礫の道を、膝に負担が無いようにストックを突いて下りて行くと、下から短パンで駆け上がってくる人を発見。

この空気の薄い道を走って上がるとは・・・1か月後の駅伝の練習でしょうか。
吉田ルートの富士登山競争と異なり、この御殿場ルートは駅伝方式で往復。
自衛隊の選手が多く出場します。

富士登山競争も駅伝も、数年前まではTV放送されていたのに、最近はTVで見られません。残念。
1時間で8合目 さらに30分で7合目。



7合目の下で 富士山の神様「やまちゃん」とすれ違います。このあたりから、すっかり霧の中。
分岐点の「宝永山ルート→」 の看板を見落としたら、まっすぐ御殿場に下りてしまい、タクシーで駐車場に行くことになります。



5合目に着いたのは下山開始から3時間半。
昨夜とうって変わって登山口は混雑しています。昨夜、誰もいなくて払えなかった、1,000円の協力金を払います。

いつもはバス停に行く20段ほどの階段が、筋肉痛で歩け無いのですが、今回は痛くありません。
前半、あんなに苦しんだのに不思議なものです。

さあ、シャトルバスに乗って駐車場に帰りましょう。

「お腹すいた~」車の中に残してきた、メンチカツパンは、まだ大丈夫でしょうか。

協力金1,000円