6回目 2010年7月10日



2010年7月10日(土曜) 富士宮口
天候  晴れ 後 雨 気温 7度 (登頂時) 風 無風~10ノット 
登り  5時間00分 下り  3時間15分 (宝永山経由)





今回で6回目の富士山。

1回目~3回目は 「河口湖口」から。4回目は「須走口」 去年の5回目は「富士宮口」
そして今回は 富士宮口で登り 御殿場口で途中まで下り 宝永山火口を通って、富士宮に戻る計画。


予定では、9日の夜から登るはずだった富士山。天気は最悪。
天気予報見ると10日の朝まで雷雨。航空気象情報でも、低空に雲がビッシリ。
富士山どころか、外出もしたくない天気です。

「じゃあ24時間ずらして、10日の夜から登るか」

と、決断したものの、その後の予報では天候は急速に回復。

「10日は朝から晴か?」



そんなわけで、9日の夕方に急遽決断。急いで登山用品店に 携帯酸素を買いに行きます。

買うのは酸素だけの予定でしたが、ついつい登山ズボンも購入。
汗を蒸発させ、ストレッチ機能のあるズボンらしいです。

「いまから富士山行くから、急いで丈詰めして!」 と店員さんを急かします。

コンビニでペットボトル4本(登り3本下り1本の予定)
スニッカーズ等の、甘くて肥りそうなお菓子も購入。




富士宮の5合目に着いたのは10日の午前3時半。
ここは駐車場が少なく、ピーク時には登山口から3キロも下に止めさせられます。
(お盆はマイカー規制)

しかし10日朝は、天気予報が悪かった為か、駐車場の1段下に回されただけ。

見上げると満天の星と 富士山も山小屋の明かりが見えています。
予想通り天気は回復したようです。



普段なら、5合目で高度順応の為、少し休むのですが、この天気がいつまで続くか解りません。

しかたが無いので準備をして4時から登山開始。
睡眠不足と、高度慣れしていない体が、このあとどう対応するか・・・



スタート地点は高度2,400m
富士のテッペンは3,775mですが 富士宮口の頂上は 3,700mくらいでしょうか。

高度差1,300m。
自分の上昇率は毎分4mなので 所要時間は5.4時間。
ちなみに前回は6時間10分。今回も6時間のペースで歩きます。

    


 
石段や、ハイキングコースのようになだらかな登山道をりはじめて 15分。
6合目の山小屋に到着です。

「もう6合目?」 「もう5分の1?」

と思ってはいけません。

ここまでは、5合目駐車場の延長みたいなもの。
ここからが本格的な登り。上を見上げると、7合目8合目の山小屋の灯りが見えます。

振り返ると街の夜景の奥に海岸線も見えます。
海岸線からピョコンと出ているのは、江ノ島でしょうか。



本格的な登りとなり、時計に付いている高度計と、時間を見ながら 自分のペースを調整します。

今回は服の選択がよかったのか、あまり汗もかかず、寒くもありません。
上は速乾性のTシャツに、裏がフリースのウインドブレ-カー。

下は、買ったばかりのストレッチパンツ。
厚手の靴下に、富士山では2回目の登山靴。

(前の靴は、前々回の富士山で、砂走りを走って下り、 つま先が鯨になりました)



そろそろ日の出の時間です。
ですが、この富士宮ルートは、富士山の南側に有る為、富士山自身の影に隠れて太陽は見えません。

それでも段々と足元が明るくなります。
頭のヘッドライトも、そろそろ消してもいいでしょう。



体温調整も上手くいき、石の段をホイホイと良い気分で登っていきます。
前回は6合目から7合目まで、1時間20分かかっていました。

しかし今回は50分くらいでトイレの匂いが・・・・
見上げると7合目の山小屋がすぐそこです。



ちょうどここでご来光。
河口湖側から見る日の出より、30分遅れていますが、山の稜線から太陽が顔を出します。

やはり御来光には、拍手打ってお参り。
「無事に登れますように・・・・・サマージャンボが当たりますように」



さて、汗が冷めないうちに出発です。

今回は気合が先走って、途中の山小屋でも、腰を下ろさずに登ってしまいました。
しかし、これが最後になって辛い思いをすることに。



7合目を出ると、そろそろ呼吸が荒くなってます。
いったい何を考えながら歩いているのか?

以前はラジオを持っていったのですが、聞く気になれず今回は持って行きませんでした。

ただ、深呼吸をしながら、リズムを取って歩くだけ。
「お~たまじゃくしは カエルのこ~」 なぜか4拍子。

だんだんと、上も下見る事はなく、足元ばかり見ています。



人の声が聞こえて見上げると、そこには山小屋が
「8合目だ!」 と前回ダマサレた 「本7合目」

まだまだ余裕があるので、このまま通り過ぎ8合目を目指します。

  






富士宮口の登山道は急な石段が続きます。
階段を上がるように高度を稼げるのですが、用心しないと後半バテテしまいます。

心拍数を上げないよう、汗をかかないよう。 少し歩いて、大きく深呼吸。
「はあ~ はあ~  はあ~」

「このオヤジ こんなところでゼイゼイ言ってて、上まで上がれるのか?」
と、後ろの人に変な顔されますが、この深呼吸はわざとやってるんです。



8合目の高度は3,250m
5合目から2時間35分で到着です。

前回はここまで3時間40分。
かなり速いペースなので、ここからは意識的にユックリ歩きます。

そろそろ高山病の注意が必要。携帯酸素は3本持ってきてます。
今のうちに酸素吸って深呼吸。 持ってきた食料も食べることに。

カロリーの高そうな甘いお菓子。
普段は恐ろしくて口には出来ませんが、富士山では仕方ありません。

ここから石段は一段と急になります。
石の色も赤茶けて、まるで火星に来たようです。

横を見るとまだまだ雪が残っています。
この8合目以上は雪の為に7月1日の山開きに間に合わず、
わずか30時間前に開通になったばかりです。



かなりペースダウンしながら9合目に到着。
3,460mです。

このあたりから体に変化が訪れました。
いや、正確には頭か?

赤茶けた石を見ていると、何かの模様に見えてきます。
「何かの家紋?」 「なんの記号だっけ?」
「パソコン入れてネットで見なきゃ・・・・・」



・・・・いかん! 眠ってるぞ!


寝不足の為か、高山病の為か、頭がトリップしてます。
眠くなってくると、深呼吸もおろそかになり、さらに高山病が悪化します。

高度順応もせずに、ハイペースで歩いてきたツケが回ってきました。
気持ちも悪くなってきました。二日酔いの朝のようです。

酸素吸って、深呼吸。



とにかく、この9合目からが長い!

看板には山頂まで 1キロと書いてあります。
不動産広告では13分ですが、前回は1時間半もかかりました。

頭は何も考えられません。
楽しいことを考えようとしても、何も思い浮かびません。

「おーたまじゃくーはー・・・・」と4拍子で歩くことだけ考えます。



9合目から40分。
着いたところは「9合5勺」3,590mです。

上を見ると、手の届くところに頂上らしい建物が見えます。
紐でもたらして引いてくれれば、どんなに楽に登れるか・・・・・

あと100mそこそこ。
もう4拍子では歩けません。

10歩歩いて立ち止まり、ペットボトルの3本目を飲み干します。
下を見ると5合目の駐車場が見えています。
手を広げて空気を抱いて、滑空して降りられそうな気がします。


「あと少しだよ! 頑張って!」
上から下りてきた人に声をかけられます。
「ほらもうチョットだ!」









階段の踊り場を、あと2回ほど往復すれば頂上です。

「頂上に着いたらどうするか?」
ここで考えました。

富士宮頂上から、本当の日本一の「剣が峰」まで、「馬の背」という斜面を
50mほど登らなきゃなりません。

高山病の対策はとにかく下に下りること。
(不思議なもので、精神的なものなのか、下に向かって歩き始めると 苦しさがピタリと治まります。)

今の体調では、「馬の背」登る余裕は無さそうです。
お鉢めぐりは1時間半かかるので、なおさら不可能。




「頂上で少し休んで考えよう」

酸素は3本のうち、まだ2本目の途中。 ペットボトルはあと1本。お菓子多数残あり。

白い鳥居が見えました。手を合わせて鳥居をくぐると、そこは頂上。
前回大雨の中、軒下で雨宿りした小屋が、今日はきれいに見えます。

同じ軒下に腰を下ろして、今回初めてリュックを下ろし休みます。
それにしても良い天気です。

青い空に飛行機雲がキレイに見えます。


 



気温は5度程度かもしれませんが、体は最後の最後で大汗をかきました。
汗が冷えないうちにと立ち上がると、気分の悪さはなくなり、お鉢めぐりする事に決定。

神社でお賽銭を入れて 2礼2拍。
「あっ!」

なんと小銭入れからお賽銭100円玉出したつもりが、500円玉を
投げ入れてしまいました。

こうなったらサマージャンボ当ててもらわなきゃ、元が取れません。




お参りのご利益が早速あったのか、気分は爽快。
これより「剣が峰」通って、富士火口をぐるっと周る「お鉢めぐり」を行います。

風が強いと、相模湾にまで飛ばされそうな気分になる「馬の背」も
この時間は風がおさまり順調に登れます。

さっきの苦しさが嘘のようです。
最後の階段を登って・・・・・あと3段・・2段1段・・・・




   3775.63m 日本の最高峰に到達しました!


 

  







富士山の最高地点には、国土地理院の三角点があり、基準の石が埋まっています。
ですが、写真を撮るのはその横にある、「最高地点」の石標。

2mくらいの石標があり、登山者は交代で写真を撮りあいます。



初めてここに来た時には、平日だったので念のため三脚を持ってきたのですが、
普通は誰かがいるので、シャッターを押してもらいましょう。

ピーク時には、順番待ちの行列も出来るようですが、今日は天気予報が悪かったためか、
そんなに多くはありません



ここには昔、気象レーダーがありました。
この建設の苦労話は、「プロジェクトX」でも放送されたので、 ご存知の方は多いはず。

そんな気象レーダーの建物の横には、鉄骨の見晴台が設置されています。
天気が良いので、上ってみました。

先ほど石標の横で、「ここが日本一!」と写真を撮りましたが、 よく考えると、ここの方が高いようです。





最高地点「剣が峰」でのんびり時間をすごし、これからお鉢めぐりに出かけます。
富士火口をぐるっと回って、反対側の河口湖登山道まで、約30分。

何度か歩いた道なのですが、今日は道が見つかりません。
よくよく見ると、まだ先には雪が残り、道がふさがれています。

通行止めのようですが、火口の縁を目で追うと、ぼちぼち歩いている人が見えます。
ちょっと怖いでっすが、雪道を歩いてみましょう。


「ザクッ! ザクッ!」

恐る恐る斜面の雪道に足を踏み入れます。
斜面の下は、富士山の火口。
滑ったら、火口に落ち込んで、一生地底で暮らすことになります。

さすがにお鉢めぐりをする人は、そんなに多くありません。
「今の瞬間、1億人のなかで、数人だな」

と考えていたら、後ろからザクザクと速い足音が・・・・


振り返るとそこには、上半身裸で短パン姿の男が、走ってやってきます。
普通に、下界のように走ってます。

「何者?」

どうやらもうすぐ行われる、富士登山駅伝の選手のようです。
この高さで、あんなに普通に走るとは、人間業ではありません。



剣が峰から30分。
反対側の河口湖側頂上に到着です。

こちらは、団体さんも多く、海の家のような賑わい。外人さんの姿も、多く見られます。

この日は選挙のPRで、ヤワラちゃんが来るとの情報もありましたが まだ、そんな気配はありません。
(後で聞いたら、5時間後位に来たそうです)


「お鉢」を1周して富士宮側に戻る手前で、御殿場側の頂上が現れます。
さて、今回はここから下山で、途中から富士宮に帰ります。

「あとは下るだけ、走って下れば2時間だな。」

この考えが、甘かったと気がついて泣くのは、
下山開始から、その2時間後の事でした。

 
               







登ってきたのは富士宮口ですが、下山ルートで選択したのは御殿場口。

なぜか?


富士宮口は、登山道と下山道が同じであり、すれ違いの出来ない場所では、お互いに譲り合って通行します。

基本的に登り優先。
下る人は 「頑張ってえ~!」と優越感タップリで、無責任に応援し道を譲ります。



時間はまだ11時。
朝から登りはじめた人たちが、続々と上がって来る時間です。

下り坂でブレーキかけて止まるのは苦痛。
一気に下りたいので、今回は人気の無い御殿場ルートでの下山にしました。

しかし、そのまま御殿場口まで行ったのでは、富士宮においてある車までたどり着けません。
毎年かなりの人数が、下山口を間違えて、タクシー呼んで1万円近く払うハメになるそうです。

そんな訳で、御殿場ルートの途中から富士宮に横移動の予定。




さすがに4つのルートの中で、ダントツに人気の無い御殿場ルート。
登ってくる人はまばらです。

すれ違う人は、マニアックな人ばかり。

止まることもなく、大またで一気に下ります。
45分で8合目、1時間半で7合目下の、「大砂走り」に到着。

この「大砂走り」は1歩で3M進むと言われ、飛ぶように下れるのですがなにせヘロヘロの脚。
止まることが出来ず、調子に乗ると、転がって止まるしかありません。

グングン加速して手を広げると、本当に離陸しそうな気がします。



あまり調子に乗って走ると、富士宮への小さな看板を見落とし、
タクシー代1万円が待っているので要注意。

高度計は 2,600m そろそろ富士宮への分岐点。

砂の斜面も疲れました。
「後はノンビリ、ハイキングコースを平行移動だな」

と、靴の中に入った砂を出し、富士宮に向かった先に見たものは・・・・






砂走りを走って下りて、ヒザが笑ってる脚には、平行移動の道は 助かります。

「このまま平行に2キロ歩けば富士宮の駐車場だ  今回の下りは楽だったなあ~」


ハイキングコースを歩いていくと、そこには道案内の看板。
「左が御殿場口」 右が 「富士宮口」・・・・・
「右じゃなくて右下?」

看板の矢印は斜め下を向いています。
「なぜに下?」




その先に目をやると・・・・そこには、でっかい噴火口が。

進む先には大きな噴火口があり、ルートはその火口の底まで一旦下りて反対側で、同じ分を登らなくては
いけません。

おまけにルートには、こぶし大の石がゴロゴロ。
瓦礫の坂を大またで歩くと、ガラガラと石が流れ、自分も転びそうになります。

ここに来て、これはキツイ!




こんな馬鹿な所を歩いているのは自分だけかと思っていたら、反対側から瓦礫の坂を登ってくる人がいます。

良く見ると若い男女。
服装は街で見かける普段着に、なんと足元はスニーカー。

富士宮口の駐車場が近いので、ハイキングに来たのでしょうが、この瓦礫をその靴で登るとは。

前を歩く男性は無口。
少し離れて後ろを歩く女性は、顔をしかめ、いかにも苦しそう。

おそらく男性が無理に連れて来たんでしょう。
すれちがいざま 「このカップルは、帰ったら別れるな」と考えます。




瓦礫の道を下って宝永山の火口に下り、反対側の坂を登ります。
坂の上まであと10m・8m・5m・・・・

首を突き出して先を見ると・・・・・朝に通った6合目の小屋が見えます。
「やった~ もう一息」

ヒザが笑う脚を引きずって、6合目の小屋を通過。
そして5合目の駐車場に下り立ったのは、午後2時半。

下りは3時間15分。
宝永山の火口で、思わぬ時間ロスでした。




それにしても良い天気。
6回目の富士山で、最高の天気だったかもしれません。

さあ次は、どのコースで登ろうか・・・・・・