富士登山1回目
2003年7月23日(水曜) 河口湖口
天候 曇りのち雨 気温 ?度 風 20ノット MAX 30ノット (7合5勺)
7号5勺の山小屋で断念
一度は登ってみたい富士山。
しかし、聞くところによるとかなり苦しいらしく、高山病も怖いらしい。
1人で登る自信も無く、迷いながら数年間経過したところ、偶然見つけたバスツアー。
『富士登山 1泊2日4食温泉つき!(山小屋の夕食はカレーライスです)』
わざわざカレーライスと注意書きがあると言うことは、山小屋の料理に期待して、「これで1食分か。金返せ」と言う客がいるのでしょうか。
もちろん温泉とは下山後に麓の温泉へ行くことです。もちろん山小屋にはありません。
ガイドもついて、初心者でもOKとの事だったので早速申し込みました。
朝、自宅近くで集合し、お昼に河口湖5合目へ。昼食後登山開始。
7号5勺の山小屋に夕方着いて仮眠。2時ごろから登りはじめ頂上で御来光のスケジュールです。
平日と言うこともありメンバーは奥様方のグループが多く、中高年の夫婦も目立ちます。
男性は少なく、どう見ても私が一番体力がありそうです。
かなり苦しい山だと聞いていたのですが、皆さん大丈夫でしょうか。
バスは昼前に5合目に着きました。
ここではツアーの昼食が用意されていますが、これからの運動を考えて胃を軽くしておこうと、もったいないですが少し残すことに。
1時間ほど高度順応のため休憩し、さあ、ガイドさんを先頭に出発です。
「頂上に立ちたいかー」
「おー!」
「がんばるぞー」
「おー!」
ガイドさんと一緒に気合を入れます。
しかし・・・歩き出すと、なぜか道は下り坂に。
「なぜに下り坂?」
知らなかったのですが、河口湖口は最初は50mほど下るルートでした。
この下り坂をガイドさんはノロノロと歩き、おまけにちょくちょく立ち止まっては高山植物の話をします。
「早く登ろうよお~」と言いたいのですが、じつはこの歩き方が重要だったのです。
私のように気が短いと、この下り坂を一気に駆け下りて心拍数を高め、高山病になってしまうらしいのです。
「皆さん。大きく深呼吸をして登りましょう」と、ガイドさんに言われ、
腹式呼吸で腹いっぱい空気を吸い込みます。
「おーきく吸ってぇー ううっ・・臭い・・・」
よく見るとあたりには、こんもりと馬糞の山が。
ここは7合目まで馬に乗ることが出来ます。生きている馬なので当然あたりは糞だらけ。
ノロノロペースで進むこと3時間。7合目の馬返しに着きます。
ここから先は岩場を登ります。
「皆さん。上に赤い鳥居が見えますか? あれが今日の宿です」
すぐ上の岩場に赤い鳥居が見えます。急げば15分くらいで行けそうですが、
「あそこまで1時間はかかります」と、ガイドさん。
さきほどから雨になってきました。この日のために登山用具店で買ったカッパを着込みます。
7合目からは岩場になり、雨で滑る岩場を両手を使って登ります。
ガイドさんの言ったとおり、1時間以上かかって今日の宿に到着。
人生で初めての山小屋体験です。
まだ日は高いのですが夕食の時間です。
これがうわさの「山小屋カレー」
業務用の缶カレーだそうですが、雨の中を歩いた後は最高に美味しいです。
残念ながらお代わりはありません。これだけでは到底足りません。
「おにいちゃん。これじゃあ足らないでしょう」
私はよほど悲しそうな顔をしていたのでしょう。メンバーの奥様方が心配してくれて、私の前にあちこちから貴重なお菓子が集まりました。
食べ終わると有無を言わさず就寝です。
事前に聞いたところによると、1つの布団に4人で寝るそうで、 寝返りも打てないとのこと。
しかし、この日は平日だったためか、1つの布団に2人。
梁に頭をぶつけながら、押入れの「ドラえもん」になった気分で上段に上がります。
「掛け布団はこちらで掛けますから、まっすぐ寝てください」
と山小屋の兄ちゃん。
全員がゴロゴロと並んだところで、兄ちゃんがバサバサ布団を掛けて回ります。
布団は湿っていて寒くて眠れません。
外は大雨になり風も強く屋根が飛びそうです。
こんな中でも登る人がいるらしく、小屋の外は賑やかです。
起床は午前1時の予定。まだ6時間あります。
初めは寒かった布団も、みんなの体温で温まり今度は暑くて眠れません。
ようやくウトウトしかかった頃、ガイドさんが起こしに来ました。
「起床の時間ですが、ご覧のように外は嵐です。登頂は危険ですので断念し、日が出たら下山します」
残念ですが仕方ありません。
4時起床に変更されましたが、眠れないので早めに起き出します。
「ほかの皆さんの迷惑ですから、勝手に起きないで下さい」
と事前に言われていたのですが、トイレに行きたいので仕方ありません。
富士山のトイレは悪名高き垂れ流し。
話には聞いていましたが、実際に見て驚きました。
「小」はともかく「大」は崖の上に板を渡して便器を置いただけ。
強風が崖を駆け上がって吹き上がってくるので、爆弾投下のタイミングを間違えると自爆します。
風の呼吸を読んで、タイミングを計って「ヨーイ、テーィ!」
冬になると雪とともに流されるようで、途中の登山道が臭かったのは馬糞のせいだけではありませんでした。
「富士の天然水」を買うのは考えものです。
(その後、バイオトイレ等が設置され、改善が進んでいるようです)
日の出は4時半ですが、雲が多く御来光はしばらく後になってから。
雲海の上に顔を出した太陽。
天気は急速に回復したようです。
あと5時間早く回復していれば登頂できたのですが残念です。
山小屋では朝食の支度が始まりました。
本来なら頂上に持って行く予定の弁当です。
レトルトの五目飯にシューマイ2個。タクアン2切れ。
レトルトのご飯は一度温めているのでしょうが、硬くて箸が立ちません。
食後は無念の下山です。
今日ならば絶好の登山日和なんですが、時間に制約のあるバスツアーなので帰るしかありません。
振り返ると快晴の空に頂上が見えています。
「山を振り返ると、魔女が笑っていた・・・」と言う、松本零士の「スタンレーの魔女」を思い出します。
富士山頂への憧れは、さらに強くなります。
「来週もう一度、リベンジ登山だ!」