永遠の白い羽根
〜幻の恋〜

第一話 白き羽が舞い降りて

『信じる』なんて言葉はどこのどいつがつくりやがった。


他人を信じてもロクな事がねぇ。


面倒な事になるだけだ。

一人がいいのさ。気楽で。


俺は・・・。


一人でいきなけりゃならない。


それが俺の償いだ・・・。


暗い暗い闇で一人生きていくのが俺の課せられた罪なんだ。


ってな・・・。


ちょっとクサイ言い方だが、俺は一人がいいんだ・・・。


他人にいえねぇこともやってきたしな・・・。


いつ消えたっていいっておもってたのに・・・。


他の誰かなんていらねぇって思ってたのに・・・。



お前が・・・。


降ってきやがったんだよな・・・。お前が・・・。


白い羽と共に・・・。


夢かも・・・。しれねぇ


夢を見たんだ・・・。



度を続ける犬夜叉達。


邪気を感じて高い崖の先まで来ていた。

下を覗き込むかごめ。

下は緑の木々で覆われ、落ちたらひとたまりもないだろう。


「おう。かごめ。四魂のかけらの気配、しねぇか?」


「うん・・・」


その時!


バサバサバサッ!!!


「!??」


犬夜叉達の前に巨大な化け鳥が出現!


「けっ。邪気の正体はこいつか。雑魚妖怪じゃねぇかッ」


「でも、犬夜叉、気をつけて!!」


「心配すんな、かごめ。鉄砕牙、ひとふりで終わらせてやる!!でやぁああ!!」


犬夜叉は化け鳥に容赦なく鉄砕牙を振り下ろす!

しかし、化け鳥は素早く天高く飛び上がり、攻撃を交わした!

「犬夜叉!あたしにまかせて!!」


かごめは犬夜叉の背中に乗り、矢を放つ!!
「えいッ!!」

破魔の矢が化け鳥の翼に当たった!

「やった!!」

手応えを感じたかごめだが、巨大な化け鳥の体が犬夜叉とかごめに寄りかかるように倒れる!!

「くッ!!」


犬夜叉が高くジャンプした瞬間!
「きゃああッ!!」

バランスを崩し、犬夜叉の背中からかごめが崖の下に真っ逆、落ちていく!!


「かごめッーーーーー!!!」


かごめの体は緑の絨毯に吸い込まれる様に、消えてしまった・・・。



ザァ・・・ッ。


小滝のしぶきが岩にぶつかって飛び散る。


小さな虹が見えて。


その中に一人。男の背中。


広く、厚く、細く。


右肩に小さな痣。

水が白い肌を光らせて。


肩まである長い髪。


掻き上げるその髪は茶色が映えてオレンジ色に見える。


「ふう・・・」


木の枝にかけた白い着物を着て、髪を束ねる男。

年の頃は二十歳を過ぎた位だろうか。

端正なその顔立ちは一瞬、おなごと思ってしまうほど・・・。


バサバサバサッ。

水色の羽の小鳥が男の肩に止まる。


「彗。お前どこにいたんだ・・・。ん?」


小鳥が何かをくわえている。


紅い布。

「・・・見たこともない布だな・・・」

ピピピッ!

彗が空夜をどこかに招こうとするように、鳴く。


「なんだ・・・?俺に来いと?彗、また、うまい木の実でも見つけたのか・・・」


サク・・・。


サク・・・。


風馬はゆっくりとゆっくりと彗の後についていく・・・。

草木をかき分け、ゆっくりと・・・。


サク・・・。サク・・・。


ガサッ・・・


「!?」

長く大きな笹の葉をかき分けると、パアッと眩しい光が風馬の瞼を貫く。


風馬は手をかざす。


ザワザワザワッ・・・!


木々のざわめいた。


「・・・?」


かざした手の平に・・・。


ひらひらひら・・・。


純白の羽が一枚舞い落ちた。


「なんだこれは・・・」


白い羽はどこから・・・。


「・・・!」


風馬の目の前に・・・。


木の根に寄りかかっている女がいた・・・。


見たこともない着物を着ている・・・。


(・・・誰・・・だ・・・?)


白い肌


桃色の頬・・・。


夢のの少女だ・・・。


かごめだった。


風馬はそっとかごめの頬に触れてみる・・・。


温かい・・・。

(生きているか・・・)

「・・・。行くぞ。彗」


風馬はかごめを木に寄りかけたままその場を去ろうと背を向けた。


「?彗・・・?」

小鳥の彗がついてこない。

何故だかかごめの真上を何かを言いたげに飛んでいる。

「・・・助けろ・・・?というのか・・・?」

ピピッ!

彗は応えるようになく。

「・・・」


どこの国の娘とも分からないのに。


下手に助けて、面倒なことに巻き込まれるなんて御免だ。


「・・・」

だが・・・。


不思議に引き寄せられる・・・。


「・・・」


あの夢の中の少女が目の前にいる・・・。


風馬はかごめを抱き上げる。


(・・・白い花の香りがする・・・)


ゆらゆらとかごめの髪がなびき・・・。


大きな腕に抱かれてかごめが森の中に消えていった・・・。


ザザッ!

「畜生!かごめの匂いが全然しねぇ・・・!」


真っ暗な森の中をかごめの匂いを探ってひたはしる犬夜叉。


しかし探せど探せど木々の匂いしかしない・・・。


(くそ・・・っ。かごめ・・・どこにいやがる・・・!)

立ち止まり、葉と葉の間から月を見上げる犬夜叉・・・。



「かごめ・・・。かごめぇエーーーーーーーーーッ・・・・」


何度も何度もかごめの名を呼び続ける犬夜叉・・・。


しかし、かごめには届かない・・・。


かごめは・・・。


遙か遠く山を幾つも超えた場所に居た・・・。



山と山の谷間に小さな点の様に家が並ぶ。

朽ち果てた家々・・・。

崩れた家屋。とても人が居そうには見えない村の中・・・。


村の一番奥の高台の家だけが新しい大きな家が・・・。


長い長い廊下がおけをもった老婆が歩く・・・。


古い障子戸を開け、中にはいる老婆・・・。

畳12畳ほどの広い広い部屋だ。

そのど真ん中に布団がひかれ、かごめが眠っている・・・。


頭と足に白い布がまかれいる。

老婆はかごめの横に座り、桶の水で手ぬぐいをしぼりかごめの額に乗せた・・・。

「う・・・ん・・・」


布の冷たさで目をさました・・・。

目を開けると天井の木目が見えた。


(ここ・・・は・・・)

「気がつかれたか」

「!」

暗闇に浮かぶ怪しい老婆の顔にかごめはかなり驚いた。

「痛・・・」

「怪我をしているのをこの家の者が助けた。頭を強く打ったらしい。動かないほうがよかろう・・・」

「・・・」

ぼうっとするかごめ・・・。

「あの・・・。あの・・・。ここは・・・どこですか」

「名もない村だ」

次の言葉に老婆は驚く。

「それから・・・私は・・・誰・・・でしょうか・・・?」


「そなた・・・。記憶が・・・」

老婆は布団の横にたたんであるかごめの制服をチラッと見た。

異国の服を着た怪しげな娘の上に記憶をないなんて・・・。

(・・・風馬さまも厄介な娘を拾ってきたものだな・・・)


不安げな表情のかごめ。

「あの・・・」

「・・・。今日はもう休まれるがよい。夜が明けたらまた詳しいことを話すとしよう。では・・・」


「あ、あのっ・・・」

パタン・・・ッ。


老婆は言葉少なく、部屋を出ていってしまった・・・。

「・・・」

何もわからないかごめ。

自分の名前さえ分からない・・・。

言いようのない不安に駆られる・・・。


(あたし・・・一体誰なの・・・?どこから来たの・・・?)

自分が着ていたという制服を見ても思い出せない・・・。

(・・・眠ろう。眠れば思い出すかもしれない・・・)

再び布団に横になったかごめ。

目を閉じるかごめ・・・。


朝までそのまま眠ったかごめは雀の鳴き声で目を覚ます。

(朝か・・・。やっぱり何も思い出せない・・・)

起きあがるかごめ。

すると外から物音が・・・。



シュッ!


シュッ!


(・・・何だろう・・・)


痛めた足を引き吊りながらかごめは廊下に出てた。


「あの人・・・」


広く大きな背中。


男とは思えないような白い肌に汗が光る。


一人の若い男が刀で朝の空気を切っていた・・・。


(誰だろう・・・?)

「フウ・・・」


長い髪をかきあげ、松の木の枝にかけた手ぬぐいで顔を拭く・・・。

広い背中には無数の傷跡が痛々しく残っていった。


(・・・。あの人はここの家の人かな・・・)

ちょっと近寄りがたい雰囲気を感じるがかごめは声をかけてみることにした。

「あの・・・。すみません」

切れ長の凛々しい瞳がかごめをじろっと見つめた。


一瞬怖く感じたが・・・。

「・・・」

男は無言で着衣を整え、かごめに近づいてきた。


「あ、あの・・・」


そして男はかごめにある物を差し出した。

「こ・・・これ・・・」



かごめの生徒手帳。手帳の裏にはかごめの写真と名前が書いてあり・・・。


『日暮かごめ』


「あたしが映ってる・・・。ひぐらし・・・かごめ・・・?これがあたしの名前・・・?」


自分の名前も忘れてしまったかごめ。だけど、『かごめ』という名が何故かしっくりくる気がした。


「そっか・・・。あたしは『かごめ』っていうんだ・・・。よかった!名前がわかって・・・」

ホッとしたかごめは手帳を胸でぎゅっと握りしめた。

そんなかごめの笑顔をじっとみつめる男・・・。

記憶がないと乳母のつねから聞いていた・・・。


穏やかな笑顔をのぞかせるかごめが不思議だと感じた。

「・・・あ。すみません、一人ではしゃいでしまって・・・。あの・・・。昨夜はお世話になりました・・・」

「・・・。怪我はもういいのか」

「あ、は、はい・・・。痛みは大分ひきました・・・」


低く、物静かな男の声・・・。


だけどどこか安心する気がした・・・。


「あ、あの・・・」


「・・・怪我が治ったら、すぐにここを出て行け・・・」


男は冷たくそう言うと、スッとかごめの横を通り過ぎ、家にあがってしまった。


かごめも思わず廊下に駆け上がる。

「あの・・・ちょっと待って・・・!」

男は、ピタリと止まる。


「あの・・・。まだ聞いていませんでしたね・・・」


「・・・?」


「貴方の名前です」


「・・・」


ゆっくり男は振り向き・・・。


言った・・・。


「俺は・・・。風馬だ・・・」


「・・・風馬・・・さん。あたしは・・・」

かごめは自分の学生手帳を見た。



「あたしの名前はかごめです。かごめって言います」


まっすぐに


まっすぐに


真っ直ぐに


風馬を見つめている。


そして風馬の心はそんな澄んだかごめの瞳から・・・


そらせなかった・・・。


これが・・・。


蜃気楼のような恋の始まりだった・・・。


切なく消えそうな・・・。


記憶喪失ものは結構ありますが・・・。どうしてかごめちゃんが字を読めたのかとかはあまり気にしないように(汗)もし、かごめちゃんが自分以外の男を『本気』で好きになったらば犬クンはどうするだろう・・・っていうのがずっとあって、勢いで書いてしまいました(汗)ラストは決まっているのですが、パロディ編程には長くならないかと・・・って色々ごねていますが、気長に頑張ります・・・