だからその手を離さない

「よいか。チビ犬。これはこうしてつかうのじゃぞ」

七宝は自分で遊び道具を作るのが得意である。そしてそれは武器にもなる。

七宝は時々、それを犬夜叉達に自慢してみるが

「くっだらねぇ」

「まだまだ七宝は子供ですな」

とからかわれるだけなので、チビ犬を最近は相手にしていた。

「ふん。どいつもこいつもオラの傑作をバカにして・・・。ほれ、チビ犬。これが最新作じゃ」

それは、とある木で作った手錠のおもちゃ(?)で七宝の説明によると、その手錠をかけられたものは二度とはずれないような仕組み・・・だそうだ。

「オラが分身している間に敵の両手に密かにコレをかけておくのじゃ。そしてそのスキに逃げる・・・。どうじゃ?傑作じゃろう?」

「ワン!」

「ふっ。チビ犬にはわかるのにもう一方の犬は分からぬとは・・・」

「ワン!」

しっぽを振りながら七宝の見る。

「・・・。何だかむなしい・・・。はっ。そうじゃ、これを犬夜叉に・・・。ふふ・・・復讐じゃっ!!」

「誰に復讐だってんだ。こら」

もう一方の犬、登場。

「姿がみえねってかごめが心配しやがるから来てみりゃ・・・」

「うるさいわい!誰が捜してくれと頼んだ!」

「何ぃ?おい、いやに今日はからむじゃねーか」

七宝や背後に最新作の手錠を密かに忍ばせた。

(ふっ。タイミングを見計らって犬夜叉の腕に・・・)

「あ、七宝ちゃんこれなーに?」

「か、かごめ!」

七宝、早々とかごめに発見!

「手錠のおもちゃみたいね。なんか何かなつかしーな。小さい頃、結構、こういうので遊んだっけ・・・」

ガチャン。

かごめは自分の手と犬夜叉の手錠をはめた。

「あ``ー!!」

七宝思わずあとづさり。

「ん?どうしたの?七宝ちゃん?」

「い・・・いや別に・・・」

「ふうん・・・で、おすわり!」

「ぐえっ!」

犬夜叉、今日、最初のおすわり。

「何すんでぇい!」

「ごめん。なんとなくやってみたくなったの」

「かごめ・・・。最近俺、おめー何かしたか?」

「別に。でも、一日に一回、これ、やらないと落ち着かなくて★」

「おめーな・・・俺で遊んでんじゃねーよ!俺はいぬじゃねぇっ!」

「犬じゃん(半分)」

「どーでもいーけど、この妙なわっか、はずせよ」

「そーね・・・。あれ?はずれない・・・どうしてかしら・・・」

その時、七宝は忍び足で逃走をはかる。

「何逃げてんでてめぇ」

ギクリ。

「いや、オラ、もう帰ろうかなー・・・と」

「何だぁ。何か怪しーな・・・。こら、白状しろ」

犬夜叉、七宝のしっぽをわしづかみ。

「・・・じ、実は・・・じゃな・・・」

「なにぃーーーーっ!」

七宝の頭にひとつ、たんこぶができている。

「それは『悲恋木』と言われる呪いの木から作ったものなんじゃ。その木の呪いが解けぬ限りその手錠ははずれぬ」

「んじゃ、その木ぶった切りゃあすむこったな。案内しな。七宝」

そう言った犬夜叉は立ち上がったのにかごめの腕もひっぱられる。

「きゃっ。痛っ・・・。痛いじゃないのよ!」

「んだよ!おめーがこんなもんで遊ぶからわるいんだろーが!!」

「何よ!」

二人の間に割ってはいる弥勒。

「まーまー。事に七宝その木の所へ私を連れて行ってくださらぬか。少し、調べたいのですが・・・」

「そっか。一応、弥勒さまって除霊もできるんだったわね!」

「弥勒もたまには役にたつな」

「お二人ともそんな好き放題に・・・。ともかく七宝、早くその木の場所を・・・」

「もうない」

犬夜叉と弥勒は目を点にして聞き返す。

「は?」

「もう、切り倒されておってな、オラその切れっ端を村人からもらったんじゃって・・・え?」

「そんないわくつきなもんで妙なもん、つくるんじゃねっ!」

七宝の頭に2つめのおやまができました。

「ええい!めんどくせぇっ!鉄砕牙でたたっきる!」

「痛っ・・・」

「これいっ犬夜叉。乱暴はやめなさい。かごめ様が痛がっている」

「んじゃ、どーすんだよ!!」

「・・・。あの・・・これは村人がいっておったんじゃが・・・」

『悲恋木』・・・。その昔、妖怪と人間の女が恋に落ちた。その妖怪と女はいつも悲恋木の下で会っていた。しかし、女の父親が妖怪を退治しようとしたので、二人は逃げて逃げ回った。そして、悲恋木に追いつめられた二人はそのまま悲恋木へと魂ごと吸い込まれたという・・・。それは伝説となり、『悲恋木』として村人に崇められてきた。

弥勒と七宝は何故か犬夜叉とかごめと見る。

「な、なんでえぃ。俺とかごめがどーかしたのかよ」

「では、この手錠にはその妖怪とおなごの強い念がのこっておるのでしょうな・・・。分かりました。私がすぐ除霊いたしましょう」

そこへ宿を探しに出かけていた珊瑚が帰ってきた。

「みんな、やっと今夜の宿が見つかったよ。あれ?どーしたのみんな」

「いや、何でもありません。もう日も沈みましたし、さ、行きますか。よいしょ」

「よいしょっておい!弥勒!こっちはどーすんだよ!!」

「ま、明日又考えましょ」

そしてそそくさと弥勒達は宿へ向かった。

「明日って・・・おい!こら弥勒!」

珊瑚が見つけてきた村の宿。部屋の数が少ない上に今夜は客がいつもより多い。

「しかし・・・この部屋に5人+犬(チビ)はちと狭いですな・・・」

5畳あるかないかの狭さ。布団は一組だけがひいてある。

「おなご達だけとなら何とも嬉しい状態なのですが・・・。ん?となりの部屋は・・・」

客室の隣には少し広めの納戸があった。

「それでは私達はここをつかわせていただきましょう」

「え?でも法師様、ここだって5人は狭くない?それに犬夜叉とかごめちゃんはあんな状態だし・・・」

しっかりとつながっている手と手。

肩を並べて歩かなければ、ひきずられそうだ。

「どーでもいいが、弥勒!さっさと除霊でもなんでもしてくれよ!うざったくてかなわねーんだ!」

かごめはその言葉にちょっとムッとした。

「何よ。そんなに嫌なわけ?!」

「あたりめーだろが!これじゃ敵とたたかえねぇし」

「ふんだ・・・。あたしは結構嬉しかったりしたのに・・・って。あれ?弥勒様?」

3人はすたすたと納戸へ入っていった。

「私達は先に寝ます。珊瑚と私と七宝は納戸で寝ますから、お二人は客室でどうぞ」

「そーそー。今晩くらいは二人っきりの夜をどうぞ。じゃ、お休みかごめちゃん」

「さ、珊瑚ちゃんまで・・・」

「まあ、犬夜叉は弥勒と違って度胸がないから安心じゃが、一応、チビ犬を置いてゆく」

「七宝、てめえっ・・・」

パタン・・・!

納戸のふすまがしまり、静かな廊下に2人が残された。

「あ、あの野郎・・・。確信犯だな!また、俺をからかってたのしんでやがる!ん?どうしたかごめ?うつむいて・・・」

部屋のど真ん中に1組の布団。そして、ちょこんときれいな位置に枕2つが置いてある。

「・・・」

「・・・」

犬夜叉とかごめは思わず沈黙。

こうして、二人のちょっと危ない(?)夜が始まったのである。

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