あなたのためにできること 〜私は強くなる〜 >第1話・見守る人 |
「ふうっ・・・」 最近、夜、かごめは一人、物思いにふける事が多い。 今夜も、皆が寝静まってから一人、夜空を見上げ、何かを考え事。 そんなかごめが気になって気になって仕方がないので、跡をつけている者、約1名。草の影から見つめている。 三角の耳を半分出して。 (・・・。かごめの奴・・・。何か変だぞ・・・) 「はあ・・・」 何度もため息をつくかごめ。 「これで15回目のため息ですな」 「!!」 きがついてみればまあ!見物人が増えている。 「な、なんだよ!おめーらっ!!」 「あの深いため息は相当何かをおもいつめておるぞ」 「ですな。もしや・・・恋のため息・・・。二股に疲れて新たな思い人ができたとか・・・」 「んなっ・・・」 「かもしれんなぁ。この間も桔梗がらみの一件でかごめは危険な目にあったしのう」 弥勒、七宝、犬夜叉をあおる、あおる。犬夜叉は痛いところをつかれ、反論できずにいる。 「・・・。あのねぇ。女の子はね。単純な男と違って時々ふうっと色々考えたくなるものなのよ。事に恋愛に関してはね・・・。そっとしておいてあげようよ」 珊瑚は心配そうにかごめを見ていった。 「そういう割には珊瑚、お前、なぜここにいるのだ?」 「え・・・。だ、だってあんたたちがかごめちゃんの邪魔にならないかと思って・・・。と、とにかく!今はかごめちゃんはそっとしておいた方がいいよ!!いい?わかったあんたたち?特に犬夜叉は!!」 「な、なんで俺なんだよっ!!」 「気になるからってかごめちゃんのあとひっついてばっかりで。かごめちゃん、気がついてるにきまってるでしょ!」 「だ、誰がひっついて・・・って!」その時、全員、見上げるとかごめが。 「か、かごめ・・・」 「珊瑚ちゃんの言うとおりだよ。犬夜叉。あたしの事、心配してくれるのは嬉しいけど・・・。一人になりたいの。今は」 「な・・・。なんだよ!!お前、俺に言えねーことあんのかよっ!!」 「・・・。ごめん・・・。あたし、先寝るね・・・」 「あ、コラッ・・・」 かごめは俯いたまま深刻な表情で小屋へと戻っていった。 「・・・。あの様子はかなり深刻ですな・・・。かごめさまの心境に何かがあったのは確かですが・・・」 「やはり、新しい男ができたのじゃろうか・・・?鋼牙意外の!?」 「んなわけねーだろっ!!かごめに限って・・・」 犬夜叉、本音がポロッと・・・。 「あのね!だから、詮索しないの!!いい!?犬夜叉、いくらあんたでもかごめちゃんにだって自分の気持ちってもんがあるの!そっと今は見守ってやるべきなのよ!!」 珊瑚、力説するが、弥勒は何か疑惑の目で見る。 「何だか妙ですな、珊瑚、お前、何か知っているのではないか?」 弥勒、こういう事に関してはかなり鋭い・・・と珊瑚は思った。 「う・・・。そ、そんな事ないわよ!とにかく!!女が思い詰めてるときはそっとしておいて!!いいわね!!返事は??」 珊瑚、目が据わっている。 「は、はい・・・」 そして、仁王立ちで、男たちにそう言い放ち、小屋へと戻った。 「・・・。珊瑚も・・・顔に出るタイプですなぁ・・・」 そう言う弥勒の横で犬夜叉はかごめの気持ちが分からないもどかしさで、イライラしていた。 そして、次の日のかごめのとある行動で、犬夜叉のイライラはピークに達するのだった。 ※ かごめはリュックを背負い、いつものように犬夜叉に「実家に行く」と行って楓の小屋を出ていった。 当然、やはりいつも如く犬夜叉はすねている。 「けっ。かごめの奴・・・。自分の家にばっかり帰りやがって・・・。何考えてんだよ!」 ごろんと寝そべってぶつくさ 文句の犬夜叉。 珊瑚はそんな犬夜叉をあきれ顔で見る。 「んだよ。珊瑚。何か言いたそうな顔だな」 「あるわよ。たっぷりね・・・。ホント、あんたって自分のしてる事棚に上げで、かごめちゃんに関しては人一倍独占欲強いんだから・・・。子供よりガキっぽいんじゃない?」 「んだと!珊瑚。なんだよ。おめー!やけに昨日から俺につっかかってきやがって!!おめーにかごめの気持ちがわかるってのかよっ!」 「わかるわよ。少なくともあんたよりはねかごめちゃんはね・・・あんたのために・・・」 「珊瑚!」 楓が珊瑚の言葉を遮る。 「あっ・・・」 「・・・。やはり珊瑚、お前、何か知っているのだな?楓様も・・・。男群には秘密のことなのか・・・?」 「・・・」 「おう。珊瑚、どーなんだよ!!はっきりしががれっ!!」 「・・・」 男たちに詰め寄られるが珊瑚は頑として口を開かない。 「女の約束だから・・・。言えない」 「女の約束だぁ?何だよ!だああっ!!イライラする!!よってたかって隠し事しやがって!!俺はそういうのが一番嫌いなんだ!!」 七宝、犬夜叉の肩に登ってここでもっともなつっこみを。 「犬夜叉、お主、人のこと言えるのか?(かごめの知らないところで散々逢い引きしておいて)」 パコ!! 七宝、つっこみのお礼を犬夜叉から頂く。 「けっ。いいさ。かごめが帰ってきたら吐かせてやる!」 「やめておけ。犬夜叉。かごめは帰ってこんぞ」 「!?」 楓はすました顔でズズッと茶をすする。 「犬夜叉、お前も飲むか?」 「いらねえよっ!それよりどーゆーことだよ!!かごめが帰えらねえって!!」 「・・・。かごめは白糸の滝へと向かったのかもしれん」 「白糸の滝!?」 「弥勒、お前、知ってんのか!?」 「白糸の滝・・・。神竜が奉られているという・・・神聖なる滝」 「さよう。心に迷い在る者や罪をおかしたものなどが己を見つめる場所。迷いが断ち切れない者は生きてはでられないという場所じゃ。周りは険しい岩に囲まれ、その滝へ行くには長い道なき道を歩き、険しい岩山をのぼらねばならん。」 白糸の滝。心に迷いある者、己の罪を見つめ直す・・・。そして、楓はこの時言わなかったが、『巫女』が自分の霊力を強める場所でもあった。 「以前、かごめに一度白糸の滝の事は話したことがあったが・・・。まさか本当に行くとは・・・」 「・・・。何で・・・何でかごめがそんなとこに行かなきゃなんねーんだよっ!!」 「・・・。ワシにもかごめの心中はわからん。ただ、かごめはこう言っておった」 『守られてばかりの自分じゃだめな気がする』 と・・・。 「な、なんだよそれ・・・。わかんねーよ!どーいう事なんだよ!それに俺に黙って一人でいきやがって・・・っ」 バン!! 犬夜叉はは柱を思い切り叩いた。 「犬夜叉。まあ、そんなカリカリするな・・・。かごめ様のにはかごめ様の気持ちがあっての行動なのだろう」 「だから、その気持ちってのがわかんねーんだよ!!けっ」 犬夜叉はそう激しく言うと小屋を出ていった。 「犬夜叉・・・」 かごめの気持ちがわからない。この前、この川原でかごめと話していたことを犬夜叉は思いだしていた。 “犬夜叉・・・。いつも私を守ってくれてありがとう。感謝してる・・・” (あれは・・・。どういう意味だったんだよ・・・) 「くそっ・・・」 ポチャン・・・ 犬夜叉は小石を思い切り投げた。 “守られてばかりの自分じゃだめな気がする・・・” (俺は・・・お前を守りたいって思ってンのに・・・。守られたくないってどういう事だよ!俺はお前にとってもういらねぇってことなのかよ・・・っ!!) 好きな女の気持ちがわからない。なぜ、今になって自分から離れようとするのか?何を迷っている?何がわからねえっていうんだよ・・・っ!! 悶々としている犬夜叉の横に珊瑚がそっと座る。 「・・・。何だよ。珊瑚」 「・・・。あのね・・・。かごめちゃん・・・。ずっと感じてたんだってさ・・・。奈落や妖怪達との闘いでもいつも自分は、誰かに守られていたって。あたしや法師様みたいに強くないから強くなりたいって・・・」 「そんな・・・。かごめだってつえーじゃねーかよ。かごめのお陰で助かった事だってあったじゃねぇか!」 奈落と初めて直接対決した時。かごめの破魔の矢で奈落を粉砕した。 「それにね・・・。かごめちゃん、こうも言ってた」 “いつの間にか犬夜叉に助けられるのが当たり前になってた。桔梗は一人で奈落を探してるって言うのに・・・。あたしは犬夜叉のそばにいるって言いながら、いつのまにか犬夜叉に甘えてたの。そんな自分に気がついてこれじゃだめって思った・・・。だからあたし・・・強くなりたい!” 「俺に甘えてたって・・・?なんで・・・そんな他人行儀な事言うんだよ!俺は・・・勝手言ってる俺の側にいてくれるあいつを守ろうと思って・・・っ!!」 甘えてる?甘えてるのは俺の方だ。側にいてくれるのが当然の様になって・・・かごめの優しさに・・・。 「・・・。羨ましいな。お互いを想いあってるからすれ違う・・・か。でもね、犬夜叉。あたし、そんなかごめちゃんがたくましく見えたよ。かごめちゃんは『自分』と闘いに行ったの。一人黙って行ったんだから・・・。だからあたしは止めなかったの・・・」 自分のために、そして、一番大切な人のために・・・。 「・・・」 「かごめちゃんはいつもどんな時もあんたを見守ってた。今度はあんたの番じゃないの?」 「俺・・・の?」 「そっ・・・。あんたの番!」 かごめが・・・どんな死闘の時もかごめがいつも側にいた。 そして、痛めた体と心を手当し癒してくれた。 今度は犬夜叉が・・・。 「白糸の滝までの道には蛇系統の妖怪がいるよ。ザコだけど。かごめちゃんには一応、妖怪よけの聖水をあげたけど・・・」 「!」 犬夜叉はそれを聞くとすぐさまその場を離れようとした。 「ちょい待ち!犬夜叉」 珊瑚は小さな袋を犬夜叉に投げた。 「なんだよ!これ」 「薬草。いくつか入ってる。かごめちゃんにも渡したけど、万が一のために・・・もっていきな!」 「すまねぇ珊瑚!もらってくぜ!」 今かごめに自分がすべき事・・・それは、見守ること。 かごめが決意した事を共にみつめること。 かごめがいつも俺にしてくれていたように・・・。 「やっと行ったか。犬夜叉めが・・・」 「そのようですね。しかし、珊瑚、名演技でしたよ」 「法師様・・・」 楓と弥勒、一部始終を見ていた。いや、これは全て弥勒の計画だった。 かごめは珊瑚に誰にも言わないで欲しいと言っていたが、珊瑚は弥勒に相談。犬夜叉がかごめを『見守りつつ』追っかける様に仕向けたのだった。 「何!?ということはオラだけが何もしらんかったのか!?」 「すみません。七宝。お前はすぐ顔にでる。犬夜叉と同じで」 「な・・・。オラはもっと大人じゃっ!!」 七宝、可愛く大人宣言。 「犬夜叉はすぐ熱くなるからね。かっかしたまま追っかけたんじゃかごめちゃんの気持ち台無しだからね」 「いや・・・案外あいつは私達のお膳立てに気がついていたかも・・・」 「法師様・・・」 弥勒は珊瑚の横に静かに座った。 「あ、こら、オラも・・・。ふがっ!」 「子供と老いぼれはさっさと退散するぞ」 といって、楓は七宝のしっぽを掴んで弥勒と珊瑚を二人きりに・・・。 「ねぇ・・・。法師様。やっぱりあの二人・・・羨ましいな。お互いに必死に想いあってる・・・。必死に・・・。報われなくても・・・」 「・・・。そうだな・・・」 「あたしなんてさ・・・。琥珀の事考えると辛くて・・・。不安になるだけ・・・。かごめちゃんみたいに人の気持ち考える強さもってないよ・・・。いくら好きだからって・・・二股かけられるって思うだけで嫉妬で胸が潰れそうなのに・・・」 「珊瑚・・・」 沢山の女に声をかけている弥勒。でも、それはきっと『本気 』ではないと知っているからどこか安心している。 でも、『本気』で二股をかけられていると思うと嫉妬と同時に黒い憎しみが沸いて沸いて沸いてどうしようもないだろう。 きっとかごめも・・・。でもかごめはそれと闘いながら犬夜叉の側にいる。 「法師様。あたしはかごめちゃんみたいに強くなれないよ・・・?嫉妬で変になるかも・・・」 「嫉妬か・・・。俺はいつも嫉妬してるんだがな・・・」 「え・・・?」 弥勒は珊瑚の肩をぐいっと引き寄せた。 「琥珀にな」 「・・・。バカ・・・」 誰かが誰かを見守っている。 それは時にあたたかく、苦しく・・・。 いつも守られてばかりいる自分と向き合おうとしているかごめ。 そんなかごめをそっと静かに見守りたいとかごめを追う犬夜叉。 二人の短くてちょっと切ない旅がこうして始まったのだった。 ・・・。なんか、最近、あっし、かごめちゃんに頑張らせてばっかいますね。でも、頑張って欲しいです!!犬夜叉を見守るのもいいけど、たまには犬夜叉にもその役をやらせてみようかと・・・。勿論、かごめちゃん、夜、一人で寝ます。んで・・・隠れてそれを見つめる犬・・・。 ・・・。・・・。(邪な妄想稼働中)だあああああっ!!なんでそっち方面にいくんやーーーっ!!(爆)いや、やっぱし、ね、極甘大好き人間のあっしですので『二人の夜』っていうのは永遠のテーマ!?でして・・・。甘い夜にやっぱししよう!!うーんうーん・・・。(邪(よこしま)妄想再び)。だあああっ!!甘くて切ない夜だって!!ぐへへへ・・・(どうしょもないやっちゃな。こやつは・・・(爆×2)) |