七宝が犬夜叉とかごめをじっと不思議そうに見ている。
「何だよ七宝。人の顔じろじろみやがって」
「おぬしら二人、朝、おらなんだな、河原で2人、寝取ったのはなぜじゃ?」
「えヾ・・・」
七宝のあまりにストレートな質問に4人は一瞬動きが止まる。単なる無邪気な子供の質問なのだが、どう返答していいか分からない面々。
「どうしたのじゃ?この空気は。おら、何か悪いこといったのか?」
「・・・。七宝、お前にはちと早いかもしれないが教えよう・・・。男と女の関係について・・・」
バキ!
珊瑚が一発お見舞いする。
「妙なこと七宝に吹き込むな!七宝ちゃん、犬夜叉とかごめちゃんは話をしていただけなの。ね、そうよね、かごめちゃん」
顔を真っ赤染めたかごめ。黙って顔をぶんぶんと頷く。
「そうなのか?犬夜叉」
「・・・うっ・・・うっせぇな!ガキが!」
「なんじゃとぉ〜!?わしゃ、二人の心配をしておるというのに!そもそもかごめとはどこまでいっとるんじゃ!接吻ぐらいしたのか?」
七宝、思い切り大胆な質問だ。しかし、珊瑚と弥勒も興味津々で犬夜叉とかごめを見る。
「な・・・な・・・」
「ワシだって接吻ぐらい、知っておるわい。子供扱いするな。犬夜叉。で、本当の所はどうなんじゃ?正直にいうてみぃ」
七宝は小さな肘で犬夜叉にこつく。
それに挑発された犬夜叉は七宝に照れ隠しの一発。
「ま、ませたことばっかり言ってんじゃねぇよっ!だ、大体昨日だってかごめがあんまり気持ちよさそうに眠ってたから動かさなかっただけだ!かごめとなんか何にもねぇよ!」
「あたしなんかと・・・?」
カチンときたかごめは犬夜叉をにらむ。
「そうよね。犬夜叉なんていざとなったら度胸ないし、どっちにしても桔梗に無理矢理キスされっぱなしだし・・・。七宝ちゃん行きましょ!」
かごめは七宝をだっこしたまますたすたと先へ行ってしまった。珊瑚と弥勒はいつものパターンだな・・・と想いながらものこされた犬夜叉に核心部分を追求する。
「けっ。なんだってんだ!いっつも俺が悪者じゃねぇか!」
「ケンカするほど仲が様という事でしょ。だっけど、あんた、本当に桔梗に口づけされちゃったの?なっさけないわねぇ」
珊瑚の呆れた視線。
「しかも、それをかごめ様の目の前でという・・・。犬夜叉、お前、二股という大胆なことしている割にはおなごの扱いが下手なのだな」
「かごめちゃんの前で!?さいっていね!」
「な、なんで俺ばっかり責められるんだよっ!」
犬夜叉、立場弱し。普段から余裕のない犬夜叉は恋のいざこざとなると倍にぴりぴりする。そんな犬夜叉をちょっとからかうのも楽しい弥勒と珊瑚だった。
「お?犬夜叉、何やら向こうではかごめ様の唇を狙っている奴がみえますぞ」
「!?この匂いは・・・鋼牙!?」
「あ、あの鋼牙くん・・・私・・・」
「何だ!この痩せ狼!」
突風のように走ってきた犬夜叉はがっちり鋼牙とかごめの間に割り込んだ。
「こいつか、二股やろうってのは」
「なっ・・・。何でんなことしってんだ!?」
話がややこしくなってきてかごめは「またか・・・」とため息。
「おらぁ耳がいいんだ。お前達の会話全部きこえてんだよ。二股かけておいておめぇは他の女に迫られたってか。なっさけない犬っころだぜ」
「う、うるせぇ・・・っ!」
犬夜叉、血管2,3本切れまして、鉄砕牙に手をかけた。
「だが俺は違うぜ。かごめ。俺はかごめしか見てねぇからな。自信のない二股野郎なんて、疲れねぇか?」
はい、犬夜叉、血管がまたまたきれました。
「こおれ、鋼牙!きさま、失敬なことぬかすな!犬夜叉とかごめは接吻をする「予定」の仲なんじゃぞ!」
七宝の援護射撃も逆効果らしい。
「予定?じゃ、まだってことだな」
「きゃ・・・」
鋼牙はかごめの腕をぐいっとぴっぱり頬に軽く口づけを・・・・と思いきや・・・
「ん?なんだ?狐くさい・・・」
鋼牙の顔面には七宝の顔が・・・。
一瞬、辺りになんともいえぬ空気が流れる。
「ぺっぺっ・・・!狐のガキと口づけしちまった!」
七宝、呆然。
かごめはとっさに七宝を盾にしてしまったのだ。
「し・・・七宝ちゃん・・・?」
七宝、まだ固まっている。
「ちっ。何かタイミングはずしちまったぜ。かごめ、今度会うときはじゃまされねぇところで続きしようぜ。じゃあな!」
「てめえっ・・・まちやがれ!」
「やい、犬っころ、俺のいねぇ間にかごめにちょっかいだすんじゃねぇぞ!かごめの唇は俺のものなんだからな!わかったか!」
「う、うるせぇっ!ぶったおしたる!」
既に鋼牙の姿なし。犬夜叉はムカムカ苛立つばっかりだ。
「い、犬夜叉、ちょっと落ち着いてよ。もう・・・」
「けっ・・・。鋼牙になんかスキみせやがって・・・。大体おめぇは・・・」
かごめの怒りの前触れ3秒前。背中から「実家へ帰る!」という台詞が聞こえてきそうだ。
「うわーん!」
七宝は大泣き。
「ワシの初めての接吻がぁっ!鋼牙の奴にもってかれてしもうたぁ。うわーん!」
「し・・・七宝ちゃん泣かないで・・・ごめんね・・・あたしのせいで・・・」
かごめが七宝を慰めようとだっこしたとき、犬夜叉が七宝の頭を優しくなでてやる。
「今回はおめぇを褒めてやる。痩せ狼野郎からかごめを守ったからな」
「ほ、本当か!?」
「けっ。今回だけだがな」
犬夜叉に褒めてもらうなんて初めての七宝はいっぺんに泣きやんだ。
「わーい。ワシはかごめを守ったぞ。わーいわーい」
(なんだか意味が違うような・・・)とかごめは思ったが言うのをやめた。
一方犬夜叉はまだカリカリしている。
「犬夜叉・・・。安心してよ。あたし、鋼牙君とキスなんかしないから。だってファーストキスはやっぱり本当に好きな人とじゃないと・・・」
「かごめ・・・」
いい雰囲気になりかけたとき、珊瑚と弥勒があきれ顔で言った。
「話はつきました?」