お前が、そこに、いる。

〜月の涙〜


かごめが井戸を覗いている。昨日、四魂のかけらをもっているにもかかわらず、しばらくの間現代と戦国時代を行き来できなかった・・・。

「どうしてだろ・・・。そういえば何だかかけらの光が弱くなってる気がする・・・」

かごめはぼんやりと四魂かけらのビンを眺めた。

「!!ひゃッ・・・」

一瞬、かごめの腕がポウッと透き通って消えて見えた!

「なっ・・・」

しかし、消えかかった腕はすぐにもとに戻っていた。

「・・・。何だったの・・・?今のは・・・」

腕は痛くもかゆくもない。

かごめはかすかに不安になったが、気のせいだろうと自分に言い聞かせた。

しかし・・・。翌朝起きてみると・・・。

「えええーーーーッ!?」

かごめの大声で皆、目を覚ます。

「ん・・・?今たしかかごめの声がした気がしたのじゃが・・・かごめ、おらんのう」

目をこする七宝。

「どこ行ったのかな。かごめちゃん」

「また誰かさんとケンカして実家へお帰りになったのでは?」

「なんでいっ。何で俺をみるんでいッ!弥勒!」

くいくい。

誰かが犬夜叉の着物の袖の裾を引っ張る。

「ん?」

後ろを見ても、誰もいない

くいくい。

「うるせえッ!誰だ!」

「あたし。ここ、犬夜叉」

「!?」

犬夜叉はキョロキョロと見回す。

「だから!ここだってば!」

「!?か、かごめの声!?」

「犬夜叉あたし・・・透明人間になっちゃったみたい・・・」

「透明人間ーーーー!?」

一同、ほぼ同時に驚きの一声。

くんくんくん。犬夜叉、『匂い』でかごめの位置を確認。

「確かに・・・かごめの匂いがする・・・」

(あ・・・!)

かごめは昨日、自分の腕が消えかかった事を思い出す。やっぱりあれは気のせいではなかったのだ。

どうやら声だけが聞こえるようで、姿形がすっかり見えなくなってしまったらしい。

「かごめっ・・・お前・・・」

「犬夜叉・・・」

「何かわるいもんでも喰ったのか!?」

ドタリ。弥勒達一同、お約束的にこけました。

「ん・・・んな分けないでしょーーーーッ!!こんな時に冗談言わないよ!もう!」

「冗談なんかじゃねえぞ!俺は心配して・・・」

ケンカが勃発前に弥勒、冷静にわってはいる。

「まあまあ。今はケンカしている場合ではないでしょう。なぜだか理由を考えねば・・・」

「・・・。多分・・・。四魂のカケラの力が弱まってるからだと思う」

かごめは四魂のかけらを取り出す。もちろん、かけら自体は皆に見えている。

「楓おばあちゃん・・・。どう思う・・・?」

「・・・。わからん・・・だた・・・。」

「ただ?」

「かごめの魂が薄れてきているのかもしれん」

「魂がッ!?」

「さよう・・・。霊力とはすなわち自分の魂のエネルギー。それを源にしているかごめの矢・・・。魂が弱まっているせいで四魂のかけらの力も弱まっているのやもしれん」

かごめの魂は誰より大きいはず・・・。誰より・・・。

「楓ばばあ!もしこのまんま・・・。ずっとみえねぇのが続いたらかごめはどうなっちまうんだよ!」

「・・・。わからんが・・・。そのまま消滅・・・ということも・・・」

犬夜叉は楓の肩をガッと掴んだ。

「冗談じゃねぇッ!!なんか方法はねぇのかよ!!おい!楓ばばあッ!!」

「・・・。月光の湖へ行ってみるか」

「月光の湖!?どこだそれは」

「白糸山の裏の森の中じゃ」

「白糸山!?」

前に、かごめが自分の気持ちを見つめ直そうと一人でのぼった山の事だ。その山の頂上の“白糸の滝”を目指したのだった。

「月光の池は霊力のも白糸の滝の水が流れてできたもの。その池で月の光を浴びながら一晩日がのぼるまで体を清めれば・・・」

「おい!かごめ!いくぞ!!」「行くって・・・どこへ?」

「ばっ・・・。きまってんだろ!!白糸山に!早く乗れ!!」

「行ってくれるの・・・?」

「ったりめーだろ!何ごちゃごちゃ言ってンだ!早く乗れって!」

必死な犬夜叉。

ありがたいと思いながらもやはり、犬夜叉に頼ってしまうことになる自分がどこか、情けなく感じるかごめ。

かごめはそうっと犬夜叉の背中にまたいで乗る。

フワリ・・・。

犬夜叉は感じる。姿が見えなくても、いつも、背中でするあたたかな匂いは変わらない。

「かごめ・・・。ちゃんと乗ったか?」

「うん」

「じゃ、行くぜ!!」

犬夜叉は、見えないかごめを背に乗せ、全速力で白糸の滝へと向かった。

そして、残された仲間達は・・・。

何故か珊瑚が赤面している。

「な・・・何だかあの二人・・・。あたし達の事まるで目に入ってないくらいに・・・」

「いい雰囲気でしたな。どうです。珊瑚、私達もこの辺で人にはばからずというかんじで・・・」

バコッ!!

弥勒、人目もはばかってお倒れになりました。

「ほ・・・法師様のバカ!!」

珊瑚は人目をはばかって照れております。

「・・・。楓。かごめは消えたりせんじゃろうな・・・。オラ、心配じゃ・・・」

「案ずるな七宝・・・。犬夜叉とかごめの強い想いが有る限り・・・かごめは絶対に消えたりはせん・・・。ん?なんじゃ七宝、ワシの顔に何かついておるか?」

七宝、珍しい物を見るような視線。

「・・・。楓も顔に似合わず、そんなセリフを言うのじゃな」

「・・・。七宝、今日は晩飯ぬきじゃ。ぬき」

「うわーん!!」

今日のメニューは七宝の好きなきのこ飯だった。



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