必要とし必要とされること2


第1話 本当の痛み@

「でぇええいッ!何で2日も経つのに元にもどらねぇんだッ!!」

犬夜叉、朔月でもないのに、髪はワカメの様に黒々として、爪はきれいに短いままだった。

「弥勒、てめぇ、精神的なもんだって言ってな、なんでなおんねぇんだよ!俺は疲れてもねーぞ!!」

「私は医師ではありません。お前こそ、何か悪い物でも食べたのではないか?」

「喰ってねぇッ!!畜生!」

苛つく犬夜叉。いつ何時奈落が襲ってくるかわからないのに、人間のままでは闘う前にやられてしまう。

「犬夜叉・・・。落ち着いて。ゆっくり考えよう?ね?」

「・・・」

犬夜叉に優しく声をかけるかごめ。しかし、犬夜叉の焦りはかごめに伝わる。

『そのままの犬夜叉がいい』というのは本心だが、一方で的と遭遇したら、半妖の犬夜叉の力がどうしても必要になってくるのが事実だから・・・。

その時。犬夜叉の耳元にピョーンと一匹の黒い小さな物体が・・・。

バシッ。

犬夜叉

、見事にしとめたり。

「冥加じじい。てめぇ、何かしってんな・・・?」

ギクリ。

「いやぁ。犬夜叉様。鋭い。しかしこの冥加、“清魂酒(せいこんしゅ)”事などしりませぬッ」

「清魂酒?何だ?それは。全部いいな。知ってること」

「は・・・はい・・・」

冥加、自白する。

清魂酒。それは、老いた妖怪達の間では知らぬものはいない、「若返りの薬」である。

「清魂草」という薬草の汁と自分の血を混ぜてのむと若い細胞が増える効果をもつという。

「その薬を飲めば、元に戻るのかよ。冥加じじい」

「お・・・おそらく・・・。多分、犬夜叉様の妖怪の部分の細胞が何らかの理由で減っているのだと・・・。それにこれは犬夜叉様の父上愛用のお酒でしてな。」

「おやじが?」

「父上様がケガの治りも早いといってよくのんでおられた・・・」

犬夜叉はスッと立ち上がり冥加をひょいっとつまんだ。

「んじゃ、とっととその清魂草ってやつを取りに行こうぜ。場所おしえな。冥加じじい」

「しかし・・・清魂草はここから山を3つ越えた森に・・・。人間の犬夜叉様だと3日以上はかかりますぞ・・・。それに・・・「清魂草」は犬夜叉様では採れませぬ」

「あー!?なんでだ!」

冥加はピョーンとかごめの前髪に止まった。

べちっ!

かごめ、冥加捕獲。

「冥加じいちゃん、犬夜叉じゃ採れないってどういうこと?」

「あいたたた・・・。「清魂草」その名の通り、清い魂をもった者でなければ採れない。つまり、かごめ、お前の様に邪気を浄化する者しか採れぬのだ」

「あ・・・あたしが・・・?」

清魂草は人を選ぶという。選ばれぬ者がどんなに清魂草を薬にしても絶対に効果はない。清らかな魂に触れた時、初めてその効能ができるということだった。

「じゃあ、早速行きましょ!犬夜叉!雲母で行けばすぐに・・・」

雲母を借りようとかごめが立つと犬夜叉はそれを手でさえぎった。

「いや、いい・・・。かごめはここに残れ」

「えッ!?どうして!?」

「・・・。今の俺じゃあ、自分所かお前すら守れねぇ・・・。だからお前はここで待ってろ」

「だって・・・。あたしじゃないと清魂草を採れないでしょ!」

「だからってお前を危険な目に遭わせられるか!!」

「わっかんないわねーー!!あんたじゃ清魂草採れないって言ってンでしょ!!」

「わかってねーのはおめーだろッ!!」

「何よ!!」

夫婦ゲンカ勃発。

そこへ弥勒が、声を唸らせてわって入った。

「うおっほん。二人とも。ちょいと失礼」

そう言うと弥勒は、懐から何やら白い粉を出し二人にふりかけた。

「ぷはッ・・・。何しやがる!弥勒!!」

「これで、大抵の妖怪は近づかないでしょう。聖水から取った塩ですから。結界にもなります。はい。これで問題解決。お二人さん、行ってらっしゃい」

笑顔で手を振る弥勒。

「行ってらっしゃいってお前・・・」

「ああ。そうですか。なら、私がかごめさまと二人っきりでいきましょうか?」

さりげなく(かつわざとらしく)かごめの肩に手を回す弥勒。

「てっ。てめえッ!どさくさに紛れてさわってんじゃねえよッ!もういいっ。かごめ、行くぞ!!」

「あ、ちょっと待ってよーー!!」

あわただしく、犬夜叉とかごめは雲母を連れて出ていった。

弥勒の作戦(?)成功の模様。

「ふう・・・。いつもいつも気を使わせますねぇ。あの二人は・・・。二人っきりになるチャンスだというのに・・・。ん?何です。珊瑚その疑いの目は」

「・・・。いちいちかごめちゃんの肩に触らなきゃできないの?法師様は」

「ふっ・・・。珊瑚、うらやましいのならさあ、こちらにおいで。私の腕へ・・・」

むぎゅッ。

珊瑚、弥勒の右手を思い切りつねり、セクハラ阻止。

「これで問題解決。法師様。ね?」

「・・・。ハイ・・・。そうですね・・・(珊瑚・・・。攻撃法を変えましたね・・・トホホ・・・)」



雲母に乗り、犬夜叉とかごめは2つ目の山を越えたところにいた。

「けっ・・・。また弥勒に乗せられちまった・・・」

「ふふ・・・」

「んなっ・・・。なんだよっ・・・」

「ううん・・・。何だか楽しいなって思って・・・」

「あーー?楽しかねーよッ・・・けっ・・・」

弥勒の作戦(?)につられてしまうのがちょっとしゃくな犬夜叉。でも、それも弥勒の優しさ。

心配してくれる仲間がいる。いつも、助けてくれる仲間がいる。

なかなか素直にはなれないけど、互いを気遣いあう気持ちはちゃんと伝わってくる。

鈍感な犬夜叉の心にも・・・。

「きゃあッ!」

一瞬、雲母がバランスを崩してかごめが落ちそうになった!

「かごめッ・・・!!」

犬夜叉はかごめの腕をぐいっとつかんで止めた!

「大丈夫かッ!?」

「うん・・・。平気。ありがと。犬夜叉」

「けっ。ぼうっとしてっからだ!」

「何よ!その言い・・・。!」

犬夜叉はかごめの両手を自分の腰の辺りにぐっともってきてぽつり、こういった。

「・・・。絶対離すんじゃねぇぞ・・・。絶対・・・」

「・・・。うん・・・」

かごめの手をぐっと両手で包む犬夜叉。

熱い・・・。

抱きしめられるより、熱くて胸がいっぱいになる。

握られた手から、犬夜叉の思いが伝わってくるみたいで・・・。

かごめはそっと犬夜叉の鼓動が聞こえるようにそっと背中に顔を寄せた。

(人間の時も半妖の時も・・・。犬夜叉の心は変わらない・・・。
精一杯あたしを守ってくれようとしてる・・・。
ありがたくて・・・。嬉しくて・・・。
だから・・・あたしは犬夜叉のために何かしたい、笑っていてほしいと思うの・・・。
だから・・・あたしはどんな犬夜叉の側にいたいと思うんだよ・・・)

こみあげてくる気持ちの二人。

しかし、そんな二人を余所に空には分厚い雨雲が漂っていた。

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・・・。何だか似たようなパターン化してきたような気がいたしますが(滝汗)、つい、ふたりっきりにしてしまいたくなりまして・・・。やはり、妄想は今年も尽きませぬ・・・。