第4話 痛みの果てに

気絶していたかごめが目を覚ます・・・。

目の前に・・・。

何とも言えぬ霧骨のドアップが!

「・・・!!!」

かごめ、ぎょっとなる。

「し・・・失礼な女だな!!」

「そりゃ、お前、誰だった霧骨の顔目のまでみりゃ、おどろくさハハハッ」

蛇骨刀を布で磨がく蛇骨。

かごめがここはどこだろうと見渡すと、どうやら霧骨と蛇骨のねじろの洞窟らしい。霧骨の毒を作る道具などが散乱している。

「!」

かごめ、両手を動かそうとするが動かない。

「無駄だ。動けば動くほどくいこむぜ」

平たい地面に寝かされたかごめは両手両足を重い鎖でつながれていた。

それに・・・声が・・・でない!!

かごめは必死にしゃべろうとした。

しかし・・・声が・・・出ない!!

「ふ。俺の特製の毒を少しばかりかがせてやったのさ。おれはやかましい女は嫌いなんだ。この間は油断して、お前に射されたからな・・・。これで武器を探せないだろ?」

霧骨は以前、かごめにすり鉢の棒で一撃をくらっている。

「けけけ・・・。これでお前を好きにできるぜ」

霧骨、そう言うとかごめに迫ろうとした。

「こらまて」

バキャ!

蛇骨、霧骨に一発くらわせる。

「な、何しやがる!!俺のお楽しみ邪魔すんなじゃねえ!」

「それはこっちのせりふだっつーの!犬夜叉が来るまでまちやがれ!どうせ楽しむなら奴の目の前の方が盛り上がるってもんだぜ」

「・・・。ちっ・・・。相変わらず悪趣味な野郎だな。」

「お前に言われたかねぇよ。女の体を縛り付けるお前にはな」

どっちも変態よ・・・とかごめは思いつつなんとかこの鎖から抜けられないか手足をばたつかせた。

(犬夜叉・・・。大丈夫かな・・・)


「畜生!!かごめは一体どこにいんだ!!」

雲母に乗りながら必死にかごめを探す犬夜叉。

蛇骨からくらった傷は不思議と治っている。

「さすが清魂酒の効果はすごいですな。もう傷が消えておる」

避難先から返ってきた冥加。ちゃっかり登場。

べったん!

そしてやっぱり、犬夜叉の鼻の上ではたかれます。

「どこへ逃げてた。この野郎」

「はは・・・。この冥加、決してそんなことは・・・」

「うるせぇ!!それより・・・。蛇骨が隠れてそうなとこは心当たりねぇのか!!」

また・・・また・・・また・・・!!かごめが連れ去れた。

自分のせいで・・・。危険な目に遭わせてしまう自分が歯がゆい。

今まで何度繰り返してきたか・・・。

自分の非力さが腹立たしい。こういうときにこそ感じてしまう。

妖怪の力が欲しいと!守りたいけど、守りきれない・・・。

(畜生・・・!どうしてどうしていつもいつもいつも・・・肝心な時に俺は・・・ッ!!)

犬夜叉は歯がゆい気持ちをこめて拳をぐっと握った。

「ん?犬夜叉様・・・あの洞窟の前の木にぶらさがっているのは・・・」

「!!」

かごめの制服の赤いスカーフだった。

まるで、かごめはここにいるぞ、早く来いと言わんばかりにひらひらとはためていている。

「雲母!行くぞ」

「え!?犬夜叉様お一人で・・・!?一旦戻って応援を呼ばれた方が・・・」

「んな暇あっかよ!!逃げたきゃ逃げな!!冥加!!」

犬夜叉は冥加を無視して洞窟へ向かって降りていった。

「にげろって言っても・・・逃げ場所ないじゃないか」


ガチャン!ガチャガチャ!

縛られた手足が少しでも緩くならないかと思ったかごめ。しかし、動かせば動かす程手に、食い込んでくる。

かごめの手首と足首が少し血が滲み始めていた。

「あきらめの悪い女だな。こりゃ特製の鉄で出きててな。そう簡単にははずせねぇのさ。ふふ・・・。観念しなお前はもうまな板の上の鯉だ。さぁて・・・どう料理してやるかな・・・」

そういって霧骨は、かごめに自分の顔をよせ言った。

しかし、かごめは動じない。きっと犬夜叉が助けに来てくれると信じているから。

そんな思いを込めてかごめは霧骨ににらみ返した。

「なんだ!その人を見下すような目は!ふっ。粋がってるのもいまのうちだぜ」

と、霧骨がかごめを手を挙げようとしたとき!

「かごめーーー!!どこだーーーッ!!!」

洞窟内に犬夜叉の声がこだました!

(犬夜叉・・・!!)

「かごめーーー!!!!」

洞窟内は意外に広く、犬夜叉は必死にさけびながら歩いた。

「かごめーーーー!!どこにいるーーー!!」

犬夜叉と雲母の背後に黒影が忍び寄る。

「やっとヒーローのお出ましか。待ちくたびれたっての」

「!蛇骨!!てめえッ」

犬夜叉が振り返ると蛇骨刀を肩にかついだ蛇骨が立っていた。

「かごめは・・・かごめはどこだッ!!!」

「え?あー。“まな板の上の鯉”ってか。ほい、あそこで、霧骨ちゃんとたのしんでるよ♪」

蛇骨の親指のさした方向に犬夜叉は視線を送ると・・・。

「!!」

地面に寝かされ、手足の自由の利かないかごめの姿。そしてそのかごめの上にまたいで襟をぐいっと掴んでいる霧骨の姿があった。

犬夜叉の体全身に逆流しそうなくらいにカッと血が駆けめぐった。

「て・・・て・・・てめぇ・・・かごめに何しやが・・・た・・・ッ」

犬夜叉の声が怒りで震えている。

「“何”ってか?ふっ・・・。げすな事聞くなよぉ。“楽しいこと”にきまってんじゃねぇか。そこで見物してな、半妖野郎」

「なっ・・・!!」

かごめの元へ向かおうとした犬夜叉の前に蛇骨が行く手を阻む!!

「おおっと。お前の相手は俺だ。ずっと待ってたんだぜー♪」

「うるせえっ!!!!どけッ!!!」

「そんな・・・。さみいこと・・・言わねぇでよぉッ」

ザシュッ!!

蛇骨刀が犬夜叉を襲う!!

「くっ・・・」

犬夜叉は鉄砕牙で食いとめる!

しかし、犬夜叉の意識は向こうのかごめにいく。

「さあてと。どう料理してやろうか・・・。ふっ。いい夢、見せてやるぜ、女」

そう言うと霧骨は再び、かごめの上をまたぎ、その巨体をずしりと置いた。そして、卑しい手つきでかごめの肌に触れようとしている。

その光景が犬夜叉の目に飛び込む。

内臓がえぐられるくらいの怒りと衝撃が犬夜叉の体に走る。

「・・・」

「どこみてやがる!!お前は俺と遊んでんだよッ!」

ビシッ!ザシュッ!!

蛇骨の攻撃が容赦なく続く!!

「ちょっとぉ。抵抗ぐらいしてくんなきゃね。おもしろくな・・・」

「どけ・・・」

「は?何だって?」

「どけ・・・」

犬夜叉は鉄砕牙をグッと握る。

「何?聞こえなかったけど?」

「どきやがれえぇええええええーーーーーーーーッ!!!!

ドガガガッ!!!

鉄砕牙が蛇骨の手から蛇骨刀を切り飛ばした!!!

犬夜叉はそのすきにかごめの元へ走る!!

「かごめから離れろぉぉおおおおおおーーーーーー!!!」

ドカッ!!!

犬夜叉の拳が霧骨を壁面に吹き飛ばした!!

起きあがろうとした霧骨の胸ぐらを犬夜叉は荒々しくつかんだ。

犬夜叉の目は完全に据わっている。

「てめぇ・・・。その薄汚ねぇ手でかごめにさわってんじゃねぇぞ・・・。この野郎・・・ッ!!今度かごめに妙な真似してみろ・・・。そのツラ、ぶっ潰すぞッ!!!!」

霧骨は既に気絶している。

犬夜叉はすぐにかごめの元に駆け寄った。

「かごめ・・・ッ!!」

手足から血が少し滲んで痛々しい。

犬夜叉は上着をかごめに掛けた。

「かごめ・・・。大丈夫か・・・。もう心配いらねぇからな・・・」

「・・・」

かごめは何か言いたげな顔で犬夜叉を見た。

「・・・。かごめ・・・?」

口をぱくぱくさせている。

「!お前・・・声が・・・っ!?」

「霧骨の毒はタチが悪いからねぇ・・・。それよか遊びのつづきしようぜッ」

「て・・・てめぇら・・・。絶対に・・・絶対に・・・許せねぇ・・・許さねぇええええッ!!」

犬夜叉は鉄砕牙を蛇骨に振りかざした!!

ザンッ!!

鉄砕牙と蛇骨刀はこすれて煙があがる。

「てめらはぜってえに許さねぇぞ・・・ッ!!!」

「おおっ。いいねぇ♪その怒りに満ちた顔・・・。たまんねぇッ!!!」

ザシュウッ!!

「ぐッ・・・!!!」

蛇骨刀の刃が犬夜叉の腕をかすった!!

犬夜叉は腕をガクッと降ろし、痛々しい表情をうかべた。

(犬夜叉・・・!!!)

かごめも同じく苦痛な表情を浮かべる。

「ほらほら!まだまだ終わってねぇっての!!」

ザンッ!ザシュッ!

ザンッ!!

「ウッ・・・ぐっ・・・」

蛇骨の容赦ない攻撃が続く!!

犬夜叉の人間の体に蛇骨刀の刃が切り刻まれて行く!

全身に傷の痛みが走る。たくさんの血が流れる。

流れる、痛い、流れる、痛い・・・痛い・・・。。

蛇骨の攻撃を受けながら、犬夜叉の瞳は悲痛な表情のかごめだけが見つめていた。

(かごめ・・・)

(犬夜叉・・・)

見つめ合う。いや、触れあう。

傷つきながら、瞳が追うものは大切な人。

たとえ、全身に傷が切り刻まれてもひとりじゃない。

一人じゃないから・・・この痛みにも耐えられる。



すでに、大量の血が犬夜叉からの体から流れていた。

すでに意識は朦朧とし、もう足がふらついていた。

「ゴホッ」

そして犬夜叉はとうとう・・・その場に倒れてしまった・・・!!!

(犬夜叉ーーーー!!!)

かごめは心の中で大声で、必死に叫んだ。

しかし、犬夜叉は動かない。大量の血が流れ出ていた。

「なんでぇい。犬夜叉、もうくたばっちまったのかー??つまんねぇよぉ。そんなのぉーー!!」

蛇骨の声も犬夜叉には聞こえない。

聞こえるのは、見えるのは・・・。かごめの声だけ。かごめの姿だけ。

守りたい、大切な人だけ。

人間の自分だろうと半妖の自分だろうと、守りたいのは・・・。

かごめだけ。かごめに生きて、そして側にいつも、どこでも居て欲しい。居て欲しいから・・・!!

「ほら・・・!まだ俺の遊び相手してくれよぉ!!寝てないでさっ!」

ドカッ!!

「ぐあッ・・・!!!」

蛇骨は犬夜叉の体を蹴り飛ばした!

(犬夜叉・・・・!!犬夜叉・・・!!)

かごめも苦しい。痛い。大好きな人が目の前で傷ついて、血が出て・・・。

死なないで・・・!死なないで・・・!お願い・・・。犬夜叉・・・。

大切な人の名を叫びたい、呼びたい、声に出して、叫びたい、呼びたい・・・・っ!!

かごめは必死に声を出そうとした。お願い、私の声!!出て・・・!

(犬夜叉、犬夜叉、お願い・・・起きて、犬夜叉・・・。犬夜叉・・・。犬夜叉ーーーーーッ!!)

やしゃ・・・。い・・・ぬ・・・。い・・・犬夜叉ぁあああああっーーーーーーーーーーーー!!」

“人間だろうと半妖だろうと・・・どちらでもいいの・・・。犬夜叉が生きて笑っていてくれたらそれでいいの・・・”

朦朧とする犬夜叉の心に・・・。優しい声が微かに聞こえた。

(かごめ・・・。声が・・・)

犬夜叉の指かかすかにピクッと動いた。

「あーあ・・・。やっぱ人間の犬夜叉じゃ、相手になんなかったか・・・。ったくつまんねぇったねぇぜっ・・・!!!」

蛇骨が再び犬夜叉に蹴りを入れようとしたその時!!

「!?」

犬夜叉は蛇骨の足と両手でガッと掴んだ!!!

「・・・。俺は負けねぇ・・・。人間だろうと・・・半妖だろうと・・・ッ!!!うおおおおおッ!!!!」

「うわあッ!!」

そして犬夜叉は、蛇骨の足を掴んでそのまま蛇骨の体を足ごと投げ飛ばした!!

そして犬夜叉は傷だらけの体で起きあがった!

「犬夜叉ッ!!」

「かご・・・めっ・・・」

二人とも深い傷を負った二人。けど、生きている・・・!

二人は名前を呼び合って互いの存在を確かめ合った。

「!?」

その時、犬夜叉は体の奥が熱くなるのを感じた。

何だか・・・力がわき上がってくるように。

(夜明けじゃねぇのに・・・妖気が戻っていく・・・!?)

犬夜叉の傷が消え、爪と耳・・・そして黒髪から美しい銀髪へ鮮やかにかわる!

「おお♪♪耳復活ーーー!!!そうこなくっちゃ面白くねぇやな」

不適な笑みを浮かべて起きあがる蛇骨。

「蛇骨・・・。てめぇには容赦しねぇぞ・・・。かごめを傷つけた分・・・倍に返してやる・・・。覚悟しな・・・」

復活半妖犬夜叉。犬夜叉は鋭い眼差しで鉄砕牙を構えた!

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嗚呼、またも邪モードが入ってしまいました。かごめちゃん、ごめんなさいッ(涙)でも、何だか9巻の朔犬フィーバーしていた あっしは、とらわれのかごめちゃんが書きたくてたまらんかったもので・・・。 でもラストは思いっきりラブだからねッ♪(妄想中)